やはり俺のVR青春ラブコメは間違っている   作:青鬼ちゃん

12 / 24
というわけで12話目です。

ほんと、投稿前に読み返して誤字脱字やらチェックしているにも関わらず
改めて読み返すとどんどん出てきますね・・・

見つけたら報告して下さい。お願いします


一章 拾弍部

 アスナとキリトの二人と別れて一人。

 単独にて初めましてのパーティと臨時で組むことになったわけだが、結局のところやることは変わらない。俺はどこだって独りだ。

 

「だから別に俺は寂しくなんかない・・・」

 

 俺に割り当てられた役割は所謂“斥候”というやつだ。英語で言えばスカウト。新宿の白鳥さんじゃない。

 敵mobの存在を感知し、可能なら各個撃破し、後方の負担を少しでも減らす。新たにトラップが増えていないかなどの調査をしながら、危なそうならリーダーであるベンジャミンにmobの存在を知らせる、簡単なお仕事だ。

 

 道から逸れた草木が茂る中を進んでいく。別に人の道を外したわけではない。

 しかしアレだな。鷹の目のスキルレベルが上がったおかげというのもあるかもしれないが、意外と天職なのかもしれない。っていつの間にか働くことが前提になってしまっているこの状況が恐い・・・。

 

 mobを倒しながら、目的地のダンジョン入口である洞窟を目指して奥へ奥へと進み、ようやく見つけた。

 

 最早けもの道とも呼べないような道は懲り懲りですよ。やたらとハチばかり出てくるし。ハチマンだけに。ってやかましいわ!

 

 そんな下らないノリツッコミを独りボーッと考えているヒマではない。早いとこベンジャミンにメッセージを送ってしまえば、晴れて俺のお役目も御免というわけだ。

 

『さすがだな、もう着いたのか』

 

『別にさすがと言うほどでもないだろ。そんな事よりそっちは問題ないのか』

 

『ああ、大丈夫だ。おかげさまで随分と楽をさせてもらっている。もうすぐそちらに着くだろうから、ゆっくりしていてくれ』

 

 あいよ、と適当に返信してウィンドウを閉じ、洞窟の入口近くの壁に背中を預ける。そのまま地面に座り込んで後続隊を待つことにする。

 

 あー、暇だ・・・。あ、鳥。

 あれって敵性mob・・・じゃないんだよな。

 

 ゲームを進めていく上で必要ではないもの。だが、より世界に没入し、ゲームを楽しむためにあったらいいな、程度のもの。

 このデスゲームのフィクサーである茅場は、なぜそんなものを取り入れたのだろうか。

 単純にプレイヤーを閉じ込めて、デスゲームをさせたいだけならそんなものは不必要なはずだ。

 茅場の目的、やりたいこと、見たいものはなんだ・・・。

 

 ま、俺なんかが考えたって詮無き事か。

 分かったところで何がどうかなる訳でもなし。考えたところでムダだと言えることだ。

 

 

 

 

「おっ、いたいた。ご苦労さま、ハチマンくん」

 

 林道から出て来た一行、ベンジャミンのパーティがたどり着いたようだ。

 

「っす。お疲れさまです・・・。他のパーティもボチボチ到着する頃かね」

 

「そうだねーーー。うん、さっき出立できるってメッセ来てたから心配はないよ。ハチマンくんのお友達の二人も大丈夫そうだってさ」

 

「いや、あの二人は友だちとか、そんなんじゃ・・・」

 

 ない、と言い切れるのだろうか。

 

 試しに、俺たちって友だちだよな?とか聞いてみようか。なんか字面的に嫌なものがあるな・・・。大体いじめっ子が言う常套句みたいだもんな。

 ソースは俺。小学校低学年の時に、そう言って昼休みにボールの片付けだけに呼んだり「比企谷菌が感染るから」という理由で下校の時にランドセルだけ持たせて30m後方を歩かせた尾野だけは許さない。絶対にだ。

 

 しかし、今はそんなことはどうでもいいか。何考えてたんだっけ・・・まぁ思い出せない、と言うくらいなら、それほど大したことでもないんだろ。

 

 「・・・まぁ、あいつらはアレだ、仲間・・・ですよ」

 

 まぁ、“友達”とは呼ばなくても“仲間”というのは間違ってないだろ。むしろ仲間ができてるだけ成長したと言えるな。あれ?もしかして、俺もリア充の仲間入りしてんじゃね?してない?してないか・・・してないな。

 

 それにしてもこの空気、どうにも慣れない・・・というより苦手だ。気の合う仲間同士で互いに労い合ったり、談笑をする光景。

 いや気の合う仲間なんて出来たことないだけなんだけどさ。戸塚?戸塚は別枠だ。大天使トツカエルだからな。俺なんかと同じ枠に入れるのも烏滸がましいまである。ざい・・・ざい・・・なんとかは知らん。

 

 

 

 ベンジャミンのパーティから少し離れたところで一人、雪ノ下に入れてもらっていた紅茶を嗜んでいると、本隊のものと思われる声と足音が聞こえてくる。ふむ、どうやら無事にミッション完了のようだ。もう帰っていいよな。

 

「ダメに決まってるでしょ、まったく。ハチマンくんは何を言ってるのかな?」

 

 そんな呆れたような目をこっちに向けないでね、アスナさん。クセになったらどうしてくれるのん?俺、今喋ってなかったよね。だってお紅茶飲んでましたもん。

 最早表情で読み取るとかのレベルじゃなくない?本格的に俺の背後にモノローグが出てるんじゃないかと疑わしくなってきた・・・。てかいつの間に隣に来たの?マジで気づかなかったんだけど、

 

「なにを言ってるんだ。ここに来るまでに十分すぎるくらい働いたんだぞ。少しくらい俺に優しくしたっていいだろ。俺が」

 

 というよりも、主に世界が俺に優しくするべき。ぼっちInデスゲームなんて、ハードモードすぎる。だからそんなジト目で俺を見ないで?

