柿崎隊A級化計画 作:札幌ポテト
第二期東隊、その存在は他のチームとは根幹が異なる。元から東隊の東はチームの強化及び個人としての習熟を促す請負人として働いていたという事もあり、その存在意義は他のチームの目指す勝利ではなく成長が第一優先にある。
「それじゃあ、攻略方法を考える前に状況を整理するか」
それは後に片桐隊となる彼らも同様だ。
「とりあえず、あのシールド硬さは余程のトリオン量の差がなければアイビスですら突破できません。現に荒船隊の猛撃を全ていなしてる」
荒船隊との試合、シールドを分割して展開する入間であったが片手のシールドをフルに凝縮する事でアイビスの狙撃を対応していた。無論シールドは砕け散りはしたが、二宮クラスのトリオン量でもなければ確実な狙撃とは言えないだろう。
「隊長の柿崎さんは周りがよく見えてるし、巴や照屋それに入間さんへのカバーも早い。ある程度情報の負荷があっても対応できる人です」
「巴君はカバーの位置取りが良いね、照屋ちゃんの取りこぼしをちゃんと撃破出来てる。ただまだアタッカーとしては未成熟な部分が多い」
基本的な話し合いは東他3人で行われる。分析する練習という事もあるが、東自身も順序よく成長するのを見て自身の参考にしている。
「そして照屋、1番警戒しなきゃならない。今迄は彼女さえ止めれば何とかなるチームだったけど……」
「シールド特化戦術で更に止まらなくなった」
一番の課題、その戦術がはまってしまっている。どのチームもRound6になっても対応しきれていない、それだけ練度の高い戦術という事だろう。
「その立役者が入間さん、チームへの貢献度が今シーズンから跳ね上がってる。前シーズンは基本的に情報収集しかしてなかったですが、今シーズンになってからアイビスを一度も引き抜いていない。シールドとバックワームしか見えてないから一応アイビスも警戒しなきゃですかね」
しかしその代償としては安過ぎるが、ポイントを稼げていない。今迄は近距離に近付いてもアイビスでシールドごと射抜いて相打ちをしてくる危険性があった、殆どのチームは彼から突撃をしてくるか他の隊員を全滅させた時ぐらいしか彼を相手にしなかった。
それがないという事は、それだけシールドに専念しなければならないという事でもある。
「じゃあ今度は、俺たちの強みをどう押し付ける?」
「雪丸なら多分突破できますね。近接戦ならスラスターで破れますし、射撃戦も有利にできます」
それにいくらシールドを凝縮出来たとしても、スラスターや閃空を対応する事は出来ない。本来であればアイビスもそうなのだが、彼の場合シールドに角度をつけ割られても軌道を僅かに変えて避けている。
なので仕留めるならば近接戦であり、それはそれで照屋達のフォーメーションの攻略に至る。
「それにこっちは東さんの狙撃がある、火力の集中がうちのチームの強みでもあります」
だが片手を狙撃の警戒に残さなければならない影響上、有利に試合を進められるだろう。彼らの強みは4人チームである事である、だがそれは弱点にもなり得る。
「じゃああの戦術の弱点、それは何だと思う」
「4人揃うまでの隙が大きいですが、集まった時なら……守備範囲の狭さですかね」
4人という事はそれだけ三人チームよりも連携力が必要であり、瓦解しやすい。
「シールドをあの精度で維持する為に、常に照屋との距離が近い。だからカバーも倍で気を使う、照屋に関しては自由に動き回ってるのでそれに入間さんはついて行くだけですが……カバー役の2人にまで防御は出来ない」
照屋と入間の生存力はB級ではトップクラスであるが、裏を返せば他2人はそうではない。
現に狙撃に対して100%対応できている入間であるが、あくまでもそれは個人としてはだ。柿崎や虎太郎は何度か被弾しており、落とされてもいる。
全方位のシールドでの警戒を行いはしているものの、照屋にその殆どのリソースを割いている。それだけ彼女の存在が重要なのだ、ワンマンチーム故に。
