The Warrior World 第一節「忘れられた剣」 作:犬丸ミケ
説明会、昼食、そして試験という段取りであるはずが、説明会と昼食の時間を飛ばして試験を受けている俺、ファイン・エクスロード。
模擬戦闘用空間内にて実戦における試験を受けていると、事件発生。内容はバグによるプログラミングの塗り替えであり、試験用プログラムが上級者試験の対悪魔戦試験のプログラムが起動してしまったのである。
それだけならいいが、対悪魔戦試験のプログラムにて死亡した場合は現実での死亡と同じ物とされている。さらに、その試験が行われているのは模擬戦闘用空間内…密室での一対一の殺し合いとなってしまったのだ……
時同じくして、説明会会場
「以上にて、W・Sの説明会を終わりとさせていただきます。これからの試験の退出などは個人の意思で決めた上で行動してください。試験を受ける方は1Fの食堂にて昼食をお取りください。」
説明を行っていた職員がその場を離れると、会場は途端にざわつく。
説明会の会場は3つある。試験科目が3つあるので、それにともなって分けているのだろう。
「(あー、やっと終わったか…まったく…長ったるい説明とや〜っとおさらばだ…)」
近接戦闘科での説明会会場にファインが入り口で出会った黒いローブをまとった青年がいた。とてもだるそうにあくびをしている。
「(えーっと、飯を食ってから試験を受けるという流れだよな?さーて、さっさと終わらせて帰ろーっと。)」
自身の実力に相当な自信を持っているのだろうか。とても気楽だ。
と、食堂に移動するために立ち上がると-
『予定変更のお知らせをいたします。ただいま試験用プログラムに異常が発生し、それらの修正をこれから行います。修正にはかなりの時間を必要とするため、本日は昼食を食べ終えた後の試験は明日への延期が決定いたしました。本日、お越しにいただいた試験者の皆様は宿舎棟のほうへ向かい、おやすみになられてください。』
異常が発生、つまりはファインの現在の状況である。そのことを他の試験者たちは知らないのだ。
「(おいおい…バグでも起きたのかよ…えーっと宿舎棟だっけか?そんなに人数入るのかねぇ…まぁいいか。)」
ローブの青年は深くは考えず、宿舎棟向かっていった………
模擬戦闘用空間内…
「………」
「………」
ファイン、そして悪魔と呼ばれるドール、互いに一言も口から出さず、お互いの一手を待つかのように睨み合っている。
「(実力で勝つことはできない…だが、負ければ俺は死ぬ…そして時間稼ぎ…か…どうやってするか…)」
メタルブレイカーを構えつつも、どのように時間稼ぎをするかを考えている。
空気が重い。張り詰めた緊張感に手が震える。それが死に対する恐怖。
もし今回の試験で合格したら、このような空気はいつでも味わうこととなる。今回はその予習のように感じられる。
「………」
「…(来る…!)」
やがて、悪魔側が痺れを切らし、跳躍してファインに接近する。
さらに、1秒も満たないうちにファインの間合いに入ったのだ。
「(こいつ…!早い!!)」
避けるには体が追いつかない。反射的にメタルブレイカーの巨大な刃を盾として構える一方、悪魔は距離を詰めた勢いで素早く右手で突き出し、殴る。
悪魔の突き出した右手はメタルブレイカーの刃に当たる。
「…!」
「(な…防御したのにこの重さかよ…っ!!)」
だが、悪魔の筋力にファインの筋力が耐えることはできず、体ごと後方へと吹っ飛ばされてしまう。
「(とんでもない力だな…剣がダメになりそうだ…)」
壁を背に姿勢を整えようとするが、
「…ッ!!」
「のわっ!?」
姿勢を整えさせる間も与えずに次の一撃が飛ぶ。
悪魔の右足が空を切り、ファインの顔面をとらえようとするが、間一髪にもしゃがみつつ悪魔の背後へ移動するように避けたため、当たらずには済んだ。
「なるほど、休む暇も与えてくれないか…こりゃあ手強いな…」
すると、悪魔は右手を空へ掲げると、
「…剣よ…」
と一言。
すると、悪魔の足元に魔法陣が出現する。そして、魔法陣から剣が生えるように出現し、悪魔はそれを持つ。
刃が大きな弧を描くように作られた青龍刀と呼ばれるものだ。
「武器が…出て…きた…?」
「…行くぞ…」
