「あらすじ!」
「いやぁ…やっと仕事が一息ついた…あ、ダ・ヴィンチだよ」
「君の自業自得だよね?なんなら僕はまだ許してないよ?メリュジーヌだよ」
「目が怖いなぁ…前回は我らがマスター君がクラネル・フェイラーテとの決闘を行い、無事勝利したね」
「そもそも生物として格が違うんだから負けるわけないんだよねぇ」
「一応人間が龍を倒す事例はあるんだけどなぁ…で、決闘に勝ったあとは私が連絡装置を完成させて、こっちと通信が繋がるようになったんだよね」
「まだまだ働いてもらうからね?休みとかこういう時でもないと許さないし」
「自業自得とは言えブラックが過ぎる!?」
「そしてマスターはカレラとアゲーラにアンネの師事を頼み、2人は了承。アンネは2人の師事を受けて更に強くなっていく」
「そして仕上げとばかりにアンネロッタちゃんとクーナちゃんだけで地下迷宮に潜ることに…だがそこでフェイラーテがとんでもない暴挙に出る」
「まさかあの剣がエルナを集めて暴走させる能力を持っているとはね…それによって出現したティラノサウルスモドキ相手に退路を封じられた2人は戦うことに」
「かなり苦戦したものの最後はアンネロッタちゃんが無事クヴァル・ベステの力を解放し、ティラノサウルスモドキの打倒に成功」
「帰りは念の為に着いてきていたマスター達に回収されて、帰還することができましたとさ」
「それじゃあそろそろ本編…」
「「ゆっくりしていってね!」」
「「選定の日、そして…」」
王都コロシアム
控え室にいる俺達はアンネの出番が来るまで話をすることにした
「もうすぐ始まるわね」
「だな…完全なアウェイだが大丈夫か?」
「ふふ…あの魔物相手に戦った時と比べれば楽なものよ」
「ふはは!随分肝が据わったな!」
「無理はしちゃだめだからね?」
「ありがとう、トワ。本当に大丈夫よ」
「辛くなったら私の尻尾もふもふしていいですからね?」
「その時はお願いね」
緊張する様子もなく笑うアンネを見て大丈夫と判断した俺達
『間もなく決闘を開始します。候補者2名は入場して下さい』
「出番だな…よし!行ってこい!」
「頑張って下さい!アンネ!」
「…行ってきます!」
激励を受け、アンネは歩いて行った
「…なんで俺達貴賓席に居るんだ?」
「なんか国王陛下が用意してくれたそうですよ?」
「なんだ?普通なら罪人の娘のアンネとその仲間の俺達を国王が気にするとは思えないんだが…」
そんな風に話して居るとアンネが出てきた
「…うるさいな」
「我が弟よ。コイツら消してもいいか?正直腹が立ってきたんだが」
「カレラ様気持ちはわかりますが抑えてください。トワも撃ちたいけど我慢してるんで…」
「…」チャキッ
『アゲーラさん落ち着いてください無言で刀を抜こうとしないでください』
周囲から響く罵声にイラつきつつもアンネにエールを送る
「…隣、失礼するよ」
「ん?誰だ…?」
「!国王陛下!?」
「「「『ほう?』」」」
「いや殺意を向けないでください!?」
まさかのアンネの現状の元凶(主人公達は選定を言い出したのは国王陛下だと思っている)が現れた事で殺意を向けだす俺達
「お偉い国王陛下が一体なんの用ですかね〜?」
「ははは…まぁ僕は才能のある若者が好きと触れ回ってるからね。君達を気に入っても不自然じゃない」
それでも周りの貴族や王の世話役は不機嫌そうだが…俺達全員に殺気を向けられて顔を青くしながら目を逸らす
「そうか…で、世間話をしに来たんじゃねぇんだろ?」
「…その通りだよ。僕はね、君たちにお礼を言いに来たんだ。アンネを支えてくれてありがとう」
…驚いた。まさか国王が頭を下げるとはな
「あの子は僕にとって娘のようなものだ。本当なら何に替えても守ってやりたかった」
王という立場である以上動きたくとも動けなかったのだろう