 

「おっすハチマン、お疲れ様。活躍してたみたいじゃないか」

 

「さぁ?活躍したと言われるほどのことでもねえよ。・・・それよりキリトもおつかれ」

 

 小町、見てるか?お兄ちゃんにもこうして労い合う仲間ができたんだぞ。って見えないか。そうですか・・・。

 努力の成果を最愛の妹である小町に伝えてやれないことに落胆しつつ、周りを観察してみると・・・なにやら視線を感じる。というかこっちを見てる男が一人。

 フードを目深に被っていて顔こそはわからない。だが、その視線は好奇のものではあるが、決して友好的なものではないように思えた。

 

「・・・あいつが持ってる武器、アレは鉈か?珍しいな」

 

「あぁ、あいつか。ここに向かう途中も、うるさい奴かと思えばスッと気配を消して静かになったりで、妙に不気味だったな。

 それと、妙にβテスターへの不満を煽っているようにも見えたかも」

 

 さすが、キリトさんも気付いてマークしていたか。とは言ったものの未だ怪しい、というだけで何ら実害があるわけでもない。今しばらくは様子見といったところだろう。

 

「ハチマンくん、キリトくん。そろそろ出発する時間だよ。早くしないと置いて行かれちゃうよ」

 

「・・・そうだな、キリト、とりあえずあいつの話は後回しでいいだろ。今はとにかくボスに集中しよう」

 

「そう・・・だな。まぁ、ただ怪しいってだけだかしな」

 

 そう、ただ怪しいだけなのだ。疑わしきは罰せず。怪しいだけで罰せられるなら、俺なんて何度罰せられてるか分かったものじゃないな。普段から雪ノ下から目が怪しいだの、言動が怪しいだの、挙動が怪しいだの言われて・・・。よく今まで捕まらなっかたな俺・・・。

 

 そんな締まらないこと考えていて、大丈夫か?大丈夫だ、問題ない。

 

 

 

 そんなしょうもないこと考えているうちにも、ダンジョンの最奥と思われる大きな扉の前に攻略部隊は辿り着いて、各自で装備やアイテムの点検などを行うための小休憩をとっていた。

 幸い、というか当然の事かも知れないが、ディアベル達が前もってダンジョン内のルートを調べておいてくれたおかげで、特に大きな問題もなかった。

 

 というかホントにデカい、というよりも雰囲気のある扉だな。さすがの俺でも緊張しちゃうよ?ほら、今もぎりぎりと右腕を締め付けられてる感覚がね・・・いや物理的に。

 

「・・・なにやってんですか、アスナさん?」

 

 そんなことされたら思わず惚れちゃうよ?そういう仕草が男を惑わし、好きになっちゃって、振られるまでのハッピーセットで、トラウマを植え付けるんだ・・・。ハチマン知ってるよ。だから騙されないもんね!

 大体あなた、そんなキャラじゃないでしょうに・・・。

 

「なんか今失礼なことを思われた気がした・・・」

 

 えぇ・・・なにこの子、本格的にエスパーじゃん。いつの間にゆきのんに弟子入りしたのん?

 

 人垣の中から先日知り合ったプレイヤーが抜けて、こちらへ向かってくる。その大柄な身長のせいで嫌でも目につく。いやホントにデカいな。周りより頭一つ分以上は大きいだろ。

 

「よう、ハチマン。来てたんだな」

 

「まぁ、なりゆきでな。てかエギルもあの場にいたんだから分かってるくせに・・・。あの空気じゃ断れねぇだろ・・・」

 

「ハハハ、間違いないな。でもハチマンが居てくれるなら心強いぜ」

 

「・・・役に立てるかは分からんがな。そういえば、ボス戦の役割はどうなってるんだ?」

 

「お前、そんなことも確認せずにここまで来てたのか・・・。俺たちはタンク部隊だが、ハチマンたちは・・・」

 

「端数の人数でパーティを組んでる俺たちの担当は“ルイン•コボルト•センチネル”。ボスの取り巻きだな」

 

 背後から聞こえてきた声の主は、左手側に位置取ると俺を挟んで向かい側を見ながらニヤついてやがる。

 アスナもさすがに真面目に作戦会議をする空気だと察して右腕から離れる。別に柔らかい温もりが消えて寂しいなんて思ってないからね。というか未だくっついていたんですか・・・。

 

「そのセンチネル?の使う武器はなんだ。まさか手ぶら、というわけでもないんだろ?」

 

「たしかポールアックスだったハズだ」

 

