マイティ・ソーが北欧異聞帯を攻略するようです 作:ドレッジキング
スカディの幕間でソーとロキの名前が出ていたんで、FGO世界にもソーとロキはいるんですよねぇ
「それでは改めて自己紹介します。私はマシュ・キリエライト。こちらは私のマスター……」
「藤丸立香です。よろしくお願いします」
ソーとウォリアーズ・スリーの面々はこの集落に住む住民の一人であるゲルダという少女の家に通され、そこで自己紹介を受ける。藤丸とマシュはまだ大人になっていない年頃の少年少女である。マシュは亜麻色のショートヘアをした少女だ。柔和な顔と儚げな雰囲気が特徴的だが、瞳の奥には凛とした意思の強さが感じ取れる。特殊な黒いアーマーを纏っており、見た限りでは彼女の武器は身の丈を超える大きさのシールドだ。これ程のサイズと重量であれば相当な腕力がなければ
扱う事はままならない筈だが、当のマシュは自分の得物であるシールドを己の身体の一部であるかのように軽々と動かしている。マシュの隣にいる藤丸立香は彼女から「先輩」もしくは「マスター」と呼ばれている黒髪の少年だ。まだあどけなさが残る十代後半の少年だが、多くの修羅場と戦場を潜り抜けてきた雰囲気と顔つきをしている。神としての直感ゆえか、戦神であるソーからみればこうして対面しているだけで彼がこれまで多くの戦いを経験してきた事が手に取るように分かるのだ。それと同時にこの藤丸少年が持つ不思議な魅力……人を惹きつける力と、彼自身の持つ温かみと優しさも短い会話の中から感じ取れた。やはり藤丸立香とマシュ・キリエライトはただの少年と少女ではない。
「我はソー・オーディンソン。アベンジャーズというチームに属している」
「ワシは勇敢なるヴォルスタッグ。我が君ソーとは良き友である」
「颯爽たるファンドラル」
「冷厳なるホーガンだ」
ソーとウォリアーズ・スリーの面々もマシュと藤丸に自己紹介を終えた。そしてマシュはソーたちに自分達が何者であるのかを語り始めた。
「私と先輩は人理保障継続機関カルデアに所属しています。現在白紙化した地球を取り戻す為に活動しているのです」
「カルデア……。聞いた事のない組織だ。新しいヒーローチームなのか……?」
ソーはカルデアという聞きなれない組織に首を傾げる。自分のいた地球……ミッドガルドではアベンジャーズやX-MEN、ファンタスティック・フォーといった名だたるヒーローチームが多く活動しており、カルデアも新しくできたチーム名なのだろうと思っていた。だが"人理保障継続機関"という名の付く通り、S.H.I.E.L.D.のような国際的な機関か何かの可能性もある。
「ヒーローチーム……とは違うのですが……」
マシュと藤丸は少し困った表情で言う。ソーは更に首を傾げながら尋ねる。
「どういう事だ?」
「はい……カルデアは地球の未来を継続していく為に活動しています。ですが世間一般で言う"ヒーロー"とは少し意味合いが異なるかと……」
マシュの言う通り、どうやら単純なヒーロー組織というわけではないようだ。
「わたしたちカルデアは漂白化された地球を取り戻す為に戦っています」
マシュの漂白化された地球というワードにソーは反応する。
「待て、漂白化された地球とはどういう事だ?」
ソーの言葉にマシュと藤丸は説明を始める。2017年12月31日。マシュと藤丸がいた地球に突如として飛来した七つの空想樹により地球は白紙化してしまった。地球上には人類が築いた文明の痕跡はおろか、山や森、川や海といった自然でさえも綺麗サッパリ漂白化されてしまい、今の地球には果ての無い白い大地が広がるだけなのだという。そして地球がそのような事態になった原因はソラから飛来してきた七つの空想樹であり、その空想樹が地球に落ちた際、突如として世界各地に異聞帯が出現したのだ。今現在マシュと藤丸がいるこの北欧も異聞帯の一つであり、この世界に生えている空想樹を切除するべく活動している事をソーに告げた。
「成程……そのような事情があったのか。だがお主たちのいた地球は我とウォリアーズ・スリーがいた地球とはどうやら異なるようだ。我がいたミッドガルド……お主たちの言う地球は漂白化などされておらぬし、我とヴォルスタッグ、ファンドラル、ホーガンは突如として北欧に出現した巨大な嵐の調査を依頼されてこの世界に来ただけだ」
「……!それではソーさんは私と先輩がいた世界とは異なる地球から来たというのですか!?」
ソーの言葉にマシュと藤丸も驚愕する。
「うむ。だが、お主たちが元いた世界と我たちが元いた世界には共通点がある」
「共通点……?」
「そうだ。それは我のいた地球とそなた達のいた地球では共にこの北欧異聞帯が出現したという事実だ。異なる地球に同じ異聞帯が出現するなどという事があり得るかどうかは知らぬが、ともかく我とウォリアーズ・スリーはこの異聞帯をどうにかしなければならんようだ」