「俺は手を差し伸べただけだ。最後に勝利を掴み取ったのはアンネさ」
「…だが君達が居たからアンネは立ち上がれた。君達が支え続けてくれたからここまで成長できた。いずれ、何らかの形で報奨を出そう」
「「「「『要らん』」」」」
「えぇ…」
「アンタが彼女の何に罪悪感を感じているのかは詳しくはわからないが察することは出来る。だが俺達をあんたの罪悪感を拭うために使うな。罪を自覚してるなら背負え。彼女に許してもらえるその日までな」
「…君はどこまで?」
「何となく例の事件には裏があるんじゃね?くらいだ。詳しくはわからんがあんたの反応的になんかやむを得ない事情がありそうだな?」
「…その通りだ」
「…そうかい」
それ以上、聞こうとはしなかった。恐らくこの話の裏は王国の闇に深く関わる。王が話さない限りは聞かない事にした
「だが礼だけは受け取って欲しい。アンネを助けてくれた君達への感謝は僕の心からのものだ」
「…ま、気持ちだけ受け取っておく。それより試合を見守るぞ。これ以上余計なことを持ち込むのは無粋だ」
風魔法をを使いアンネの声を拾うとコロシアムで向かい合う2人を見つめるのだった
「決着をつけましょう。クラネル。どちらがクヴァル・ベステに相応しいか」
「…その前に謝罪をさせてくれ。地下迷宮のことは悪かった…僕もあそこまでするつもりは無かったんだ」
(…清姫)
(嘘はついていませんわ。どうやら本心からそう思ってるようです)
スマホ越しに清姫に問うと判定は白。フェイラーテにとってもあれは不本意だったらしい
(それなら何故あんな事をしたんだ?いやそれ以前に…)
そこで龍はある事に気付く
(そもそもあの剣はどこから来た?)
思い出されるのはエルナを束ね、人為的にスタンピードを起こしたあの剣だった
(…考えても仕方ないか)
そこで思考を打ち切り試合に集中する
「そんな事はどうでもいいわ。私は今、クヴァル・ベステの担い手として認められるためにここに居る。それだけよ」
『私は認めてるんですが…周りの人間が口煩いですからねぇ…』
「うんちょっと静かにね?」
『(˙˙ )アッハイ』
「…アンネロッタ。君には負い目がある。だが負ける訳にはいかない。例えクヴァル・ベステに拒絶されていようと今日は全力で勝ちに行く」
「ええ。ほんきで来て。私は、その本気を上回ってみせる。オークレールとして私が積み上げてきた鍛錬とプライド、リュウガ達が教えてくれた私だけの新しい剣術…そして」
アンネが覚悟とともにクヴァル・ベステを引き抜き、習得した独特の構えをとる
「クヴァル・ベステ。私の半身で」
『存分に、主よ』
アンネの呼び掛けにそうクヴァル・ベステが返すと、刀身とアンネの腕に血管の様な紅い光が幾重にも走る
「ほぇぇ…ああなるんですね」
「侵食と言うよりは繋げられたラインが可視化されるレベルで活性化してる感じか」
「能力は捕食だったか?我が弟も同じことが出来そうだが…」
「暴食之王は黒い霧で捕食してるからな…剣に纏わせれることが出来れば…それするくらいなら普通に黒炎纏わせた方が効率いいか」
そんなことを話しているが会場にいる他の観客は度肝を抜かれた様子だった
(多分アンネがクヴァル・ベステの力を引き出したことに驚いてるんだろうが…)
龍は何となく感じ取っていた。今のクヴァル・ベステは…
(まだ完全に力を解放していない)
今、アンネが発揮できているのはほんの僅かであり、真の力には程遠い
(まぁそこはおいおいだな)
思考を打ち切りアンネを見据える
「さぁ始めましょう。クラネル・フェイラーテ。誰がクヴァル・ベステに相応しいか、ハッキリさせるわ!今、ここで!」
「それは僕のセリフだ。アンネロッタ・オークレール。フェイラーテの悲願、ここで果たさせてもらう。そして僕は…いや、辞めよう。ここでは無粋だ」
