深海の龍帝は何を成す?   作:リア・ユグドラシル

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「BB〜チャンネル〜!」

「お、お〜?」

「ほらほら〜もうちょっとテンション上げましょう?プロテアちゃん」

「い、いきなりそんなこと言われても困るよ〜」

「あっはは!まぁそうですよね〜それじゃあサクッと前回のあらすじ!」

「えっと…初の地下迷宮潜り!」

「妖精技術バンザーイ!」

「は、初魔石吸収!女狐クーナちゃん!」

「そして封印都市の影で動くのは…?」

「…こ、これでわかるのかな?」

「わからないなら前の話も見ましょう!それでは」

「あっ…ほ、本編!」

「「ゆっくりしていってね!」」

「「フェイラーテ公爵家」」


フェイラーテ公爵家

…ここは封印都市エリンをはじめとした複数の大都市を束ねるコリーネ王国。その首都たる王都イシュラ、王城の謁見の間

 

「顔を上げよ。フェイラーテ公爵」

 

「はっ、陛下」

 

王の厳かな言葉で、膝を突き平伏していたフェイラーテ公爵が顔を上げる

 

「して、今日はなんの用件で謁見を求めた?」

 

「クヴァル・ベステ。救世主シュジナ様より賜りし魔剣をオークレールの小娘から徴収する許可を。魔剣は罪人の娘が持つべきではありません」

 

そう言ったフェイラーテ公爵に王は憤怒の形相で怒鳴りつける

 

「罪人だと!?フェイラーテ公爵!我が友をそのように呼ぶな!お主とて知っているだろう!オークレール公爵…我が友リカードはコリーネ王国のために犠牲になったのだ!彼は全てを知った上で自らその道を選んだ…せめて真実を知る我らだけでも彼の死を悼むべきだ!!」

 

王にとってオークレール家当主のリカードは兄のような存在だった。剣だけでなく、遊びや男としてのあり方、様々なものを彼から学んだ。そして王もまた彼の娘のアンネロッタを自分の娘のように思っていた

 

だが王国のためにそんな彼を使い潰してしまった…否、使い潰さざるを得なかった、娘のように思っていたアンネロッタの人生を踏み潰してしまった…その後悔は今も王の心を苛んでいた

 

助けようとした。だがそれも立場が許してはくれなかった…何よりアンネロッタ自身がオークレールの名を捨てることを拒んだ…オークレールの名が彼女と共にある限り、例え王でもどうする事もできなかった…

 

「失言でした。ですが少なくとも表向きはそうなっています。罪人の娘が王家の象徴の魔剣を持つ、そのこと自体がまずいのです。第一あの魔剣を爵位を失いただの一般人に成り下がった小娘に何を成せるのです?然るべき立場の人間が然るべき場所で振るって初めて意味がある」

 

「…お主の言葉は間違ってはいない。事実、アンネロッタは剣を使いこなせていなかった」

 

王は騎士学校の受験でアンネロッタの戦いを見た。彼女はオークレール家に生まれた者に相応しい剣術を披露してくれたがそれだけだった…クヴァル・ベステの力を一欠片も引き出せていなかった

 

「ならば魔剣の剥奪を!」

 

我が意を得たりとでも言うように声を荒らげるフェイラーテ公爵に王は目を手で覆う…

 

正直王はフェイラーテ公爵の気持ちがわからないでもなかった。あの魔剣はコリーネ王国最強の剣士に与えられるものでもある…魔剣を手に入れることはずっと2番手に甘んじていたフェイラーテ公爵家の悲願でもあるのだから…

 

「私にはできんよ…国のために冤罪を受け入れたリカードが唯一出した条件…いや、願いはあの娘にあの剣を託すことだった。友のたったひとつの願い、それを違えることは出来ん」

 

王の脳裏にはオークレール公爵の最後の笑顔が焼き付いていた。彼は笑いながらこう言ったのだ、【無茶を聞いてくれてありがとう。俺の娘だ。剣さえあれば1人で生きていける】と…

 

「陛下は甘い。その甘さで何が守れるのです」

 

