その砂が落ちきるまで   作:斉藤努

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どうもこんにちは、斉藤努です。
今回は初めて企画物に参加させて頂きました。拙い文ではありますが、楽しんで貰えると幸いです。


第一話:邂逅

 桜が咲き誇り、新しい出会いを満喫する季節。それが春。社会的に見ればそうなのかもしれないが1年を通して半袖に短パンだった小学生の自分にとっては春夏秋冬など関係なく友達と河川敷で遊ぶことができればそれだけで良かった。でも、それも彼女の歌声を聞くまでの話なのだが。

 

 “Twinkle Twinkle Little Star”身近な言い方で言えば『きらきら星』。綺麗で澄み切った声。大量に汗をかいてとてつもなく暑かった筈なのに爽やかな風が吹いたように俺の気持ちを穏やかにしていった。

 

 それから毎日俺はその河川敷に通い詰め、日が暮れるまでずっと彼女の歌を、声を聞き続けた。その後学校で彼女を見かけた際には奇跡なのだと、これが運命なのだとさえ思い込んだ。

 

 ……けど、そんな運命とか奇跡とかある訳ないんだよね。俺には彼女を救うことなんてどう頑張っても無理だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっとあんなゴミ溜めみたいな、俺から彼女奪い取ってなんにも反省しないクズ共と別れることができるんだ。

 

 彼女は少し遠くの中学校に通ってしまってもう暫く会ってはいない。……もしも、たまたまこれから通う高校が同じだったらいいなと思ってしまう。なぜこんな淡い期待を抱いてしまうのだろうか。

 

 姉が通っているから、そんなくだらない理由で入った学校だけどそれなりに頑張った結果なのだからそんな偶然あってもいいと心の中で思っている? なら俺って馬鹿なんだな。本当に馬鹿だ。

 

 今日はそんな学校の入学式だ。一応姉に声をかけると『在校生は明日からなんだから起こすな』と言われた。

 

 はぁ、深いため息を着きながら真新しい制服に袖を通す。憂鬱でありながら楽しみでもある。その証拠に登校時間の2時間前にもう家を出ようとしているんだ。小学生かよ、と自分でも言ってしまいそうになる。

 

 

 

 

 

 

 家の最寄りの大塚駅前停留所に着くと数分待ってから電車か来たため中に入る。ドアが閉まり、鐘の音が2回鳴る。同じ制服を着た人がいるけどイヤホン付けているし話しかけにくい空気を纏っているので何も触れないことにした。

 

 ……気まずい。なんかたまに目が合う。合う度に逸らされてキョロキョロしているけど。ちょっと彼女と雰囲気が似ているような、似ていないような。あ、やばい完全に目が会ってしまった。取り敢えず笑顔で会釈をしておこう。

 

 そういえばあの子どんな音楽聞いてるのかな? 最近流行りの曲は余り知らないけどアニメソングだったりしたら多少は分かる。意外とクラシックとか聞いてたり? 手がとてが綺麗ピアノを弾いていたり。真っ黒のピアノにあの子の純白の手は似合うと思う。

 

 そんなくだらない妄想をしていたら早稲田停留所に着いてしまった。ここから迷わないようにしなければ。

 

 一緒に電車に乗っていた子はそそくさと出ていってしまったのだがその際になにか冊子のようなものを落としたのだ。拾って直接渡せられればいいがもう姿は見えない。まぁいい、後で教師に渡せば届けてくれるだろう。そう思ってその冊子を手に取り自分の鞄に詰めようとした時に名前が見えてしまった。

 

 二度見した。瞬きをした。何度か目を擦った。それでもその字は俺の眼の前に現れる。

 

戸山香澄

 

 あの子が? 俺が恋焦がれた彼女なのか? 

 

 確かに中学校は違うから三年間会っていない。けど、あんなに変わってしまうのだろうか? 彼女はキラキラ輝いて直視できないくらい眩しかった。けどあの子にそんな風格は一切感じ取れなかった。

 

 もし、あの子が俺の知っている戸山香澄なのであれば歌声を聞きたい。けれどそれはもう無理だろう。あの時、彼女に手を差し伸べられなかった俺にはそんな権利あるはずないのだから。




いかがだったでしょうか。この作品に少しでも興味が湧いたら是非小説版バンドリを読んでみて欲しいです。Amazonとかで調べればすぐ買えます!

それではまた次の話で。
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