BanG Dream! Grand Chariot 作:あこ姫
サイリウムの波と会場の熱狂に包まれる武道館。
そのステージで演奏するのは、結成間もないが怒涛の勢いを持って人気バンドまで駆け上がったガールズバンドだった。
「星のカリスマ」の二つ名を持つ少女と「月詠の姫君」の二つ名を持つ少女が観客のアンコールを受けて最後の曲を演奏する前のMCも終盤に差し掛かってきていた。
「『この武道館で演奏したい』って、このバンドを結成してからずっと思ってました」
「辛くて何度もめげそうになったけれど、夢に向かって諦めずに頑張って今、私は……ううん私達はこのステージに立っています」
「これも支えてくれた皆のお陰です。この曲は皆への感謝を込めて演奏します」
「それでは聴いてください──」
ここで私の意識は暗転する。
その後目を覚ました私を迎えたのは見知りすぎた自室の天井だった。
身体を起こした私は周囲を見渡す。
今の自分の目に映る光景は先程までの武道館とは全く違う極々普通の家屋の一室だった。
おそらくはこっちが現実なのだろうと思い、私は自分の頬を抓ってみる。
「…………痛い」
頬に残るのは確かな痛み。……ということは、
「夢……か」
光り輝くステージライブは私が見ていた夢だった。
その事実が叩きつけられると同時に私の昂ぶっていた心が萎えて行く気がしたのは気のせいではないだろう。
萎えた心を無理矢理に平常心だと納得させて登校の準備を始める。
何となくだけどもそうしないと何もする気が起きない。そんな気がした。
「シャワー……浴びてこよ」
私はもやもやが残っている状態の重い足取りで洗面場に向かうのだった。
登校準備を終えて朝食を摂った私は早めに家を出る。
私の通う高校、花咲川高校は東京さくらトラムの沿線にあって路面電車を使えば15分くらいで到着する。
故にこんなに早く──始業の1時間半前に家を出るのは理由がある。
『響楓と一部の人以外の他の同級生達と鉢合わせしたくない』
たったそれだけ。
そう言われても可笑しくないだろうけど、人見知りをこじらせた私にとっては死活問題だ。
何故そうなったかは簡単。
私は苛められていた。
自分で言うのも何だけど私の容姿は標準離れしている。
それ故にクラスで済めば良いが、無常にも同学年の女子(響楓除く)から妬みの対象になっていた。
あの当時、響楓がある程度ボコっていたとはいえ私の心がへし折られるのは容易だった。
その日以降、私は当然中学校を卒業するまで不登校になったしすっかりコミュ障に成り果てしまった。
路面電車に乗った私は鞄を膝の上に置いて窓の外をぼんやり眺めていた。
沿線の桜並木を見ていても朝のもやもやが尾を引いて心が晴れることはない。
このままだと気が滅入る事が加速しそうだ。それだけは勘弁被る。
その状態だと響楓の鬼追求が非回避で面倒だからだ。
私はMP3プレイヤーを取り出してイヤホンを耳に装着し、そのまま音楽を再生する。
曲は私の推しバンドでもあるSublimatumの新曲、『Time Lapse』だ。
私はしばしの間、音楽の世界へと誘われていった。
途中で親交のある星型(本人曰くで私はネコミミと思ってた)の同級生と目が合ったので軽く会釈した。
学校に着いた私は何時もと変わらない日常を過ごす。
朝は誰もいない教室で少し本を読んで、図書室が開錠される時間帯を狙って誰もいない図書室で本を読む。
そして、始業の5分前に教室へ戻って
相変わらず、始業ギリギリに滑り込んできた響楓は肩で息をして机に突っ伏していた。
「……大丈夫? 響楓」
「あたしのこれが大丈夫に見えんの? なのは」
「また、夜更かししたんでしょ?」
「だって、あたしは──」
「『夜型で朝は弱い』んでしょ?」
「そのとおり。だから……」
「それで寝坊していい理由は無いよ?」
これもこれで日常的な会話だ。その証拠に周囲からも
「やっぱり起きてる……」
「もう日常的すぎて慣れた感ある」
「夏コミのネタキタ━(゚∀゚)━!!」
この反応である。
3人目に至っては私と響楓がネタにしているし。
「響楓……」
「アレについては気にした負け。 良いね?」
「あっ……うん」
その直後担任が教室に入ってきたのでSHRとなり、午前の授業が始まった。
昼休みとなり、クラスの皆は仲の良い人達で集まって昼食を摂っていた。
響楓もクラスメイトの仲の良い人達と食べているようだ。
私はというと……当然? ボッチな訳で。
勿論、ボッチ飯。もう、悲しいとか感じなくなっているまである。
そんな私はお弁当の包みを
廊下をしばらく歩いていると炊飯器を傍らに置いて座っている少女。
少女は私に気づいたようでぶんぶんと手を振っている。
「師匠、来てくれたのか!」
「あの……師匠はやめてって言ってるでしょ、りみ」
「師匠は師匠やん」
「………………」
この時私は思った。
何言っても変わんねぇと。
だから突っ込むのはやめようと。
「師匠、突っ込まないというのはアカンて」
!? どうして私の考えている事が……!?
