深海の龍帝は何を成す?   作:リア・ユグドラシル

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少女は魔剣の担い手となるか?

「試練…?」

 

無数の鎧の前で微笑むベルゼビュートに疑問符を浮かべるアンネ

 

「試練の内容は至って単純…今までクヴァル・ベステに食われた魂…歴代担い手達を全て打倒し、力を示してもらいます」

 

「ま、待って!?今までの担い手ってまさか…」

 

アンネの言葉にベルゼビュートが頷くと1人の鎧がその兜を脱ぐ

 

「…あ、あぁ…」

 

「…大きくなったな。アンネ」

 

そこに居たのは先代担い手…アンネの父にしてオークレール家先代当主のリカード・オークレールに他ならなかった

 

「お父様…!」

 

涙を浮かべてリカードに抱きつくアンネとアンネを抱きしめるリカード…しばらく2人は抱き合っていた

 

「…本来私はクヴァル・ベステに喰われて消滅するはずだった。だがその前に彼女…ベルゼビュートによって魔王クヴァル・ベステの意識が滅ぼさた事により私は消滅を免れ、今もここに居る」

 

「他の担い手達は既に喰われて残った食べかすみたいなものでしたが…比較的新しい彼は喰われる前で助かったわけです」

 

それはそうと、と言ってリカードの頭を掴み力を込めるベルゼビュート

 

「このおバカさんがやらかした事が事なので暫く火あぶりの刑に処してたんですがね…?」

 

「アッハッハ…勘弁してください」

 

冷や汗を流しながら何とか手を外そうとするリカードだが自力が違いすぎるためビクともしなかった

 

「ま、まぁまぁ…試練やらないと行けないんでしょう?早くやりましょう?」

 

「…そうですね」

 

リカードを鎧達の後方にぶん投げると前列にいた鎧の一体が前に出る

 

「先ずは彼からです。あ、ここは精神世界なのでイメージをすれば剣を出すことが出来ます」

 

「分かったわ」

 

そう言ってアンネが念じると一本の剣が具現化する…がそれはクヴァル・ベステではなくただの鉄剣だった

 

「…試練を乗り越えた時、この世界でもクヴァル・ベステを出すことができるようになります。頑張ってください」

 

「えぇ。リュウガ」

 

「おう、見ててやるよ」

 

そう言って龍は後方に下がり、壁に寄りかかり腕を組む

 

「ふぅ…よろしくお願いします」

 

「…」

 

アンネが剣を構えると鎧も剣を構え…

 

「はぁっ!」

 

「───!」

 

2人が同時に飛び出し、剣と剣がぶつかりあった

 

 

 

 

 

 

「ベルゼビュート」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

2人がぶつかる様子を眺めながら龍は口を開いた

 

「現状発現しているマナスはお前だけだという話だが他の大罪はどの程度成長しているんだ?」

 

「…申し訳ございません。私も他の大罪が成長していることは分かっているのですが…どの程度かまでは…」

 

「そうか。いや、責めてるわけじゃない。どの程度か分かればいい程度だったし、気にするな」

 

「…いえ…ただ…」

 

「ただ?」

 

ベルゼビュートは少し思案したのち口を開く

 

「先程私は大罪系スキルは美徳系スキルを模倣することで産み出されたと言いましたよね?」

 

「言ったな」

 

「それ故にそれぞれ美徳系に対になるようになっているんですが…おかしなことが起こっているのです」

 

「おかしなこと?」

 

「はい。そもそもロードの住む世界ではロードと関係性が深い存在でもない限り、スキルの発現は起こりえないんですが…何故か美徳系スキルの気配を感じるんです。それもかなり近くで…」

 

「あん?それなら他の誰が獲得したとかじゃ…」

 

「私も最初はそう思ったのですが…確認した限り誰にも発現していないのです」

 

「…なに?」

 

「美徳系の気配は感じ取れるのに、実際の保持者が見付かっていない…気配は近くにあるのは分かるのに…」

 

「…ふむ」

 

龍は大罪系の強大な力を理解しているため、美徳系もそれと同等と考えると無視できないと感じた

 

