The Warrior World 第一節「忘れられた剣」   作:犬丸ミケ

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前回のあらすじ
俺はファイン・エクスロード。
何がなんやらかよく把握できていないのだが、分かることは一つ。記憶がない。
そのためにメリナおばあさんことメリナ・エクスロード家にお世話になっていた時、森にて不思議な剣を拾う。すると記憶に関与しているであろう映像が頭の中で流れ出したのだ。
突然の出来事に驚愕していると、そこに森の危険動物でかなりの高い危険度を持つ森の主と遭遇してしまう。逃げることは不可能だったため、剣で応戦するも一回は気絶するところまで追い詰められてしまう。が、突如頭に流れ出した人の声の言うことに従い、戦ってみると自分の力では引き出したかのようには思えない必殺技のようなものを放つ。
その後はいろいろとあって、エクスロード家でのメリナおばあさんと一人の同居人、トレディア・エクスロードに兵士育成学校W・S(ウォーリアスクール)へ行くことを勧められ、俺はW・Sへと足を進めていたのであった………
ちなみにあの必殺技的な物は剣技【一閃】と名付けました。


第2話

コーリヤ平原…

 

「…ここ…どこだ…?」

 

W・Sはマイヤール村から出て北東へ数kmのはずだ。確かに数kmなんてかなり長い道なのだが…駅らしき物は見当たらない。いるのはせいぜい人間に害を与えるような魔物程度だ。

 

「…まさか…トレディアの情報ミス…いや、考えたくないな。確かにトレディアはしっかりしたお姉さんに見えるけど、あまりの純粋で正直な故か 抜けているところはあるけども…」

 

本人の前で言ってしまったら猟銃で撃たれてしまいそうなことを口走ってしまう。だが、この平原はとても広い。故に誰も聞いている心配はないのだから。

 

「エモノダ!トラエロー!!」

「…うおっと…お客様か…」

 

どうやらゴブリンの縄張りに入ってしまったかもしれない。

ゴブリンとは全身が赤く、身長は人間の子供くらいでアタマに短い角を一本生やしている。武器は片手に木を削って即席で作ったかのような棍棒だ。一体一体は対したことがないのだが、これが集団で襲い掛かられるとまた面倒くさい。ゴブリンの中には火炎瓶を投げるようなすこし知能が高いのもいるため、気がつけば背中が燃えているなんてことも。

 

「ヤルゾー!!」

「ヒットラエロー!!」

「…うるせぇ…」

 

気だるそうに剣を手に取るが、ゴブリンの数は6体。小規模ではあるが、一体一体にちゃんと目を通さねばこちらがやられてしまうのだ。

 

「ウォオオオオオオ!!」

「静かにしろって…!」

 

一体のゴブリンが棍棒を持って飛び掛かってくるも、空中での隙を見逃さず、的確にゴブリンの腹部に斬撃を決め、吹っ飛ばす。

そして吹き飛ばされたゴブリンはすこし体を痙攣させた後、ピクリとも動かなくなった。

残り5体

 

「ハラワタククリダシテヤルゼー!!」

「はいはい、ご自由に!!」

 

次の一体のゴブリンが棍棒を振り回しながら襲い掛かる。が、棍棒が重いのか、それともゴブリン自体に筋力がないのか、振り回す速度は早くもなく、とても隙だらけだ。

一度振るとその重さで次の一振りが遅いという隙と剣のリーチを利用してゴブリンを天高く舞い上げる。大剣なためリーチは長い方なのだ。

ゴブリンは頭から着地し、あまり聞きたくないような音を鳴らせるとそのまま動かなくなってしまう。

残り4体

 

「コノヤロー!!」

「カンニンブクロノオガキレタゼー!!!」

「…どこでそんな言葉覚えてきたんだか…」

 

今度は2体同時に襲い掛かるが、隙だらけなのは変わりないため剣を自身の筋力を持って速い速度で360°なぎ払うと、タイミングがよかったのか二体のゴブリンに直撃し、そのまま倒れる。

残り2体

 

「コ、コイツ…ヤベーゾ…」

「ニ…ニゲルカ…?」

 