「1人の男の甘さでコリーネ王国は今も存続できている。それにフェイラーテ公爵、貴様は一体どうやってあの娘から魔剣を取り上げるつもりだ?魔剣の争奪には決闘が用いられるがまさかあの娘と自分が戦って自分の方が強いなどと恥知らずな事をするつもりではあるまいな?」

 

「それは…」

 

王の言葉に詰まるフェイラーテ公爵…そんな事をすれば弱いものいじめという騎士として以前に人としてやっては行けないことをするということは自分の名を傷つける事になる

 

「確かに私が戦えば卑怯者の謗りを受けるでしょう。では私の息子ならどうでしょう?」

 

「クラネルか…今年で18になるのだったな?」

 

「はい。今は封印都市ミツキで鍛錬に勤しんでいます」

 

封印都市は世界に8箇所存在するがエリンが最大で残りはあくまでバックアップにすぎない。その為危険も少なく、貴族や有権者の子息はそこにある学校に派遣しバランスの良い教育を受けるのだ

 

「次世代同士、オークレールとフェイラーテのどちらが魔剣に相応しいかを競い合う。それならば公平でしょう」

 

そう言うフェイラーテ公爵だがアンネロッタとフェイラーテ公爵の息子は2歳差…この時期の2年の差は大きい。更にフェイラーテの息子は親の権力で常に優秀な騎士がついた状態で効率的な狩りをしていて既にランク2…それもランク3に限りなく近い

 

(ここで怒鳴りつけるのは簡単だが…そうすればこの男は更に悪辣な手段で奪おうとするだろう)

 

尚そんな事しようとすればフェイラーテ公爵家側の破滅が確定するのは言うまでもない(主に黒いドラゴンに屋敷ごと潰されたりするだろう…)

 

(それならばまだ目の届く範囲にいてくれた方がいいな)

 

「なるほど。それは面白い。いいだろう。3ヶ月後、この王都イシュラにて決闘を認めよう」

 

その言葉にニヤリと笑うフェイラーテ公爵…だが王はそれに気付いていたし勝算もあった

 

(…あの少女がアンネのそばに居るなら大丈夫だろう)

 

尚肝心の勝算である人物の性別は間違えてる模様…

 

 

 

 

 

 

〜地下迷宮〜

 

「とりあえず一気に下層に降りてきたが…荷物が軽いのはいいな」

 

「元々リュウガくん達には関係なくないですか?」

 

「まぁ次元収納便利だけどね…できる限り秘匿した方がいいし…」

 

「あ、また魔物ね」

 

アンネの言葉と共にトワがイノシシの魔物の首に槍を突き刺す

 

「さて、今回はイノシシだし妖精の浄化装置を使ってみるか…血抜きするか」

 

逆さまに吊るして…魔力操作で魔物の心臓を動かし血を抜いていく

 

「血も水にできるからちゃんと取っておかないとな…」

 

大きめのバケツを取り出し血を貯めておく…血抜きが終わったな

 

「次は…ほいっと」

 

首の断面から毛皮と肉の間に剣を差し入れるとその隙間に風魔法を打ち込む…イノシシの毛皮が肉から剥がれたのを確認すると皮から肉の部分を引き抜く

 

「流石に初めて使う肉だからジビエは止めておくとして…単純にステーキでいくか」

 

部位ごとに切り分けて浄化して…使うのはロースでいいか

 

「では小さく切って…味見するか」

 

どんな味かは確認しておかないとな…ふむ

 

「…普通のイノシシより美味いな。これは単純に塩コショウでいける」

 

そうと決まれば三人の分も用意しないとな

 

調理中…

 

「おーいお前ら飯の準備できたぞ」

 

「「「はーい」」」

 

外で鍛錬をしていた3人を呼び戻すと皿に取り分けた肉を渡す…それなりのサイズだから残りは収納にしまっておく

 

「…魔物の肉ってことで警戒してましたが…めちゃくちゃ美味しいですね」

 

「シンプルな味付けだけど素材の味が良いのかしら…とても美味しいわ」

 

「モッキュモッキュ…」

 

「と言うかコイツ他の魔物よりも強めだったな」

 

