柿崎隊A級化計画   作:札幌ポテト

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3話 チーム方針

柿崎隊が結成されてから1ヶ月が経っていた、隊服が作られて正式な部隊として歩みを始めた彼らではあるのだが、順調に滑り出しているわけではない。

 

「B級14位、下から2番目か…」

 

虎太郎は悩んだように呟いている。今の柿崎隊はまだチームとしてできたばかりと言うのもあるが、思うような結果を得られていなかった。

 

B級ランク戦、これはA級への昇格権をかけて鎬を削るチーム戦だ。この順位の高いチームは無論、チームとしての練度の高さを意味している。しかしまだ出来たばかりと言うのもあり、個々の力では負けていないチームにも負けているのが現状だ。

 

前シーズンは飛び入りというのもあるが、また2ヶ月後にあるランク戦に向けて何とか調整をしなければならないのだが、今日開かれている定例会にまだ隊長が現れていない。

 

色々と悩んでいるのではないかと、3人が気不味い雰囲気を出していると、扉が開くと同時に声がかかってくる。

 

「おいおい、随分しけた雰囲気じゃないか」

 

隊長かと思い皆目を向ける、しかしそれは直ぐに『そっちだったか…』という気不味い眼差しに変わる。

 

「元気してたか?」

 

入間武人が久しぶりに、戻ってきたのである。

 

「今、元気じゃなくなりましたよ……」

 

照屋がそう言うのも無理はない、何故なら彼は本当に音信不通だったのだ。ランク戦は仕方ないにしても全く連絡を取り合わなかったのは中々に不正実に映ってしまう、それに彼が入ったところで何かが変わるとは思えないのである。

 

だがまだ彼自身を何も知らない故に、照屋は何も言えないのではあるが。

 

「ランク戦の反省会か?まぁコンビネーションが至る所でズレてた上に周囲警戒がまだ不慣れ、負けるべくして負けたわな」

 

「嫌味を言いに来たんですか、隊長助けて……」

 

この物言いをしてくる相手とどう仲良くなれというのか、もう困り果てているところで、また扉が開く。

 

「……入間の言う通りではあるな」

 

「隊長、でも……」

 

柿崎だ、恐らく外で話を聞いていたのだろう。こんな状況で2ヶ月後のランク戦をどうするか話し合うというのだから、正直皆胃がキリキリと痛んでいそうだ。

 

「全員揃ったな、これからの方針について話し合いたいと思う」

 

だな、柿崎の様子が少し違う。ランク戦中やその後は不甲斐ないといった感情をあらわにしていたのだが、今は逆だ。

 

「現状うちのチームが不足しているのは連携力と、個々の力だ。このままじゃA級には絶対に上がれない」

 

堂々としている、それに今迄口に出さなかったA級という言葉まで出している。皆の不安を感じたからか覚悟を決めたからか、皆を導こうという意思を伝えている。

 

「照屋、お前にはうちのエースになって欲しい」

 

「エース……ですか?」

 

「そうだ、A級のトップランカーを相手にしても最低で30秒は耐えれるようになれば、このチームを俺はA級に上げる事が出来る」

 

B級下位ですらまともに力を出せなかったにも関わらず、無茶を言う。確かにその言葉の通りに出来ればA級には上がれるかもしれない、今のチームは3人で固まって連携する事で勝つ事を目標にしているのだ、しかし絵空事だと言いたくないが、照屋の頭には浮かんでしまう。

 

だが、柿崎は何も無理難題を一人で解けと言っているわけではない。

 

「既に玉狛の小南に話をつけてる、彼女から1本でも取れるようになれば……言うことなしだな」

 

小南、そう聞いて照屋は下げかかっていた頭を上げる。小南桐絵、現アタッカーのポイント一位にして自身の通っているお嬢様学校の先輩だ。その人とどう話を通したのかは分からない、しかしそれを照屋の為に準備したのである。

 

それだけに、その本気度を感じられる。

 

「や、やります!絶対に、私は強くなってきます!!」

 

照屋の意思が大きく前に向いた、どうしようもない絶望感を先程まで味わっていただけに、歩む道を示されれば、もはや隊長について行く以外の考えは出てこない。

 

「虎太郎、お前はカバーの練習だ。トップランカーを倒すには個の力も必要だが、チームの力も必要になる。ここにガンナーやオールラウンダーとして参考になる隊員のデータがある、身につけてくれ」

 

「分かりました、おれがんばります!」

 

そして同様に、柿崎は課題を与えるが同時に鞄から大量のCDを渡す。これもこの時のために準備したのだろう、しかも最近の物から1年前のものまで準備されている。これを昨日今日で準備する事は小南の件と同様に出来ないだろう、それだけの熱意がこもっている。

 

「宇井は言う事ないけど、とりあえず慣れてもらうしかないかな。困ったら綾辻へ聞いて欲しい」

 

「了解です」

 

「入間も特にないけど、お前は次のランク戦までに俺たちの動きを覚えて欲しい。まずはそれからだ」

 

「オーケー、任しておけ」

 

ここに本当の意味で、柿崎隊は歩みを始めたのである。

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