6体のゴブリンはあっという間に2体のみとなっていってしまい、完全にファインが優位にある。ゴブリン達のセリフからすればこれ以上仲間はいないと思ってもいいだろう。

 

「さぁ、次は誰が来るか?」

「…ニゲルゼ…!!」

 

1体のゴブリンが青い筒状の物体を取り出し、その場に投げる。すると、青い筒状の物は炸裂し、高周波と同時に強い光が発生する。

 

「…!スタングレネード…!」

 

耳鳴りが聞こえ、視界は瞬時に真っ白に染まる。光が出る瞬間に反射的に目は閉じたが、耳へキーンと高い音を鳴り、他の音が聞こえない。つまり、今ゴブリンがどうなっているのかも見えないのだ。

 

「(クソ…ゴブリンは…)」

 

次第に耳鳴りも止み、視界が元通りになると、その場に二体のゴブリンが両目を抑えてフラフラしていた。

 

「ウオー!!メガー!!」

「チキショー!!ナンモミエネー!」

「…えーと…これはまた…」

 

物は使えど、所詮はゴブリンである。集団行動を主とし、棍棒や火炎瓶と様々な武器を使うらしいが知能はあまり発達していない為に用途が分かっていても自身に被害を出すことはよくあるようだ。

 

「(えーと…どうしよ…この二体の目が潰れているうちに逃げようかな…?あー、でも村の農作物を奪ったりとかもしているんだよな…ここは村から遠いとは言えど倒しておくべきかな…)」

 

ゴブリン達はすでに目が潰れているので無力化はできたと言えばできたのだろう。だが、村のことを考えるとこいつらを倒すべきか…非常に悩ましいものだ。

 

「…倒すか。」

「クソー!ドコダー!!」

「アァ…メガァ…メガァァアア!!!」

「(うるせぇ…)」

 

姿勢を低くし、左足を前に、右足を後ろにし、剣を両手でしっかりと握りしめ、溜めの姿勢に入る。そう、森の主を倒した技の構えである。

 

「さぁて…迷惑な小鬼さん達にはご退場を願おうかねぇ!!」

 

そのまま地面を思い切り蹴り、瞬時に二体のゴブリンとの距離を一気に縮める。隊列は縦並びであり、前に一体、後ろに一体と言う形である。

 

「剣技【一閃】…!!」

 

一度も動きを止めることなく、地面を蹴り出した時の勢いのまま前の一体目のゴブリン、そして後ろの二体目のゴブリンに斬撃を決める。重く、鈍く、そして巨大な剣の刃が二体のゴブリンの体を両断する。

 

「ェ…ゲ……ガ…」

「チク…ショ…」

 

二体のゴブリンの肉体は斬撃に耐え切れず、そのまま上半身と下半身と半分に別れたり、右半身と左半身に割かれるゴブリンもいた。

 

「…すげぇ威力なんだな…この技…」

 

と、感心していると

 

「おやおや…取りこぼしは誰かは知らない旅人さんに取られましたか…」

「…?誰だ?」

 

背後から男の声がする。すぐに振り向いてみると自分の身長の倍近くある槍に、黒いロングコートを来た男性が近寄る。

 

「俺はウィリー・ハイリップス、そしてそこで伸びているゴブリンは俺の獲物、と言っても依頼による獲物だがね。」

「…依頼?用心棒か何かか?」

「うーん…近いけど違うな。旅人さん、W・Sって知っているか?」

 

依頼、用心棒、そしてW・Sと聞いてピンと来る。

ウィリーはW・Sの生徒、またはその教員か、自分の身長の倍はあるであろう槍がそれを説明するかのように存在している。

 

「知ってるが…」

「なら話は早いな。俺はW・Sの上級生、近接部門の槍使いだ。」

「上級生?近接部門?」

 

なんのことか分からず、戸惑いの様子を見せる。だが、W・Sの生徒なのには変わりはなさそうだ。

 

「おっと、そこまでは知らないか…ま、いっか。ところで旅人さんはどこへ向かう気だ?」

「えーと…この場所だが…」

 

持っている地図を見せ、W・Sへ通じる駅を指差す。ペンで印をいれていたために発見は容易だ。

すると、ウィリーの表情が少し変化する。真剣な目つきだ。

 