空気がピリつく。アンネとフェイラーテの剣気が罵声を浴びせていた観客を黙らせた
「…これより、クラネル・フェイラーテ、アンネロッタ・オークレールによるクヴァル・ベステの担い手を賭けた決闘を執り行う!…始め!」
審判の宣言と共にフェイラーテが仕掛ける
「はっ!」
前なら反応できなかっただろうその攻撃をアンネはあっさりと回避し素早く距離を詰め剣を振るう
「ぐっ…」
その距離はフェイラーテにとっては近すぎるがアンネにとっては最適な距離
「はぁっ!」
「っ!」
受けと攻めが逆転しアンネの剣をフェイラーテが受ける。男と女の筋力差で簡単に押し返されるがアンネは力の流れを誘導する
「我らの教えが生きてるようだな」
「これでポカやらかしてたらどうするつもりだったんだ?」
「脳天かち割りに行ってた」
「辞めてくれ義姉ちゃんアンネが冗談抜きに死ぬ」
原初の悪魔の本気の一撃とか今はまだ人間のアンネが受けたらほぼ確実に死ぬだろう
「…アンネ、凄い綺麗…」
「だな」
フェイラーテにできたほんの僅かな隙を見逃さずアンネの剣がフェイラーテを捉える。速度優先で振るわれた軽い剣がフェイラーテの上腕を撫でる
「ぐぅっ!?」
その瞬間クヴァル・ベステの能力【暴食】が発動しフェイラーテの加護を喰らう事でランク2の中位とランク2の上位の差があるにもかかわらず肌を簡単に切り裂く
「おおっ!」
「っ!」
横薙ぎに剣を振ろうとするフェイラーテに対してアンネは更に距離を詰め内側に入り込む…アンネですらまともに振るえない位置
「はぁっ!」
「!?」
ほぼ密着状態のアンネが放つのは垂直になるほどに角度を付けた下からの変則突き。あれは龍やカレラでも不可能な体の柔らかいアンネだからできる芸当だった
「ふむ…少し柔軟を多めにしてみるか…?」
「あそこまで柔らかくなるまでどのくらい掛かるんだか…」
「あとカレラ様にあの剣は似合わないのでは?」
「おいアゲーラそれはどういう意味だ?」
アンネの剣は柔らかい。彼女の柔軟な関節の可動域を活かしてのありとあらゆる角度、間合いからの一撃。そして華麗な受け流し。時には全身に力を込めた全力の剛剣を振るう。積み重ねた基礎によって振るわれる剛剣があるからこそ変則的な動きが生きる
「…どうやらそろそろ終わりの様だな」
「だな」
傷だらけのフェイラーテの喉元にアンネが剣先を突きつける
「降参だ。僕の負けだよ…強く、綺麗になったね。アンネロッタ。ここまで力の差を見せつけられると諦めもつく」
そしてフェイラーテは剣を鞘にしまい、両手を上げた
「…しょ、勝者。アンネロッタ・オークレール」
観客達が何も言えない中、龍達が大きく拍手をする。王も大きく拍手をすると貴賓席の貴族が続き、アンネを讃える言葉が会場に満ちていた
「…おめでとう。アンネ」
「それではアンネロッタ様、リュウガ様、クーナ様、トワ様。全員が揃われたことですし、3日後の帯剣式について打ち合わせを行わせて頂きます。私が本件の責任者、ネリネラでございます。全てのことに関しての窓口になりますのでなんなりとお申し付け下さい」
決闘を終えた後、帯剣式がそのまま予定されているという事で帯剣式の管理を任された男に龍達は呼び出されていた(尚カレラ達は面倒くさい気配を感じ取ったのかいつの間にか居なくなってた)
「それはわかった。だがかなり盛大な帯剣式になるらしいが何故そうなった?世間一般だとアンネは大罪人の娘だぞ?」
街ではまるで祭りかのように商人が屋台の準備を始め、クヴァル・ベステにちなんだ商品の開発まで行われていた。更に宿には様々な国から客が訪れていた
