深海の龍帝は何を成す?   作:リア・ユグドラシル

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クヴァル・ベステの継承

「…つーかんじで早速襲われたんだが」

 

「…予想以上に動きが速いね…アイツらも相当切羽詰まってるのか…まぁ君にとっては関係ないか」

 

「売られた喧嘩を高値で買ってやっただけだがな。お陰でクーナを抑える方法も手に入ったし」

 

「…君達の所の技術者と1度会ってみたいものだよ」

 

そんな風に酒場でだべっているのは龍とシリルだった

 

「しっかしこんなとこで会うとはな」

 

「そうだね…と言うか君は着替えなくていいのかい?」

 

私服の龍にそう問いかける正装のシリル…だが龍は黒い霧で体を覆うと…

 

「着替えくらい数秒もかからん」

 

「…便利だね…それ」

 

早着替えの魔法を研究してみようかと呟くシリルを尻目に再び私服に着替えると目の前の料理を口に運ぶ

 

「そう言うお前もこんなとこに居ていいのかよ?お前国王だろ」

 

「やるべき事は既に終わらせてあるから問題ないさ。会場には最悪転移で向かえばいい」

 

「やっぱり便利だよな、魔術」

 

そんな事を言い合っているとスマホのタイマーが鳴る

 

「ん、そろそろか」

 

「そうだね…それじゃあ次は会場で」

 

「おう。あ、それと長期休暇入ったらエルシエに強化合宿行くから」

 

「わかった。こっちも準備をしておこう」

 

食事を終え、それぞれ会場の控え室に向かう

 

 

 

 

着替えを終え、アンネ達が来るのを待つ

 

「…ん、来たか…」

 

「えっへへ…どうですか?リュウガくん」

 

「ふふん。どーよ?」

 

入ってきたのは赤いドレスを着たクーナと黒いドレスを着たトワだった

 

「お、似合ってるぞ2人とも…クーナは体調は大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ。今朝、リュウガくんが吸い出してくれたお陰で今のところ異常はありません」

 

「そりゃあ良かった…ん?アンネはどうした?」

 

「え?…あ〜…ちょっと待って下さいね?」

 

クーナが扉の外に出ると何やら言い合う声がした…少しして

 

「ほらアンネ、恥ずかしがらずに。リュウガくんが待ってますよ?」

 

「でも…リュウガにこんな格好見せるの初めてだから…照れくさくて…」

 

「アンネってリュウガくんが絡むとめんどくさくなりますね…大丈夫です。そんなに綺麗なんですから恥ずかしがる必要なんてないですよ!ほらはやくはやく!」

 

「ちょ、ちょっと待ってクーナ!?」

 

そして、扉が開き、ドレス姿のアンネをクーナが引っ張ってきた

 

「…に、似合ってるかな?」

 

「ん?おう、似合ってるぞ。ただ綺麗なだけじゃなく、カッコイイ感じだな。アンネの良さがよく出てる」

 

アンネが纏うのは白を基調とした、どこか騎士に相応しい静謐さがあるドレスだった

 

「そ、そっか…嬉しい…///」

 

顔を赤らめながらも無防備な笑みを浮かべるアンネ…それに少しドキリとする

 

「そ、そう言えばリュウガも凄くカッコイイわね」

 

「ん?そうか?」

 

リュウガが着ているのはミスクレーンが制作した代物。変に着飾っている訳ではなく、シンプルだが仕事の一つ一つが超高水準であり、究極の王道と呼べる逸品だった

 

「はい、なんというか凄く品がいいです。見てるだけで、背筋がぴんとするような感じがします」

 

「流石はミスクレーン。仕事が早く、そして仕上がりも最高な物にしてくれた」

 

「…ルーシェ姉様と会ったら仲良くなれそうですね」

 

「アイツは可愛いものが好きだからな。クーナと会ったらお前の姉と一緒に着せ替え人形にされそうだな」

 

「…なんでしょう。ミスクレーンさんとは会ったことがないはずなのにその光景がありありと想像できてしまうのは…」

 

「…俺も想像できたわ」

 

龍も何となく想像できてしまい苦笑する

 

「アンネ様、そろそろ会場の方に」

 

そうしていると扉の外からスタッフがアンネを呼びに来た

 

「行ってくるわ。リュウガ、トワ、クーナ。また後で」

 

「おう」

 

「晴れ舞台、頑張ってきなよ」

 

「うん、また後で」

 