「へぇ…それならここから東へ進めばすぐだ。どこから来たかは知らんが…馬車とかそういう移動手段はないのか?」

「あまり裕福とは言い難い村の出でな。そういう物はないから歩きで行くことにしたのさ。」

「…それはご苦労様なこった…どうする?護衛についてやってもいいぜ。」

「大丈夫だ。俺にはこいつがあるしな。」

 

背中にしまった大剣を取り出し、見せる。

先ほどまでウィリーの表情は呆れていた感じであったが、再度真剣な表情へと変化する。

 

「…こんな武器でさっきのゴブリンを…君…やるねぇ…っと、護衛はいらないなら俺は帰るぜ。」

「あぁ、場所を教えてくれてありがとな。俺はファイン・エクスロード、また縁があるようなことがあればよろしく。」

「ファインか…OK、覚えておく。じゃあな、勇敢なる剣士さん!」

 

その場から上へと跳躍する。が、その跳躍は人間で出せるような脚力ではない。そのまま空を飛んで行ったかのようであった。

 

「…(なんなんだあの跳躍力…ウィリーって…人間なのか?それともW・Sの生徒となるとあそこまで成長できるのか…?)」

 

試しに思い切りジャンプして見るが、対して高くも飛ばない上、1秒くらい滞空した後は重力に押し付けられるかのように落ちてしまう。

だが、ウィリーは跳躍で空高く飛んで行ったのだ。とても人間に成せる技とは思えない。

 

「…いっか。とりあえず駅に向かおう…」

 

 

コーリヤ平原、駅……

 

「…やっと着いた…」

 

本来は馬車などの代わりの足となる物に乗って行くのが普通なのだろうが、当然貧しいマイヤール村にはそんなものもなく、徒歩で半日、または一日は過ぎるであろうほどの距離であった。

辺りを見渡してみるが、まるで人気がない。まるで廃駅だ。

 

「…誰かいるのか…?でも時刻表もちゃんとあるし、電気もついているな…」

 

と、辺りを探索していると、駅員室であろう場所から一人の男性が出てくる。服装からして駅員だ。顔つきはまだ若い。

 

「お客様、どうされましたか?」

「この駅って動いていますか?」

「えぇ、ここマイヤール駅は道中にある駅として旅人様にはよくご使用のほどにあります。しかし、世の中が物騒になってからというもの…まるで人が来なくはなりましたがね…」

 

道中に襲って来たゴブリンなどから旅人への危険があるのだろうか。言ってしまえばゴブリン達も唐突に襲ってきたのだ。それなら危険はあると言える。

 

「とりあえず…この駅はW・Sと繋がっていると聞いたのですが。」

「ほう、と言うことはあなたはW・Sへの入学希望生ととして見てもよろしいでしょうか?」

「そういうことになりますね。」

「なるほど…分かりました。少々お待ちください。」

 

と言い残すと駅員は駅員室へと入っていく。

少し経つと改札口の付近から呼ぶ声が聞こえる。

 

「こちらに来てください。」

「?分かりました。」

 

何をするのかは分からないが、とりあえず行くことにした。切符でも買わされるのだろうか。

そう思いながら呼ばれたのは改札口からであった。

 

「この書類の空欄にご記入ください。」

「…この書類は?」

「W・Sの入学の為の適正試験に必要な書類です。これを持って行けば試験まで対した間も無く試験を受けることができますよ。」

「…へぇ…」

 

その書類には、W・S適性試験用書類と書かれていた。氏名、生年月日、性別、種族とあり、さらには受験科目という欄には3つの選択肢がある。近接戦闘科、遠距離射撃科、魔法支援科という物があった。

 

「…この選択肢は?」

「W・Sの育成には3つの科目に分かれています。近接戦闘科は己の拳や肉体を使っての戦闘技術の育成を。遠距離射撃科は拳銃や狙撃銃などの技術の育成を。魔法支援科は攻撃魔法、支援魔法と言った物への知識や知力の勉強などと言ったものです。あなたの武器は…ふむ、大剣ですか。となると近接戦闘科に丸をご記入ください。」

 