「負荷をかけて火力を集中するのは難しくありません。あのチームの軸は前を張るあの2人ではありますが、狙うべきは巴と柿崎さんの2人で……どこかで照屋が孤立する」
だが入間は柿崎達のフォローに動く場合、必ず照屋との動きに淀みが生じる。それは僅かではあるがどっち付かずの行動となり、大抵は柿崎達を見限っている。しかしそのどっち付かずの瞬間、その僅かな思考の間に一撃を喰らわせることができる。
「まぁ、合流前に落とせたら最高ではあるんですけどね」
「それは運も絡むからな」
「よし、とりあえず慎重に行きましょう」
☆
B級ランク戦、最後に繋げるための試合が始まった。全てのチームが高みを目指して策を練り、知恵を絞り、技術を磨いている。そんなチームしかこの試合には居ない。
「(さてと、照屋とは近いか。逆にザキ達は遠い……合流は戦況次第かね)」
転送して間も無く、4チームという事もありレーダーには多くの点が写り入間も含めて多くの点が消える。マップは市街地A、凝っていない殴り合いがしやすいマップであるが、どの隊員もよく知るマップだ。
「入間さん、周りは?」
「わからん、バックワーム使われてる」
程なくして照屋と入間は合流する。シールド戦術は基本的にこの2人が揃えば完成する、火力と防御を割り切った運用という事もあり、互いの動きを噛み合わせれば最高のパフォーマンスを果たせる。
そして、それが唯一の僥倖であった。
「照屋と入間を発見した、戦闘に入る」
即座に舞台が集まって来たからだ。
「(三輪隊、合流前に潰しに来たか)」
しかし、それは三輪隊だけではない。
「ちっ、もう集まってやがったか」
「(まじか、影浦まで来やがった)」
影浦もまた、乱戦の予兆でも感づいたのか、やって来る。
「狙撃警戒、東さんと奈良坂は優しくないぞ」
「分かってます」
全員がバッグワームを解く、まだ人は集まりきってはいないが三輪隊は実質的に揃っている。奈良坂が即座にチーム状況を報告したのだろう、だからこそ到着が早い。
だが、それなら同じ状況である東隊が現れていないのも不気味である。
「ちっ」
「前張って」
奈良坂の狙撃をシールドで防ぎつつ、照屋を三輪と鍔迫り合いをさせる。同時に槍使いである米屋の突きをシールドで防ぎつつ、少し距離を取る。影浦がスコーピオンを繋げたマンティスによって2人を襲って来たからだ、同時に米屋は影浦と切り合うが狙撃もあり影浦はまだ前に出れていない。
恐らく北添の砲撃でも待っているのだろう、乱戦にこそ彼の真価は発揮されるからだ。しかし、その膠着は北添ではないものが破る。
「げ、俺狙いなのかよ」
突如として物影から現れた一条がスラスターを使いレイガストで米屋の首を飛ばしたのだ。
「不意打ちで米屋を持っていったか、判断が良過ぎるぞ」
東隊の位置に関しては方向だけは入間は察していた、それ故にそちらが死角とならないように立ち回っていた。彼らが好機を狙っていたのはどの隊も察していた、だがこれ以上待てば機は無くなると考えたのだろう。それ故に次に厄介な三輪隊を狙った、狙撃手の位置もバレていたが故に失った。
「入間さん」
「わかってる」
一条がバッグワームを解く、レイガスト二刀流というかなり特殊な隊員である彼は単独での火力も凄まじいと同時に耐える力もレイガスト故に強い。
片桐もどこかでまだ隠れているのだろう。
「(どうするザキ、これ完全に私達狙いの動きだぞ。割と詰んでるけど)」
通信で現状を伝えるが、全てのチームのヘイトが2人に向かう。ハイレベルな囲いが完成していた。
☆
B級ランク戦、その解説はいつも決まっていない。大体が暇なものを呼ぶ時だ。しかし、今回は珍しく2人が決まっていた。
「さぁ照屋隊員と入間隊員が囲まれている、この包囲陣を抜けるのは至難の業です」
オペレーターと共に映像を眺めるのは2人の隊員、それもただの隊員ではない。
