サンデートレーナーになる   作:かばんm3

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米国のとあるウマ娘、日本で芦毛に出会う


サンデートレーナーになる

─気の迷いだったと言ってしまえばそれまでになってしまうのだろうか。

 メジロマックイーンは横目でベッドに残る深く刻まれたシワと白いシーツに広がるお相手の黒髪。

 「ん…まっくちゃ〜ん」  

 寝ぼけているのか甘えた声で私を呼ぶ声に少し胸がきゅっとなる。その頭を優しく撫でると気持ち良さそうな表情を浮かべるサンデー。お互いの身体には赤い華と歯形の跡。この部屋では見慣れてしまった光景だ。  

 

 彼女サンデーサイレンスとの出会いはURA主催のパーティーだった。初めて会った時の彼女は病的に白い肌に黒いロングドレスを着ていて、まるで幽霊のように見えた。

しかし、彼女の目はギラつき、鋭い視線が私を捉えていました。

 「ハジメマシテ」

 拙い日本語の挨拶の後、彼女は私の手を握るとその手に唇を落とした。突然の出来事に反射的にその頬を平手打ちしてしまった。

その態度に彼女は笑いながら謝罪してきました。

 サンデーサイレンス、理事長がアメリカから呼び寄せた米国レース会の黒い流星。テレビで見た彼女走りはまるで閃光のように早く、力強いものでした。

他のウマ娘では成し得ない異常なフットワークにより、速度を落とさずにカーブを曲がり加速して相手を抜き去る姿は美しく見えた。

 パーティーの後も何度か話す機会があり、彼女がまだ日本の文化に慣れていない事もあり、私がサポートする事もあった。

 彼女の指導するチームは一年目にしてG1ウマ娘を輩出。その後もGIウマ娘を出し続け、サンデーサイレンスは日本トレセン学園の誇る最強のチームの1つとなった。

 

「マックちゃ〜ん飲み行こうぜ」

 いつも通り練習後のミーティングを終えた後、サンデーサイレンスが私を飲みに誘う。

 トレセン学園の近くにあるbarに入り、彼女はバーボンを使ったカクテルカウボーイを私はメロンリキュールを使ったメロンスペシャルを頼む。

 グラスを傾けて喉の奥へ流し込むとアルコール特有の熱さが全身を巡る。サンデーサイレンスと二人で飲む時は大体こんな感じだ。仕事の愚痴を吐き出し合ったり、互いの担当について話したりもした。

 彼女と過ごす時間は不思議と居心地が良く、いつしかそれが当たり前になっていました。

 お互い担当ウマ娘が怪我により次のレースを棒に振った時は、つい深酒をしてしまい慰めあう事もありました。あの日もそうだった。

「……あの子の次のレースが延期にならなければ……」

カウンターテーブルに置かれたカクテルの氷を見つめながら呟いた言葉は静かな店内によく響いていた。グラスに残った液体を一気に煽り、マスターに追加注文をする。

 どこかで心の深い場所が弱くなっていたのか。ついつい弱音を吐いてしまう自分が情けないと思いつつも、口から溢れ出る言葉を止められなかった。

「メジロ家の同期でレースの道に残ったのは私だけですが後悔はありません。しかし、別の道を選んでいたらとふと思ってしまうのです」

私の話を黙って聞いていたサンデーサイレンスはこう言った。

「オレには産まれた時からレースしかなかったんだ。それこそ、レースに出るまでの人生は泥水をすすり続けてるようなもんだったけど、レースに出た瞬間に全てが変わって見えた。オレはレース以外の生き方を知らないんだ」

 彼女が脚を故障しレースを引退した時も少しでもレースに関わり続けたかった。しかし、アメリカのレース社会は彼女に冷たかった。家柄もろくなスポンサーもない彼女の指導を受けに来たウマ娘はいなかった…だから彼女は故郷を去りこの日本に来たのだ。

「オレはレース以外何も知らない。だけど、マックちゃんはどうだい?」

そう言って私の肩に手を置いてくる。そして、私の目を真っ直ぐに見据えながら言う。

 「私はメジロ家の令嬢として誇りを持っています。その誇りを私はレースで勝つ事で証明して来ました。それは…これからも変わることはありません」

そう言い切った私にサンデーサイレンスは満足そうに微笑む。

 そうだ。例えどんな道を歩んでいても、メジロマックイーンというウマ娘は変わる事はない。ならば、自分の選んだ道に後悔はない。

 そんな事を考えているうちにサンデーと目が合った。あの鋭い猛禽類の様な紅い瞳。互いに示し合わせたわけではなく自然と唇が重なっていた。 

 柔らかい唇からはカクテルの匂いが残っていたのか甘くミントの香りがした。

 そして、それからはもう止まらなかった。場所を自宅のマンションに移した。

 ベッドには白くきめ細やかな肌、美しい曲線を描く肢体、腰まである長く艶のある髪、誰もが羨むであろう容姿を持つウマ娘。

「マックちゃん… そのいいのか…?」

その声を聞いた途端、ドクンと心臓の血液が激しく循環しているような感覚に陥る。

「ここまで来て言うのは野暮ですよサンデー……」

 恥ずかしさで赤くなる顔を見られないようにそっぽを向いて答える。

すると、サンデーは私を抱き寄せて口づけを交わしてきた。舌が絡み合う水音と、息遣いだけが部屋を支配する。

互いの唾液が混ざり合うカクテルキッス、やがて名残惜しそうに離れていく。サンデーの顔を見ると、彼女もまた頬を赤く染めていた。

 彼女の首に手を回して抱き寄せると、彼女の胸に頭を埋める。彼女の鼓動を肌越しに感じる。

 黒と白の両者の尻尾は絡まり合い、まるで一対の蛇のように互いを求めていた。

そこからはあっという間だった。まるでお互いの身体の一部のように身体を重ねあった。

荒くなった二人の呼吸音が部屋に響く。背中に腕を回すと、彼女は強く抱きしめ返してくるとマックイーンはそのまま意識を手放した。

 

 翌朝、朝日の眩しさで目を覚ます。隣では彼女が穏やかな寝顔を浮かべている。昨晩の事を思い出し少し気まずい気持ちになる。

 シャワーを浴びようと起き上がろうとするも、下半身に力が入らず立ち上がれそうにない。仕方なくシーツを体に巻きつけて浴室に向かう。

熱いお湯を頭から被り、火照った体を冷やしていく。

(ああ、私はなんてことを……)

 鏡に映る自分の姿を見て愕然とした。全身の至るところに赤い痕がついている。まるで虫刺されのようだ。

 昨日の行為を思い出して顔が真っ赤に染まっていく。今更ながらとんでもないことをしてしまったと自覚する。

 シャワーを終えてリビングに戻ると、サンデーサイレンスがソファーに座っていた。彼女の前にはコーヒーの入ったマグカップが置かれていた。

「…おはようマックちゃん」

「えぇ…おはようございます」

「その…昨日の事はお互い忘れよう」

 そう言って、深酒を辞めようと誓いを立てる二人であったがその約束はまた破られるのであった。

 

 おわり

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