「ポールアックスというと、長い柄の先に斧が付いてるようなやつ、だったか?」

 

「βテストと同じならそうだな」

 

 ふむ、それならば作戦が思いつかないでもない。

 

「それなら先ずは俺が攻撃を引き受けて、奴らの攻撃を弾くから、その隙にスイッチしてキリトとアスナが攻撃を叩き込む」

 

「でも、それじゃあハチマンくんが危ないんじゃ・・・」

 

「俺のパリングのテクはアスナが一番良く分かってるだろ?それにほら、ヤバいと思ったらキリトと代わればいいんだし、相手は取り巻きの雑魚だろ?よゆーだよゆー」

 

 嘘だ。本当ならこんな自分の身をすすんで差し出すようなこんな提案なんかしたくはない。

 しかし、アスナに危険な役割はやらせたくはないし、何よりそんな不安そうな表情もさせたくはないんだよな。そのためなら俺は嘘も欺瞞も飲み込んでやる。

 

「たしかに、ハチマンの言う作戦がベストだ・・・。でも本当に大丈夫か?」

 

「んだよ、信用されてねーのかよ」

 

「そんなんじゃないけどさ・・・」

 

 分かってるさ。心配してくれてんだろ、キリト。でもここは信頼して背中を預けるのが友達・・・ってもんじゃないのか。今まで居た事ないから知らんけど。

 

 剣を床に突き刺す音が洞窟内に響き渡り、弛緩していた空気を再び張り付かせた。

 

「聞いてくれ、みんな!」

 

 ディアベルの声だ、よく通るこって・・・。別に羨ましくはないがな。

 

「俺から言えることはたった一つ・・・。勝とうぜ!」

 

 短い発破をかける言葉に、周囲のプレイヤー達の勢い良く返事をする声に思わず身が竦んでしまう。

 そいうの、やめてくれませんかね。体育会系のノリというか、戦隊モノのレッドみたいなノリ。子どもの頃から怪人役しかやったことないからついていけねえよ。どんなノリでもついていった試しがないけど。

 

 物々しい音と共に、ボス部屋への扉が開かれていく。ついにボス戦が始まるという緊張感と、100層攻略のための第一歩という高揚感。そして“死”への恐怖心という感情は、ひとまず彼方へ追いやっておく。

 

「ハチマン、good luck」

 

 なにそのサムズアップ。めちゃくちゃかっこいいじゃん。俺も機会があったら使ってみよ。永遠に来なさそうだけど。

 

「そっちもな、エギル。・・・死ぬなよ」

 

「おう!生きてたら一杯付き合えよ」

 

「いや、俺は未だ未成年だからな・・・ってもういねぇし」

 

 背中を向けたまま、サムズアップさせた右手を高く掲げて、パーティんお仲間だと思われる一団と合流していった。くそっ、かっこいいじゃねぇかよ。

 

「時間もない。作戦はさっきの通りでいくぞ」

 

「分かった。でも無理はするなよ、ハチマン」

 

「約束、だからね?」

 

 もちろん忘れてなんかいませんことよ?・・・大丈夫だ。俺は未だ死ねない。

 小町にも会いたいし、戸塚に未だ下の名前で呼べてないなんて、死んでも死にきれないからな。それに、アイツらを無事、現実の世界に生還してやらないとだしな。

 

「・・・おぅ、大丈夫だろ、多分」

 

 扉が開き切り、プレイヤー達が中へとゾロゾロと入っていく流れに身を任せて、俺たちも中へ足を踏み入れていく。

 中は薄暗く、長く伸びる部屋の壁際には円柱のようなものが見える。

 全員が部屋の中に入ると、背後で扉ひとりでにが締め切られる。どうやら逃げることはできないみたいだな・・・。

 

 壁や天井がステンドグラスのように様々な色を発すると同時に、奥から恰幅の良い巨大な二足歩行のコボルトが飛び出してくる。おそらく奴が“イルファング•コボルト•ロード“だろう。そしてその足元に召喚された兜を被ってるのが俺たちの請負うセンチネルだな。

 

「攻撃、開始ィー!!」

 

コボルトの突進と同時に、ディアベルの号令が響き渡る。ついに初めてのボス攻略戦の火蓋が切って落とされた・・・。

 

 

 

 

「A〜C隊、前へ!F隊はD隊をフォローしながら退がって!E隊は援護を!」

 

 止めどなくディアベルの号令がボス部屋に鳴り響き続ける。やっぱあいつすごいな・・・。大したヤツだよ、ディアベル。こんな大勢の命を背負って指示を出せるんだからな・・・。

 俺には絶対無理だね。なんなら言うこと聞いてもらえずに後ろから刺されるまであるかもしれん。なんなの?バッジの数が足りてないの?

