柿崎隊A級化計画   作:札幌ポテト

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変人に振り回される

人生の転換点、またはその先にあるものを皆悩み続ける。より良い結果と過程を求めるのが人間だからだ、しかしその先にある過程や結果を知っていれば世界は違って見えるだろう。

 

そして、そんな違って見える世界で前世の知識を思い出した1人の少年は。

 

「覚えとるわけないやん、何人登場してたと!?」

 

知識の浅さに絶望していた。

 

いや仕方ない、そもそも前世の彼の知識は28歳ほどで止まっているし更に言えばこの世界の知識についてはアニメぐらいしか入っていない。アニメの2期がかなり画風が変わったと聞いて見た程度であり、本気でのめり込んで見るには忙しい社会人であったというのもある。

 

ゆえに、この人生はもうボーナスタイムと割り切ってのめり込みたいという気持ちはあるのだが。

 

「個人的にはA級部隊に入るより、A級部隊へ育てたいけど……顔見れば思い出すかもしれんが、全然わかんねぇ」

 

いかんせん、登場人物が多い。B級ですら100人は居てもおかしくない、A級もかなりの数がいる。主要な人物は思い出せるが、記憶がぼけている。

 

更に第一次侵攻、ネイバーがいつ攻めてくるのかもわからない。ニュースを見ればまだ来ていないのは分かったが、何年後にあってもおかしくない。

 

「玉狛?……いや、個人的には本部長派なんだよなぁ」

 

そして仮に入れたとしても、色々な問題も出てくる。好き勝手に生きるといっても、何かしらの柱に寄り添っておかなければ袋叩きにされる。なので穏健派のような本部長派に個人的には仲間入りしたいのではあるが。

 

「……とりあえず、チーム探しは後でいいか。問題はこっちの方だと思うし」

 

1番の問題は自分の事だろう。

 

 

ネイバーの一時侵攻が起こり、ボーダーが公に発足して5日。世間は侵略者の存在を大いに恐怖し戸惑っている。

 

そして、そんな中で希望が出ているのは新入隊員だ。こんな状況下で新たな戦力として自身の信念をとして戦場に向かうのだから、期待も大きい。

 

そんな中で1人の少年はーー

 

「何で弟子にしてくれないんですかぁぁぁ!?」

 

ーー20歳の男に泣きついていた。

 

「お前なぁ、初対面で何も知らずに歳食ってる様に見えたからって弟子入りするか普通」

 

「いや正規隊員になってるじゃないですか、明らかに凄いでしょ!?」

 

「まぁ、それはそうなんだが」

 

東春秋、同じ時期にボーダーに入隊はしているが1人だけ異質な存在だ。明らかに年齢が高めというのもあるが、1人だけ最初から正規隊員なのである。

 

恐らくこれが外部スカウトという事だろう、しかしそれだけで突っ込んだのではない。そんな事を言ったところで東春秋は揺れ動かない、故に揺れ動く一言を言う。

 

「私、超能力ありますよ」

 

「あのなぁ……」

 

そう言って頭をかいてどう追い返そうか考える東。今は彼自身も忙しい時期であり、発足5日で弟子を取る余裕は今はないのだ。故に断りたいのではあるのだが。

 

「上着の左ポケット、トリガーありますよね。中身は……アステロイド系?今試作中と噂のスナイパーライフルですか?」

 

断れなさそうな言葉が出てくる。

 

スナイパーライフル、それはまだメイントリガーとして配布されていない狙撃銃のことだ。これを見抜くのは驚きではあるのだが、そこよりも問題の発言がある。

 

超能力とぽっと出の少年が言うので、ため息を吐いていたが。この世界に超能力は存在する。

 

「(……トリオンを、感知できるのか?)」

 

サイドエフェクト、しかもトリオン感知という非常に汎用性の高いもののようだ。しかもその性質すら見抜いている、恐らく相当な高位にあるサイドエフェクトだ。

 

