………どう考えても入隊して一か月も経たない新人が受けるものではありません。
side綾佳
この班別けにしたのには理由があった。
まず、対ハガン、セクメトチームはまとめ役のコウタさんに加え、斬騎君を除く第一部隊のメンバー、そして《誘引》で戦場を二つに分ける役としてナナと《直覚》で敵の体力残量を確認することで味方に指示を出すシエルを加えることで的確に行動できるチームを完成させた。
そして、対マガツキュウビチーム。
まずは私とリンドウさん。
これは前回、キュウビと戦った経験があることから一部の攻撃にある程度対策を立てられるから。
次にギル。
《鼓吹》による攻撃力上昇で短期決着をつけるためだ。
防御不可能の機能不全フィールド形成ーー仮称、殺生石を出される前に決着をつけられるのが理想的だ。
最後に斬騎君。
まだ新人とは言え、その戦闘力には目を見張るものがある。
呪刀による他を寄せ付けない圧倒的切断攻撃力。
更にブラッドアーツによる結合崩壊加速。
まさに今回の目標である短期決着に打ってつけだ。
ただ一つ問題があるとすれば……。
「斬騎君、今回ばかりはその運の悪さを発揮しないでよ?」
「……出来るだけ頑張ってはみますが期待はしないで下さい」
創痕の防壁
「それじゃあ手筈通り頼んだよ、皆!!」
『了解!!!!』
私とギル、斬騎君はリンドウさんとマガツキュウビの戦いに颯爽と割り込むと同時に少し離れたところにいたハガンコンゴウ、セクメトとコウタさんたちが戦闘を始めた。
「おお、お前ら!
助かったぜ…。
流石にコイツら三匹をまとめて相手にするのは無理があった」
「むしろここまでもった方がおかしいですけどね…」
「さて、と。
んじゃ、もうひと踏ん張りしますか!
危なくなったら逃げるぞ!」
「了解です!
『生きることを諦めるな!』ですね?」
「その通り!」
私たちはリンドウさんを含めた4人で黒いキュウビーーマガツキュウビに向き合った。
side斬騎
え?
今の言葉…どこかで?
綾佳さんが言った『生きることを諦めるな』と言う言葉が何故だか懐かしく感じられた。
!おっと、いけね。
今は目の前の戦いに集中しなくては。
コオオォォォォ!!
マガツキュウビはオラクルで尻尾を更に増やした。
成る程、だから『キュウビ』なのか。
マガツキュウビは大きく吼えると増やした尻尾から無数の細かなレーザーを打ち出す。
いつもの俺では避けられないが、今回は…
「はああぁぁぁ!!」
綾佳さんの《バリアスライド》がレーザーをまとめて打ち消した。
バリアに当たらなかったごくわずかなレーザーなら俺にも回避が可能だ。
リンドウさんは弾幕の消えたことで硬直したマガツキュウビの顔面を叩き割る様に剣を降り下ろす。
続いて俺も靄を纏った呪刀で厄介な尻尾を切断し、レーザーを放てなくする。
追い討ちをかけるかの様にギルさんの血の力《鼓吹》が発動し、全員の攻撃力を引き上げる。
「皆、下がって!
インパルスエッジで吹き飛ばす!」
この一連の猛攻に堪らずダウンしたマガツキュウビに綾佳さんのインパルスエッジが炸裂した。
…………やった……のか?
しかし、インパルスエッジで起きた煙が晴れたそこには……
マガツキュウビが天に向かって咆哮する姿があった。
「不味い!!
皆、この場から離れて!!!
殺生石が…来る!!」
綾佳さんの警告が終わる寸前に俺はいつものスタミナ切れから来る脱力感とは違う、命そのものが抜けるような感覚に襲われた。
空中を見ると禍々しい球体が浮いていた。
あれが……殺生石…。
『各戦闘域で偏食場に大きな乱れが生じています!
そこに居ると偏食因子の機能不全に陥ります!
皆さん、逃げて下さい!!』
俺は必死でその場から離れたとにかく走った。
だからこそ、その事態は発生してしまった。
そう、
スタミナ切れ
またかーーー!!!
またですよ!
皆さんもスタミナにはご注意下さい。