「実を言いますと帯剣式自体はフェイラーテ公爵が金と権力に物を言わせて1ヶ月前から盛大な規模のものを準備されていたのです。国内はもとより国外の有力者にまで声をかけられていたので取りやめはできません。また国としてはこういった行事は経済の活性に繋がります。公爵がわざわざ私財を投じて準備してくださったのです。最後までやり遂げたいと思って当然ではありませんか?」
「なーるほど?だが正規の場でアンネを讃えていいのか?色々面倒事が起こりそうだが…」
「構いません。アンネロッタ様の父上は最低最悪の罪人と思われています。ですが父上は父上、アンネロッタ様はアンネロッタ様でございます。お父上の罪は処刑され、家を取り潰されたことで拭われました。これ以上のことをコリーネ王国として求めるつもりはありません。実力でクヴァル・ベステを掴み取ったなら讃えられるべきです。もとより我らが王は酔狂で有名です。また才能のある若者を見つけて浮かれている。ということで国民も納得することでしょう」
「…ふーん、ならいいけどな」
龍はこの話を聞いて事件の裏が相当闇が深いことを察した。今の話が本当なら貴族の何人かがアンネを保護してもおかしくないのにそれが現れない。それどころか徹底的に嫌悪する人間ばかりだったためである。だが同時に何らかの手回しがされているのもわかった。あの決闘の後アンネに対していい感情を持つように書かれた新聞が出回っていたからだ
「…それはそうと、アンネロッタ様。一つだけ忠告をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ。いいわ」
「今回、帯剣の儀式の際にはアンネロッタ様に注目が集まります。しかし、間違ってもその際に父上の無実を叫ぼうなどと思わないでください。今それをやったところでなんの意味もございません。それどころかその先に待つのは破滅です。本気で父上の無罪を証明したいなら、この場は堪え、いずれ然るべき場所で。それが貴方の戦いです」
「…ご忠告、感謝するわ」
(…考えてたな?)
(あ、これやろうとしてたやーつ)
龍とトワはアンネの考えていたことを察したが空気を読んで口に出さないでいた
「帯剣の儀式には協力するし騒ぎも起こさないと約束するわ。でも懸念があるの」
「「「「?」」」」
「…帯剣式に着ていく服が無いの」
「それならもうミスクレーンに発注して届いてるぞ」
「「「速っ!?」」」
龍が取り出したスーツケースにはミスクレーンが監修したドレスが入っていた(因みにネリネラは王国一の仕立て屋に最優先で作らせるつもりだった)
「…確かにこれなら帯剣式に着ていくのに十分ですね…相当腕のいい仕立て屋とお知り合いのようで」
「まぁな。暴走癖さえなければマジで世界一の仕立て屋だ」
ドルオタ全開状態のミスクレーンを思い出しつつそう言うとスーツケースをアンネに渡す
「ではアンネロッタ様。申し訳ございませんが帯剣の儀式の作法を叩き込みますので丸2日付き合ってもらいます。よろしいでしょうか?」
「アンネの好きなようにすればいいぞ」
「うん。ならリュウガ。帯剣式までお別れね」
「頑張れよ」
そういってエールを送りあっているとネリネラがクーナの方に視線を向ける
「ところでクーナ様。どこかでお会いしたことは無かったでしょうか?」
クーナの帽子がピクリと動く。クーナは王都に入ってから狐耳と尻尾を念入りに隠していた
「い、いえそんな…あ、会ったことなんてありませんよ?わ、私はただのしがない美少女でしゅっ」
「クーナちゃんさ…ハッキリ言うけど本物の美少女は自分で自分のことを美少女と言わないんだ」
「トワさんは黙っててください!」
「はいはい。んな事言い合ってねぇで速く行くぞ。何時までもここに居たら邪魔になる」
「ふふ…元気なのはいいことですよ。それでは時間の無いことですし、始めましょうアンネロッタ様。こちらに」
「それじゃあ2日後に」
