柿崎隊A級化計画 作:札幌ポテト
ランクシーズンが終了した、結果として上司層の壁を痛感する事にはなったが、柿崎隊は7位という前回に比べれば遥かに躍進した順位にこぎつけている。
「隊長、そろそろ私も慣れてきたので来シーズンからは入間さんの方にもオペレーターしても良いですかね?」
そして皆大きく成長している。やはり上位者と常に競い続けるというのは大きな経験値となるのだ、そのおかげで宇井を始め全員が当初の目的としていた課題をクリアし始めている。
特に顕著なのは照屋だろう、1人で多くのポイントを稼ぎエースとして働けている。それはやはり柿崎の指示とチーム全体のカバーが機能しているからだろう、自身より上の存在相手にも時間稼ぎができている。
「ただ負担になりそうだったら止めて良い、本人もそう言ってる。それに、最近は部隊室に顔を出さないが色々やってるみたいだ」
そして皆、入間に限らず個人ランク戦に出ていたりと自分たちを磨き続けている。最初の雰囲気を思えばよくここまで待ち直せたと思えるが、思い出してみるとほぼ1人で荒らし回っていたようにも感じる。
「あの人、交友の広さだけは良いですからね。A級トップランカーの人とよく一緒にいるのを見かけます」
「あいつは昔から誰彼構わず話しかけてたからなぁ……」
恐れ知らずというか、無鉄砲というべきか。だからこそ、ボーダーで17歳辺りの隊員と殆どが顔見知りでもある。こういった人との繋がり作ることで、小南といった中々に関われない隊員とも知り合えているのだろう。
「自称影の最強、実は情報戦的な意味合いなのかもしれませんね」
スナイパーから影に紛れて打ち倒していく、初めはそう思っていたのかもしれないが、その意味でなら納得できる。少なくとも柿崎と異なり、行動力という点で遥かに上を行くのが入間なのだ。
ただ、一つだけ皆が勘違いしているとするならば。
「……あいつ、ボーダー入隊初日からそう言ってたなぁ」
「すいません、やっぱり今のなしでお願いします」
信憑性が皆無という点だろう。
☆
「結果は7位か、よくここまで伸ばせたな」
「お、二宮じゃん。A級1位にもうちの進撃は目に映るのは仕方ないもんな、流石うちの部隊」
B級ランク戦、柿崎隊は新シーズンを15部隊の中でギリギリ上位に入れずにそのシーズンを終えていた。しかし上位と中位を交互に戦っていき間違いなく爪痕を残している、来シーズンも更なる活躍に期待が向いてくるだろう。
「なぜスナイパーなんだ、お前は」
「まぁ本職じゃないな、でもそれでいいんだよ」
しかし、その中に明確なノイズがあるのを二宮は見抜いている。
スナイパーとしての腕もそうだが、根本的に合っていない。その理由についても二宮はそれを知る6人の隊員のうちの1人という事もあり、納得していない。むしろスナイパーで馬鹿みたいに敵に体を曝け出して撃ち合いをしたり、徹底的に隠れて不意打ちを決めたりと両極端な属性を持つ彼ではあるが、前に出たがる癖がある。
「お前達に勝つ為だからな」
「その腕で勝つ気だったのか?どう転んでも俺達が勝つと思うが」
スナイパーを片手に詰めてくるならば、その間に倒せる。それは二宮に限らずある程度のA級隊員ならば可能だ。むしろB級上位も通用しないだろう、現にランク戦では2戦目以来目立った戦果を出していない。
「真面目な話、今はサポート役に徹してるからな。狙撃手として破綻してるのも分かってる、ロマンは感じてるけど」
ロマンだけでランク戦に挑んでるこいつはやはり頭がおかしいのだろう。だがそれだけじゃないことは、ある程度見抜いてもいる。
手を抜いているわけではないが、本当というわけでもないのはバレていることだろう。B級でも弓場、影浦、王子辺りは気付いていてもおかしくない。
「思えば、お前は変な事を色々やっていてからな」
「実況解説は私じゃなくても誰かがやってたし、スナイパーの合同練習と布教も誰かがやってた。何ならスコーピオンとかのトリガー研究も迅1人で多分できたぞ?」
「その全てに関わってるのが異常なんだよ」
実況解説をわざわざ作り出したのは、そのデータを個人的に取っているので『実況解説まだこの時期ないの?……忍田さんに聞いてみるか』と始めたのがきっかけだ。
スナイパーについての知識が皆浅く、かと言って東が個別に教えるのが大変と聞いた時も『何かあったよな、合同練習的なの……東さんに聞いてみるか』と相談してから始まった。
迅についても新しいトリガー研究に面白そうだから+迅に許されたので介入はしたが、そのおかげか迅はスコーピオンを直ぐに作り身につけた。
確かに誰かがやっているだろうし時間は解決してくれたとは思う、しかしそれでも何故かこの男が関わっている。
「まぁ私、学校行ってないから時間はあるしな」
高校に彼は行っていない、いや正確には三門市の高校へ入学しようとここに来たあたりで侵攻が起こり高校が潰れた。なので新しい高校に入ろうとするはずが、そのままボーダーに入る事を決めていた。時間という点では誰よりもあるし、それ相応の覚悟もあるのだろう。
でなければ、人生を完全に捧げる行為は容易にできない。
「ザキも嵐山隊に居たおかげでA級に瞬殺されない力はあるし、虎太郎と2人なら倒せるようになる。照屋についてもじきにタイマンでA級を倒せる力は付く」
だからこそ、どんなに頭のおかしい言動と行動をしていても。
「それにザキには『私の事は全部決めて良い』とも伝えてるしな、もうあいつに全て任してる」
「信頼しているようだな」
「ここだけの話、最初は不安もあったけど……私には無いものを持ってるからね」
油断してはならない相手である。そしてその事は残念ながら二宮もよく分かっている1人だ。
「だからその時が来たら全力で勝ちに行く。無論、今まで培ったどんな手を使ってもな」
色々な意味で、何をしてきてもおかしくないおかしい奴なのをよく知っているし、そう東からも聞いてきた。
「こいつを御す事になるのは、素直に同情するな」
「そうか?」
「制御が効くと思うか?封印しといた方が心労は少ないぞ」
「封じられた力、制御できない力……なぁ二宮、今思いついたがそんな感じのトリガー、一緒に開発し「絶対に断る」」