柿崎隊A級化計画   作:札幌ポテト

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14話 最終試合(弓場隊・二宮隊)②

「入間隊員、今度はシューターでしょうか。正確なハウンドを打ち出しました」

 

「シューターかどうかはまだ分からないね、でもスコーピオンぐらいは持ってるはずだよ。本職はアタッカーって分かってるしね」

 

王子が落ち、弓場隊は1人欠けた。試合開始から数分での出来事に、会場もざわついている。それだけ照屋が単独で突撃していく事象が違和感があるからだろう。

 

基本的には集まるのが柿崎隊のスタイルであり、チームの連携で上がってきたチームだ。それだけに、ここでチーム方針を変えてまで動いてきたのは他チームも衝撃だろう。

 

「おや?照屋隊員、更にこれは……犬飼隊員の位置がわかっているのか、突撃していきます」

 

そして、そのまま様子を見ていた犬飼にも突撃していく。

 

「どうやら彼女の仕事は『出来るだけ駒を減らす』って事かな。今迄の『取れる点を皆で取る』って形とは逆の行動、他の部隊もちょっと対応が遅いね」

 

照屋の今迄獲得してきたポイントは偶発的な戦闘を除けば柿崎隊の2人以上で獲得してきた、単独でポイントを取るタイプのエースではなくチームのフィニッシュを決めるエースだった。

 

しかし今日は様子が違う。

 

入間の位置は鳩原にスポットされているかもしれないが、臆せず照屋は突撃していく。それだけ、彼女の仕事が重要という事でもあるのだろう。

 

「でも二宮隊長は近い、これは逆に取られかねませんが」

 

しかし二宮隊も人が集まってきている。辻は少し離れているので合流は遅れているが、既に二宮の射程範囲内だ。

 

しかし、それは照屋達も察している。

 

「ここで二宮隊長と入間隊員、撃ち合いを始めました。同時に犬飼隊員も照屋隊員とぶつかります」

 

バッグワームを解いた入間が二宮を強襲する。無理矢理にターゲットを自分に移していた、照屋の仕事の邪魔をさせないためだろう。同時に君もバッグワームを解き、撃ち合いを興じていく。

 

「弓場隊はまだ動かない、王子隊員が落とされて慎重になってますね。潰し合うのを待っているのかな」

 

「そうなると、他の隊員の動きが影響してきますが」

 

「柿崎隊は合流ではなく、2チームに分けて片方は潜伏中。犬飼隊員との合流をはかる辻隊員を狙っているのかな。対して二宮隊員は様子見の牽制?かなり慎重だね」

 

試合はまだ始まったばかりであるが、戦況は固まり始めていた。

 

 

「アステロイド」

 

入間は高所から弾を放っては下がる、ヒットアンドアウェイの被弾を意識したようなあからさまな時間稼ぎをしている。二宮もまたそれに応じて弾を放っていき、逃げ場を減らしてはいる。

 

だが二宮はいつもよりかなり慎重だ、それには理由がある。

 

「何を企んでる。お前は一度として、俺にシューターで勝った事は無いはずだが」

 

シュータートリガーしか攻撃してこないのだ。牽制のためかとも思いはしたが、それにしては弾にトリガーが割かれている。牽制のためだけに準備してきたとは思えない。

 

「(弾はアステロイドとハウンド、それにメテオラのみ。シールドとバッグワームを考えれば枠はあと2つになるが……太刀川の言う『サーカストリガーセット』はないか)」

 

そしてもっとも二宮が警戒していたトリガーセットでないあたりに、疑問が湧いて出てくるのだ。この試合、二宮も入間も互いの攻略が鍵になると分かっている、しかしそうするにしては二宮を倒そうという気概を感じない。

 

倒す気ならばアタッカー特化型のトリガーセットを作ってくるはずなのだが、照屋が動き回っている事も考えると違和感がある。

 

しかし、それについて少しだが予想はついてくる。

 

「鳩原の警戒か、なるほど。スコーピオンを割られるぐらいなら、俺と撃ち合うという事か」

 