 

「ハチマンっ!スイッチ!」

 

 キリトの言葉が言い終わる前に、ソードスキルの硬直時間が発生しているキリトと体を入れ替えてセンチネルの攻撃を弾くと同時に、兜も落としておく。結構重いな。

 

「・・・アスナっ」

 

「任せて!」

 

 もろ出しになったセンチネルの頭部にアスナの細剣が突き刺さり、それが決定打となってエフェクトとなり消えていく。

 

「さんきゅアスナ」

 

「グッジョブ、アスナ」

 

「うん、ハチマンくんも、キリトくんもありがと!」

 

 それにしても、いつまでこいつらとやり合ってればいいんだ。倒しても倒しても復活してくるものだから、いい加減にロードとやらを倒して欲しいものだが。

 

 そういや、ナタク達は・・・どうやら頑張ってるみたいだな。

 ナタク達のパーティも、どうやら俺たちと同じでセンチネルの陽動、足止めと頭数を減らすための遊撃部隊を担っているようだ。

 遊撃部隊って、なんかかっこいいよね。好き勝手が許される独立部隊みたいで。そういう意味じゃ俺は人生においての遊撃部隊だな。攻略対象は人生に蔓延るリア充という名の天敵だな。

 

 

 幾度目かの怯みモーションに、コボルト•ロードは武器を落として盛大に仰け反っていた。しかし、あんな見え見えの釣りに引っかかるやつはいないだろう。油断させて近づいたところに、武器を切り替えて範囲攻撃。ファミ・・・じゃなくてアルゴの攻略本通りだ。

 

「情報通りみたいやな」

 

「退がれ!俺が出る!」

 

 範囲攻撃に備えたプレイヤー達を置いてけぼりにして、人影が飛び出す。ディアベルだ。

 何やってんだあいつ・・・ここは周りを取り囲んで、安全マージンをとりながら体力を削るのが定石だろうに・・・。

 

 ・・・っ!?情報にあった武器、タルワールじゃない!?キリトは気付いているみたいだが、当のディアベルは・・・ダメだ、気付いてない。

 

「ダメだっ!!全力で後ろに飛べっ!!」

 

 キリトのその声にディアベルも反応を示すが、時すでに遅しというやつだ。ソードスキルのモーションに入っており、キャンセルも効かない。どうする・・・っ!

 コボルト•ロードが跳躍の姿勢に入る瞬間、俺の足は駆け出していた。間に合うかっ?いや、間に合わせる・・・っ!

 

 破裂音のような音をその場に残し、ディアベルの元へ走り出す。

 スローモーションのようになった世界。後ろではアスナが何やら手を伸ばして叫んでいるいるようだが、何言ってんだか分かんねえよ。で

 も、悪いな。約束、少し破っちまうかも知れねえな。こりゃまた怒られるのかな、生きていればだけど・・・。

 

 警告を叫ぶキリトの横を通り過ぎた時、コボルト•ロードは三角跳びの要領で、既に狙いをつけていたディアベルに向かって上空からの一直線に、その手に持った野太刀で斬りかからんとに向かっていた。

 

「ーーー間に合ええええええぇぇぇ!!!!」

 

 頭からダイブするようにして飛び込み、コボルト•ロードの持っている剣が振り下ろされる直前にディアベルの体に触れ、突き飛ばす。

 よしっ、あとは短剣でヤツの攻撃を弾くだけ・・・。なのだが、ダメだ。体が動かん・・・。

 

 コボルト•ロードの剣に、モロに体を滑らせるようにして切り裂かれるのを感じる。あぁ、ヤバいなこれは、致命傷だわ。

 

 気付いた瞬間には時間の流れは正常に流れている。遠くでアスナの叫ぶような声が聞こえる、ような気がする・・・。

 体力は・・・、ははっ。すげえ勢いで減ってやがんの。

 

「大丈夫かハチマンっ!?」

 

「おう・・・大丈夫そうに見えんのか・・・?体動かねえから回復してくれ・・・」

 

「あ、あぁ!待っててくれ!」

 

「ここは俺たちタンク隊が引き受けるっ!キリトはその死に急ぎ野郎をとっとと回復させろ!」

 

「ハチマンさん!こんなところで死んじゃダメっす!早く回復をっ!」

 

 なに、その死に急ぎ野郎って、まさかの俺のことじゃないよね、エギル・・・?やべぇ、今はちょっと否定できそうにないわ・・・。

 ナタクも随分と言ってくれるじゃねぇか・・・。俺だってこんなとこで死ぬつもりはないんだがな・・・。

 ったく、何を泣きそうになっているんだか、キリト。焦りすぎだ・・・ウィンドウの操作も覚束ないじゃねえか・・・。

 

「キリト・・・落ち着け・・・。ステイ、クールだ・・・」

 

「ハチマンくんっ!!」

 

 アスナの呼び声を聞くが早いか、顔面に向かって何かが向かってきて、強烈な衝撃が・・・なかった。

 気が付けば、アスナが俺の口にポーションを突っ込んで飲ませていた。え?いつの間に?