片手に片手持ちの剣、刃渡りはロングソードに比べて、さほど長くはないが、剣にしては刃の幅が広いという、まるで青龍刀のような剣を持ち、ファインとの距離を一気に詰め、斬りかかる。
「はぁああああ!!」
「……」
メタルブレイカーを持ち、青龍刀の刃と刃が当たるように振る。ガキンと金属と金属がぶつかり合う音を立てる。
「(重量ならこちらに部がある。このまま一気に…!)」
「…重量で勝つ…戦い方は悪くないが…」
「…!?」
メタルブレイカーの重さと、押し返すかのように力を入れるファインの両腕の筋力による重さが青龍刀に掛かる。が、それでも悪魔の筋力が勝っていた。
「……ふん…」
「ぐっ…!?」
そのまま悪魔の片手の筋力でファインとメタルブレイカーの重さを圧倒するかのように弾き返す。
「(なんてやつだ…片手でこうも簡単に…!!)」
弾き返された勢いで宙へ舞う。こうも宙に放り出されてしまえばかなり隙だらけの状況となってしまう。
「終わりだ…」
悪魔の左手が宙へと舞ったファインへと向けると、紫色の魔法陣が出現し、紫色の光の玉が6つ出現し、そのままファインへと集中砲火をかける。
「しまっ…」
6つの玉はファインへ直撃し、爆発を引き起こす……
模擬戦闘用空間外、試験会場…
「どうかね?」
「かなり固いロックが掛かってあります…まだ時間は掛かりそうです…」
「そうか…」
ロールは模擬戦闘試験を強制終了させるためにシステムを操作しているが、システムの中枢へ入るためにはロックがかなり厳重であり、悪戦苦闘の状況となっている。
ちなみに、このシステムを作ったのはロール本人だ。
「さすがは君が作ったプログラムだ…ロックが厳重なのが見ている私でも分かるよ。」
「私からしてもかなり頑張りましたからね…まさかこれにバグが発生するとは思ってもいませんでした…」
「…急ぎたまえ…ファイン君が危険な状況になっている…」
「え…?」
模擬戦闘用空間内の状態を映し出している電子画面には、紫色の光弾がファインへ直撃した際の映像が映る。
「…!ファインさん!!」
「いや大丈夫だ。死亡判定にはまだ引っかかってはいない。だが…このままだとあとどのくらい持つかは分からんぞ…」
「えぇ、分かっています!」
普段はおとなしい雰囲気のあるロールだが、この時だけはかなり危機に面した表情で、慌てている様子も分かる。
システムを操作しているのはパソコンのギーボードのようなものがあり、それを使っているようなものである。それとは別にシステムに潜り込んでいる様子を見せている電子画面と、ファインの状態を映し出している電子画面がある。
「(私のせいで…ファインさんが…!!)」
さらに表情が険しくなり、システムを操作するためのキーボードを操作するロールの手がさらに速度を増す。もはや、どの指がどのキーを押しているのかが分からないほどだ。
「…(ロール・クリケット…W・S魔法支援科の上級生徒…普段はおとなしい雰囲気を出しており、その身長や見た目からか子供に見えてしまう。が、それとはまた別に学習能力や記憶能力がかなり発達している上、魔力の蓄積容量が多いことからW・Sの生徒になった時からかなりの期待を持たれている…か。
そして…数百年前、悪魔との闘争で絶滅してしまった月人族の子孫ではないかと中央政府での噂が現れ始めている…)」
月人族、魔力による優れた文明を持つ種族で、数百年も前の過去にて絶滅されたとされている。というのが月人族である。
中央政府、つまりW・Sのような戦士育成学校の生みの親とも言える場所ではロールは月人族の子孫である可能性目をつけているようだ。
だが、そのようなことをロールが知っているかは誰も分からない……
模擬戦闘用空間内…
「…今の一撃で生きているか…」
爆発の煙が薄くなって行くと、大剣を支えにかろうじて立っている男が1人、ファインだ。
「…悪いが…まだ死ぬわけには…いかないんでね…!」
と、強がりな心を見せるものの事態は劣勢。すでにファインは自分自身の足のみで立てるほどではなかった。かろうじてメタルブレイカーを支えに立っているという状態だ。
だが、そんな中、危機に面しているからか、ファインの頭は別の考えがあった。
…模擬戦闘用のプログラムで作られたドールが、ここまで喋るのか?
