柿崎隊A級化計画   作:札幌ポテト

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2話 柿崎隊結成(乱入)

ボーダーが設立されてから2年、本部も設立され多くの人間がボーダーに属するようになってきた。と同時に必要とされてくるのが広報の存在である。

 

人を集めるのにやはり必要なのは広報だ、その部隊に嵐山隊は選ばれていた。理由としては見てくれが良いと言うのもあるがその実力も十分であったからだ、最適任と判断され、既にその任を受け持っている。

 

しかし、同時に柿崎国治は隊を脱退した。理由は単純に自信がなかったのである。

 

自分は出来るやつと考えた事はない彼は、いつも東隊や他の隊長、そして邁進し続ける嵐山を見て、自分の力に自信を持つ事ができていないのだ。だから無理を言い、抜けたのである。

 

だがそれは、昨日今日で感じていたことではない。

 

柿崎は正規隊員となった時の会見で、記者から意地悪な質問を受けた。その時に他の同期は受け答えが出来ていた一方で、自身は言い淀み自分の言葉で自分を表す事も、上手く受け流す事もできなかったのだ。

 

だからこそ抜けた、しかし抜けた後に仲間たちの計らいで新しい部隊を作ることにしたのである。

 

「ま、マジか?この2人が来るのか……?」

 

そして、逃げてきた彼の元に集まったのはまるで自身とは逆の属性を持つような者達だった。いざ顔合わせの日になっても、まるで実感の湧かないのも仕方がなかっただろう。

 

「どうして2人はうちに、来たんだ?」

 

照屋文香、奈良坂や歌川と新人王を争った俊才。オールラウンダーとしても実力が高く、数多くの部隊から声がかかってもおかしくがない少女だ。

 

そして巴虎太郎、ボーダーの正規隊員の中で最年少であり唯一の小学生隊員だ。まだまだ荒削りとは言えその力は間違いなく伸びていくだろう。

 

そんな未来溢れる2人が、何故ここに来たのかと柿崎は聞く。

 

「柿崎さん、2年くらい前にテレビ出てましたよね?」

 

「おれもそれ見ましたよー」

 

「っ……!」

 

瞬間、柿崎の頭にその時の記憶が流れ始める。嵐山が上手くやったおかげでかわした質問、その時に何も出来なかった記憶が蘇ってくる。

 

「それ見て思ったんです。この人は支えがいありそう……って」

 

「え?」

 

「おれはかっこいいと思いましたよ」

 

彼にとって、その時の会見は自身の非力さと同期のレベルの違いを感じた負の記憶の側面もあった。しかしそうではなかったのである、周りからすれば柿崎はボーダー黎明期に正規隊員に素早くなった意思を持つ青年であり、あの場にいた事はそれだけで十分なほどに偉大なのだ。

 

「そ、そうか……はは。恥ずかしいな」

 

それを2年経ってから実感するとは思いもしなかったが、運命というのはこのように回っていくのだろう。新たな自分に区切りをつけるというのにうってつけな状況が作られてしまっている。

 

「よし、それじゃあこの4人で……ん?」

 

これから新たな柿崎隊としての生活が始まる、そんな時であった。

 

特に呼んでいるわけでも、ましてや声をかけられたわけでもないのに、さも当然といった様子で1人のボーダー隊員が片手を顔に当てながら佇んでいた。

 

自分に酔いしれているような風体、しかし残念ながら柿崎はその存在とは旧知の仲である。

 

「真打ち登場」

 

その言葉に他の3人も振り返り、戸惑ったように柿崎とその存在を交互に見ている。当たり前だ、突然変な事を言いながら顔を手を当てて格好つけた出立ちをしていれば戸惑うに決まっている。

 

しかし残念ながら、本当に残念ながら、彼と柿崎は旧知の仲である。

 

「た、隊長……知り合いですか?」

 

「どうした後輩達よ、私はただの天災型スナイパー入間武人だ。自称ではあるが、影の最強を名乗らせてもらってる」

 

自称なのかよとは言えない、しかしスナイパーだとか名前だとかは正直そこまで重要ではない。問題なのは、いま部隊設立についての顔合わせ中に、恐らく意図的に立ち合いに来た事だ。

 

「ど、同期……ではあるんだが」

 

「何言ってんだザキ、シャイなのか?毎週ランク戦を見るベストフレンドって言うのは恥ずかしい事じゃないぜ」

 

知り合いだった、というか照屋や巴は見覚えがある。テレビに出ていた者と同一人物であると、その時は筋が通ってるようでめちゃくちゃな事を言って記者を困らせていた。そう、やばい奴である。

 

「隊長、人付き合いは選んだ方が良いですって!絶対やばい人ですよ!?」

 

「この5人でA級トップを狙うか……悪くない」

 

「こっちの話聞いてないですし!本当の本当に入るんですか!?」

 

照屋が狼狽しだした、無理もないだろう。彼は柿崎を支えにここに来たのだ、断じて頭のおかしそうなスナイパーを支えにきたわけではない。

 

「何を言う、こう見えて最初期からボーダーにいるんだぞ?まぁスナイパーはアイビスしか使えないし、50m以内じゃないと当たらないけど」

 

だが、ある意味でも目の前の男はやばかった。

 

「5、50m……?その、その距離って射手の間合いで狙撃手の間合いじゃ……」

 

通常ボーダーのスナイパーライフルは狙えばちゃんと当たる、ゆえに1km離れた場所ですら熟練の狙撃手ならば弾を当てる事が可能だ。しかし逆に狙って外すというのは腰打ちでもしない限りはその方が難しい、そもそもその距離感で戦えば間違いなく射手から蜂の巣にされてしまうだろう。

 

「あ、聞いたことあります!何故か弾が当たらないけど正規隊員になってる狙撃手がいるって、噂は本当だったんですね!」

 

「まぁな、私以外にそれでなれる奴は見た事ないからな」

 

巴が思い出したように言う、そしてその通りだと答える。終わっている、存在も何もかもが終わっている。頭がおかしいだけでなく人間がおかしそうに見える、顔が良いだけに世の中は理不尽なのだと思い知らさせてくれる。

 

どうするんだと、照屋は再度自身の敬愛する隊長を見ると。

 

「よし、気持ち切り替えていくぞ!」

 

考える事をやめていたようだ、このチームはやばいかもしれない。

 

「あ、わたし来週からしばらく実家帰るから1ヶ月いないけどよろしくな」

 

訂正しよう、絶対にやばいチームになるだろう。

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