「あれじゃない?事故湧き」

 

「「「あ〜」」」

 

確かに実習で言ってたな。エルナを通常よりも多く使って強いのが湧くってやつ…それなら納得だわ

 

「私達が直接戦った訳では無いですが…やはりこういうのは怖いですね」

 

「そうね…想定外の事態はあまりない方がいいのだけど…」

 

「だが自分よりも格上との殺し合いは成長する上では必ず必要になる」

 

「…そうね。私の目標のためにも絶対必要…何時までもリュウガ達に甘えてはいられないわ」

 

「うっ…で、ですよね…」

 

「まぁ最悪の場合転移で下層に放り込めば簡単に強者とぶち当たるぞ?」

 

「「それはまだ早いと思うから止めて!?」」

 

「流石にまだやらねぇよ…」

 

あくまでまだ…だがな…あ、因みに強者との戦いが必要な理由はもう1つ存在していてランクを上げるには魔石を取り込むだけでなく器を成長させ魔石の力を馴染ませる必要がある。それには自分よりも強い存在との戦いが1番いいのだ

 

「…そう言えば妖精印の防具はどうだ?採寸をしっかり取ってるから動きに問題は無いと思うが…」

 

「問題どころかいい事しかないです!私が炎を全力で使っても燃えない防具ってほとんど無いのにこの防具は焼跡も付かないですし…」

 

「私もよ。普通の防具なら身体に干渉して動きがズレたりするのに…この防具は私達の身体にフィットしてズレが無いから凄く動きやすいわ」

 

「そりゃあ良かった妖精もいい仕事をしてくれるな」

 

まだ何か改良案を考えてるらしいけど…程々にする様言っておかないとな…

 

「ん?なんか物々しい集団だな?」

 

俺の視線の先にはミスリルでできたフルメイルを装備した騎士が5人ほど歩いてきた…恐らくどこかの貴族の手の者だろうが…荷物持ち10人って多くないか?

 

「っ…」

 

「ん?どした?」

 

アンネがクヴァル・ベステを抱えて俺の後ろに隠れる…どうやらあの騎士達を警戒してるようだった

 

「…あの家紋…フェイラーテ公爵家よ」

 

「「フェイラーテ公爵家?」」

 

「…オークレールとフェイラーテは仲が悪いの…もしこんな所で鉢合わせになれば力ずくで…」

 

アンネがクヴァル・ベステを強く抱きしめる…大体察しがついた

 

「BB。フェイラーテ公爵家の動きを調べられるか?場合によっては…」

 

『わかりました。やり方はBBちゃんにおまかせで?』

 

「こっちの足が付かなければ良い。手段を選ぶ必要性は無いと思ってくれていい」

 

『わかりましたをBBちゃんにおまかせを!』

 

スマホの画面に大量の本棚が出現しBBが本棚を動かし情報を集めていく…それを確認すると俺は騎士たちを警戒しながら肉を頬張るのだった

 

 

数時間後…

 

「ふぅ…今日はここまでだな」

 

「いっぱい稼げたね〜」

 

「です!」

 

「今回の魔石は売りましょう」

 

迷宮から出た俺達は売り場に向かおうとする…すると茶髪で小柄な女性が向かってきた

 

「あっ!君達偶然だね」

 

「ん?ユウリ先輩か」

 

女性の名前はユウリ。学園の先輩であり特待生寮で唯一話しかけてくる先輩だ…尚俺達が話しかけられないのは入学試験で期待のホープを完膚なきまでにボコボコにしたせいである

 

「うわぁ…めちゃくちゃ稼いでるじゃん。オールランク2のパーティが1ヶ月潜っても届かないんじゃない?」

 

「んなこと言ってる割には先輩も大概だろ」

 

「あっはは…バレた?」

 

「そりゃそんだけバッグが膨らんでたらな」

 

ユウリ先輩のバッグは魔石で膨らんでいて中身が少し見えていた

 

「つーか今初めて会ったみたいに言ってるけどずっと俺たちをつけてたろ

 

そう言うと一瞬だがユウリ先輩の目から感情が消える…が直ぐにいつもの様に朗らかな笑顔に戻る

 

「うん?なんの事かな?あたしはずっと浅い階層に居たよ?」

 

「…ふーん。まぁそういう事にしておく」

 

…なーんで俺達がそこそこ深いところに居たことを知ってるような物言いなんだろうなぁ?初めての探索で深いところに行くはずがないのにねぇ?