面と面を向き合っての会話は、相手への圧力をかけることもできるが、かえって集中力が途切れやすくなる。
だが、これは実践の話であって、それを模擬戦闘用のプログラムに入れる必要はあるのか?
「…一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「おまえ…本当にプログラムか?」
「…聞いている意味が分からんな。時間稼ぎならよしておくことだ。」
悪魔は身をかがめ、とどめを刺そうとするかのような体勢になる。
そして、ファインの疑問の答えは明らかになった。
プログラムによって作られたドールが、質問に対して答えを待ったのだ。
「…本来、対悪魔戦闘用プログラムで、しかもここで死ぬことになれば本当に死ぬ。だが、これはあくまで模擬戦闘であって実戦ではないんだ。お前のその言動はプログラミングされたものなのか?」
「プログラミング?違うな。私は私自身の意思で喋る…ただそれだけだが?」
と答えが帰ってくる。
そしてまた疑問が浮かぶ。
…自分の意思で喋る……?
模擬戦闘用のプログラムが自分の意思と主張してくる。これだけで違和感はとても感じる。
最初に戦った通常のドールは、完全にプログラミングされた通りの動きしかしていなかったのだ。だが、こいつは違う。こいつはまるで、自分の意思で動いているように見えた。
「自分の意思…だと?」
「あぁ、そうだ。それがどうした?何かおかしいか?」
攻撃力と瞬発力はともかく、この悪魔の動きは、最初に戦っていたドールに比べ、とてもなめらかだった。
例え、実戦に近づけたプログラムといえど、最初に戦ったドールたちは、まるで頭の中で相手の動きを計算、予測し、それに対応しての動きを見せていたのだ。
そして、このプログラム。
システム上の計算などはまるで行わず、生きているかのようだった。
「無駄話が過ぎたな……とっとと終わりにしてやろう…」
青龍刀を再度構えてくる。
「…(少し疑問に感じるが…今はこいつをどうにかするのが先だな……)」
一度思考を切り替え、頭を戦闘へと切り替える。そして、瞬時にメタルブレイカーを構え、悪魔へと突っ込んでいく。
「まだ意地を見せるか…いい加減にせねば死ぬぞ?」
「プログラムなのに試験者の生死を気にするか…少し人がいいんじゃあないのか…!」
前へ飛び出した勢いを利用し、メタルブレイカーを悪魔へと斬りかかる。
「無駄だ…」
冷静に自身が持つ青龍刀でメタルブレイカーを受け止める。
「…くっ!」
「分からぬか?力の差が。これが力だ!!」
片手で持つ青龍刀でファインをメタルブレイカーごと空中へ払いのける。
「確かに…お前の力はすごいのは認める…でもな、死ぬわけにはいかない理由がこちらにもあるんでね…!」
宙を舞うファインだが、近くの壁を足場にし、悪魔の方向へ踏み込むように飛び込む。
「理由?そんなもので戦えるのか?」
「なら目的と解釈してもらおうかな…!!」
飛び込んだ勢いでメタルブレイカーを振り下ろす。
だが、悪魔の反射能力もズバ抜けているためか、即座に後ろに跳び、斬撃を避ける。
メタルブレイカーが振り下ろされた地面にはヒビが入っている。ボロボロにされながらも力が残っているようだ。
「その目的のために…貴様は自身の命を無駄にできるのか?」
「命を無駄に?それは違うね!!」
後ろへ避けたあと、即座にファインのものへ飛び込み、蹴り込む悪魔。
そして、それを予想していたのか、冷静に剣を盾にし、蹴りを受け止めるファイン。それどころか、少々後ろに動かされた程度で耐え切ったのだ。
「命を無駄にするためなんかに体なんて張れないさ!!」
