照りつける真夏の日差し。目線いっぱいに広がる砂浜。そして、水着姿のウマ娘の少女達。
「オーイ、午後まではスタートダッシュと追い込みの練習だ。わかったかー!」
「皆さん脚の負担はあまりかからない砂浜ですが、水分補給だけはしっかり成さって下さいね」
サンデーサイレンスとメジロマックイーンは担当ウマ娘達に声を掛ける。メジロ家所有のプライベートビーチで合同トレーニングを行っていた。
「ありがとうなマックちゃん。 俺達一応敵同士なのにこんなところまで連れてきてもらってよ」
サンデーサイレンスの言葉にメジロマックイーンはクスリと笑う。
「私達のチームは良きライバルだと思っています。普段はお互いに切迫した状況で戦う間柄ですか、こういった機会を設けて互いに高め合えたらと思っております」
それに……と付け加えて言う。
この前のお礼もありますし、と小声で呟く。
「ん?なんか言ったかい?」
サンデーサイレンスは聞き返すが、なんでもありませんと誤魔化されてしまう。
「しかし、マックちゃんせっかくの海なのに…」
マックイーンが身に着けているのは白いトレーニングウェアとシューズ。均等の取れた美しいボディラインがはっきりと分かる格好だった。そんな彼女の視線に気付いたのか、彼女は耳をピコピコ動かしながら言う。
「はぁ…サンデー、別に遊びに来たわけでは無いでしょう?」
呆れたようにため息をつく彼女にサンデーサイレンスは苦笑いを浮かべる。そんな彼女の服装はラフなパーカーとロングパンツといった具合で、いつも通りといえばそうなのだが、なんというか色気が足りない。
そんな事を思っていると、マックイーンはジトッとした目を向けてくる。慌てて話題を変えようとするも、先にマックイーンが口を開いた。
「そういえば、貴方は泳がないんですの?」
普段のサンデーは練習の時は学園から支給されたジャージなどの運動着で過ごす事が多い。故郷のケンタッキー州にも海は無かったし、そもそも泳ぐ習慣が無かった。
「故郷に海もなかったし、プールが在るようなリゾートにも縁がない人生だったんでな。まあ、オレには走る方が性に合ってんだよ」
そう言い切ると、彼女は笑みを浮かべて言う。その言葉を聞いてマックイーンは複雑そうな表情を浮かべた。
午後の練習も終わり。楽しい夕食の時間も過ぎて、あとは就寝時間までの自由行動となった。
メジロマックイーンは一人砂浜を歩いていた。昼間の太陽に焼かれて熱を帯びた砂を踏みしめていく。 時折、波が押し寄せては引いていく。
トントン
彼女は隣のコテージをノックすると中から出てきたのはサンデーサイレンス。
「おう、どうしたんだマックちゃん」
彼女はそう言って手招きすると、マックイーンを室内に招いてドアを閉める。二人きりの静かな空間で、マックイーンが口を開く。
「泳ぎましょうサンデー。折角海に来ているのですから」
突然の提案に彼女は一瞬目を丸くしながら言いよどむ。
「そのだな…マックちゃん、オレみたいな脚の奴がさ、水着を着るのはほら、あれだろ?」
その言葉にマックイーンは首を傾げる。そして、何か思い当たる節があったのかハッとする。
「今の砂浜は私以外誰もいませんよサンデー」
彼女はそう言いながら、着ていたドレスを脱ぐ。露わになった肢体は白磁のように白く、引き締まったウエストの対比が美しく、思わず見惚れてしまう。マックイーンは頬を染めながら続ける。
「私は……その…貴方と一緒に、泳ぎたいんです」
消え入りそうな声で紡いだ言葉は確かにサンデーサイレンスの耳に届いていた。
「…ダメでしょうか?」
上目遣いでお願いしてくる彼女に、彼は折れる他なかった。
「お似合いですよサンデー」
競技時代から鍛えてきた身体はレースを引退した後も引き締まっており、白い身体に黒いビキニとスカートが良く映えている。
「うっせぇ、お前だっていい感じじゃねえか」
サンデーサイレンスの身体はマックイーンとは対照的で、無駄な筋肉が一切無い正反対な付き方をしていた。白い肌と黒のコントラストがとても魅力的である。
「ふふ、良ければスカートを捲って見せてください」
そう言ってマックイーンは自分の腰に手を当てると、サンデーは戸惑いの表情を浮かべた。
「は、はぁ?!何言ってんだよマックちゃん。こんな脚…」
マックイーンはサンデーの脚をスカート越しに触りながら、その瞳は真っ直ぐ彼女を見つめ、視線が外せない。
「私にはこの脚がとても美しと思います。サンデーの脚は綺麗です」
マックイーンの言葉を聞きながらサンデーサイレンスは複雑な気持ちになる。この脚のせいで自分は散々な目にあってきたのだ。
「……本当にそう思うか?」
彼女は不安げな声色でマックイーンを見る。彼女は少し考えた後、サンデーの手を取ると自分の太ももに触れさせる。
柔らかい感触ながらも押すと跳ね返すような弾力。触れているだけでも心地よく、いつまでもこうしていたいと思える程だった。
彼女の体温が伝わる度にサンデーの心拍数が上がっていく。
ドクンドクンと心臓の鼓動が早くなっていくのが分かる。マックイーンの顔を見ると真っ赤に染まっていて、恥ずかしさが伝わってくる。
二人は暫くの間無言のまま向かい合っていた。しかし、その静寂を破ったのはサンデーだった。
「…ほらよ」
黒いスカートをゆっくりと持ち上げていく。彼女の眼前にはサンデーの白い傷だらけの脚が現れる。
「こんな脚…あんまり見るもんじゃねぇぞ」
サンデーは顔を背けながら、ぼそりと言う。
マックイーンはサンデーの脚をまじまじと見ながら、指先で触れる。滑らかでありながらしっかりとした筋肉の感触が伝わった。
「いい脚です。私の脚よりもずっと素敵ですよ」
彼女はそう言うとサンデーの脚に抱き着くように身を寄せる。彼の脚の温もりを感じながら、マックイーンは微笑んだ。
初めて会った時はなんて変な人なんだろうと思っていた。しかし、一緒に過ごす内に、レースに対する真剣な思いは本物だとマックイーンは感じていた。
「サンデー、貴方は素晴らしい脚を持っています。私が保証します」
彼女の言葉を聞いてサンデーサイレンスは頬が緩んでしまう。
「ありがとうなマックちゃん。そんな熱心に誘われたら断るわけにもいかねえな」
マックイーンは嬉しさを隠しきれない様子で尻尾を振る。手を引かれて砂浜を走り出す。
夜の砂浜は昼間とは全く違う顔を見せる。昼間は賑やかな砂浜も今は静かに波の音だけが聞こえる。
砂浜に足跡を残しながら走り回る二人のウマ娘を月明かりが照らし出していた。
おわり