アタッカートップにしてA級隊長太刀川とそのライバルでありS級である迅だ。
何故そんな者達が来たかというのは暇があったからというのもあるが、入間に頼まれたからというのもあるだろう。一応は旧知の仲である彼らには、それだけ信頼をしているのだ。
だがそんな前で入間と照屋の状況は非常にまずい。ただ囲まれただけならまだ突破は今までも出来て来た、しかしアタッカーのレベルがハイレベル過ぎる。今迄は照屋の火力を押し付けて強行突破を図ってきたが、それが通用しないレベルの隊員なのだ。
影浦、一条、三輪の3人は照屋以上のアタッカーなのだから。
「隊長達の動き次第ですね、このままでは押し潰されるのも時間の……おや?」
しかし、隊員は彼らだけではない。
「いやらしいな、一条の背後で少しだけレーダーに写した。挟撃されれば無事に済まないだろうし、隠れて展開していた片桐との差が纏まった。隙ができる」
虎太郎が一条を一瞬だけ挟んだ、片桐を釣るためというのもあるが意識を背後に向かせるためだろう。一条ほどのアタッカーと言えどかなりの集中力を照屋達に向かわせているのだ、中途半端な対応であれば突破口は出来る。
しかし、それだけではまだ難しい。
「更にここで柿崎隊長が影浦隊を強襲!いや、すぐに引いたぞ!?」
故に集まりかけていた影浦隊を北添の背後から襲う形で現れた。更に囲いを崩す為だ、三輪や一条は崩れても狙撃による支援があるので崩しにくい。かと言って影浦隊だけを崩せば手痛いしっぺ返しを喰らうことになると考えての行動だろう。
その隙に、入間達は三輪と影浦達の間の突破を図る。
「あー、スナイパーの位置を予想してるのか射線は切れてる。こんだけ包囲陣がぐっちゃぐっちゃにされてたら、あの2人の逃げ切りは余裕だ」
「えぇ……あの2人は、ですね」
しかし、そう簡単に行くのは相手に同等以上の策謀を見抜ける者がいない場合である。
「あーっと!?柿崎隊長ベイルアウト!!東隊長のアイビスが決まったーー!!」
遠距離からの狙撃がバッグワームで身を潜ませている柿崎を射抜いていた。
☆
「ザキ、虎太郎となんとか合流できた。どうする?」
戦闘開始から数分、照屋と入間は何とか包囲を抜ける事が出来た。しかし代償は大きい、身を潜めていた東が狙撃し柿崎を落としたからだ。現地で即座に指揮を行える事があの連携には必要だった、それが戦術の柔軟さを作っていたからだ。
つまり、今からは力押しでの戦闘が多くなるという事である。
「当初の予定通りスナイパーを倒す……のは、難しい」
本来、今回はある程度までシールド戦術を展開する予定であった。その壁としてあったのが東と奈良坂のトップスナイパー達であるが、落とせばある程度通用する戦術だからだ。
東は隠れるのが上手く探しても見つからないスナイパーではあるが、入間のサイドエフェクトである程度の捜索が出来るので、積極的に倒したい相手だった。
それだけ彼らの狙撃はレベルが違う。シールドを破る為に火力をここぞという時に集中できるスナイパーだからだ、いくら入間と言えど目の前で切りかかってくる相手を見ながら狙撃を避ける事は出来ないし、照屋を守る事も難しい。
だが柿崎が落ちた程度でその策を捨てるのではない、致命的なのは照屋が機能しなくなった事である。
「すいません、私がレッドバレットを喰らったばかりに……」
三輪の銃撃によりシールドが突破されたのだ。逃げる際に三輪に襲われた照屋は軽く切り合う事になったのだが、その時にシールドを信用し過ぎた故に重しを肩と腰に受けていた。
これではスナイパーを追いかける事はおろか前を張る事は出来ないだろう。
「どうしたもんか……ザキ、もう来たぞ」
しかし、待っている時間はない。
「片桐と一条か」
「向こうでやり合ってるのは三輪隊と影浦隊みたいですね」
三輪隊と影浦隊は逃げた2人を追う際にぶつかった戦闘が長引いている、恐らく決着が着くまでは来ないだろう。
