「どうしたの、あんたら。なにか用?」
そんなぶっきらぼうな言葉を放ったのはふたつ金色のおさげを揺らす少女だった。
見た目にそぐわず結構強めの言葉を使うんだなと先の彼女を見ていると目が合った……ように思えたが彼女が見ている対象は自分ではないらしい。
「あんた、男の方じゃないわよ。あんた今日の朝来てた冴えない女子高生でしょ」
戸山さんを指さしてそういうパツキンツインテ少女。指を刺された戸山さんは怯えて俺の背中の後ろに隠れた。……なんというか近い。すぐ後ろから『う、う……』と聞こえるしそれに伴って戸山さんの息が首元に触れる。くすぐったい。それに戸山さんの、女の子特有香りというのだろうか。甘い香りで理性が飛びそうになった。……いかんいかん。俺は初対面だけどパツキン少女と戸山さんは朝に1回あっているんだよな。人見知りモード発動中だけど。もうそろそろ背中から離れてくれないかな?
「えぇと、私、富久って言います。戸山さんに『見たいものがある』と言われてここに連れてきて貰ったんですけど、もうしまっちゃってたみたいで。見せてもらうことってできますか?」
なるべく丁寧に、相手を怒らせないように、言葉を綴る。そうしたらパツキン少女は猫の皮を被ったように顔色が明るくなった。
「きっと、ランダムスターのことですよね。蔵の中にあるので着いてきてください」
今彼女ランダムスターって言った? あの星型の? ランダムスターなんかを持っている音楽の変人がわざわざ質なんかに流すだろうか? 亡くなって遺品になったのならまだわかるけれども。
色々考えながらもパツキンについて行く。戸山さんも俺の制服の端を掴みながらトコトコと歩いている。カワイイ。
しばらくついて行くと行き止まりにぶち当たった。不思議に思っているとパツキンが『こっちよ』と言って下に降りていく。どうやら階段があるみたいだ。少し怯えたがら下に踏み込むと部屋の光が目に入る。そして気付く。真正面に大きな文字があることに。
ただ、それだけだった。いや、それだけでは無い。音楽用の品々、昔懐かしいゲーム。小さな時に作ってみたかった秘密基地のような、浪漫というものを体現したかのような空間だった。しかし、敢えて何か言うのであれば夢だった。
そこに『我こそは此処の
「あの、パツ……そういえばお名前聞いてもよろしいですか? 改めて、自分は富久霧香です。後ろにいるのは戸山香澄さんです」
「そう。私は市ヶ谷有咲。かすみんときりりはこのギターを見に来たんでしょう?」
「そうですよね、戸山さん?」
「は、はぴぃっ! そうです!」
急に声をかけられたから驚いたのか、変な声をあげる戸山さん。有咲さんに手を引かれてランダムスターの方へ近付いていく。五分……いや、十分程だろうか。
「ねぇ、かすみん。見てるだけでいいの?」
「えっ! な、なに!? ありさちゃん?」
「楽器は装備するものよ。楽器は戦争だって終わらせちゃうさっいっきょーの武器なのよ! ね? きりり?」
「そ、そうだよ。折角だから持ってみたら? 絶対、戸山さんに似合うよ」
じゃあ、と恐る恐るギターに近付く戸山さん。戸山さんがギターのストラップに頭をかける。その瞬間戸山さんの表情が変わった。高校に入ってから見慣れてしまった戸山さんではなく、小学生の頃自分が食い入るように聞いて、恋焦がれていたあの戸山さんだった。声をかけたくて仕方がない。でも、あの時みたいに自分の喉から声が出ることはなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録、感想、評価いただけるとありがたいです。
それではまたどこかの作品で。