それをボーダー発足5日で、交渉材料……というより自身の魅力として紹介するのはかなり異質である。

 

「分かった、弟子になれ。だが正規隊員になるまで見極めさせてもらうぞ」

 

このまま泳がせておくよりは良いだろうと、東は手元に置くことにする。

 

なおそれが、多大な労力と心労を孕むとは知る由もなかった。

 

 

「どうしてこうなるんだ……」

 

弟子入りされてから2ヶ月、スナイパートリガーが公にされて2人目の狙撃手を指導していた時だった。

 

その結果に、東は絶望していた。

 

「お前、孤月も使えなかっただろ」

 

「そうなんですよねー、忍田本部長にも頭抱えられましたし」

 

スナイパーライフルの腕が壊滅的に悪かったのだ。狙った場所に飛ばないし、安定感がない。25m以下になれば流石に当たり始めるが、50m以下では半分も当たらない。もはやスナイパーで撃つより、振り回した方が良いダメージが出そうである。

 

「なんて言うんですかね、腕に何か持つの苦手というか……指先の流動性的なのがちょっと澱み気味なのかもです」

 

「うん、本部長が頭を抱えたのはよく分かったよ……ガンナートリガーもこの調子じゃダメだったな?」

 

「流石師匠、よく分かりましたね」

 

「分かりたくなかったよ……」

 

その原因は性質なものである。彼は型にハマった動きが絶望的にあっていないのだ、手や足を自由にして本能のままに動いた方が良いタイプの人間だろう。ガンナートリガーはその手の自由が封じられる、動きそのものにも澱みができるし、彼自身指先周りが不器用過ぎるのだ。

 

「(基本的には高性能だ、天才だろう。吸収力の高さは言わずもがなだが、立ち回りや体捌き、近接戦闘に必要な動体視力と反射神経も高い。それだけに……スナイパーにするのは勿体なさすぎる)」

 

だからこそ、その力を発揮できないスナイパーを選ぶのはナンセンスだった。

 

「どうして、スナイパーを選んだ。シューターも悪くはないだろ」

 

現状、彼に最も合うトリガーは弾トリガーだ。俗に呼ぶシューターであり、あれは両手や行動にある程度の自由が作られる。今あるトリガーの中で最も適切ではあるのだ、しかし彼に最も適切なトリガーかと言われれば少し違う。

 

「私って、他人から学ぶのは得意なんですけど自分で学ぶのが致命的っぽくて。シューターはまだまだ未発展なんで教えをこえる人が居ないんですよね。アタッカーもちょっと、新しいトリガーでも開発されたら試してみたいですけど」

 

彼には学ぶ才能、というより閃く才能があまりない。頭の回転は天才タイプではなく秀才タイプ、体の動きは天才タイプというかなり歪な存在だ。

 

「東さんからオーダーの練習を受けて何となくですけど、奇抜な発想が出来ないんですよ。新しい何かを生み出せない」

 

東からある程度の戦術を学んでいるが、その戦術を応用こそできれど、全く新しい戦術を考えられないのである。

 

指揮官向きでもない、故に彼に役割を与えるとすれば火力役ではあるのだが。

 

「だからこそ、新しい流れが来た時に乗り遅れないように……先ずは頭と体を鍛えておこうかなって」

 

「……やっぱり、俺にはスナイパーより頭を鍛えてもらいに来たのか」

 

故に考えるのは、備える事という事である。シューターの先駆者が育つまで、新しいトリガーが開発されるまで、ひたすらそれに備えて鍛えていく。

 

あるかも分からない未来に備えられるほど人間は強くなれないが、目の前のそれは耐えきれそうな謎のメンタルはある。

 

「いやー、影の参謀とかかっこよくないですか?影の狙撃手とかも」

 

「お前は陰でも表でも、色々な意味で輝きまくってるよ……」

 

本当になぜこんなのを拾ってしまったのか、東は自身の選択に計り知れない責任を感じているのであった。




東さんの扱い、こんな形でいきます。
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