「つまり、死ぬ気はないということか?」
「そうだ!!」
剣を足場に、後ろへ跳躍するが、ファインはそれを読んでいたかのように、悪魔が飛んで行った場所へ飛び込み、斬りかかる。
「死ぬためだけの戦いなんて…こちらからごめんなんでね!!」
その勢いで再度、メタルブレイカーを振り下ろすと、着地から数秒も経たないためか、即座に防御の体制をとることができず、まともに胴体に斬撃をくらってしまう。
「ぐぅ…!?」
「(確実な手応え……いける!)」
手を休めず、再度斬撃を当てる。
大剣の重い一撃をまともにくらった悪魔は、その一撃に耐え切れず、仰け反ってしまったために避けることもできず、そのまま青龍刀を持つ右腕が悪魔本体と分離する。
「…くっ…」
腕を切り落とされた悪魔は、それでも冷静に距離を取るように後ろへステップする。
「はぁ…はぁ…」
「……」
今の一撃こそが、ファインが持つ全力であったため、後に残るのが疲労感。剣技【一閃】を全力でたたみ込むほどの体力は残っていないだろう。
「…見事だ。戦闘経験の薄い人間が俺にここまで傷をつけるとはな…」
「…(さて、ここからだ…ここからどうするべきか…)」
「…だが、その程度で俺に勝つつもりか…?」
「なに…?」
切り落とした悪魔の右腕の付け根に紫色の魔法陣が出現する。
すると、戦闘するときに生成された青龍刀を生み出すように、切り落としたはずの右腕が形成されていく。
「な…!?」
「…勇敢なる人間よ。教えてやる。これが悪魔だ。」
やがて、右腕は完全に再生する。
それどころか、胴体に与えた斬撃の傷でさえもが再生されてしまう。
「くっ…!!」
「…愚かな…」
無謀とは分かっている。分かっていても攻撃をしにかかる。
「(満足に力は出せないが…それでも……!!)剣技…一閃!!!」
「…無駄」
体に力が入りにくい。それでも、今の状況での本気の力を振り絞り、剣技【一閃】を放つ。
それに対し悪魔は、右腕で受け止めようとする。本来なら、また切り落とされるのがオチだが、
………ガキン!!!
そこで鳴る音は、かなり不自然な音。硬いものと硬いものがぶつかり合う音だ。
「…な…に…?」
「…防壁【ブレイドキル】…斬撃耐性を上げる術式だ。聞いたことないようだな。」
メタルブレイカーの刃を受け止めた悪魔の右腕は、その受け止めた部分のみが黒く、鈍い光を放つ鉱石のような性質へと変わっていた。
「刃が…通らない…!」
「貴様が叩き切ったものは鉱石の鎧のようなものだ。だが、鉱石と違うのは術式による魔力硬化であることだ。注ぎ込む魔力の量によって効果を異なるようにさせることだってできる。ま、上限はあるが…」
そのまま片腕でメタルブレイカーごとファインを一瞬払いのける。
両腕は上がっているうえ、ファインの両足は少し浮いており、自由に動くことができない。
「これは…右腕の仮返しだ。」
左手を平手にし、そのままファインの顎へと掌底を打ち込む。
「が………!?」
その一撃により、一瞬にして視界は上へと持ってかれる。脳まで揺れたような痛みを抱えながら胴体を無防備にも晒してしまう。
「はぁああっ!!」
さらに、次の一撃へ持ち込む。
掌底を顎に打ち込んだ際に前に出した左足を軸に回り、その勢いを利用してファインの腹部へ右足を突き出す。
「がは…っ!!?」
右足はファインの腹部へと突き刺さるかのように突き出されており、一瞬にして呼吸は止まり、意識までもが揺らぎかける。
そのまま右足は勢いよく飛び出し、ファインはその勢いで後ろの壁へと突き飛ばされてしまう。
「が………は……」
