side斬騎
オッサンを気絶させた俺は内心で葛藤を繰り広げていた。
………咄嗟に助けちゃったけどこれからどうしよう?
ってか二つ名持ちみたいな登場してただ者じゃないぜ感出してみたけどなんだよ《呪怨の刀使い》って、中二病か!?
再発症か!?
うわあぁぁぁぁ!スゲー恥ずかしーー!
「《呪怨の刀使い》だと?
聞いたこともないな?」
当然です。今即興で考えただけだから。
俺は少女の縄をほどき、老人に向き直る。
「あのアラガミは危険だ。
今すぐここから退避しろ」
「ふん、馬鹿め!
《女神様》が我等に仇なす訳ないだろう!
さぁ、《女神様》!あの忌まわしいゴッドイーターを消し去ってください!!」
すると、徐々に接近していた巨大なアラガミーーヴィーナスはゆっくりとじいさんの方を向き、
グシャリ
じいさんを叩き潰した。
ヴィーナスが足を上げるとそこには潰れたトマトみたいなモノが残っているだけ。
その様子をまともに見てしまった少女は涙目で震えていた。
まずはこの子と…オッサンを安全なところへ避難させないと。
俺は気絶しているオッサンを担ぎ、少女を連れて走り出した。
ヴィーナスはまるで遊びかのようにゆっくりと追ってくる。
好都合だ、アイツが余裕をこいてる今の内に逃げ切る!
ヴィーナスと俺たちの間がかなり開いたところで俺はスタングレネードを全力で投げ付けた。
キャアアアァァ!?
ヴィーナスは眩い光で目が潰れて悶えていた。
その間に俺は少女とオッサンを安全地帯に運びきると反転して、ヴィーナスの方へ全力で走った。
俺がいると《騒音》のスキルで全員見つかる。
だから俺は一人、囮としてヴィーナスを惹き付けることにした。
sideアルカナ
《呪怨の刀使い》と名乗る少年により、助けられたわたしは建物の中に隠れていました。
彼は気絶している男を手早く縛り、わたしに
「君はここに隠れていてくれ。
俺はヴィーナスを出来るだけここから遠くに移動させてくる」
と言って、そのまま外に走っていきました。
わたしに何か出来ることはないでしょうか…?
あのアラガミからは途方もない力を感じました。
恐らく彼一人では太刀打ち出来ずにさっきの老人の様に死んでしまうでしょう。
『…斬…君、聞こ…ザザ…応答し……ザザザ』
?
あれは?
近くに行って確かめると通信機の様です。
『斬騎君!応答して!
もし遭遇してもヴィーナスは君一人じゃ倒せないよ!
今、救援部隊を向かわせたからもう少しだけ待ってて!』
通信機から焦った様な女の子の声がします。
話の内容から察するにあのアラガミはやはりとてつもなく強いみたいです。
わたしは通信機の向こうの彼女に現状を伝えることにした。
「あの、彼なら今そのアラガミを引き付けていますよ?
通信機はわたしたちを逃がす時に落としてしまったみたいです」
『ッ!あなたは誰?
まさか《自称、世界平和を願う女神崇拝者》の一員?』
「違います!
心外です!
わたしは『生け贄』として連れて来られた被害者です!
あんな連中と一緒にしないで下さい!」
『ご、ごめんなさい。
それで斬騎君は今ヴィーナスと交戦中なの?」
「はい、みたいです。
早く助けてあげて下さい!
さっきも一人殺されたんです。
このままじゃ彼も………!」
side綾佳
『はい、みたいです。
早く助けてあげて下さい!
さっきも一人殺されたんです。
このままじゃ彼も………!』
私は予想通りか、という脱力感と斬騎君がヴィーナスと戦闘中だということに対する焦燥感で一杯だった。
前回は《黄泉がえり》があったから寸でのところでどうにかなった。
だが今回はソロ狩りだ。
頼れる味方は一人もいない。
斬騎君は一人であのヴィーナスを相手に立ち回らないといけないのだ。
「とにかくあと三分持ちこたえて!
その間に救援部隊が到着するから!」
『えっと……。
どうやら彼は更に遠くへ行ってしまった様です』
斬騎君のあほー!
どうして自分から危機を招くのよ!?
状況が悪化してるよ!
side斬騎
「ここまで来れば、被害はないだろ。
さて、じゃ行きますか!
………って、げ!
なんじゃそりゃ!?」
キャアアァァ!
ヴィーナスはいきなり全身に帯電するとこちらに向かって凄まじい速度で走ってきた。
俺はこれ以上走るとスタミナが切れると思ったのでギリギリまで引き付けてから回避する。
だが、
バリバリバリィッ!!
「ッ!ぐ、あぁあぁ!?」
突進を回避した俺をヴィーナスは纏っていた電気を周囲に放つことで確実に攻撃を当ててきた。
その予想外の挙動で俺は雷撃を避けきれずに全身を焼かれた。
更に、
ガボンッ!
ヴィーナスの背中からクアドリガの様なミサイルが放たれる。
未だ雷撃による痺れが取れない俺は飛来するミサイルを胴に食らった。
あまりのダメージに意識が飛びかけたが、回復錠改で体力を回復し、すぐさま反撃に打ってでた。
ゼロスタンス!
俺のブラッドアーツはここ一週間でどんどん成長し、今では漆黒の靄を刀身以外にも纏えていた。
靄が形を変え、黒いコートに変わる。
刀身に纏わせた靄も更に濃い黒色になる。
狙うは短期決着だ。
一気にケリをつける!
次回、コートの正体が明らかに!