斬騎君の出番のために!
「マリー………!」
ギースは仕切りで隔離された先のベッドで眠っているマルグリットを見つけて仕切りのギリギリまで駆け寄った。
マルグリットはギースが来たにも関わらず、やはり反応がない。
「あの腕と顔の紋様……」
「うん、黒蛛病患者の証拠だよ」
黒蛛病の段階はいくつかある。
初期は風邪に似た症状、そこから徐々に進行し、身体機能の低下、吐血といった症状が出るようになる。
更に衰弱が進んだ感染者にはある特徴が身体に現れるようになる。
それがこの黒い蜘蛛のような紋様である。
「彼女が黒蛛病集中治療病棟に運ばれなくて良かったよ。
彼処は集中治療とは名ばかりの黒蛛病患者収容施設だったからね」
「あぁ、それに関しては助かった。
ここに来る途中でフライア乗っ取り事件のニュースは俺も観たからな」
黒蛛病患者を利用して神機兵を量産するという非人道的な要求をしているバカがいるとのことだった。
「これは極秘なんだが、ユノ君も今、黒蛛病に感染しているんだ」
「何だと……!」
ユノまでが黒蛛病に感染していたとはな。
これは本格的に不味い。
「私はこれからユノ君の検査結果を確認するために一度戻るよ」
「そうか、わかった」
サカキは病室を去っていった。
残された俺とギースは立ち尽くすしかなかった。
一週間後
サカキ曰く、終末補食が起きるらしい。
いや、超展開過ぎて俺自身付いていけてないが。
それを阻止するためにとる行動は終末補食による終末補食の『相殺』。
なんだそりゃ。
ま、そんなことは俺には関係ねーか。
俺は精々この支部でその作戦とやらの成功を祈るだけだ。
さて、今日もマルグリットの病室へギースと共に見舞いに行っていた俺はある不思議な事態に遭遇した。
『♪~♪~♪~』
「これは……歌?」
「ユノの『光のアリア』だな。
俺たちも歌うか?」
「そうですね、もしかしたらマリーの容態が良くなるかもしれないし」
二人で『光のアリア』を歌う俺とギース。
どうやら支部内のほとんど全ての人間が歌っているらしく、様々なところから歌が聴こえる。
それから数分後、奇跡が起きた。
ズズズズズズズズズズ!!!
「な、なんだ、アレ!?」
外に白黒の巨大な木の様なものが現れていた。
だが、俺は別の変化に目を奪われていた。
「おい、ギース見ろ!
マルグリットの黒蛛病の紋様が……!」
マルグリットの紋様が青く輝き、外に現れた木の方へ飛んでいった。
そして、
「………ん、……ギー……ス……?」
「ッ!マリー!?」
マルグリットが目覚めた。
どうやら作戦の成功は思わぬ副作用をもたらしたらしい。
つまり、
「黒蛛病の完治……か。
良かったな、ギース。
これで恐らくマルグリットは助かるぞ」
三日後
マルグリットの容態は死にかけていたことが嘘だったかの様に好転していった。
数ヵ月間、動いていなかったのでリハビリは必要だが、ゴッドイーターの回復力ならすぐに通常の生活が送れるくらいには戻れるだろう。
だが、問題はその後だ。
二人の生存がバレればまた戦場に後戻り。
ギースにもマルグリットにも抗う術はない。
ま、ここまで来たら最後まで面倒見てやるとするか。
俺はサカキとある取り引きをした。
俺が求めたのは
一、ギースとマルグリットの身柄
ニ、二人の神機
三、P53偏食因子の安定供給
以上3つだった。
三年前になくなったはずだったギースの神機はちゃっかりサカキが回収していたみたいだ。
抜け目のない奴め。
俺はその3つの条件と引き換えにこの前、研究所を潰した時に回収していた資料を渡してやった。
その中にはいくつか有用な物もあったらしくサカキは目を輝かせていた。
この取り引きは難なく成功し、二人の身柄は俺が預かることとなったのだ。
「と、言うわけでお前らの身柄は俺が預かった」
「いきなり出てきて何言ってんですか?」
「お前らはもう、自由の身だ。
オメデトー」
「「は?」」
チッ、察しのワリー奴らだな。
俺はサカキとの裏取り引きを懇切丁寧に説明してやった。
最初は怪訝そうな顔をしていた二人だったが、話が進むにつれて驚愕と歓喜の表情に変わっていった。
「じゃあ、俺たちは……!」
「もうフェンリルのいざこざには巻き込まれねーよ」
念を押すようにもう一度言ってやる。
「あ、でも………」
マルグリットが何かに気付いて表情を曇らせた。
「どうした?」
「これからここを離れてどこで暮らせば良いのかなって………」
なんだ
「じゃあ俺の隠れ家の一つをやるよ。
ギース、お前が最初に運ばれたトコだ」
「え?良いんですか!?」
「構わねーよ、あそこ遠いからあんまし使わねーし」
「でも………」
「あー、もー!人がやるっつってんだから素直に受け取っとけ!
大体俺は最初に関わった時から最後までお前らの面倒見ることは覚悟の上だっつーの!!」
俺がイラッとして叫ぶと二人は顔を見合せた。
そして一瞬の逡巡の後、答えを出した。
「「ありがとうございます!!」」
「おう!」
こうして二人の長い苦難の旅は終わりを告げた。
ギース「そう言えばカルメラさんって一体何者だったんだろう?
結局最後までフード取らなかったから顔すらわかんないし」
マルグリット「そんな得体のしれない人と行動してたの!?」