 

「あぁそれとね?明日から学校が面白くなると思うよ?おかしな連中が地下迷宮に居たから」

 

意味ありげな言葉を残しユウリ先輩は去っていく…とりあえず俺達は酒場で豪勢に楽しんでから寮に戻るのだった

 

 

翌日…

 

「んあ?なんか騒がしいな…」

 

俺はスゴート教官に頼まれて授業で使う教材を教室に運んでいた…だが教室からザワザワと声が聞こえるので扉から覗き込んでいる生徒に声をかける

 

「なんの騒ぎだ?」

 

「あ、リュウガさん…なんでも貴族クラスの方に来た編入生が今教室に居るんです」

 

「あ?この学校で編入生なんて有り得ないはずだが…」

 

この学校は入学試験以外で入学する方法は無いはず…それ以前に貴族クラスの編入生がなんで一般クラスの教室に居るのかも解せない

 

「なんでも他の封印都市にある騎士学校からの編入だから認められたとか…」

 

「ふむ…それなら有り得なくは無いのか…?ていうか一体誰が来てるんだ?」

 

「今の王家の剣術指南役、フェイラーテ公爵家の長男、クラネル・フェイラーテ様です」

 

「…また随分タイムリーな…」

 

昨日見た騎士達の姿を思い出す…だが直ぐに俺はフェイラーテの目的を察した

 

(…目的はクヴァル・ベステか!)

 

今アンネ達は教室居るはずだから確実に何か起こってると判断した俺は直ぐに教室の中を確認する

 

「久しぶりだね、アンネロッタ。元気にしてたかい?」

 

整った顔立ちに細身ながらも鍛えられた身体の優男…推定フェイラーテがアンネに話しかける…が俺はそこに違和感を感じた

 

(…大貴族が大罪人の娘であるアンネに笑顔を向けて話しかけるか?)

 

「…フェイラーテ様、お気遣いありがとうございます」

 

硬い表情のアンネと心配そうに見つめるクーナ…そしてその後ろではこっそり魔法を放つ準備をしているトワ…俺も直ぐに突入できるように構えておく

 

「なんだい、そんな他人行儀な。僕達は共に剣を競い合った仲だろう?もっと軽い口調でいいよ」

 

おかしそうに笑うフェイラーテ…どうやら昔からの知り合いらしい

 

「私は今は貴族ではありません。立場の違いというものがあります」

 

「…悲しいね。アンネロッタにそんな態度をとられるなんて。でも悲しんでばかりもいられない。この手紙を君に届けないといけない」

 

フェイラーテが取り出したのは王家の公印が押された手紙…王の勅命を意味するその手紙をアンネは震える手で受け取り内容を読み上げる

 

「…魔剣クヴァル・ベステの担い手の最選定を行う。フェイラーテ公爵家の嫡男、クラネル・フェイラーテとオークレール元公爵の娘、アンネロッタ・オークレールの両名で決闘を行い、勝者を魔剣クヴァル・ベステの担い手とする。日時は火の月、七の曜日」

 

「…BB。今のアンネだと勝率は?」

 

『期間一杯を迷宮探索と訓練に費やしても微妙ですね…あのいけ好かない優男は一応ランク3に近いランク2なので…何らかのハンデがあってアンネさんをランク2にすることが出来れば十分行けると思いますけど…』

 

「…だよな…どうするか…」

 

「あまりにもむちゃくちゃな決闘だ。でも王の勅命だから…心苦しいけど僕だって拒否はできないんだ」

 

心底辛そうな表情を浮かべるフェイラーテ…だが俺からしてみたらあまりにも薄っぺらく見ていてイライラするものだった

 

「アンネロッタ。決闘はコリーネ王国の決闘場で行われる。君はきっと見世物にされ、酷い野次を受けるだろう…僕は君の傷付く姿を見たくない…だから…棄権してくれ」

 