火力失い、シールドもスラスターで切り裂かれ、東の狙撃もある。もはやシールド戦術でどうこうできる状態ではないだろう。
☆
「スラスターON!」
一条の一閃が壁を切り裂く。虎太郎はすんでのところで回避ができたようだ、しかしそれは偶々回避できたからというわけではない。
「エスクードまで入れてたか、スナイパー対策だと思うけど。乱発は出来ないな」
片桐は弾丸をばら撒きながら一条を支援する、この程度では動じない。入間のトリガーにスペースが多くある事は分かっているのだ、しかしエスクードはコスパが良いトリガーとは言えないので愛用する者は少ない。
しかしもはや時間の問題だ、虎太郎は前を張るには実力不足であり照屋も支援しか出来ない、そして入間は攻撃のできるトリガーがアイビスしかない、このまま押し切れるだろう。
「片付けるぞ!」
だが早くしなければ漁夫の利を得ようと三輪隊や影浦隊がやって来てもおかしくない。故にかなり一条は踏み込んだ、虎太郎の動きを読み切ったからというのもある、次でエスクードがあろうと仕留められると確信がある。
しかし、虎太郎はそれを見て即座に引いた。引いてはならないところだ、引けばそれは照屋も同時に落としてしまうから。故に代わりに入間が前に出た。
「(前衛が変わった?でもシールド張るだけじゃ……っ!?)」
瞬間、一条の首を光の線が掠めた。反射的に首を傾けた事で回避は出来たが、トリオンが首筋からは漏れ出ている。光の正体は手先から伸びたスコーピオンという事は分かる、しかし問題なのはそこではない。
「なんだこの動き、誰もこんなのしてないって」
立体的に身体能力だけで動き、スコーピオンを鞭のように振り回す入間がそこにいた。レイガストという事もあり防げてはいるが、パルクールのように壁を蹴り膝をスコーピオンで尖らせてぶつけてくる。
スコーピオン使いには色々な人がいる。発案者である迅はその軽さに任せて切り裂いてくる、影浦はその柔軟さに任せて振り回してくる、そして目の前の男は自身の柔軟さを最大限に利用して鞭のようにしならせもするし、蹴りの射程を伸ばしてもくる。
自由度という点を、最大限に利用していた。
「下がれ、削り切られるぞ!」
そしてただ出鱈目に動いているのではなく、斜線をしっかりと管理している。狙撃をしようにも、射撃をしようにも、一条に当たるリスクが大きい。一条は強いアタッカーだ、しかし相手が悪かったとしか言えない。
「(だめだ、ここで下がればもう倒せない!)」
しかしここで勢いに任せて攻めている時を除いてもう好機は訪れないと一条は察していた。この3人が揃っていても一条が殴り勝てる前提の戦術を立てていたので、もうトリオンの配分が出来ない。
そして入間が明らかな格上ともう分かっているのだ。経験量が特に違う、斜線を管理しながらの連携を続けられてしまえば無傷で片桐もろとも取られる確信があった。
「(でも、だいたいわかって来た。片足でも落とせれば)」
だが慣れてもきていた、どこかのタイミングで打たれたとしても刺し違える準備が出来ている。次に踏み込んだ時に確実にやれる、そう思い気を伺った矢先だった。
「(このタイミングでエスクード?)」
突然側転の最中にエスクードを使い、身を隠したのだ。しかも一枚しか出していない、これならば出て来た瞬間にスラスターで切り裂く事が出来る。それに東の狙撃があればエスクードごとスラスターで貫く事も出来る。
考えれば考えるほど悪手にしか考えられない、しかしその思考をさいているときにもう決着は付いていた。
「一条!足元だ!!」
地面を伝ってスコーピオンが一条の片足を切り裂いていた。体制を崩す一条、瞬間に入間が飛び出してくる。
「レイガストって足元の守りが難しいよな、それを差し引いてもそんな使えるなら私もメインで使ってる」
「っ、スラスターON!」