W・Sはそのようにも分かれているのかと思い知らされる。となると剣術と魔法の併用などはできないのだろうかと疑問に感じるが、その疑問は後にしておくことにし、駅員に言われた通りに近接戦闘科へ記入した。

書類は数分も経たずに記入を終える。

 

「終わりましたよ。」

「分かりました。少々お待ちください。」

 

駅員は書類を持って奥へ戻っていく。

すると、何か機会音のようなものが鳴り、そんな長くもなく書類を持って駅員が戻ってくる。出されたのは先ほどの書類と、W・Sへの切符だった。

 

「えーと、切符代はいくらですか?」

「いいえ、払う必要はございません。」

「…え?」

 

予想外の答えであった。W・Sへは無料で行けるのかと疑問に思う。

 

「中央政府による法案委員会によりW・Sへの入学希望者への旅費などは全て向かう先のW・Sで負担すると決められているのです。ですから今回は無料となるのです。」

「となると次回以降の試験は無料にはならないと?」

「はい、以前にW・Sへの入学希望をいいことにW・Sまで行き、試験を受けずに別の場所へと言ってしまうという事例があってからは無料は一回限り。つまり安価で試験を済ませるのは一回だけしかチャンスがないものと思ってよいでしょう。まぁ…戦闘においても一度死ねば生き返られないということと考えてもよろしいでしょう。」

「なるほど…」

「それと、ここからW・Sはとても長いので列車の中で体をお休めになってください。」

「分かりました。」

 

どれほど距離があるのかと疑問に感じたが、以降は詮索せずに書類と切符を受け取り、数分経って来た列車に乗りW・Sへと向かった…

 

 

列車内個室…ファインの部屋…

 

「おぉ…以外と豪勢…」

 

個室にはベットあり、風呂あり、トイレありと作りが整っている旅列車という物であった。

 

「ベットか…メリナおばあさんにトレディア…元気にしているだろうか…」

 

あの時、記憶を無くしたての頃もベットに寝かされていたことをふと思い出す。

が、これ以上考え込むと暗い気持ちになってしまいそうなので深くは考えず、ベットで寝ることにした。

 

「(W・Sまで長いって言っていたよな…今のうちに寝ておくか…)」

 

 

 

ドダダダと音がする。それは銃声かのようにも感じる。

近い。その場所は近い。

前が上手く見えない。何か薄ぼけたような視界なため、音でしかその場を探るしかないだろう。

 

「いっちょあがりぃー!!」

 

男の声がする。なにか聞き覚えのある声だ。

声の高さから察するにまだ若い男だろう。

 

「レックス!!前列に出過ぎるな!!」

 

今度は少し老けた男性のような声がする。

 

「大丈夫さ!!こういう時のための訓練さ!ちげぇねぇだろ!!」

「くそ…こいつ…こんな弾幕の中を突っ込むとは…撃て撃てぇー!!奴を優先的に撃ち落とせぇー!!」

 

銃声がより一層増す。だが、若い男の悲鳴らしき声は聞こえない。当たっていないのだろうか。

 

「当らねぇさ!!行くぜ!!炎陣【ブレイズストーム】!!」

「な…!?魔術だと!総員!散…」

 

向こう側で支持している人物の声が途切れる。その瞬間、次々と悲鳴が聞こえ、バタバタと倒れるような音が聞こえる。

 

「よぅし!掃討完了!!」

「…まったく…俺が前に出ていたら巻き込まれていたぞ…」

「あ、悪りい悪りい。」

 

この会話の時、やっと視界がまともになり、より現場を把握できる。

この時に目に映ったのは、ファインが持つ大剣と同じ形の剣を持った若く、黒髪の男に、同じく黒髪に少し白髪が混じったオールバックの中年の男性がいた。中年の男性は腰に長いバレルの突撃銃にナイフをホルスターに入れている。

そして、俺は木に背を預けるように座り込んでいた。

全身が痛む。相当な痛手を受けたのだろうか。体を動かそうとする度にズキッと痛みが走る。

 

「それより…この兵士は相当な痛手を受けたようだな…レックス、反応があるか試してみてくれ。」

「なんで俺が?」

「俺が周りを見張っている。銃のほうが遠くに敵が見つかればすぐに対処できるだろうしな。」

「へいへーい…」

 