「師匠、めっっっちゃ顔に書いてあるで? 考えとる事」
まさかの事実だった。
ポーカーフェイスとか出来てないって事!?
「せやな。ポーカーフェイスは師匠には存在せぇへんモンやな」
そこまで行くんだ……。
「本題なんやけど、師匠はタンバのおいしい炊きたてのお米どんくらい買うんや?」
「……何時もの量で」
「中盛りやな。やったらオカズ交換+20円か60円」
「じゃあこれと20円」
私はりみにおかずの包みと財布から1000円渡した。
「毎度……って、多ない?」
「夕飯代の足しにして欲しいって意味なんだけど……」
「ええの?」
良いから渡してるのだけれど。
「おおきに。晩メシ代にさせてもらうわ」
りみは笑顔だった。
私的には多分りみは夕方にサイゼに行くのだろうな。
「当たり前やん。サイゼ安いし」
りみから肯定の返事が。
また顔に出てたのかな……私の考えてること
「もうバッチリと。師匠……」
「どうしたの、りみ……」
「師匠さえよければ、今日一緒に夕飯行かない?」
少し照れつつも夕飯に私を誘うりみ。
ヤダなにこの可愛い生き物は。
「私で良ければ喜んで」
私は断る理由がないのでりみの申し出を快諾した。
「ほ、本当か!? じゃ、じゃあ19時に牛込柳町のサイゼでどうだ!?」
「うん……19時に牛込柳町のサイゼね。解った」
私はりみに了承の返事をして別れ、屋上へ向かった。
今日の天気は良いし風も心地よいからさぞかし絶好の昼食日和と言えるだろう。
昼食が終わって暫くのんびりした後、時間が昼休み終了7分前となっていたので私は教室に戻り次の授業の準備をする。
チャイムが鳴って午後の授業が始まった。
午後の授業が終わり、SHRも終わって放課後となってクラスメイトの皆は各々、自分の所属する部活動の活動場所へ向かって教室を後にする。響楓もテニス部の活動があるのでテニス部の部室に向かって『待ってましたっ!』と言わんばかりの迅速な足取りで教室から去っていった。
私は特に部活動に所属はしていないからあとは帰るだけの帰宅部……なんだけど、
屋上に向かう途中に音楽準備室に立ち寄り預かってもらっているMYギターを受け取った。
屋上に到着すると屋上の一角で座ってギターを弾いている少女──今日の私の約束事のお相手、花園たえちゃんを見つけて声を掛ける。
「ゴメン……。待った? おたえちゃん」
「あっ、ナノハさん! 大丈夫っスよ。自分も今来たところだから」
「そっか。じゃあ早速……始める?」
「そうっスね。時間も惜しいから始めましょうか」
私はギターケースからギターを取り出して演奏する準備を整える。
「どの曲を演奏するの?」
「そうっスね……『ティアドロップス』とかどうでしょうか?」
「うん……良いよ。私がボーカル……だよね?」
「ダメ……ですかね?」
「問題ないよ」
その直後におたえちゃんがギターを手にして演奏が始まり、私は遅れないようにギターを弾き始めて歌を歌い始める。
ティアドロップス・レボリューション キミが教えてくれたね
NON STOP サーキュレーション 明日は SO GOOD!
まっすぐ夢みた瞬間(YOU, YOU, 夢みてた?)
未来へ羽ばたく少女(ME, ME, 未来へ FLY OUT)
今日はなんかちょっとハイなメンタル? (ねえねえ それって SO COOL!)
でもね 急に泣きたくなって(泣かないで DON'T CRY)
心のシグナルをのぞいてみたら(STOP OR GO?)
赤から青にかわる(だから今すぐに)
世界のドコよりもまぶしい場所へ!
一緒に駆けあがる PEOPLE!
この指とまれ!
ティアドロップス・レボリューション 涙 ゼンブあつめたら
HEARTBREAK ジェネレーション 新しい場所へ行こう
誰よりも どこまでも 何よりも いつまでも この手を離さないから
この後、私とおたえちゃんは最終下校時刻の18時近くまで共通の推しバンドであるSublimatumの曲を演奏していた。
この時間は私にとって一番楽しい時間だったのは言うまでもない。
Go_To_The_Next_Stage……!!
次回より原作展開に入っていきます。
因みにサイゼネタは時事ネタから取り入れてみました。
評価感想誤字報告等々お待ちしております。
次回投稿時期は未定ですが、次回のお話でお会いしませう。
ではでは。