 

「ん?んー?」

 

 軽くテンパってしまうが、そんな俺のことを誰が責められようか。いかに状況把握能力に定評のある俺でも、これはさすがに理解できないぞ。

 というかアスナさん、俺の体力、ほんっとギリギリだったんだよ?今の衝撃がもしかしたらトドメになってたかもしれないかんね。なにそれ怖すぎる。まぁなにはともあれ、助かったんだから良しとするけど、今後は止めてね?次こそ死ねる自信がある。

 

「ハチマンくんっ!無事?生きてる!?」

 

「・・・あぁ無事だし生きてるよ、たった今死にかけたけどな」

 

 というかアスナさん、近い近い。もう体力も少しは回復したから体も動くから大丈夫だから!だから少し離れて?髪の毛すっごい良い匂いすぎて、ハチマン無事に死んじゃうから。

 

「それより、戦いはどうなってる・・・?」

 

 なんとかアスナを引っ剥がしてキリトに現状の確認をとる。

 ディアベルは・・・ダメだな。茫然自失といった様子だ。あれじゃしばらく使い物にならないかもしれないな。一人突っ走った事への追及は後にするとして、先ずは目の前のコボルト•ロードだ。

 

「とりあえず、今はタンク隊と遊撃隊がローテーションで敵の攻撃を誘導して、各自回復しながら保ってるが、いつまで続くか・・・」

 

 アスナからのポーションのおかわりを手で制して、自分のポーションを飲みながら戦闘音の方に目を向けると、エギル達とナタク達が頑張ってくれているようだ。

 しかし、キリトのいう通り、アレじゃジリ貧・・・長くは保たないだろうな。

 

「うっし・・・。体力も回復できたし、キリト、アスナ。最後、やれるか?」

 

「はっ、誰に言ってるんだ?もちろんだ」

 

「私も、もうハチマンくんにだけ危ないことはさせないからね」

 

 あれ、もしかしてアスナさん怒っていらっしゃる?そんなことないよね?アレは致し方のないことだったんだよ?ダカラハチマンワルクナイ。

 

「そんじゃ、行きますかっ」

 

 かけ声と共に三人ともコボルト•ロードへ向かって走り出す。

 

「うおぉぉぉぉおお!」

 

 声を上げたキリトがコボルト•ロードから振り下ろされる剣を、上へと弾き飛ばす。

 

「ハチマンっ!スイッチ!」

 

「あいよ・・・っと」

 

 大きく仰け反ったコボルト•ロードの土手っ腹を縦に切り裂くように短剣を滑らせ、勢いのままにスライディングで股の間をくぐり抜け、すれ違いざまに左足のアキレス腱を十字に切り裂きバランスを崩させる。

 

「キリト!アスナっ!」

 

「おう!」

 

「了解っ!」

 

 待ち構えていた二人がスイッチして、コボルト•ロードを切り刻む。

 アスナは足元から、キリトは倒れかけているコボルト•ロードの体に飛び移り、そのまま駆け上がりながら切り刻んでいく。

 ・・・が、悪足掻きと言わんばかりに、コボルト•ロードは咆哮を上げながら腕をがむしゃらに振り回し、その右手に構えられていた野太刀は的確にキリトの方へと斬りかかろうとしていた。

 

「ま、そんなことさせないんだけどな」

 

 キリトと野太刀の間に割って入り、攻撃をパリングしてさらに致命攻撃によるダメージを重ねる。あともう少しか。パリングした後に、落下しながら声を振り絞る。

 

「行けっ!キリト!アスナぁ!」

 

「おおああああぁぁぁ!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 パリング直後の硬直の解けていないコボルト•ロードにアスナの一閃が、キリトの連撃が決まる。

 

 最後の体力ゲージみるみるに減少し、ついには赤いゲージも見えなくなった瞬間、イルファング•コボルト•ロードは光のエフェクトと化し、消滅した。

 

【Congratulaition】

 

 空中に浮かぶその文字が意味するところは・・・。

 

『うおおおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!!』

 

 うるっさ・・・。でもまぁ、気持ちは分からんでもないがな。

 このデスゲームに閉じ込められて初めてのボスの攻略。つまりは一ヶ月目にして、ようやくデスゲーム解放への第一歩を踏み出せたのだ。感動も一入というものだろう。

 

「おつかれ、ハチマン」

 

 落下した後、そのまま倒れていた俺に近づきながら手を差し出すキリト。いや、別に立ち上がれなかったわけじゃないんだけどね、なんかもう、立ち上がるのも面倒くさかったっていうのが本音なんだけど、ほんと。

 

「・・・おう、おつかれさん、キリト」

 

 ま、そんな手を振り払うほど俺も野暮じゃないわけで、差し出された手を握り返して、引っ張られる力に身を任せて立ち上がる。まぁ気分は悪くないな、うん。

 

「ハチマンくん!やった、やったよ!」

 

 お、おう。わかった、わかったから。嬉しいのは十分理解できたから抱きつくのはやめてね。スキンシップ過剰すぎない?ガハマさんなの?ガハマさんの影響なの?お願いだからアホの子にはならないでね、ツッコミが捌ききれないから。

 

「あー・・・気持ちは分かるんだが、一旦離れてくれないか」

 

「ご、ごめん・・・。気持ちが昂っちゃって、つい・・・」

 

 え、戦ってたら気持ち昂っちゃう系の女子なの?アマゾネスなの?バーサーカーなの?バーサーカーソウルでずっと俺のターンなの?

 ちなみに俺のターンは回って来ない模様、誰だよ、俺の直前でひたすらスキップしたりリバースするやつ。材木座か、UNOの時のあいつだけは絶対に許さん。

 

 アスナが体を離した後に周囲を見渡すと、依然としてやいやいと興奮冷めやらぬ様子だ。ナタクなんか泣いちゃってるよ・・・。

 キリトとアスナもいつの間にか他のプレイヤー達に囲まれて称賛の声を浴びせられてる。あれれー?おかしいなー?俺もそれなりに活躍してたと思うんだけどなー?