アンネを気遣うような言葉をかけるフェイラーテ…だがやはりそこに込められた思いも薄っぺらい

 

「クヴァル・ベステを手放すだけで傷つかずに済むんだ。悩むことは無いだろう?くだらない意地は捨てるんだ。そうだ、新しい名前を用意してあげよう。オークレールを捨ててただのアンネになるんだ。僕ならそれが…」

 

あまりにアンネのことを考えていないその言葉に我慢の限界に達した俺が突入して拳を振り被ろうとし、トワも魔力弾をフェイラーテの股間に叩き込もうとした

 

『醜いなぁ…』

 

「「「「『!?』」」」」

 

だがそれはアンネの口から放たれたアンネのものでは無い声により止まる

 

『醜すぎて嫌になる…せっかくいい持ち主に恵まれたのにくだらない事情によって引き剥がされるなんて願い下げもいい所…』

 

「あ、アンネロッタ?」

 

『お前みたいな残飯にもならない汚物がこの子の名前を呼ぶな。穢らわしい…視界にも入るな、この子の綺麗な赤い瞳が汚れる。この子の名前を読んでいい者はこの子が認めた者のみだ』

 

「…おい」

 

そこで俺は再起動しアンネ…いや、アンネの体を動かす何者かに声をかける

 

『…おお。マスターか。どうした?』

 

先程までのドスの効いた声を微塵も感じさせない美しい声…先程までとは別人の様だった

 

「…色々ツッコミたいがまず…アンネはどうなった?」

 

『…ふふ。やはりマスターは優しいな。真っ先に問うのが主の安否か…御安心を、主は一時的に寝てもらっただけ…ちゃんと肉体を返すし危害も加えないさ』

 

「…それじゃあもう1つ。お前は誰だ?何故俺をマスターと呼び、アンネを主と呼ぶ?」

 

『…マスターとの関係については今はまだ答えられません。ですが今の私がなんなのか…そして主との関係についてですが…まぁ簡単です』

 

そこで1度区切ると改めてそれは答える

 

『今の魔剣クヴァル・ベステに宿る意思…それが私です』

 

「「!?」」

 

「ほう?」

 

『「へぇ〜」』

 

前代未聞の事態に混乱するフェイラーテとクーナ…すぐさまフェイラーテが声を荒らげる

 

「そ、そんな訳あるか!剣に意思が宿るなど…そんなの有り得るはずが『喋るなと言ったろうが。今私はマスターと話をしているのだ。その舌を切り落とすぞクズ!』っ…」

 

フェイラーテを殺気で黙らせ、こちらに向き直るクヴァル・ベステ

 

「とりあえずお前に敵意や悪意が無いのはわかった…それで、お前はどういうスタンスなんだ?」

 

『…先ず、私は持ち主を既にこの子…アンネロッタ・オークレールとすることを決めています。仮に他のものが私を奪い、使おうとするのならその自我と肉体を喰らい、国を滅ぼすことも躊躇することはありません。と言うかそこのクズに使われるとか死んでもお断りです!汚くて汚らわしくて薄っぺらい!こんなのに触られるとか死にたくなります!』

 

「…お、おう…予想以上だな。うん」

 

アンネと俺に対する忠義の厚さとフェイラーテに対する凄まじい嫌悪がよく分かった

 

「…あれ?となるとこれ決闘やっても意味無くない?魔剣自身が拒絶してアンネ以外に使われるつもりがないなら…」

 

「決闘して勝っても喰われるがオチだな…下手したら王国滅亡案件だし」

 

『主かマスター以外に使われるつもりなんてありません!』(`・ω・´)ふんすっ!