ソーの言葉にマシュは安堵したような表情を浮かべる。
「それでは我々と共に戦うという認識でいいのでしょうか?」
「無論だ。我が元々いた世界の北欧でも巨大な嵐が出現し、元々その土地に住んでいた住民がどうなっているのかも分からぬ状態だ。そこはこの異聞帯を支配している神に問いただす他はあるまい」
ソーは取り敢えずカルデアに所属するマシュと藤丸の2名と行動を共にする事を決めた。そしてマシュと藤丸が持っていた通信機から映像が映し出される。
「マシュ、藤丸君!そこにいる大柄な金髪の男性はトール神だよ!北欧神話における戦神で、アースガルズの神々の一人だ!」
「はい、私もにわかには信じられないですが、この方から計測される魔力は途方もない数値です……!」
ダ・ヴィンチと言われた可愛らしい少女は目を丸くさせながら、ソーを見つめている。
「お主もマシュと藤丸の仲間か?」
ソーの言葉に、ダ・ヴィンチは頷きながら笑顔で答える。
「そうだよ。初めましてだね。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ」
そう言うとダ・ヴィンチと名乗る少女はウィンクをする。このような愛らしい少女まで所属しているカルデアとはどのような組織なのか気になるソーではあるが、取り敢えず今は話を合わせる事にした。
「マシュ、藤丸君。見た限りではそこにいるトール神はサーヴァントじゃないし、かといって神霊でもない。正真正銘生きている本物の神様だ。私もにわかには信じられないけど、彼は本当にあの戦神なんだよ」
ダ・ヴィンチの言葉に対して、マシュ達は困惑しながら返答する。
「そ、そうなのですか……!?私も初めは土地の縁でこの異聞帯に召喚された汎人類史側の神霊サーヴァントかと思っていたのですが……」
サーヴァント、汎人類史、神霊というソーが聞きなれないワードを話すマシュとダ・ヴィンチ。
「なんだ……サーヴァントとは……?それにその汎人類史とは何だ……?」
その言葉にマシュもダ・ヴィンチも驚く。だが無理もない。ソーはマシュとダ・ヴィンチがいた世界とは異なる世界から来たのだからサーヴァントや汎人類史という言葉を知らなくても無理はない。後ほどソーもサーヴァント、汎人類史、神霊について説明してもらった。
「藤丸君、マシュ。トール神の協力が得られればこれ程心強い事はないよ!北欧神話最強の戦神が味方に付くんだ!」
ダ・ヴィンチはウキウキした様子でマシュと藤丸に話しかける。マシュと藤丸もソーという北欧神話を代表する神が協力してくれる事に喜んでいるようだ。
「先程のワルキューレがやろうとしていた生贄の儀式……。本来は戦士の魂をヴァルハラへと運ぶワルキューレが何故無辜の民を巨人の贄にしようなどと……」
マシュとダ・ヴィンチの説明によれば異聞帯というのは本来の歴史から大きく外れた状態で現在まで続き、並行世界論にさえ切り捨てられた世界だと聞く。それ故にワルキューレも本来の在り方から歪んでしまったのだとソーも予想していた。
「さっき話した通り、私達の世界は2017年の大晦日の夜にソラから飛来した七つの空想樹が地球に落ちた影響で白紙化してしまったんだ。私たちカルデアは白紙化した地球を元に戻す為に異聞帯にある空想樹を切除しているんだ」
どうやらカルデアが置かれた状況は相当に深刻なようだ。地球白紙化によって立香とマシュがいた世界に住んでいた人類は全滅状態。残った最後の希望を『彷徨海』という組織に掛けてこの北欧異聞帯に来たらしい。だが北欧異聞帯に来た直後、クリプターのサーヴァントであるシグルドの襲撃に遭い、仲間であるホームズが重傷を負い、ペーパームーンを奪い取られてしまったという。
「そなた達の状況は大体呑み込めた。一つ聞きたい、我の助力は必要か?」
ソーの言葉に立香とマシュは力強く頷いて肯定した。
「無論です!」
「トール神の力添えがあれば鬼に金棒です!」
二人の力強い返答にソーも満足気な表情を浮かべる。
「うむ!良い返事だ!そなた達の戦いぶりを見せてもらうとしよう!」
ソーはそう言って高らかに笑う。ダ・ヴィンチも通信機越しにうんうんと頷きながら微笑む。そしてソー、マシュ、立香の3人はこの第23集落の住民であるゲルダの家から外に出る。ソーは自らが持つムジョルニアを地面に置き、立香とマシュに見せる。
「我の持つムジョルニアは気高い心を持つ者にしか持ち上げる事ができん。我はそなた達二人の中に"気高さ"と"高潔さ"を見た。このムジョルニアを持ち上げられるかどうか、やってみるがよい」