しかし一条は瞬間にレイガストを投げつけた。最後の足掻きだろう、しかしそれは片手のシールドを使わせる事に止まり、首が飛ばされる。そしてそのままの勢いで、片桐にも迫っていく。
片桐はガンナーだ、接近されれば苦戦は必至。それ故に左右に動く入間を何とか遅延するだけでしなければならないのだが。
「北添のメテオラ!?このタイミングは……!!」
三輪隊と影浦隊との戦いがもう終わっていたようで、入間と片桐の間にも着弾する。しかし、広げたシールドをスコーピオンが貫通してくる。
「(射程が長い、マンティスまで使えるのか……)」
片桐もまたベイルアウトしていった。これで残る東隊がは1人だけとなったのだが。
「すまん、足にアイビス喰らった。流石東さん、私のキャパ完全に理解してる」
片桐が落ちる瞬間に、東のアイビスが入間を穿った。マンティスを使うと読んでいたのかもしれないが、惜しくもその狙撃は致命傷とはならなかったようである。
「影浦隊長相手に片足で勝てるんです?」
「スコーピオン生やしたから大丈夫だけど、狙撃次第だな」
B級ランク戦Round7は終盤にさしかかっていく。
☆
終盤、狙撃手が残った状況の中で起こる影浦隊との戦い。狙撃の効かないアタッカー2人の戦いは、決着した。
「試合終了、最後まで生き残ったのは……柿崎隊の2名です!」
虎太郎、影浦、北添は落とされたがスナイパーがベイルアウトを選択したことで試合終了。ポイント差は少ないものの、生存点により勝利したのは柿崎隊である。
「照屋隊員と入間隊員、2人とも機動力が無い状況でありながらも何とか生き残りました」
「最後の三つ巴に奈良坂が隙みて北添落としてなきゃもう少し長引いてたけど……まぁ柿崎隊の勝利ムードだったな」
どちらに傾いてもおかしくない試合、というわけではなかった。スナイパーも分かっていたようで、確実に取れる点を取って逃げたという形だ。
三輪隊は1点、影浦隊は2点、東隊3点、柿崎隊4点とどのチームも取れる点数を取っただけで僅差に見えるが、後半から流れは確実に彼らにあった。
「それでは三輪隊から解説していただきましょう、やはり柿崎隊をマークしていたのでしょうか」
「だろうな、4人集まるのが厄介だし集まる前にやるのが良い。4人より2人が集まるのが早いし、スナイパーを含めて3対2を作れる。概ね作戦通りだったと思うぞ」
三輪隊の動きはあからさまな速攻による柿崎隊の撃破だった。しかしそれは単独でやってきた影浦により失敗する、初手から戦術的な有利を押し付けられない状況にあったのだ。
「ただ米屋隊員が落とされてしまいました、これは痛かったですね」
「時間をかけ過ぎたな、乱戦での影浦と入間は荷が重い。ただここで照屋に重石を付けれたのは、デカかった。柿崎隊のメイン戦術を潰せたからな」
そこからズルズルと後手に回り続けてしまい、結果として米屋を失った。東隊の最優先が柿崎隊とは見抜いていたようだが、やはり時間をかけ過ぎただろう。
「その後は虎太郎がレーダーに映ったのを見て挟み込めると考えて詰めていったな、そんで影浦隊と激突。影浦が相手だと奈良坂も機能出来なかったし、まぁ運と立ち回りが絡まったな」
しかし立ち回り事態は悪いわけではない、作戦も影浦が来る前に戦えていれば照屋は落とせただろう。それだけに柔軟さが少し足りていなかった以上に運に見放されていたようだ。
「次は影浦隊、やはりこちらも柿崎隊潰しでしょうか」
「いや、ただ突っ込んだ感じだな。影浦は乱戦が得意だし、意図して狙ったんだろ。シールド戦術も乱戦じゃ多少は守りが散るしな、スナイパーが東さんじゃなきゃ照屋も持ってけた」
影浦隊は三輪と虎太郎を落とした事で2点確保している。もう少し三輪隊を早く落とし北添の適当な爆撃が爆撃が出来れば片桐や入間達との乱戦を作り上げる事も出来たかもしれない。
ただ十分に暴れ回っていた、個々の力は発揮できていたのだから。
