柿崎隊A級化計画   作:札幌ポテト

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9話 新戦術

新シーズン、どのチームも弱点の見直しや強みの強化に時間を費やして来る。シーズンを跨ぐ毎にどのチームもレベルを上げて来るのだ、そしてそれは前シーズンに苦戦をした相手も例外ではない。

 

「弓場隊の動きは変わらない、恐らく俺たちを正面から倒してくる」

 

しかし、柿崎達は相対するその4人の動きは大きく変化はないと考えている。理由はいくつかあるがまず一つとしてある程度完成しているからだ、隙を探す方が難しい。各々がチームと個人の特性を理解しており、それが強みであると理解している。

 

それ故に大きな変化は起こらない、策を弄さなくても勝てるからだ。だからこそ、その隙を突く事ができる。

 

「諏訪隊に関しても同様、大きく変わってこないだろう。むしろ有利になる」

 

そしてその策は、撃ち合いにおいては最強に近い布陣を作れる。

 

「入間、今回はお前に全てかかっている」

 

そして今回の試合、戦術において鍵となるのは彼である。スナイパーとして索敵能力の高い入間は中距離でのサポート役として認識をされている。

しかし脅威ではないのだ、だからこそ奇策になる。

 

「問題なし、正直その立ち回りで私の右に出るトリガー使いは迅しか居ないと思うぞ」

 

そして本人の調子も絶好調だ。

 

「信じてますけど、無理なら早めにお願いしますよ」

 

「安心しろって、私程不器用だけど器用な男は居ないぞ」

 

「わかってます、よく知ってますよ……」

 

照屋も少しばかり不安があるようだが、それは柿崎の決めた事に従うと決めているのだろう、覚悟はできている。それに彼女自身スナイパーとして救われた事もゼロでは無いし、チームにとって役割を持った存在としては入間を認めてはいる。

 

だからこそ、今回の策に賭けている。

 

「まずはB級上位、そして昇格だ。行くぞ!」

 

弓場隊と諏訪隊との試合が始まる。

 

 

弓場隊の作戦は自力で勝るという利点を生かし、押し潰す事に優先している。これは前シーズンからも変わらない、何故ならそれで勝てるからだ。

 

照屋は確かにΑ級に近い力を持ったエースではあるが、その脅威は抑えられる。何故ならば近距離での対面力は弓場の方が上手であり、王子や他の隊員のカバーがあればまず負ける相手ではないからだ。

 

そしてこのチームは照屋を主軸としている、その柱が折れれば遥かに攻略難易度が下がる。

 

何よりもスナイパーが機能していない事で数の不利が出来ない、情報戦で劣っていてもその程度では差は埋まらないのだ。

 

「よし神田、柿崎隊を落とすぞ」

 

そして取った作戦は、速攻である。一応懸念事項として3人で固まられると苦戦はする、それは連携力の高さがあるからだ。削り切る事は可能ではあるが、時間はかかるし被弾もする。

 

個々人の力はB級上位程かと言われれば、照屋を除いてそうではないのだ、故に孤立した瞬間を叩く。仮に気付いたとしても、3人で固まられた時ほど時間はかからない。

 

「(柿崎隊、照屋。ここで取る)」

 

そして、目の前に標的を見つける。バッグワームで隠れずにわざわざ姿を現しているのは、照屋に集中させるためだろう。彼女ならば1番生存する可能性が高い、いつも合流する他2人はバッグワームで隠れて集まるのは前シーズンから変わらない彼らの動きだ。

 

だがそれは照屋を落とせる準備をしていれば、大きな隙となる。

 

「弓場隊……2人!!」

 

瞬間、照屋も臨戦態勢を取る。しかし弓場隊は2人、しかも力で勝る弓場までいる。バッグワームで近づかれた故に、戦闘回避は不可能だ。それに柿崎や虎太郎が来る気配もまだない。

 

確かに照屋は強者だ、弾丸もいくらかその身のこなしで回避ができるだろう。しかし、避けれる弾にも限度がある。

 

「貰った……!!」

 

瞬間、弓場と神田は射撃体制をとる。いくらシールドがあろうと2人係の火力を、ましてや弓場の弾を受け切る事は出来ないだろう。

 

しかし、意外な人物が照屋の背後から現れる。

 

「(入間?何をする気……いや、アイビスにさえ気を付ければ問題無い!)」

 

バッグワームでレーダーに写っていなかったが、入間がやって来たのである。しかしまだアイビスを取り出してすら居ない、反撃をする前にむしろ両方削り切れる。

 

そう判断し、2人はフルバーストで弾を浴びせた。

 

「なにっ!?」

 