アンネが去っていくのを確認した3人はコソコソと小声で話を始める

 

「トワ、準備は?」

 

「もち、昨日の内に調整は済ませてる」

 

「リュウガくんは?」

 

「問題ねぇよ。アンネの晴れ舞台に俺達が恥晒す訳にはいけないからな」

 

「ですね。それじゃあ後は計画通りに…」

 

「「OK」」

 

 

 

 

 

帯剣式の会場は決闘で使われたコロシアム。担い手が決まったことは大々的にアピールする必要があるため収容人数が多いコロシアムが選ばれた。リングも突貫で撤去され、式典に相応しいように飾り付けされていた

 

「父様、お久しぶりです」

 

「クーナ、久しぶりだね」

 

クーナは龍の後ろに隠れながらシリルに挨拶する

 

「…あの…父様、私はエルシエには…」

 

「帰ってこないんだろう?わかっている。クーナの好きにすればいい」

 

「えっ…」

 

「既に彼は信頼して預けられる人物だとわかっているし、彼自身が証明してくれている…後は彼とクーナの意思だけ…彼の意思は既に聞いているからクーナの意志を聞くだけだったからね」

 

「父様…」

 

瞳を潤ませるクーナ

 

「まぁ彼が長期休暇の時にエルシエに修行に来るって言ってたから直ぐに来ることになるんだけど」

 

「台無しですよ父様!?」

 

台無し発言をかましたシリルにツッコミを入れるクーナ…そんな2人を他所に龍とトワは席に着く

 

「準備はできてるかい?リュウガくん」

 

「既に調整は済ませてる。安心しろ」

 

「それは良かった…ところで彼女は何をしているんだい?」

 

シリルの視線の先ではトワが魔法陣を展開しては消していた…がシリルの視界には展開された魔法陣が不可視の状態で会場のあちこちに飛ばしてる様子が見えていた

 

「ちょっとした仕込みだ。気にするな」

 

「そうかい?ならいいが…」

 

「…そう言えば俺が伴奏を担当することはどうやって認めさせたんだ?」

 

「それは歌が始まる時のお楽しみ」

 

そう言うのはユキナ。それを聞いた龍は何となく嫌な予感がしていた

 

「っと…始まるな」

 

コロシアムの端にある選手入場口からアンネが登場する。その美しい姿に観客席の人々は息を呑む…だが次第に民衆はアンネが罪人の娘であることを思い出す

 

「裏切り者!」

 

「こんな所に出てくるなんて図々しい!」

 

「失せろ!」

 

彼女に対する罵詈雑言が放たれるがアンネは揺るがない。だがそれを聞いている龍達の心中は穏やかではなかった

 

「…纏めて潰すか?」

 

「いや〜陰陽師系サーヴァントから呪術教えて貰っててよかったよかった…呪いならバレようが無いもんねぇ?」

 

「…」ギリィッ!!

 

「うん、3人とも落ち着こうか?」

 

流石にマズいと止めようとするシリルだがこの3人(特に龍)がガチで暴れ出せば止めようが無いため内心冷や汗ダラダラだった

 

「…すいません、リュウガくん」

 

「安心しろ、俺も同じだ」

 

「まぁ気持ちは分かる…と言うかトワも同じこと考えてたし」

 

クーナが立ち上がると共にリュウガ達も準備を始める

 

「…お祖父様、止めなくていいの?下手に被害が出たら…」

 

「いや…これは…」

 

『…夜が明けて、隣にいる君の顔を覗き込む、朝日が君を照らして』

 

クーナが歌い始め、龍はそれに合わせてオファルを奏でる。普通なら数千人の喧騒の中、たった1人の歌なんて意味が無いがここでトワが仕込んだ魔法が効果を発揮し、会場全体に音楽を届け、更に花道を歩くアンネを彩る様に魔法による演出が行われる

 

(…こりゃ後でスタッフには謝っとかないとな…)

 

龍の視界の端ではスタッフが大慌てで走り回ってるのが見えていた

 

「あれ?なんだこの歌…」

 

「どこから聞こえてくるの?」

 

「凄く優しい…不思議な歌」

 

先程まで騒いでいた民衆達も押し黙る。民衆も聞きたいのだ。クーナの歌を。だから余計な音はここにはいらない。この歌を汚すなんてもったいない。そう思わせるほどの圧倒的な歌。

 

気が付けば会場に響くのはクーナの歌と龍の奏でるオファルの演奏のみ

 

