僕っ娘Vtuberの話   作:Atlantis

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行動開始

 

 

  僕はyoutuberが好きだ。

 

 だから、その人がyoutubeでどんなことをしているのか調べるのも好きだし、実際に見ることもある。そんな僕から見ても、『月丘撫子』さんは異常だった。

 

 まず、投稿動画の平均再生回数数が二十万を超えていること。そしてチャンネル登録者数は約百五十万人いること。さらに動画投稿数が約二千回であること。

 

 もう、凄すぎて何が何だか分からない。僕の中の『常識』が崩れていくような気がした。

 

「……」

 

 僕は彼女の動画を視聴し続けた。理由は単純である。

 

 単純に面白かったのだ。彼女が動画内で紹介するゲームは全て楽しそうにプレイしていたし、おいしそうに創作料理を食べていた。そして、それらの紹介の仕方にも工夫が見られた。

 

 また、彼女の動画内の口調にはどこか上品さがあり、それが彼女の魅力をより一層引き立てていた。

気づけば、僕は毎日のように彼女の動画を見るようになっていた。

 

 

 

 それから数日経ったある日のこと……

 

 

「うわぁ~」

 

 僕はとある動画を見て、思わず声を上げてしまった。

 

 その動画では、有名なyoutuberがゲームの実況をしていたのだが、彼のプレイングに粗が目立ちすぎたため、コメント欄で批判が殺到していたのだ。しかしそんな中でも、一部の熱狂的なファンは彼のプレイングを批判するどころか楽しんでいるコメントを送っていた。

 

 それを見た時、ふと思ったのだ。

 

(youtuberは色々な人と関わって生きているんだな)と…… 正直言って、今まであまり意識していなかったけれど。僕はこの日から、より一層youtubeを見ることが好きになった。

 

 

 ……………… そんなある日のこと。

 

 いつも通り『月丘撫子』の動画を見ているときにふと思い浮かんだことがあった。

 

 それは…… 【自分も何かしらのyoutuberになってみたい】ということだ。その時の僕は、特に深く考えずにこう思った。

 

 「よし! じゃあ早速準備しよう!」

 

 こうして、僕は生まれて初めて『youtuberになる方法』について調べ始めた。

 

 

「ふむふむ。このサイトなんか良さそう」

 

 『Youtuberになるための10の心得』というサイトを見つけた僕は、それを頼りに動画を投稿していくことにしたのだ。

 

 

 『1.Youtuberたるもの投稿頻度を意識すべき』

 

 視聴者から忘れ去られないようにするためにも、出来るだけ投稿していない期間を作らないようにするのがベストだそうだ。

 

 ……ってことは、たくさん動画をストックする必要があるってことか。一筋縄ではいかなそうだな。まあいいか。頑張ろう。

 

 

 『2.編集技術の向上を目指すべし』

 

 編集技術とは、要するに画面の構成やテロップなどの効果のことである。これをうまく使えるようになると、再生数の増加が見込めるらしい。

 

「なるほどね……」

 

 確かに、視聴者にとって見やすい映像というのは大事だろう。よし、編集の勉強もしないといけないようだな。とりあえず今日はそこを重点的に頑張ろう。

 

 『Youtuberになるための10の心得』を一通り確認した後、僕は一日中編集の勉強をしたのだった。

 

 

 

 

 

 次の日

 

 昨日はよく頑張った。おかげで、編集に関する基本的知識は身についた。後は動画を作っていくうちに上達するように頑張ればいいだろう。

 

 編集はいいとして、問題は投稿頻度を落とさないようにすることだ。どうすればいいだろうか?……

 そうだ。僕はゲームが好きだからそれを上手く活用できないだろうか。例えば、毎日一本のゲーム実況動画を上げるとか…… よし、それで行こう!

 

 ……でも、いきなりそんなことをして成功するのだろうか? 例えば、僕がゲーム実況を見るときは基本的に好きなYoutuberがやっている時だけだ。

 

 知らない人の、それも無名の実況者の動画をいちいち選ぼうとは思わない。つまり、僕の動画が面白いかどうかという問題の前に、動画を見てもらえない可能性が高いのだ。

 

 そもそも、ゲーム実況を見て面白いと感じる時は、自分にとって馴染みのある人がゲーム内の出来事に反応を示すときである。それにより、自分も彼または彼女と一緒にゲームしている感覚が味わえるのだ。

 

 つまり、ゲーム実況を成功させるためには、ある程度自分のことを知ってもらってからでないとダメなのだ。

 

 それならば、ゲームに関するレビューや小ネタの動画を主軸にしよう。たとえ無名な人の動画でも、関心のあるゲームを紹介するのなら見てみたくなるはずだ。

 

 それに、いままで多くのゲームをプレイしてそれぞれのコアなファンと化した僕ならば、それなりに質の高い動画を作ることが出来るだろう。

 

 方針としては、基本的にゲームに関する話を行う。そして、たまにゲーム実況やほかのジャンルの動画を混ぜていくといった形にしよう。

 

 方針を決めた僕は、次の課題について考える。

 

 

 

 

 『3.素顔を見せるべき』

 

 これが、くせ者である。10の心得によれば、視聴者になじんでもらうためには顔を出すのが一番だそうだ。だがしかし、いくらなんでも急に顔を出せと言われても無理がある。ネット上に自分の顔を晒すのは怖すぎる。……となると、何か別の方法で印象づける必要がある。

 

 そこで思い浮かんだのは、顔ではなく部屋の中を視聴者たちに見せることだ。部屋はいわば、人間の内面を表すもの。当然そこには個人の生活環境が現れる。

 

 生活環境には人となりが出るし、その人間に興味が出てくるものでもある。つまり、その部分を見れば、どんな人物が配信を行っているのか想像がつくというわけだ。よし、これでいこう!!