「…近くにあるのは確定、だが身内の連中が持っている訳では無い…か」

 

「…それにもう1つ気になることが…」

 

「…まだなんかあんのか…?」

 

「はい」

 

そう言ってベルゼビュートはメモ帳を取り出すと中身を確認しつつ告げる

 

「これに気付いたのは最近なのですが…ロード、最近、新たな力を獲得しましたよね?」

 

「あぁ。夜叉九尾のことか?」

 

「はい。その夜叉九尾を獲得した時なのですが…それと同時に美徳系スキルの気配が強まっているのです」

 

「なんだと?」

 

「このことから恐らく、美徳系の保有者は何らかの形でロードと繋がり…魂の系譜に連なっていると考えています」

 

「そこから調べることは?」

 

「試してみましたが…防衛機構があるようで弾き出されてしまい、調査は出来ませんでした…」

 

「…そうか…いやなんか気味が悪いな…知らん間に自分の魂に知らん何かが繋がってるとか…」

 

「…私の方でもどうにか防衛機構を突破出来ないか試していますので、その結果を待っていただくしか…」

 

「そうか…いやすまんが出来るだけ早く頼む、正直気持ち悪くてしょうがねぇ…」

 

顔を引き攣らせる龍に苦笑しつつベルゼビュートは頷く

 

「承知しました…っと試練の方は話してる間にかなり進んでいますね」

 

ベルゼビュートと龍の視線の先ではアンナが次々と鎧達を斬り伏せていた

 

「この調子ならいけるか…」

 

「…さて、どうでしょうかね?」

 

意味深に呟くベルゼビュートに目を向けるが直ぐにアンネに視線を戻した

 

 

 

 

「───!!」

 

「ふっ!はぁっ!!」

 

繰り出された唐竹割りを回避し喉の隙間に剣を突き入れ仕留めるとバックステップで距離をとる

 

「次!」

 

アンネが剣を構えると前に出てきたのは…

 

「では、次は私だな」

 

「っ!」

 

リカードが前に出て、剣を構える

 

「アンネ、よくここまで強くなってくれた…そして、苦労をかけてしまったな」

 

「…そうね。とても苦労したし、辛い思いもしたわ…でも、それが無かったら…」

 

アンネを龍を見て、そして外で待っているクーナとトワの顔を思い浮かべる

 

「みんなに会えなかった。だから私は後悔していないし、やり直したいとも思わない」

 

「…そうか。良い友達を得られたのだな」

 

「えぇ。自慢の友達で、仲間よ…ねぇ、お父様」

 

「なんだい?」

 

「…私が試練を乗り越えたら、あの事件、真実を教えて欲しいの」

 

「…それは…」

 

リカードが言い淀む…がアンネが確固たる意思でリカードを見つめる

 

「例えどれだけ辛い事実でも構わない。それを知らないと、私は前に進めないから」

 

「…わかった…本当に強くなった…リーネも居たなら…いや、私にそんなことを言う権利など無いな…」

 

「お父様…」

 

少ししんみりした空気が流れる…が直ぐに空気を切り替える

 

「…今は試練を進めよう」

 

「そうね…それじゃあ改めて…」

 

「オークレール元公爵家、アンネロッタ・オークレール」

 

「オークレール公爵家先代当主、リカード・オークレール」

 

「「推して参る!」」

 

二人の剣が激突し、火花を散らした

 

 

 

 

「…あれを話すか」

 

「…ロード、わかっていると思いますが…」

 

「…あぁ。戻ったあとは任せろ」

 

「はい…それとロード。これを」

 

そう言ってベルゼビュートが手渡したのはベルゼビュートの髪と同じ毒々しいピンクの鍵だった

 

「コイツは?」

 

「ロードの理性のロックを解くための鍵です」

 

「おい待てマジでどういうこと?」

 

サラッとヤバそうなものを渡されてしまい困る龍…

 

「ロード、ロードはまだ強くなれる可能性を秘めています…ですがそれにはロードの強靭すぎる理性が邪魔になってしまうのです…これはそれを解除するためのもの…ですがこれだけでは完全にロックを外すことはできません」

 

「…他の鍵の入手方法は?」

 