 

「あ、俺は良いのね…」( ̄▽ ̄;)

 

そんな事を話していると蚊帳の外に置かれていたフェイラーテが再び声を上げる

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!それは困る!魔剣の所有権が得られないと我がフェイラーテ家の悲願が…」

 

『そもそも私はフェイラーテ公爵家自体が嫌いなんです。私は象徴がどうとかじゃなくて、私を相棒或いは半身と思ってくれる剣士に使ってもらいたかった…』

 

「道具、象徴、最強の剣士の称号としか思わなかったフェイラーテと相棒、半身として使いこなしたオークレール…そりゃあ選ぶなら後者だな」

 

『特に初代オークレールは最高の担い手でした…先代の担い手も私の力を引き出すまでには至らなかったものの相当な担い手であったことに変わりはありません…ハッキリ言ってフェイラーテなんて最後までオークレールを超えることができなかった永遠の二番手で負け犬でしたし』

 

「今回の決闘だってフェアでも何でもない物だしな…」

 

『救いようがないくらいコイツら一族は卑怯者なんですよ。オークレール一族は自力で最強の座を勝ち取ったというのにコイツらはこう言った卑怯な手段を使い続けオークレール程の血のにじむような努力をしない…何でこれで私の担い手になれると思ってるんでしょう?』

 

「「「『馬鹿なんでしょ。一族全員』」」」

 

『あ〜納得』

 

一族を貶され怒りに顔を真っ赤にするフェイラーテだがこれ以上クヴァル・ベステの不興を買う訳にはいかないとわかっているからか黙っていた

 

「て言うか具体的にどう卑怯だったわけ?」

 

『食事に毒盛ったり鎧に細工したり…ベタなやつから変なのまで千差万別でしたね』

 

「うっわぁ…」

 

『なまじ権力とがあった分色んな人を抱き込んでたみたいですよ?それでも1度もフェイラーテ一族はオークレール一族を超えることなんてできませんでしたが』

 

「小細工して尚負けるってマジで無様晒してんじゃん…なんで未だに公爵家やれてんの?」

 

「抱き込んでたって話だしいくらでも証拠が消せたんだろ?ま、それで負けてたらせんないがね…ククッww」

 

「笑うのは辞めてあげようよ…笑う価値すらないんだからww」

 

『お2人も笑ってますよww』

 

せせら笑う俺達…なんならクーナやBBも後ろを向いて笑うのを堪えていた

 

「〜〜〜!!フェイラーテ公爵家を馬鹿にするのも大概にしろ!それ以前にクヴァル・ベステ!お前は剣なんだから黙って言うことを聞いていればいいんだ!」

 

『その態度が嫌だからフェイラーテ公爵家を嫌ってるんだってなんでわからないんでしょうね?…あぁ…馬鹿だからか…あと主のことをアンネと呼ぶのは辞めろ。これは私ではなく主自身がお前にアンネと呼ばれることを嫌がってます』

 

「剣に限った話じゃないがそもそも武器ってのは己の命を預ける相棒だ。武器を使う訳でも、武器に使われる訳でもない。対等じゃないと意味が無いんだよ」

 

「ましてや意志を持つクヴァル・ベステを道具扱いとか…そんな事するアンタら一族に担い手になる資格なんて無いに決まってるじゃん」

 

*゚∀゚)*。_。)ウンウンと頷くクヴァル・ベステ…それを見て歯噛みするフェイラーテ

 

『そもそもコイツ主やマスターと比べて剣術ぼろ負けしてますからねぇ…まぁ純粋培養なお貴族様は所詮その程度って事です』

 

「なっ…」

 

『主も普段からこう思ってますよ?「リュウガは世界一の剣の師匠だ」ってね♪』

 

クヴァル・ベステの言葉に顔を真っ赤にして俺を睨みつけるフェイラーテ…次の瞬間懐から手袋を取り出し地面に叩きつけた

 

「おい平民。君がアンネ『あ?』…あ、アンネロッタの勘違いの原因のようだな!まずはそこを正してやる!君がただの詐欺師だと証明すればアンネロッタも目を覚ますしクヴァル・ベステも従順になるだろう!アンネロッタに関わるのも辞めてもらうぞ!」

 

「構わんがお前にしか益のない戦いに乗る義理は無いな」

 

「…何を望む?」

 

「決闘の棄権…は王命だしできる訳もなしか…うーんお前程度に何を望むか…」

 

俺の言葉に頬を引き攣らせるフェイラーテ…そこでフェイラーテの腰に着いている剣が目に止まった

 