二宮隊には最も技術力の高いスナイパー、鳩原がいる。そして彼女ならばいくら立体的に動いてスコーピオンを振り回す入間であっても、その刃を砕く事ができる。

 

アタッカーとして戦うならばその障害は大きい、柿崎隊の動きはスナイパーを狙うためのものとも考えれば辻褄も合ってくる。

 

ただ初動で鳩原を討つのは困難と考え二宮以外でまずはポイントを稼ぐ、という事だろう。だが仮にそんな考えならば、甘く見られている。

 

「アステロイド」

 

二宮は既に、入間の逃げ道も遮蔽も大きく破壊し尽くしている。このまま撃ち合っても問題なく勝てるだろう、入間であっても二宮相手に時間を稼ぐのは至難の業なのだ。

 

そして犬飼には既に辻が合流している、そうやすやすとは落ちない状況だ。それは弓場隊も同様であり、二宮以外でポイントを取るという策ならばもう破綻しているだろう。

 

「逃げたか」

 

そしてこれ以上の時間稼ぎは無理と察した入間はバッグワームで即座に撤退していく。

 

「入間のトリガーは割れた、妙なことが出来る余裕はない。このまま照屋を取るぞ」

 

着実に、手の内を暴いていく。二宮の足は照屋達の方へと向かっていた。

 

 

入間と二宮が撃ち合っている間、戦況は少し変わった。犬飼と辻が合流し照屋の片腕を落とした一方で、合流した柿崎と虎太郎が辻の片足を削った。

 

鳩原の狙撃は2度ほどありはしたが、入間の感知のおかげで大事には至っていない。有利に戦局を進めてはいたのだが。

 

「(照屋、入間は引いた!限界だ!)」

 

時間稼ぎ役の入間が引いた、もう二宮と安全に戦えないと判断したしたということだ。予定ではこの時間で照屋がもう1人倒すはずだったが、片腕を落とされたことで孤月使いとして影響が出てしまい、落とし切る事はできなかった。

 

「(時間稼ぎ、もう限界が……)」

 

そして、予定より二宮の時間稼ぎは足りなかった。入間が時間稼ぎの立ち回りと判断してからの対処が早く、予定通りに行っていない。作戦は何もかもが予定通りにいくようなものではない、だからこそハマればチームの最大値を引き出せるのだが。

 

「虎太郎、辻さん倒すのは任せたわ」

 

照屋は、一気に前に出た。柿崎と虎太郎はそれが特攻である事をすぐに察し、弾で辻に攻撃を集中する。そして照屋は犬飼の元へシールドを張りながら突撃していく。

 

ガンナーは接近戦が苦手だ、それは犬飼も同じである。しかしシールドで完全に体を覆う事は出来ないので、即座に足を狙って風穴をあけていく。

 

だが、それでも止まらない。照屋はそのまま、孤月で犬飼を刺し穿つ。

 

「あらら、無理矢理来るか」

 

だが同時にゼロ距離からの射撃を受け、同時に落ちる。

 

「仕事は、果たしましたよ」

 

これで全チームが1人ずつ欠けた状態となった。

 

 

「ここで無理矢理ですが犬飼隊員を落とした、同時に弓場隊が乱入してきます」

 

戦況が動いた。乱戦を狙った弓場隊が互いに脱落者の出たチームに襲いかかる。中でも片足を取られた辻は防戦一方となっている。

 

「足が削れてる辻隊員は厳しそうですが……援護が手厚い」

 

しかし、弓場のガンナートリガーを鳩原が攻撃の手を緩めさせるのと同時にハウンドの嵐が降り注ぎ完全に足を止める。二宮の合流だ、即座に辻を落とすのは難しいだろう。

 

「さぁ三つ巴となったが、入間隊員は遠回りして更に鳩原隊員の射線を意識してるようですね。まだ合流には時間がかかる」

 

逆に柿崎隊に攻撃が集中していく。少し離れたところから二宮が援護をしているがそれは弓場を警戒しての事だろう、いくら二宮といえど近距離戦は避けたいのだ。

今度は柿崎隊は照屋が抜けた事で極端に火力が落ち、防戦一方となっている。

 