 

「なんでやっ!」

 

 唐突にあがった関西弁の声に、いまの今まで賑やかだった空気が一気に落ち着く。すげぇ、こいつも絶対零度の使い手だったのか。

 

「なんでディアベルはんやなくて、そないなガキどもがちやほやされなアカンねん!」

 

 えっと、名前・・・なんだっけ・・・。キ・・・キ・・・。もう、もやっとボールでいいか。もやっとボールよ、それは悪手だぞ。

 

「この戦闘を仕切ってたんも、このレイドのリーダーも、ディアベルはんちゃうんか?ディアベルはんがおったから勝てんたんやろ!」

 

「・・・・・・それはその通りだが、一つ聞きたい。なぜ急に一人で飛び出した」

 

 おおぅ・・・エギルさんこえーよ・・・。もしかしてちょっと怒ってる?でもそれ以上はやめてあげてね。もうディアベルのライフは0よ!いやまだ生きてるけど。

 

「ディアベル。アンタは優秀な指揮官になりえるかもしれないが、その身勝手のせいで俺の友人が死にかけたんだ。納得のいく返答を聞きたい」

 

 全員の視線がもやっとボールとディアベルへと注がれる。ほらー、だから俺は何も言わなかったのに・・・。

 せめて誰もいないところで内々に終わらせようと思ってたのによ・・・。

 まぁエギルも俺のためを思って言ってくれてるんだろうから、余計ことをっ、なんて思いはしないけどさ。

 

「それは・・・「ラストアタックボーナス、だろ」

 

 ディアベルの言葉を遮って声があがる。誰のって?俺のだよ。

 静まり返った中ならそんなに声を張らなくても案外通るもんだな。視線が集中して少し恥ずかしくなる。

 

「ボスにトドメを刺したプレイヤーにのみ送られる、いわば特典だな。

 新規プレイヤーならいざ知らず、βテスターなら知ってて当然だよな、ディアベル?」

 

 少し芝居がかった喋り方をしながら、ゆっくりとディアベルの方へと歩き出す。

 こちらへ注目していた人集りは、さながら十戒の如く割れ、道を空ける。なんなの?近付いても比企谷菌は伝染らないよ。バリアは効かないらしいけど。

 

 アスナ、悪いな。やっぱ約束守れそうにないわ。だって俺にはこうするしか依頼を遂行させる手段がないみたいだ。俺の考え得る、最適解はコレなんだ。

 

「もしかして、俺が命懸けでお前を守ったとか思ってんのか?ハッ、とんだお笑いだぜ、ちゃんちゃら可笑しいとは、このことだな」

 

 より芝居がかった身振りで周囲を見渡す。そんな表情しないでくれよ、キリト、アスナ・・・。

 

「変に感謝されて笑い殺されでもしたらたまったもんじゃねえからな。もう言っちまうけど、俺はお前の邪魔をしたかっただけなんだよ、ディアベル」

 

 目の前でそう言い放つと、ディアベルは目を見開き、下を向いて唇を噛み締めた。

 

「ホントは俺が横から掻っ攫えたらよかったんだけどな、失敗しちまったよ。ヘマしたおかげで、そいつにラストアタックボーナスを譲る羽目になっちまった」

 

 キリトの方へ腕を広げてみせて、やっちまったよアピール。中々の演技力だろ。モブ専門の男優賞があれば受賞は間違いなしだな。

 

「おい、ハチマン、その辺にしておけ。それ以上は流石に怒るぜ」

 

 エギル・・・さすがにあんたは気づくよな。付き合いは短いが、周りを俯瞰的に見られるよくできた人間だ。そのまま俺を本気で諌めてくれ。約束、覚えてくれてるよな?

 

「なに言ってんだ、エギル?あんただって俺の考えに気付いていたんだろ。

 もしかして、ほんとに気付いていなかったのか?だとしたらそれこそお笑いだ!とんだピエロだよ!」

 

 エギルに胸ぐらを掴まれて、そのまま殴られ、痛・・・くはないが派手に吹っ飛ばされる。手加減してくれたんだろうけど、ちょっとやりすぎじゃない?・・・手加減、してくれたんだよね?

 

「っ痛ぅ・・・」

 

 しかし、これで仕上げも上々だろう。めでたく、“自己中心的に周りを利用したヤツ”と、“利用された被害者”の図の完成だ。すでに周りから、ナタクの「あんたは最低だ!」という声から始まり、「縛り上げろ」だの「袋叩きにしよう」だの「引きずりまわせ」だの野次が飛び交っている。いや、ちょっとみんな過激すぎない?いや、仕組んだ俺が言うのもなんだけどさ。

 

「・・・なんとでも言えよ。それとも本当にここで俺を縛り上げるか?それとも体力を0にして殺してしまうか?できねえだろ。

 ・・・俺はお前らなんかとは違う。生き残るためならどんな汚いことだってやってみせる。」

 

「必要があるなら報酬次第で協力もするが、それ以外で馴れ合うつもりもない。よく覚えておけ」

 