が、それは完全に防がれる事となる。

 

理由はシンプルで、入間が完全に盾役として機能しているからだ。バッグワームを解き完全にシールドを貼るだけの存在として照屋を支援しているのだ。

 

「(こっちは2人係で掃射してるんだぞ、何故ここまで防げる!!)」

 

球の軌道が完全に読まれている、それも神田の撃つハウンドですらだ。いくらか照屋が回避を行う事は読めていた、だからこそ火力を照屋に集中した。しかしそれを回避と2人のシールドで完封されるとは思いもしなかっただろう。

 

そして照屋は接近する、盾役に防御を任せて前に行く。

 

「しまっ……!?」

 

回避と盾により捉えきれなかった神田がまず、孤月で切り裂かれた。そしてそれを済まして間も無く、弓場にも接近していく。

弓場のガンナートリガーは火力の高さに焦点を当てているトリガーだ、それ故に射程は短いが接近戦においてはB級でも3本の指に入る実力者でもある。

 

だからこそ、そのレンジでの戦いに絶対の自信を持っているが。

 

「やるじゃねーかっ……!」

 

シールドトリガー3枚分には、惜しくも届かなかったようである。

 

 

B級ランク戦、初日の試合が終了した。会場では意外な結果と展開だったせいか、どよめきも大きい。確実に勝つと思われた部隊が負け、確実に落とされると思われた撃ち合いを制したのだから、それは普通の反応だろう。

 

「さて、今回は柿崎隊の勝利でした。やはり新戦術の影響でしょうか」

 

柿崎達は下馬評においてそこまで高い評価を受けていない。理由としては弓場隊との戦績が悪いというのもあるが、その実力は照屋が突出している以外には平均的と思われていたのもある。

 

そしてその評価そのものはこの試合でも変わっていないが、新しい陣形が大きく刺さっていた。

 

「入間隊員を完全に盾役として配置した布陣、こんなに固まっていたら逆に連携に歪みが出るはずですがそれも無い。その上でスナイパーの狙撃すら入間隊員は防いでいる、新生柿崎隊のフォーメーションですが……かなり隙がありません」

 

変態スナイパーが盾役として完全に機能していたのである。更に状況把握についてもスナイパーの時よりは劣っているようには見えない試合の展開をしていた。

 

それだけ柿崎のオーダーが進化しているという事かもしれないが、機能した駒とは誰も認識をしていなかったのである。

 

「逆に力押しやカバーによる連携で敵に隙を作る弓場隊は相性が悪い、近接戦に特化したチームならまだしも射撃戦で決着したかったと思いますが、あそこまでシールドを使いこなされてしまえば不利でしょうね」

 

また相性も悪かった、だからこそ戦術が大きく刺さった。入間の援護により自由に動き回る照屋は虎が翼を得たと言っても過言ではなく、諏訪隊すら轢き倒して行った。もはや装甲の厚い戦車である。

 

「では対策は不可能なのでしょうか」

 

だが、この世の中において絶対の戦術というのは存在しない。

 

「集まる前にやるのが最適ですが、恐らく今後は全員バッグワームで隠れるので索敵のしやすいスナイパーがいるチームは有利になるかと。いくら盾役に徹していたとしても激しい撃ち合いの中で狙撃までは手が回らない筈です」

 

4人集まるというのはそれだけで大きな隙にもなる。存在を一方向に集中するというのは思考の消費量が大きく減る、スナイパーという存在が盾役となったので尚更ストレスも減るだろう。

 

オペレーターの負担も4人チームは大きくなるのも明らかであり、一概に数の力が必要というわけでもない。隙は探せば見つけられる。

 

「それに複数人でのフォーメーションは1人を崩すと瓦解しやすい。今回は照屋隊員が上手く避けていましたが、1人にフォーカスして火力を集めれば勝てない相手ではないでしょう。それこそ……盾役を狙ってもいい」

 

そして一番の弱点は入間である。シールドをいくら貼れようと火線が集まれば、照屋のような回避に集中出来るはずもない。何故なら他者にシールドを貼るというのは神経を使う、その上で自身を守るとなれば相当な負担となる。

 

今回の試合でこそ柔軟に対応が出来なかった弓場隊が敗れたが、次はそうなるとは限らない。

 

「次回は影浦隊と荒船隊、この両チームにこの戦法で行くのかも注目ですね」




ちなみに今は原作開始2年前ぐらいです。主人公達の年齢としては17歳か18歳ぐらい。

あと諏訪隊に勝手にスナイパー置いてますが、2人チームばっかはまずいと思い入れました、笹森きたら抜けます。ご了承ください。
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