「ええ。2日後に」
未だに言い合っているクーナとトワの首根っこを引っ掴んで龍は部屋から出ていくのだった
「そう言えばクーナ、最近体調が悪いみたいだが大丈夫か?」
「今のところは大丈夫です。妖精さんに魔力回路を整備してもらって魔法の調子は良いんですが…」
修行期間中にできることをやっておこうと言う話になり妖精に何か出来ないか聞いてみたところ魔力回路を整備することで魔力の消費を抑えることができると言うことでやって貰っていたのだ
「聞いた話だと意図的に魔力回路を破壊されていたらしいからな…思い当たることは無いのか?」
「うーん…強いて言うなら昔、兄様が言っていたことが気になりますね…」
「兄が言ってたこと?」
「なんでも昔、私が九本の尻尾を生やして暴れ回って大変だったとか…全く!可愛い妹になんてことを言うんですか!」
「…九本の尻尾…か」
(九尾の狐…?有り得なくは無いな…妖精に血液検査もやるよう言っておくか)
そんな事を考えながら歩いていると前から執事服を着た女性が歩いてきた
「あなた方がリュウガ様とトワ様ですね。陛下の密命で貴方達を迎えに来ました。この金印が陛下の代行である証です」
「…それは良いんだが…」
「…なんでクーナも居るのに密命って言っちゃうの?」
「ひゃひぃ!?な、なっ…ああやっちゃった…またお嬢様に怒られる…これ以上減給されるとエルシエワインが買えなくなるよぉ…」
「何やってるんですかじい…私は何も聞かなかったで良いのでさっさと2人を連れて行って下さい」
「お連れさんがクーナちゃんで良かった…!」
「呼ばれてるなら速く案内してくれ。て言うかこのままだと他の人間に聞かれるぞ」
「ああそうでした…それではついてきてください」
そう言って元来た道の方を向く…が直ぐに何かを思い出したようにクーナの方を見る
「そう言えばクーナちゃん。エルシエに帯剣の儀式の招待状出したんだけど、お父さん来るみたいだよ。やったね!他にもユキナちゃんとか」
「えっ!?父様とユキ姉様が!?」
真っ青になるクーナ。誰なのか知らない龍達はクーナの様子に首を傾げる
「ユキ姉様って誰だ?」
「私の姪です…でも私よりも年上なので姉様と呼んでいます。リュウガくん。トワさん。帰ってきて私が居なくても探さないでくださいね。しれっとした顔で封印都市に戻ってますから」
「妖精。殴ってでも止めろ。最悪バールで殴ってもいい」
「はーい」
「リュウガくん!?」
この後ガチで逃げようとしたクーナが頭にタンコブを作った状態で部屋で倒れていたそう
「…で、何故俺達は下水道を歩いてるんだ?」
「臭いがキツいんですけど…」
「はい大丈夫、大丈夫!わたーしをしんじて〜」
「「歌ってないではよ進め」」
「アッハイ」
現在3人は王都の下水道を歩いていた。トワの言う通りかなり臭いがキツい
「ここはあれか?所謂隠し通路か?」
「そうですね。ここは王族に伝わる秘密の通路ですよ。城が落ちそうになったらここを通って逃げます。因みに最高機密なのでここを知ってるだけで首吊りに…」
「「だったら目隠しくらいしろやぁぁぁぁ!!!」」
「ギャァァァァァァァァ!?」
数分ほど打撃音が鳴り響き、少しするとズタボロ状態の案内人と半ギレ状態の龍達が再び歩き出す
「ま、前が見えねぇ…」
「ボケてる暇があったらさっさと案内しろ」
「記憶消去魔法があって良かった…」
案内人の尻を物理的にも蹴り飛ばしつつ進む龍と記憶消去魔法の有り難さを感じるトワ…因みに本来なら案内人が認識阻害魔法をかけるはずだったが2人の精神防御を突破することができず2人はしっかり道を覚えてしまっていた
「と、到着しました…開けますね…」
一際低くなっている天井に付いている鍵穴に鍵を刺し天井を開ける
「…なるほどね。常に逃げる準備は出来てると」
