その砂が落ちきるまで   作:斉藤努

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どうもこんばんは、斉藤努です。第2話目、お楽しみください。


第二話:混乱

『き〜ら〜き〜ら〜ひ〜か〜る〜お〜そ〜ら〜の〜ほ〜し〜よ〜』

 

 その声はずっと頭の中に残り続け、絶対に忘れることはないし、忘れられないだろう。

 でも、彼女の顔には黒いモヤが掛かかっていてよく見えない。どれだけ駆けても近づかない。手を伸ばしても届かない。

 

 やはり俺はもう彼女とは会えないのだろうか。

 

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 気が付くと目の前は白い天井だった。記憶を呼び起こしてみるが電車を降りたあとのことがどうしても分からない。どこかで倒れて運んでもらったのか、そうだとした運んでくれた人がいるはずなんだけれど。

 

「やぁ、起きたんだね。その様子だとここがどこだかわかってないみたいだよね。ヒントは君がこれから三年間通う学校、かな?」

 

 目の前に現れた人は俺の心の中を覗いたかのように俺の疑問を口にした。

 

 そうか、ここは花咲川学園の保健室みたいなところなんだな。てことは一応学校には着いたのか。

 

「うんうん。それでね、校門の前で倒れてるのを見つけた先生がいてくれたからここに運んでもらって今救急車呼ぼうかな〜って時に君が目を覚ましたってわけ」

 

 後少し遅かったら病院で目を覚ましてたって事か、危なかった。というかどれぐらい眠っていたのだろうか。もしかしてもう入学式が始まっていたりして!? 

 

「大丈夫大丈夫、まだ7時30分位だからね。君が2時間前行動をするようなバカ真面目くんのお陰でまだ時間は気にしなくてもいい。クラス分けはもう校舎前に掲示されてるけどね」

 

 なんでこんなに心を読んでくるの、もしかしてこの人エスパー……?

 

「違う違う、君の顔に全部書いてあるだけだって。君は面白いね」

 

 ここにいるとずっとこの人に揶揄われそうだ。早くお暇することにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し彷徨って見つけた掲示板にクラス分けの表を最初の方から見ていると最初の方に自分の名前が書いてあった。

 

 だけどその前には彼女の名前が目に入る。真実を受け入れたくなくて、見て現実を知るのが怖くて目を逸らしてしまう。電車の中での事を思い出す限りきっと彼女は俺の事を思い出していないのだろう。……元々俺の事を認識していないだけという可能性もあるが。それならそれでいい、だって俺が我慢すればいいだけだから。

 

 待機場所の教室に行くとやはり彼女はいた。しかしただぼんやりと外を眺めているだけで魂が抜けているようだ。あっ、そうだ、これを渡さないといけないんだった。

 

 落ち着け俺、ただ声を掛ければいいんだ。難しいことじゃないだから深呼吸をして……。

 

「あっ、あのっ! これ、学校来る途中に落としましたよ。戸山さん」

 

「えっ!? あ、ありがとうございます。……もしかして朝一緒に電車に乗ってましたか?」

 

「そうです。すぐ追いついて渡せれば良かったんですけど見失っちゃいまして……あっ、自分富久霧香(とみひさきりか)って言います」

 

「ありがとう、富久くん。私は戸山香澄、その紙に書いてあったよね」

 

「1年だけどこれからよろしくね。戸山さん」

 

 できるだけの笑顔を貼り付けそう騙る。緊張で胸はバクバクし、汗が止まらない。

 

「せき……席前なんだね。奇跡みたい、ふふっ」

 

 彼女が控えめな笑顔を見せた。この顔を見ると『昔から貴女の歌が好きだった』みたいなキザっぽいセリフを吐いてしまいそうになる。そんなことをしてしまったら俺は彼女を傷つける、だって俺の俺の自己中な考えだから。

 

 ……彼女は俺の知っている彼女じゃないんだ。だからこんな子供のころ抱いた感情なんか捨ててしまおう。昔の記憶は一切封印しよう。変なボロが出たら彼女を苦しめてしまうかもしれないじゃないか。

 

 今までの俺も彼女ももう居ないんだ。過去に囚われるのはもうやめよう。どうせ全て消えてしまうのだから。




この話の香澄はオリジナルよりも少々性格が明るくしています。まぁ、許してください。

それではまた次回。
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