「今回の私のように、自我を得たマナスに接触し、彼女達から鍵を受け取るしかありません…」

 

「…確認だがコレ使っても大丈夫だよな?欲望に正直になりすぎて取り返しがつかないことになったりしないよな?」

 

「流石にそこまでは…理性が完全に飛ぶ訳ではないと断言します」

 

「飛ばれたら困るんだよ!?」

 

使って大丈夫が本当に不安になる龍だが使う覚悟自体は決めておくのだった

 

 

 

 

 

「シッ!」

 

「ふんっ!」

 

途切れることなく打ち合う二人。変幻自在のアンネの剣が、リカードの剛剣がぶつかり合い、火花を散らす

 

「せいやっ!」

 

「っ!はぁっ!」

 

リカードの剛剣を躱し、急所を狙って剣を振るう。それは手甲で弾かれるがそのまま距離を詰めて胸部の鎧に手を押し当てる

 

「せいやぁぁ!!」

 

「ごふっ!?がぼっぼぼっ!?」

 

「うぐっ!?」

 

浸透勁を放ち内蔵(霊体に内蔵があるかは知らない)にダメージを与える…が直ぐに蹴りが飛んできて吹き飛ばされる

 

「ったた…あの状態でカウンターしてくるなんて…」

 

「ゲホッゲホッ…そう簡単に負ける訳にはいかないからね…」

 

脇腹を抑えながら立ち上がるアンネと咳き込みながら立ち上がるリカード

 

「…思えば、こんな風にお父様と稽古したのも何年ぶりかしら…」

 

「…そうだな」

 

「…」

 

「…」

 

静かに息を整え、向き合う2人…既にお互いが限界だと悟っていた

 

「…次で最後にしましょう」

 

「あぁ…来なさい」

 

リカードが剣を中段に構え、アンネが剣を正眼に構える

 

「…」

 

「…」

 

睨み合う2人…次の瞬間2人の頬から汗が流れ落ち…

 

「「っ!」」

 

それを合図に2人は駆け出す

 

オークレール流 地割り

 

 

オークレール我流剣 斬月

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

大地を割る一撃が、振り上げられた剣が三日月を描き激突し、周囲に衝撃波を撒き散らす

 

「っ…」(やっぱりパワー勝負は分が悪い…なら!)

 

次の瞬間アンネは剣を斜めに傾けリカードの剣を後ろに流す…そのまま上に振り上げた剣を振り返りざまに無防備となったリカードに振り下ろす

 

重ね斬月

 

元々は一撃目で傷付けた部分をなぞることでより深い傷を付ける技…それを連撃として使用し、見事リカードに一撃を食らわせる

 

「…強くなったな。アンネ」

 

「…私だけじゃ、ここまで来れなかったわ」

 

アンネは龍を、外で待つ2人の親友を思う

 

「…そうか。なら、安心だな…」

 

リカードの鎧と剣が消える…それはすなわち、試練の終了を意味した

 

「お見事です」

 

ベルゼビュートの言葉と共にアンネの持つ剣が光り輝き…光が収まると剣はクヴァル・ベステに変化していた

 

「これを持って試練は終了とし、クヴァル・ベステの真の担い手として認めさせていただきます。お疲れ様でした」

 

「見ていたが今までの訓練の成果を出し切った見事な試合だった。よく頑張ったな」

 

「…うん♪」

 

そう言って微笑むと龍はアンネの頭をくしゃりと撫でる

 

「…っとそっちはそっちで話があるんだったな…2人で話すといい…一応言っておくが俺とトワは帯剣式の時点で聞いている」

 

「…わかったわ」

 

帯剣式で知っていたのにエルシエに来るまでに話さなかった…その意味を理解したアンネは覚悟を決めた表情でリカードに向き直る

 

「終わったら呼んでくれ」

 

「私も外に出ておきます」

 

そう言って龍とベルゼビュートは扉を開け外に出ていった

 

「…それじゃあ教えて。お父様…あの事件の真相を」

 

「…あぁ」

 

to be continued…




次回 「新たな目標。そして…」

キャラ解説…要る?

  • 書け!
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