呼吸がままならない状態の上、背中を壁に勢いよく当ててしまったため、さらに呼吸がままならなくなってしまう。
「終わりだ…」
突き出した右足を元の位置へ戻し、右手をファインに突き出すと、手のひらから紫色に光る魔法陣を出す。
五方星の魔法陣の中心部分に光の球が形成され、光の球はそのままファインのもとへ飛ばされ、ファインに直撃し、爆発を引き起こす。
「……………!!!」
もはや声も出せないような状態で追い討ちをくらってしまった。
起こされた爆発の煙によってファインの安否は確認ができない。
「……ほう…」
まるで意外そうな反応を見せる。
煙が晴れると、その中からまた立ち上がろうとしているファインの姿がそこにあった。
「……ぁ……が……っ…」
「…まだ戦おうと言うのか…そんな満身創痍な肉体を抱えながら…」
腕が上がろうとしないうえ、足が立ち上がることを拒絶している。何度も立ち上がろうと試みるが、その度にまた地面に足をついて体制を崩してしまう。
そんなファインを悪魔は哀れな者を見る目で見ていた。
「…まぁいい。原型がある状態で立ち上がろうと言うのなら…原型すら消すまでだ。」
右手を空に掲げるように突き出す。
右手からまたしても紫色色の魔法陣が出現するが、先ほどに光球を打ち出した魔法陣とは比べものにならないほど大きく、また形成される光球も先ほどファインがくらったものとは全くもって大きさが違う。かなり大きなものだ。
「ま……だ……だ………ま…だ…」
「………」
いくらボロボロにされようと、ファインの心は折れる所を見せようとしない。それほどまでにしてファインを動かしているもの、それは生きることへの飢え、言わば執念だろう。
「…まぁいい。さらばだ、哀れな記憶なき試験者君。」
「…なんて…?」
問いかけるも時すでに遅く、巨大な光球が打ち出される。
「(こいつ…なんで俺のことを知っている…?それとも…悪魔と俺が失った記憶の中で関わりあっていたとでも言うのか?)」
先ほどの悪魔の発言を疑問に思いながら、その意識は真っ白に広がってゆく視界とともに消えていったーー
悪魔。
SHIができ、生物が誕生してからまだ間もない頃に、神へ対立するがために存在していた歴史の悪役。
神を統率するは、全知全能たる神の力を持ち、英雄と呼ばれた者、ロラン・R(レイ)・グランド。
悪魔を統率するは、理を覆し、世に混沌をもたらさんとする邪神、ハデス・R(レイ)・グランド。
2人は兄弟であった。だが、世界を統率する神を決めねばならないという運命の中、彼らは剣を振るった。
神と悪魔による闘争はかなり激しく、時には世界が滅んでしまうのではないかと思われるほど、強力であり、強大であったと記されている。
結果は神たちの勝利。
だが、それは犠牲のない勝利ではなく、いくつかの自然や理を司る神々は悪魔の手によって滅ぼされてしまったのだった。
やがて、ロランは世界を述べる神としてもう一つの名前を渡される。
その名はゼウス。全知全能たる神ながら、己が兄弟であるハデスを己の手で打ち破り、今もなおSHIの理を支えている。
しかし、この闘争にて悪魔は全て滅んでいたということは、この時、誰も知る由もなかったのだった……
悪魔はあらゆることを力で制する。
時には、力なき天使に己の力で誘惑し、堕天させることもある。
さらには、闘争や儀式などで悲惨な死を遂げ、その死んだ肉体から現れた憎悪や嫌悪などに満ちた魂を集めては、己の力を持ち、怨念持つ魂の集合体で肉体美をも作り出し、兵を増やしていく。
この時、神と悪魔の闘争はまだ終わっていなかったのかもしれないのだ……
第五話へ続く……