ソーは二人にそう促す。マシュは戸惑いながらもムジョルニアに手を触れるが、ピクリとも動かない。
「あ……すみません……持ち上がりません……」
マシュは力一杯ムジョルニアを持ち上げようとするものの、当のムジョルニアを1ミリも地面から持ち上げる事ができない。それを見たソーはニヤリと笑みを浮かべる。
「それでよい!これからの旅の中で鍛え上げるのだ!」
マシュはしょんぼりした様子でソーに謝る。
「す……すみません……。期待に応えられず……」
「なに、気にする事はない。何事も最初から上手くいくものなどいない。努力する事が重要なのだ。我とて最初からこのムジョルニアを持ち上げられたわけではないからな」
マシュが気落ちしながら離れると、今度は立香がムジョルニアの柄を握った。
「今度は先輩の番ですね!お願いします!!」
「うん、頑張るよ!」
マシュの言葉に笑顔で答えると、真剣な表情に変わり、ムジョルニアの柄を握りしめ、動かそうとする。その時、マシュではピクリとも動かせなかったムジョルニアが僅か30センチだが動いたのだ。並みの存在では持ち上げるどころか引きずる事さえできないムジョルニアを立香は30センチも動かす事ができたのだ。これには流石のソーやウォリアーズ・スリーの面々も驚きを隠せない様子だ。
「嘘だろ……!?」
「これは驚いたな……」
「ふむ……ただの人間ではないと思っていたがまさかここまでとはな……」
他の仲間と同様の反応を示す4人。立香がムジョルニアを動かす所を見たマシュは満面の笑顔を浮かべる。
「流石先輩です!私の見込んだ通りです!」
マシュがそう言うとソーがマシュに声をかける。
「ふぅむ……。やはりその少年は将来的にムジョルニアを持ち上げる事ができるやもしれぬ。今はまだ動かすだけだが、いずれは我と同じようにムジョルニアを扱いこなすのも夢ではなかろう」
どうやら自分は将来ムジョルニアを扱えるようになるらしい。
「あ、ありがとうございます!」
立香は北欧神話を代表する戦神から褒められ、嬉しさを隠しきれない様子だ。
「いや、礼には及ばん。ところでだ……一つ聞きたいことがある」
そう言って神妙な面持ちでマシュと藤丸を見つめるソー。その表情を見た二人は緊張してしまう。
「ど……どうされましたか?」
マシュが恐る恐る尋ねると、ソーは口を開く。
「我とそなた達がいるこの集落なのだが……この集落にいる住民は全員が若い。そなた達二人と大差ない年齢の者ばかりだ……」
ソーは立香とマシュが滞在している集落の住民を見て、微かな違和感を覚えていた。そう、住民全てが子供や若者しかいないのだ。中年や壮年、老人の住民が一人もいない。ソーの言葉を聞いた立香とマシュは表情を曇らせる。
「……この異聞帯には人間が住む集落が100あるとゲルダさんから聞きました。15歳までに子供を作れなかった者は集落の外に出て巨人の餌となり、子供を作った大人でも、25歳になれば同じく集落の外に出て巨人の生贄にならなければならない掟があるんです」
マシュの口から出た言葉は余りにも残酷なルールである掟だった。それを聞いたソーは驚きの表情を浮かべて二人に問いかける。
「何と……。それではこの異聞帯に暮らす人間たちは若い内からその命を終えなければならぬというのか」
ソーの問いかけに立香とマシュは頷く。この世界……北欧異聞帯では人間は最底辺の生き物なのだ。寿命や人口まで徹底して管理され、時が来れば集落の外に闊歩している巨人の餌として生涯を終える。それがこの世界の常識である。
「何と不条理な……。人間の持つ尊厳など考えてすらおらん。だが……何故そのような掟が生まれたのだ」
ソーの言葉に、後ろからゲルダが答える。
「わたしも、この集落の皆も生まれた時からずっとその掟に従っているの。だってそれが当たり前なのだから。そして巨人の餌となった大人たちの魂はヴァルハラへ……」
が、ソーはゲルダの言葉を遮るようにして言う。
「それは違うぞ。ヴァルハラとは本来、戦いで命を落とした戦士の魂が向かうべき場所。武器も持たず、戦争に参加しない無辜の民が行くべき所ではない」
ソーはゲルダの前に立つと、しゃがんでゲルダに視線を合わせる。
「あなたは……神さまだと聞きました」
ゲルダの美しい瞳が不安げに揺れる。その瞳を見つめながらソーは言葉を続ける。
「そうだ。我こそはこの北欧における戦神、全能の神オーディンの息子にしてアース神族最高の戦士でもある。我が名はソー」
そう言って自分の胸に手を当てるソー。
「我の名を聞いた事があるか?」
その言葉にゲルダは首を振る。
「―――いいえ、聞いた事はないわ」
ゲルダは北欧神話で最も知名度が高い神格の一つであろうトール神を知らないと答えたのだ。
そーいやナポレオンどうやって登場させよう……?(;^ω^)