 

 早速僕は実験の為にゲーム実況のリハーサルを行うことにした。カメラを部屋の中が映るようにセットし、ゲーム画面の右下に表示されるようにした。その状態で普通にゲーム実況して、どのような動画になるのかを見てみた。

 

 

 ……ゲーム画面の右下に僕の部屋の様子が映し出され、何処からともなく僕の声が聞こえてくる様子はとてもシュールであった。これでは、まるで意味が分からない。というか、ただ単に変な奴と思われるだけである。

 

 声が聞こえるのに、誰もいない部屋が映っているのが問題に違いない。そう考えた僕は、試しにフィギュアをカメラの近くに設置した。そうすることで、画面内に人物と代わりとなる存在が現れた。よし、次はこの状態を維持しながら、ゲームの実況をしてみよう。

 

 ………… 結果は、あまり良いものではなかった。フィギュアの顔は当然動かない。つまり、ゲーム画面を見る視聴者にとっては、何も変化がないように見えるのだ。さっきよりはましだが、これは、良くない。

 

人間のように表情を変えるフィギュアだったら、もう少し自然になるのかな…………あっそうだ。あの技術なら。

 

 

 僕は今まで、多くの『月丘撫子』さんの動画を見てきた。どの動画も素晴らしい出来だったが、その中でも特に『動くイラストですよ』シリーズは僕の中に強い印象を残している。

 

 そのシリーズでは、『月丘撫子』さんが様々なキャラクターのイラストを描き、それらが自由に動いていく様を見ることができる。まさに、夢のようなシリーズだった。

 

 当時それに憧れていた僕は、自分でもやってみることにしたのだった。イラストを自由に動かすアプリがあり、そこへ自作イラストを描いていた。

 

 基本的にどんなイラストでも動かすことが出来るが、質の高いイラストの方が動いたときの感動が大きかった。だから僕は、よくイラストを練習していたな。そのおかげで体育祭のポスターを任されたりする程度には絵が上達した記憶がある。

 

 

 この技術を使えば、表情の変化に関してなんとかなるかもしれない。そう考えた僕は早速動画を作ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     

                        

 

【狐狸妖怪】ゲームの紹介をしたいと思います

 0人が待機中です 10分後にライブ配信開始

 

 

 

 よし、こんなもんだろう。あと十分で動画が始まってしまうので、それまでに心の準備を済ませておこう。最初はいきなりだが生放送にすることにした。そっちの方が素を出しやすく、視聴者にもなじんでもらうことが出来るのではないかと考えたからだ。まぁ、あくまでこれは実験的な試みなので、うまくいかない可能性もあるけどね。

 

 あっ、ちなみに狐狸妖怪ってのは僕の一押しのゲームの事。恋愛要素を売りにしたゲームだが、タイトルから内容を想像しにくいためあまり売れなかった。

 

 このゲームの主人公は普通の村人。そんな彼のもとに美しい女性がやって来るところから物語が始まる。

 

 主人公は様々なイベントを通して彼女との距離を縮めていき、やがて二人は特別な関係になる。しかし、幸せな日々は続かない。ある日、ふとしたことで彼女が化けギツネであることが発覚してしまう。化け物を見つけたら始末するのが村の掟。村人たちは主人公に彼女を殺せと命じる。そこで主人公がとった行動は……?

 

 正直なところ、舞台設定や人物造形など粗が目立つ部分も多いし、展開も急すぎる感がある。ただ、この手の物語としてはかなり完成度が高いと思う。主人公の心情描写を丁寧に描きつつ、物語のクライマックスで一気に畳みかけるという手法もいい。そして何よりラストシーンの演出が素晴らしい。僕はこのストーリーが大好きだ。

 

 また、ストーリーだけではなくゲーム性も魅力的だ。恋愛ゲームとしての基礎がきちんとしており、システム面にも大きな不備はない。ヒロインの数も豊富で、王道な子から個性的な子まで様々いるため、好みに合わせて選べるようになっている。ちなみに、僕のお気に入りは狸耳幼女こと白雪ちゃんである。

 

 また、恋愛以外にも様々な要素があり、料理や釣り、部屋の模様替え、採掘、狩り、農業といったミニゲームもある。これらの要素をうまく組み合わせることでシナリオを進めていくことになるのだが、なかなか奥が深い。特に釣りでは、釣れる魚の種類によってルート分岐が発生することもあるため、かなりやりこむことができる。

 

 他にもクリア後には隠しキャラが登場するなどのおまけ要素もあり、ボリュームも十分にある。まさに「完全版」と呼ぶにふさわしい作品だろう。

 

 

 

 こんなに要素の多いゲームであるのにも関わらず、狐狸妖怪はよく分からないクソゲーとして扱われているのが納得できない。僕の配信で、このゲームの本来の魅力を伝えてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                     

                        

 

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