レックスと呼ばれる青年が近づいてくる。何やら気だるそうな表情で。

中年の男性は突撃銃を構え、周囲を見渡し始める。

 

「おーい、起きてるかー?」

 

ファインの顔を覗き込み、少し棒読み混じりの声で反応があるかを聞き始める。

 

「…ぁ…だい…ぶ…」

「ありゃりゃ…声が掠れてるじゃねーか…ほら、これ飲みな。」

 

声が上手く出せない。全身の痛みが何かしらの関連性でもあるのだろうか。

それらを察したレックスは小さいカプセル状の物体を取り出し、何かスイッチのようなものを押すと、カプセルは液体の入ったフラスコ状の物を渡そうとする。

ファインはそれは何なのかを知っていた。

人間には魔術を使わなくとも、最低限の魔力を持っている。この世界で生きている人間を限定として。

その体内の魔力を介し、肉体の再生機能を一時的に高め、傷を癒す【回復薬】だ。

 

「ぁ…ぁぁ…」

 

レックスから回復薬を受け取り、飲み干すと、すぐに効果は現れ、全身のジリジリとした痛みがスゥッと引いて行く。これならなんとか体は動かせそうだ。

 

「…しっかし災難だったなー…補給物資を運搬するトラックの護衛で装甲車に乗っていたら、道の別れ際で悪魔共から襲撃を受けて、さらには装甲車の爆発に飲み込まれて瀕死の重傷を追う羽目になるとかさ。」

 

このセリフを聞いて辺りを見渡す。

近くの道路らしき道には炎上しているトラックや装甲車を確認できる。

どうやら、ファインはその護衛車に乗っていた一人のようだ。

 

「…そうか…」

 

何故そのようになったのか。それどころか装甲車に乗っていたのかも分からないファインは戸惑いながらも返事をする。

 

「エリクー!!生き残りの兵士さんが反応したぞー!!」

「ほう…そうか…ならいい。」

 

先ほどから突撃銃で辺りを見渡している男性はエリクという名前らしい。

オールバックで、よく見ると右目にツギハギが見え、少し表情が怖い。

 

「…ところで…あんた達は…?」

「俺か?俺はレックス・フォールズ。んで、あっちの怖いおっさんがエリク・ブランケットだ。」

「貴様…人のことを怖いおっさんとはな…」

 

さらに表情が険しくなるエリクに対し、レックスは笑っている。

 

「だって本当のことじゃねーか。お前の悪い噂が俺のいたクラスから流れてるぜ?」

「ふん、たるんでいる物だから喝を入れてやっただけだ。」

「……」

 

話についていけない。ただそれに尽きる。

 

「そだ、兵士さんの名前はなんだ?その軍服から…中央政府の兵士らしいけど。」

「…俺は…」

 

瞬間、深手を負っていた時と同じ様にまた視界がぼやけていく。

目眩かと思い、特に何も思わず放っておいたのだが、次第に視界が暗くなり、やがて何も見えないほどの暗闇となっていった………

 

 

 

『次は、W・S前、W・S前でございます。お荷物のお忘れがないようお気をつけください。」

「…ん…」

 

名乗ろうとした瞬間に目に映る映像が切り替わる。先ほど乗った列車の個室のベット上の屋根だ。

今のは夢のようだったらしい。だが、夢にしては声も、痛みも、全てが生々しい物であり、何か不気味さを感じるほどだ。

 

「…夢だったのか…?今のは…」

 

気だるさに塗れた体を起こす。ズッシリとまるで重りでも着けられているのかと疑ってしまうほどだ。

 

 

 

W・S前、駅のホーム

 

「ここが…W・S…」

 

駅のホームがコーリヤ平原の駅に比べれば、随分と技術が未来化したような空間だ。

乗り口には人身落下事故を防ぐかのように自動ドアが設置され、頭上を見上げれば、高い天井が広がっている。

コーリヤ平原の駅は一言で表すとすれば、荒れ果て、忘れられたかのような駅だったのだ。

 

 

W・S前、駅内、改札口

 

「って…すぐ目の前にあるこれが…W・S…か?」

 