出た先は倉庫になっていた。置いてあったのは実用性一辺倒な服とカバン。多数の保存食に換金性の高い宝石などが置かれていた
「こちらです」
扉を開けると客室に出た。そこには龍達を呼び出した張本人である国王が居た
「陛下。リュウガ様とトワ様をお連れしました。私は扉の外で見張りをさせてもらいます」
「…それはいいのだが大丈夫か?随分ボロボロだが…」
「いや…まぁ大丈夫ですので…」
「そ、そうか…とりあえずお疲れ様、フレデリカ。話が終わったら呼ぶよ」
「かしこまりました」
案内人…フレデリカが退出すると王は席を進める
「まずは座って。良いお茶を用意したんだ」
王が淹れた紅茶を飲む
「…ん、確かに紅茶は悪くないな」
「そうだね。紅茶は悪くない」
「…これは手厳しいね」
王は苦笑しながら紅茶を啜る。それぞれ茶請けのメープルクッキーを摘み、一呼吸置いてから王が口を開く
「あの場ではキチンと言えなかったから改めて言わせてもらう。アンネを守り、導いてくれてありがとう。君達のお陰でアンネはクヴァル・ベステを手放さずに済んだ…君達が居なければ友との約束を破ることになっていたからもしれない」
「…礼はあの時既に受け取っている」
「そうだったね…でもキチンと頭を下げたかったんだよ。人目がある場所で頭は下げられなかった」
「…ま、立場上仕方ないことではあるな」
「…そして、今回呼んだのは他でもない」
一呼吸置いて、王は意を決して口を開く
「…君達には聞く権利がある。アンネの父親…リカード・オークレールの罪、その真相を」
「…聞かせてもらおうか」
龍がそう返すとトワも無言で頷く。気になっていた事件。BBにも調べてもらったが彼女が言うのを躊躇った真相…アンネのためにも、聞かない理由がなかった
「…アンネロッタの父親、リカード・オークレールは表向き部下を引連れ国家機密を手土産に隣国のエルシュタット共和国に亡命しようとしたところ、我が息子、王子アロイスが率いる軍勢が食い止めたことになっている…そして、その戦いでアロイスは戦死した…世間一般では息子の命をかけた戦いによって国家機密は守られ、我が国は救われたことになっている」
「…」
「…」
「…だが真実は違う」
「…実際にはアロイスが国を裏切り、国家機密を持ち出して亡命しようとした。リカード・オークレールはそれを止めた」
「だが生かして捕らえるつもりが抵抗が激しく、リカード・オークレールはアロイスを殺してしまった」
「馬鹿な息子だった…たかが女のために国を売ろうとした…今思えば優秀すぎる妹と比べられ、劣等感が溜まり、この国から逃げ出したかったのかもしれない」
「…あの事件は最悪のものだった…我が息子の暴走、それに加えこの国の法律ではいかなる理由があろうと王家を傷付けた者は死をもって償わなねばならん…息子を止め、国を救ってくれた軍神…リカード・オークレールを殺さねばならなかった」
「…そしてこの国は王国なのだ。王子が国を売り渡したと知られれば、王の権威が失墜する。軍神を失い、王の権威が失墜すれば…この国は立ち行かぬ」
王は苦渋に満ちた表情で強く両手を握りしめる
「…あの時、誰もがどうすればいいかと頭を抱えた…他ならぬ私もだ…」
「…そんな中リカードが言ったのだ」
『罪は自分が被る。王子を英雄として祭りあげよう。自分が国を売り渡した事にして、王子が命をかけてこの国を守ったことにすれば王家の威信は守られる…オークレールの家名は地に落ちるが…もとより王子を殺した自分は死ぬ運命は変わらない』
「…身勝手な話だ…あんたも、アンネの親父さんも…」
「貴方達はそれでいいかもしれないけどさぁ…残されたアンネとアンネのお母さんはどうするつもりだったん?」
