リトは本気で廊下を走った。
リトは己の迂闊さに怒りを禁じ得なかった。
人質を取ってくるとは。
だが、相手は間違った選択をした。
リトを怒らせたことだ。
「楽に死ねると思うなよ」
リトの眼には殺意の炎が宿っていた。
リトはドアを蹴破った。中には捕まった西連寺と佐清がいた。
佐清は宇宙人に姿を変える。
「…………」
リトはそれを黙って見ていた。
宇宙人はギ・ブリ―と名乗り、ララから手を引けと言ってきた。
「…………」
リトは黙ったままだった。いや、小さく呟いている。
「さあ、どうするんだ結城リト。俺は気が短いんだぜ」
「……お前は覚悟は出来てるんだろうな?」
リトの声が絶対零度の如く響く。
「なっ!」
リトから出る猛烈な殺意と威圧感。
虎の尾を踏む。龍の逆鱗に触れる。これすらまだましだろう。
今、リトが考えていることは一つ。ギ・ブリーをいかに苦しめて殺すか。
それしか考えていないのである。
「リト、いた!」
ここにララが乱入してきた。
「やっと見つけ……」
ララの言葉が止まる。
春菜がギ・ブリーに捕まっているのもそうだが、
リトから発する殺意が凄まじい。
その時、ギ・ブリーが肉体を変化させた。
より筋肉を纏っている。
その上でララを脅してきた。
「もう黙れ。凶れ」
そうリトが言ったとたん、ギ・ブリーの左腕がねじ曲がった。
悲鳴をあげて絶叫するギ・ブリー。
それを見ながら、リトは淡々と言葉を紡ぐ。
「凶れ」
今度は左足が捻じ曲がる。
ララやペケには理解不能だった。
リトの言葉の通りに曲がるのである。
「凶れ」
今度は右足が捻じ曲がった。
「や、やめてくれ! 許してくれ!」
原理はわからないが、リトがやっていることは分かったのだろう。
ギ・ブリーは許しを請う。
しかし、リトの返答は無情だった。
「悪いな。ララの婚約者は全員殺すと決めたんだ。
それにお前は俺を怒らせた。じっくり死んでくれ」
リトはそう言うと右腕を捻じ曲げた。
その後ギ・ブリーは内臓を一つずつ捻じ曲げられ殺された。
「…………」
ララもペケも呆然とした。
正に一方的虐殺。
リトの怒りがここまで恐ろしいものだとは思わなかった。
リトはギ・ブリーの遺体を燃やすと、ララに向き直る。
「西連寺を解放するの手伝ってくれるか?」
そう言うリトはいつものリトだった。
西連寺を降ろした後、リトは服の修理にかかった。
ルーン魔術を使えば楽な物である。
修理が終わると、リトはララに告げる。
「ララは西連寺を保健室に連れて行ってくれ。
貧血で倒れているところを発見しましたでな。
宇宙人のことは言わなくていい」
「うん。いいけど。リトは一緒に行かないの?
春菜助けたのリトなのに」
「助けたんじゃない。殺しを行ったんだ。
誇れることじゃない」
そう言ってリトは部屋を出て行った。
「…………」
西連寺はララに任せたから大丈夫だろう。
リトは屋上に来ていた。
「…………殺ったんだな」
歪曲の魔眼で間接的とはいえだ。
己のしたことに後悔はない。
己の能力の元となった聖杯戦争も殺し合いなのだから。
だが、この戦いの勝ちの定義は何だ?
賭ける物は地球。チップは己の命。
「…………くそ」
この世界は無情すぎるだろ。