 そう吐き捨てて俺主演の演劇は幕を下ろした。

 もやっとボールの先導のもと、プレイヤー達は口々に俺に対する悪態を吐きながら二層へと伸びる階段を上がっていく。

 そしてボス部屋に残されたのは俺を含めたキリト、アスナ、エギル、そしてディアベルのみとなった。

 

 しばしの沈黙、やがてその重い沈黙を破るようにディアベルが口を開く。

 

「・・・どうしてあんなことを?」

 

「お前の依頼を完遂するためだ、ディアベル。このデスゲームを攻略するためのな」

 

 そろそろネタばらしをしておくか、もうずっと下を向いて黙ってるアスナが怖いしな。

 正直、途中で止められたらどうしようかとも思っていたんだが、そんなこともなく、その静けさがいっそう怖い。怖すぎて直視できないレベル。

 

「俺の依頼、だって・・・?」

 

 えぇ・・・もしかして気づいてくれてないの?一から十まで言わなきゃダメな感じかな。

 

「ディアベルが俺に持ちこんだ依頼は“攻略の手助けをしてほしい”だったな」

 

 ディアベルはこくりと声を発さず、首肯する。

 アスナ以外の面々が俺の方へ顔をむけ、話を聞く姿勢をとるべく少し近くまで歩み寄った。

 

「本来、ディアベルがバカなことをしでかさないんなら、まだ俺がこんなことをする段階じゃなかったんだが・・・。

 まぁいずれはやることになっただろうからな。遅かれ早かれってやつだ」

 

「ハチマンくん、君がしようとしていたこと、というのは・・・」

 

「・・・共通の敵を作る、だな」

 

 その通りだ、キリト。さすがに分かってるか。

 

「そうだ。古今東西、集団をまとめるのは“共通の敵”だ。そしてもう一つ必要なのが、その集団を統率するための“リーダー”の存在だ」

 

 どこの世界にでも必要だろ。悪役(ヒール)と正義(ベイビーフェイス)が。

 

「ディアベルをリーダーに担ぎ上げるために、あえて悪役を買ってでる・・・か。しかしなぜだ?もっと上手いやり方も、それこそ時間をかけていくやり方もあったはずだ」

 

「そうだな・・・。だけどそれじゃ間に合わないんだ。この一層を攻略するまでに一ヶ月。ここから攻略速度は加速するだろう。その時に怖いのは“暴走する集団”だ」

 

 だから明確なリーダーとなり、音頭を執る人間が必要だった。それにはディアベルという偶像は都合がよかった。

 

「だからディアベル、お前にはこれから集団を率いてもらいたい。

 ・・・大体、お前がラストアタックボーナスを狙おうなんてトチ狂ったことを考えなければ、俺はもう少し穏便に事を運べたんだ。その責任はしっかりとってもらうぞ」

 

「あぁ・・・分かってる・・・。本当にすまない・・・」

 

 まぁ、ディアベルも反省してるみたいだし、俺も事情があったとはいえ、計画を話さなかったわけだしな。

 だから泣くんじゃねえよ。自分より年上の男を泣かすなんて居心地が悪いったらありゃしねえよ。

 

 

 

 やがて、落ち着いたディアベルは改めて礼を言って二層への階段を上がっていった。

 

「それにしても、お前からの頼みとは言え、本当に殴る羽目になるとはおもわなかったぜ」

 

「エギルは今回の件、聞かされていたのか?」

 

「いや、俺はただその時が来たら殴ってくれと頼まれただけだ。・・・いつから計画していたんだ?」

 

「大まかには最初の一週間くらいでは考えてたかな。ディアベルがウチに来た時にはもう固まってたし・・・。

 このボス攻略の際に何かやらかすだろうって、なんとなくわかっていたしな。」

 

 まぁ実際はディアベルが来てなかったらキリトを担ぎあげて、なんてのも考えてはいたんだが、キリトはそういうのは嫌いそうだしな。

 

「呆れたもんだ。そんなこと、普通考えついても実行しようと思うか?それに俺も上手くしてやられたってわけか」

 

「俺も、ハチマンがそんなこと考えていただなんて知りもしなかった・・・。今度からはそういうことはきちんと相談しろよな!」

 

「・・・まぁ、善処する。」

 

 俺だってこんな事はもう懲り懲りだ。まさか本当に自分の命を張る羽目になるなんてな・・・。生きてたからよかったものの、死んでたら本当に笑えない。

 

「俺はいつアスナの嬢ちゃんにぶっ飛ばされるかと冷や冷やしたもんだぜ」

 

「エギルもか、俺もハチマンがエギルに殴られた時にはドキッとしたけど、一番はハチマンがディアベルを庇ってるんだと分かった瞬間だな。アスナが飛びかからないか心配したよ」

 

「いやいや、さすがにそれはないだろ」

 

 さすがにな、HAHAHAHAHA!

 

「・・・っと、それじゃあ俺もそろそろ上に行かせてもらおうかな」

 

「あ、おいエギル!置いていくなよ!俺も行くよ!」

 

 なんだなんだ。二人して急にそそくさと行きやがって。そんなに俺と同じ空間にいるのは嫌ですかね。まぁいいか。

 

「俺たちもそろそろ行きますかね・・・アスナ?」

 

 え、本当にどうしたの?ずっとここに居たよね?なんで一言も喋らないの?