「…アンネの母親は耐えきれず自殺、アンネも俺達が見つけなかったら餓死か下手すりゃ死ぬより辛いことになってた…」
「トワはさ、王の責任とかよく分からないよ?一般市民だからさ?でもさ…アンタらのやった事は王子の名誉のためにアンネを殺そうとしたってことじゃん」
鋭い目で王を睨みつける龍と怒りを隠さずに魔力を噴出させるトワ…普通なら死んでもおかしくない殺気を向けられている中、王は口を開く
「…君達の言う通りだ…私達のやった事は余りにもアンネを…いや、残された者達に対して無責任過ぎたものだ…本来なら王という立場すら投げ捨ててでも彼女達を守るべきだった…いかなる罵倒も、謗りも受けよう」
そう言って頭を下げる王
「アホか。本来テメェが頭を下げるべきは俺達じゃねぇ。テメェらの罪は許させるものじゃねぇ」
「アンタらにできるのはその罪を一生背負って生きること、そしてアンネと死んだ後にアンネのお母さんに土下座すること。アンタらは罪を投げ捨てることなんて許されない。一生その十字架を背負って余生を過ごすことだね」
「…手厳しいね」
「厳しいんじゃねぇ。それが当然のことだからだ」
「…あと、この事は」
「わーってら…こんな事アンネに言えるかよ」
アンネにとって、真相を暴き、父親の名誉を取り戻すことは希望だ。だが…
(…あえて罪人として罰するしか無かった。なんてアンネにとって絶望以外の何物でもないじゃねぇか…)
これを知るには、まだ速すぎるだろう
「…フレデリカ、2人を送ってやってくれ」
「かしこまりました。陛下」
フレデリカに引き連れられて、龍とトワは宿に帰るのだった…
To Be Continued…
オマケ
「…」ギリギリギリ
「あ、あの…痛いです…一応死んでる身とは言え頭握りつぶされるレベルの力で握られるのは…」
「…」ギリギリギリギリギリギリ
「アッハイ黙りますから許して…」
豪奢でありながら成金の様な趣味を悪さを感じさせない家具で彩られた部屋…その中心に置かれている玉座に座るこの空間の支配者の■■■■■■■は青白い人魂を凄まじくいい笑顔で握り締めていた…なんなら額に青筋が浮かんでいた
「…完全に食われる前に助けられてよかったと思ってましたが…貴方相当やってる事あれですからね?」
「猛省しております…」
「いくら反省してもね?貴方の奥さんが自殺してこの世に居ないのは変わらないし、貴方の判断のせいで主が酷い目にあった事実は消えませんからね?」
「…ハイ」
「なんならもっと酷いことになっててもおかしくなかったんですからね?身ぐるみ剥がされて餓死なら比較的マシな方で下手したら奴隷ですよ?しかもあの容姿ならそういう意味でも高値が付くと狙われてもおかしくないんですからね?」
「…ゴモットモデス…ハイ…」
「とりあえず主がここに来れる様になるまで火炙りです。主が来たらマジで謝るように」
「えちょ火炙りはっ!?」
「はい着火」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」
■■■■■■■が指を鳴らすと黒い炎が人魂にまとわりつき燃やす
「…とりあえず精神安定効果のあるハーブティーでも調べておきましょうか…」
そう言って手を翳すと目の前に本棚が現れる…その中から1冊手に取ると今度は茶葉とハーブの入った棚が呼び出される
「ふむ…これとこれ…いや、味わいと色を考えるとこれもいいかも…?香も用意しましょうか…」
人魂の悲鳴をBGMに、■■■■■■■は着々と準備を進めるのだった
次回の深海の龍帝は何を成す?は…
「あれがクーナの親父さんか…」
「へぇ〜強そう」
クーナ父、来訪!
「少々付き合ってもらえるかい?」
「殴り合いか?上等」
クーナ父VS龍!?
次回!「エルシエの王との邂逅」
キャラ解説…要る?
-
書け!
-
別に要らんじゃろ