(…剣自体はタダのなまくらだが…一応この世界ではかなりの業物っぽいな…かなり使ってるようだし…)

 

「お前の腰に着いてるなまくらを寄越せ。本来なら彼女と釣り合うわけもないなまくらだがお前の持ち物で一番高価なのがそれだしな…本当に仕方がないけど」

 

「な、なまくらだと!?この剣の価値がわかってないのか!?貴様が一生かけて働いても稼げない価値があるんだぞ!?」

 

『因みにその剣の金額を査定しましたが100本買ってもセンパイの1ヶ月分の給料にかすり傷なるかな?位の金額しかありませんねww…いやこれセンパイの給料がおかしいだけですね』

 

(まぁ俺の給料ほぼ国家予算だからなぁ…殆ど寄付って形で国に戻してるけど…毎月やるのめんどくさい)

 

「で?どうするんだ?そもそも彼女と釣り合うわけもないなまくらでし・か・た・な・く妥協してやってるんだ。かける度胸も無いやつが決闘とか言うわけないよなぁ?」

 

「なんだと…!わかった。剣をかければ決闘を受けるのだな?その言葉に二言は無いな!?」

 

「なんでお前程度に怖気付く必要があるんだ?グダグダ言ってないでかけるかかけないか言えや」

 

「っ…!日時は明日の授業が終わった後だ…!逃げるなよ…!」

 

「こっちのセリフだボケ。アンネの思いも理解出来てねぇお前の心も体もズタボロにしてやる。テメェにアンネのそばに居る資格なんぞ無い」

 

その言葉に顔を真っ赤にして教室を出ていくフェイラーテ…俺はサムズダウンし、トワはいーだと言う顔をしてフェイラーテを見送った

 

『あ、マスター。申し訳ございませんがそろそろ身体の制御を主に返すので体を支えてやってください』

 

「わかった。後で謝っとけよ」

 

『はーい。それじゃあ失礼します』

 

そう言って目が閉じられ…直ぐにアンネが倒れそうになったのでその体を支える

 

「…あれ?私は…それにクラネルは?」

 

「アイツなら帰ったぞ。あとアイツと決闘することになった」

 

「…へ?えぇ!?なんで!?」

 

「色々あったとだけ。詳しく聞きたいならクーナにでも聞け。それと…」

 

俺はアンネの額にキスをする

 

「…へっ!?///」

 

「ありがとうな?世界一の剣の師匠って言ってくれて」

 

「な、なんでその事を…!?///」

 

「それについてもクーナにでも聞いてくれ。そろそろ授業が始まるから全員席に着けよ〜」

 

俺はアンネを席に着かせ、俺自身も席に着き教科書を開いた

 

To Be Continued…

 

 

 

オマケ

 

初代オークレール当主

 

歴代オークレール最強の剣聖にしてコリーネ王国最強の剣士として語られる伝説の存在。魔剣クヴァル・ベステの最初の担い手でありその力を最大限引き出せたのも今のところは彼のみとされている

 

オークレールとフェイラーテ

 

この二家は長い間剣士として凌ぎを削りあっていた…事になっているが実際にはオークレールが強過ぎてフェイラーテは今まで勝つことはできていない。長い間オークレールの二番手とせせら笑われた結果フェイラーテは手段を選ばなくなっていった…が、それでも勝てず結局アンネの父である先代オークレール当主が冤罪によって処刑され、家が取り潰しになって繰り上がり式に1番になった…がそれをクヴァル・ベステに宿る意識は知っているためフェイラーテは結局オークレールに勝てない存在だとせせら笑っているし絶望のそこに落とされてもめげずに頑張るアンネをとても大事に思っている




次回の深海の龍帝は何を成す?は…

「精々稽古用のマネキン位にはなれよ?」

「舐めるなよ平民…!」

決闘開始!

「っ…これは想定外ね…!」

「よりにもよってリュウガくんとトワさんが居ない時に…!」

2人に迫る脅威…!

次回!「決闘!そして乙女は更なる領域へ…」

キャラ解説…要る?

  • 書け!
  • 別に要らんじゃろ
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