改札口を抜けようと、改札口前に行くが、その目の前にとても大きな建物があるが、それがすぐにW・Sと判断できたのが、建物の上部分の中央に紋章があるからだ。騎士が使うような豪華な盾の中に2本の剣が斜め向きに交差した大きな紋章があったのだ。

W・Sは政府側の人間が認めた戦士育成学校であり、その敷地はとても広く感じる。

それどころか、駅までがその敷地の一つと疑ってしまうほどに。

 

「…なんか武器を持っている人が多いな…何か制服みたいなの着ているから…W・Sの生徒…だよな。って、まだ改札口を抜けてすらないのに…何やってるんだ俺の…」

 

改札口を抜ける前からもう圧倒されてしまう。

広大な敷地、巨大な建造物、凛々しい服装に身を重ね、背中や腰に武器を下げた青年や女性たち。田舎上がりのファインにとってはまるで違う世界かのようだった。

 

「そこのお兄さん…さっきから改札口で止まってなーにやっているんだ…?」

「え?あ…あぁ、すまん。」

 

後ろから若い男声が聞こえ、後ろを振り向くと、何か怪しげな雰囲気を持つ男性がいた。

どこかの地方で宗教を崇拝しているかのような全身を包む黒いローブに、フード姿だ。

 

「(すごい格好だな…なんかの宗教か?)えーと、あんたはW・Sの生徒か?」

「…んー?いんや、俺もお前と同じ立場かな。」

 

ここまで人物の性格を象徴するような服装はない。てっきりW・Sの生徒かと思いきや、帰って来た返事は「お前と同じ立場だ。」それはつまり、

 

「…あんたも…試験者?」

「いや、そう言っただろ?もしかして…そう見えない?」

「逆に言わせてもらおうか…思えと言われたほうが無茶だ…」

 

全くそう見えない服装だ。

周りにもいくらかは試験者らしき人は見かけるも、いずれもファインと同じ、軽装な防具だ。中には、全身フルメタルな騎士の格好をした物もいるが、この青年はそれとはまた違ったイメージを持たせる物だ。

 

「んー…うちの周りだったら結構普通な服装だが…俺って…浮いてるか?」

「あぁ…そりゃあとても…」

 

自覚なし。大丈夫だろうか。

 

「そうだ、あんた何者だ?どっからどうみても[普通の試験者]には見えんが…」

「んー、秘密だ☆」

「………」

 

なんだかとても腹立たしい。気楽を通り越して[浮かれている]の領域だ。

 

「ま、いずれ分かるさ。んじゃ!また会おうぜ。」

 

そう言って青年は去る。

名前も教えられずに。

 

「…世の中って…こんなんばっかりなわけじゃあ…ない…よな?」

 

同じ立場と言う見るからに怪しい試験者が、まさかの一番最初に見た同じ試験者だ。なんだか腑に落ちないが、そのままW・Sの校舎へと向かうのであった……

 

 

第三話へ続く

 




人物紹介

ウィリー・ハイリップス
性、男 身、188.3 種、人間(?)
近接戦闘化、上級生の槍使い。
ファインの初めて出会ったW・Sの生徒。
ファインが戦っていた魔物、ゴブリンと戦っていたところ、そこから漏れたものがファインに出くわしたようだ。
外見は人間の男性なのだが、身体能力が人間離れしているため、人間とは判断できないため、種族は不明。

ゴブリン
性、? 身、130〜155cmが主 種、ゴブリン
マイヤール平原より頻繁に見られる魔物。旅の行商人や旅人などを頻繁に襲う山賊のような魔物。
基本的に群れで行動し、行商人を襲った際に手に入れた武器などを使う時もしばしば。
だが、銃や、手榴弾といったギミックのある武器を扱えるほどの知能はない。

一話より紹介し忘れた魔物
森の主
性、不明 身、215.4 種、熊

マイヤール樹林にて数十年に一度、野生の熊の群れの中で力が暴走し、群れを喰らい尽くしてしまい、残った最後の一体となるほどの凶暴性を持つ生物。
そのため、マイヤール村所属の狩人は森の主に遭遇した場合は発煙筒やスタングレネードを使用して逃亡するようだ。
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