当たらなければどうということはないのだ。
そう、例え味方からの誤射でも当たらなければ…………!
side斬騎
初任務から二週間、ようやく第四小隊の隊長ーーハルさんが復帰した。
二週間の間に俺に被弾する弾の数はだいぶ減った。
断じてカノンの誤射率が下がったわけではない。
俺の誤射回避技術の向上が著しかっただけだ。
「私、最近誤射が減りました!」
カノンはハルさんにそう嬉しそうに報告していた。
「そうか、良かったな」
ハルさんは俺の様子から事情を察したのか、ひきつった笑顔でカノンに応じていた。
そして俺に
「大変だったな、何でも初日に五連鎖したとか」
「実地訓練以来に死ぬかと思いました。
誤射、火炎弾、雷撃のループは今でも悪夢です」
「………頑張れ、いつかいいことあるさ………多分」
最後の一言で台無しだ!
最近、いいことなんか一つもないからその『いつか』はかなり遠い未来なんだろうなぁ。
俺は思わず溜め息をついた。
さて、今日はどんな
エイジス
今日のミッションはハンニバルの討伐だった。
わぁ、今日も月が緑だなぁ、と現実逃避をしても変わらない。
ハンニバルである。
ハンニバルなのだ……!
一時期、不死のアラガミとまで謳われたあのアラガミである。
現実は甘くない。
ガルムに始まり、先日は神機兵の大軍を蹴散らしてきた俺も流石にハンニバルとは戦いたくない。
だって明らかに目の前にいる奴、ヤバそうなんだもん。
グアアアァァァ!!!
右手に炎を纏い、現れた人竜。
その炎の色は紫。
体の色は漆黒。
やっだー、侵喰種じゃないですかー……。
事前の情報じゃ通常種だって言ってたのにー。
「攻撃に当たらないように気を付けろ!奴は通常のハンニバルとは比べ物にならないほど高い攻撃力だ!」
ハルさんが俺に警告する。
殴りかかってきた黒ハンニバルから距離を取りつつ、機鋼小銃乙参型から奴の弱点である氷属性のバレットを連射する。
集中的に目を狙う。
目が潰れれば戦いやすくなるからだ(ただし俺を除く)。
だが、素早い黒ハンニバルにはなかなか当たらない。
あ、手元狂っちゃった。
俺の放った弾丸は吸い込まれるように黒ハンニバルの一番脆弱な部分をぶち抜いた。
そう、背中の一部分に。
ズカーン!
グアアァァァ!?
逆鱗壊しちゃった。
てへ?
「斬騎いいぃぃ!?」
グアアアァァァァ!!
黒ハンニバルは背中から紫の炎を吹きあげながら怒り狂っていた。
当然だ、逆鱗を破壊したからな。
俺は神機を呪刀に戻すと黒い靄を顕現させた。
さて、責任とって黒ハンニバルを引き付けるか。
凄まじい勢いで迫りくるハンニバルをギリギリまで引き付けて躱し、すれ違い様に籠手を切りつける。
流石に一撃では破壊できなかったが、黒い靄はまとわりついた。
しかし、このままでは危険だな。
ただでさえ弾速が遅いブラストのカノンと、小回りの効かないバスターの使い手であるハルさん。
二人と黒ハンニバルの相性ははっきり言って最悪だ。
「ハルさん、カノンを連れて一時撤退して下さい」
「お前はどうするんだ?」
「囮になります」
「駄目だ、俺たちも最後まで戦う」
「では、はっきり言います。
足手まといになるので下がってください」
「………勝算はあるのか?」
「俺一人なら確実に勝てます」
「そうか、だが危なくなったらすぐに呼んでくれよ」
ハルさんは俺が本気で言っていることに気付き、カノンを連れて一時撤退の準備を始めてくれた。
「死ぬなよ」
「大丈夫です。
生きることを諦めるつもりはありませんから!」
「その意気だ!」
俺はスタングレネードを投げ付けて、黒ハンニバルの動きを止めた。
それと同時にハルさんとカノンは撤退する。
そして撤退が完了したのを見計らって俺はコートを顕現させた。
黒ハンニバルはやはりいつも通り目が潰れているにも関わらずこちらを的確に攻撃してくる。
《騒音》と《存在感》のせいだ。
俺はカノンの誤射対策法考案中に偶然、発見した靄操作で攻撃を逸らしつつ、呪刀で反撃を試みる。
グアアァァァ!
黒ハンニバルは呪刀を警戒し、後ろに下がる。
そして僅かなタメの後、紫の火炎ブレスを吐き出した。
「わっ、アチチチ!」
コートに発火した。
俺はコートを靄に戻して鎮火する。
黒ハンニバルは狙っていたかのようにコートが消えた瞬間、反撃を開始した。
両手に紫炎の剣を作り出し、振り回す。
高速で振るわれる剣を紙一重で躱していく。
ここ二週間鍛え続けた回避技術は伊達ではない。
以前よりも攻撃を予測できる。
躱す、捌く、避ける、逸らす。
次々と迫る攻撃から身を守りつつ隙を窺う。
反撃の糸口を見つけるために。
斬騎君の回避技術はもはや魔○戦争の《
未来予知に近いね!