しかし、この戦場はたった1人に支配されている。

 

「あれは、合成弾か。神田隊員がベイルアウト、これは二宮隊長思い切った行動です」

 

二宮の徹甲弾が弓場隊に向けられたのだ。この状況で警戒すべきは弓場隊という事だろう、事実として照屋が居ない柿崎たちは怖くないということでもある。

 

シールドをはった神田は撃破され、庇われた弓場も片腕を負傷してしまう。逆に蔵内は無傷だが、一気に不利に変わる。

 

「合成弾は無防備になりますからね、しかも入間隊員の位置は不明ですが、鳩原隊員に見つからないルートを通っていると逆算して位置を読み切ったんでしょう」

 

柿崎たちには入間しか戦術の軸には出来ない、逆に入間が来るまでは大きく動かないという判断でもあるのだろう。事実、防戦一方となり仕掛けてこなくなった。

 

しかしそれは、二宮が乱入してから流れが変わる。

 

「柿崎隊長、弓場隊長にしかけました。しかし撃ち合いは劣勢です、巴隊員は援護……ではなく、辻隊員に仕掛け始めました」

 

「柿崎隊、今日は随分と仕掛けるね。逆にこのタイミングでしか仕掛けられないとはおもうけど」

 

だが、今日の柿崎隊はいつもとはまるで違う。柿崎が前に出ると、逆に巴が辻を取りに行く動きをする。照屋だけでなく全員が突撃していく、今までになかった動きだ。

 

何故なら柿崎隊のこの2人は個人としての力ではなく、連携によってここまで上がってきた隊員だからだ。この動きは二宮に打ち返そうとしていた蔵内も読めておらず、タイミングがズレた様子だ。

 

しかし、どちらも格上を相手にしている。手負いではあるが、その力は一対一では大きく差がある。

 

「今度は入間隊員の援護、間に合った様子。しかし柿崎隊長は甚大な影響を受けている」

 

そして両者の援護としてハウンドとアステロイドがばら撒かれた。後方から弓場隊を刺す形となり、蔵内はシールドで身を守らざるをえず弓場の援護は出来ない。そして弓場もそちらに気を割かれてしまい、防御が少し甘くなっている。

 

そしてそれを見逃す、柿崎でもない。孤月で無理矢理に貫き、弓場を倒しに行く。しかしゼロ距離で弓場の最後の射撃を防げるほど、彼の攻撃力は優しくない。

 

「弓場隊長と相打ち、両者がベイルアウト。更に蔵内隊員に二宮隊長の攻撃が集中、ベイルアウト寸前……巴隊員も辻隊員と切り合いが佳境か」

 

二宮が少し離れていた影響で接近した虎太郎とはタイマン勝負になっている。足を失っている分いつもの動きができない辻の方が傷は多くなっているようで、片腕を刎ねられ大きな隙が出来た。

 

「うわ、ここでシールド貼れるのか」

 

だが二宮隊には精密狙撃のできる鳩原がいる、その弾丸が虎太郎の孤月に向かったのだが遠隔シールドにより入間が弾いたのである。しかし辻も最後に巴と相打ちを狙い剣を振るった。

 

「巴隊員、片腕を持っていかれたが落とし切った。辻隊員もベイルアウト」

 

「足が削れてたから、辻隊員もきつかったですね。でも照屋隊員に隠れてますが彼も成長が著しい隊員の1人です。二宮隊としては鳩原隊員の狙撃を伏せがれたのは痛かったですね」

 

だが結果として二宮隊は2人、柿崎隊は2人と片腕、弓場隊は蔵内もトリオン漏出によりベイルアウトし全滅。乱戦はシューター達の影響もあったが、柿崎隊が制した。

 

しかし、まだ試合は終わっていない。

 

「ここで残った柿崎隊、撤退を選択。体制を立て直すようです」

 

B級1のシューターとスナイパーが、まだ無傷で残っている。




照屋文香

トリオン7
攻撃9
防御・援護8
機動8
技術8
射程4
指揮5
特殊戦術6

Total:55
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