 なんでそんなに強く俺の腕を握ってるの?ちょっと、痛いですよ。いやほんとに、イタイイタイイタイイタイ!!

 

「・・・ハチマンくん、どういうことなのかな」

 

「は、はひ?」

 

 あまりのアスナの剣呑な雰囲気に飲まれて思わず変な声が出てしまう。怖い、怖いよアスナさん。

 顔をあげてキッとを睨みつけたアスナの両の眼からは、止めどなく涙が流れ落ちていた。口をきつく結び、顎と肩は震えている。少しでも突けば脆く決壊してしまいそうだ。

 

 そうか、俺はまた泣かせてしまったんだな・・・。

 必要なことだった、誰かがやらねばならないことだった、やらない訳にはいかなかった、混沌となる前に。分かっている。

 それでも、決心が揺らぎそうになる、いや、認めてしまおう。もうすでに揺らいでしまっている。

 

「約束、してくれたよね・・・」

 

「・・・あぁ」

 

 “約束”なんて、呪いの言葉だ。だから俺はそれを軽く扱う。そうしなければ動けなくなるから、大事なモノを取りこぼしてしまうから。それならいっそ・・・と。

 でもそれは間違いだと気付かされる。その行動一つで、大事なモノが傷ついているのだと、目の前の現実に突き付けられる。

 

「悪い」

 

「・・・許さない」

 

「すまなかった」

 

「信じられない」

 

「・・・深く反省している」

 

「うそつき」

 

 なんと言えばいいのか・・・。こんな時、唯一の自慢であった国語の成績は役に立ってはくれない。

 ふと思う、俺は今まで、誰かに信じてもらおうとしたことはあったのかと、そのために言葉を尽くした事があっただろうか。

 いつも、周りの人間がきっと理解してくれる。そう思っていたんじゃないのか。

 言葉は足らなくても、行動を見て理解ってくれるのでかないかと。

 つい最近、そのことで大事に思っていたやつらと仲違いして、取りこぼしたばかりじゃないのか。全く反省していない、アスナの言う通り“嘘吐き”だ。そんな自分がいやになる。

 

 かつて『本物が欲しい』と言った自分が、一番嘘をついているのだから。

 

「・・・・・・」

 

「ハチマンくん・・・」

 

 呼ばれた声に顔を向ける。

 

 パァン!!

 

 ・・・いつもの破裂音とは違う、肌と肌が激しくぶつかり合う、乾いた音。

 一瞬なにが起こったのか、理解ができなかった。が、アスナの振り切られた手の動き、そして抵抗できずに動かされていた顔の向きでようやく頭が、理解が追いついた。

 打たれたんだ、と。

 

「誓って」

 

 は?何に、何を?

 

「妹さんに誓って、もう二度と、こんな、っ・・・。こと、しない・・・って・・・っ」

 

 言葉を詰まらせながら、妹の小町にかけて誓えという。それはずるいだろ・・・。しかし、俺の気持ちは、言葉は決まっている。

 

「わかった・・・。妹、小町に誓う。もうこんなことはしない」

 

 だから泣かないでくれ、アスナ。

 アスナの頭を撫でつける。今朝やった時よりも優しく、髪を指で梳かすように。

 

「こんど破ったら妹さんに小町ちゃんに言いつけるからね」

 

 それは、なんとも怖いな。せっかく生きて帰れても一生『ごみぃちゃん』呼びが定着してしまいそうだ。なにそれ生き地獄じゃん。目が腐っちゃうよ。今以上に腐ったらもう爛れてるんじゃない?

 

「それじゃ、許してくれたってことでいいのか?」

 

「んー、まぁ一先ずは、かな。でも今回の件はゆきのん達にもしっかりと報告させてもらうから」

 

「お、おい。ちょっと待てそれは・・・」

 

 呼び止めようとするも、アスナはその手をかわして階段の方へと歩いていく。

 目標を失った手は虚しく空を切り、当てもないので仕方なく腰の位置へ落ち着く。

 雪ノ下と由比ヶ浜たちに報告がいってしまえば、間違いなく再び説教をされること間違いなしだ。そんなことになれば間違いなく面倒くさいことになる。確実にだ。

 

 しかし、これも自分で撒いた種であることも確かで、仕方が無いと、覚悟を決めるしかないか。ほんとはすこぶる嫌だけど。嫌なことから逃げて何が悪いんだよっ!と叫ぶ初号機パイロットの気持ちが少しは分かる気がする。

 

「ま、なるようになるか・・・」

 

 その時はその時の俺に任せよう。どうにかなるだろう。多分、知らんけど。

 

 何はともあれ、今はゆっくりと休みたいものだ。

 

 

 

第一章ーーー完ッ!




というわけでようやく第一章が終わりましたね。

アニメでいえば2話目辺りくらいまでですかね・・・

執筆しながらテレビで何かしら流しているんですけど、ついついそっちに気が向いちゃう。

今更海外ドラマのSUITS見てみんですけど、面白すぎですね
海外ドラマが沼と呼ばれる所以が分かります

というわけで、今回は次回予告てきなものはありません

次から二章に突入するのでこれからもよろしくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。