アンネの方を見ると一瞬だけこっちを見て微笑んだ。彼女にもクーナの歌は届いている

 

アンネが王の座る舞台の上にたどり着く。それと同時にクーナの歌が終わった

 

『い、今のは友好国エルシエから贈られた祝福の歌です』

 

帯剣式の責任者、ネリネラのアナウンスが流れる…が彼は額に流れる汗を拭き取っていたことから相当な騒ぎになったのだろうとわかった

 

((フォローありがとう))

 

そう心の中で呟く龍とトワ。この後何か持って行ってあげようと思うのだった

 

『歌い手はエルシエの歌姫。長であるシリル・エルシエ様の末娘、クーナ・エルシエ姫。演習はクーナ・エルシエ姫の御友人、トワ・トコヤミ様、そして伴奏は…』

 

「「「?」」」

 

突然押し黙るのを聞いて疑問に思う3人

 

『クーナ・エルシエ姫の婚約者、リュウガ・フカミ様となります』

 

「「「バッフゥ!?」」」

 

とんでもない発言に思わず吹き出す3人。ユキナ達を見ると悪戯が成功した子どものような笑顔を浮かべる2人が見えた…が龍達は直ぐに2人から目を逸らした

 

(((…気付いて無いんだろうなぁ…)))

 

龍達は気づいていた。2人の死角に悪魔娘組と溶岩水泳部の影が見え隠れしている事に…

 

『クーナ・エルシエ姫、トワ・トコヤミ様、リュウガ・フカミ様。素晴らしい歌をありがとうございました。では、引き続き、帯剣の儀を執り行います』

 

突然のアクシデントを悟らせないように次のイベントに繋げるネリネラに感謝しつつ3人はお辞儀をして席に着く

 

「アンネロッタ・オークレール。そなたにかつて、世界を救った英雄、大魔術師シュジナより賜った剣を託す。この剣はコリーネ王国全ての剣士の誉れ。この剣の担い手になり、その重みを背負う覚悟はあるか?」

 

王はアンネに問いかける

 

「はい。私、アンネロッタ・オークレールはクヴァル・ベステを担い、全ての剣士の頂点に立つ覚悟があります」

 

「ならば、この剣を掴み取れ」

 

アンネは恭しくクヴァル・ベステを受け取るとその場で立ち上がり、鞘から剣を抜く

 

「クヴァル・ベステ、応えなさい」

 

アンネが呼びかけるとクヴァル・ベステから血管の様な真紅のラインがクヴァル・ベステを握るアンネの腕に現れる

 

「ふぅ…!」

 

そのままアンネが演舞を披露する。それはまるで神楽の様だった

 

「コリーネ王、コルロフ・コリーネの名において、ここに新たなクヴァル・ベステの担い手が誕生した事を宣言する!」

 

演舞が終わり王がそう宣言すると拍手が響き渡る

 

「…良かったな。アンネ」

 

剣を掲げ、涙を堪えるアンネを見て龍はそう呟くと大きく拍手を贈った

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

帯剣式終了後

 

「…ところでシリル。何故婚約者なんて手段を使ったんだ?やりようは他にもあったろ?」

 

「理由は2つ。1つ目はあの子が凄くモテるから。昔からこういう場で歌を披露する度に縁談の誘いが百件以上来る。今回だって婚約発表までしたのに何十件も縁談の打診が来てる。虫除けとして使った。君もあまりうかうかしてられないよ?いくら断っても縁談の差出人はクーナに心酔して諦めないし、エルシエには親衛隊だっている」

 

「それで俺を宛てがうって…俺がクーナを幸せにできるとは思えないんだが…」

 

「…これは重症だね…」

 

「で?2つ目はなんだ?」

 

「…まぁ親心とだけ言っておこう…あと、頼みがある」

 

「ん?なんだ?」

 

「…事が終わるまで、クーナから目を離さないでくれ。俺も具体的なアドバイスをしたいが…それはできない契約なんだ」

 

「…OK。まぁ任せろ。敵は全て叩き潰すだけだ」

 

「…それを聞いて安心したよ」

 

To Be Continued…




次回の深海の龍帝は何を成す?は…

「…ここが」

「エルシエか〜」

エルシエに来訪!

「仇敵のリュウガが来たぞぉぉぉぉぉぉ!」

「いやいきなりなんだよ?」

なんかとんでもない事態に!?

次回!「エルシエ来訪」

キャラ解説…要る?

  • 書け!
  • 別に要らんじゃろ
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