「ただ仕事は出来てたし、後はチームに合った補強が出来ればA級に上がるのも時間の問題だろ」
それだけに、最後のピースはまだ見つからないようだ。
「次は東隊、ここが1番柿崎隊を狙っていましたね」
「あぁ、しかも揃っていても単独で撃破する気も満々だった。いくら入間でも照屋のフォローしながら狙撃までは抑えられないし、どっちかは確実に東さんが抜いてくる」
どのチームもシールド戦術完成前を狙っていた。スナイパーで即座に索敵し、入間か照屋のどちらかを潰そうとしていた。しかしこのチームはシールド戦術が組まれてもどうにか出来る自信を持って突撃をしてきた。
だが無理して突破する必要も無いので最初は隙を見計らい不意打ちをしようと潜んでいたが、気づかれていたので三輪隊を狙う方にシフトした。柔軟さと決断については順調に育っているようだ。
「ただ入間に反撃されて半壊、片桐も北添のメテオラなきゃ生き残れてたかもしれないが落ちた。東さんも位置バレてたし、影浦やって試合降りたな」
しかし、予想外だったようで入間に破壊された。足を狙撃で奪えたもののスコーピオンにする事で対応され、機動力は奪えず、結果としては1番撃破ポイントを稼げたものの負けてしまった。
「ここに限らないがどのチームもシールド戦術は攻略出来る準備をしてたみたいだし、もうそれ一本は無理だな。火力の集中をスナイパーと合わせてやれば基本有利にできる」
しかし、シールド戦術は確実に敗れている。それは東隊に限らず、意図的に乱戦を望んでいた影浦隊も同様だ。シールド戦術の弱点を理解し、対応の限界の外から攻め込んだ。今後も戦術の一つとして機能する事はあるかもしれないが、これだけではやっていけないだろう。
「だからこそ、ここで隠し玉をぶちまけたわけだが」
「はい、柿崎隊の要であったシールド戦術は破られたと思いましたが……入間隊員が前線を張り、片桐・一条両隊員を落として勝ち切りました」
しかし、それが数多ある戦術の一つとなれば話は違ってくるだろう。
「まさかまさかの入間隊員のスコーピオンでしたが、明らかに急造の動きではありませんでした。とんでもない隠し玉でしたね」
「気づいてた奴は気づいてたぞ、アイビスをあんだけ振り回して凸れるのは前衛の動きだ。ただその戦闘力が照屋も超えてるとは思いもしなかったとは思うが」
照屋はB級でも指折りのアタッカーに成長したが、それを遥かに超える者があった。明らかに戦い慣れた動きはアイビスで抑制されていても柔軟であったので、何人かは気付いてはいた。
「アイビスはフェイク、だったという事でしょうか」
「いや、あいつ『パーフェクトオールラウンダーってカッコ良くね?』とか言って振り回してたし半分は本気だと思うぞ」
しかし本気で振り回していたからこそ、気付けなかった者もいるようだ。
「太刀川さんは入間さんと仲が良いとも聞きましたが、もしやライバルだったりするのでしょうか」
「兄弟子だよ、俺の方が戦績は良いけどな。まぁ少なくともB級アタッカーじゃタイマンで負ける事は無いと思うが」
「あー、何でああなったのかよくわかりました……」
そして、あっさりと衝撃の事実を暴露していく。太刀川と競り合うアタッカーがB級に居れば、タイマンで勝てる相手など居ないだろう。観客からさっさと昇格しろと呪詛を吐かれても仕方ない。
「ただ今回の試合は入間が暴れたから何とかなったが、初手で柿崎が自分の駒としての価値を見誤って落とされた。司令塔だったからな、あれで落ちてなかったらもう1人は生き残れてる」
「まぁつまり問題は……次の試合ですね」
だが、今のB級にはもう1人レベルの違う隊員がいる。
「問題、と言いますと?」
「入間の天敵、二宮がいるからな」
トリオン量の暴力を振るう者が、背後にいるのだ。
入間武人(アタッカートリガーセット)
トリオン10
攻撃12
防御・援護8
機動9
技術7
射程2
指揮6
特殊戦術6
Total:60