どうでもいいけど、蕁麻疹になったんですけど、なんで?
成人越えたこの歳でそんなことある?
変なもん食ったかしら・・・
最前線でもある28階層にある狼ヶ原に、実験を兼ねmob狩りに勤んでいたところ、赤い武者鎧を身に纏ったパーティが、フィールドボスに追いかけ回されているところに巻き込まれる形で首を突っ込んでしまった。
取り巻き、のような狼型のmob“ボーンエッジ•ウルフ”を殲滅することで、ようやくフィールドボスである大狼が動き出し、けたたましい、つんざくような雄叫びを第二ラウンドのゴング代わりに戦闘が始まった。
「大将!そっちに薙ぎ払いがくるぞ!」
「だから大将じゃないってのっ・・・!」
リーダー格の無精髭の男の声の通り、右の方からから繰り出される大狼の爪による薙ぎ払いを、紙一重のところでかわしカウンターを浴びせる。そういえば、コイツの名前未だに知らないんだよなぁ・・・。
今のところは大狼の動きも単調なものだし、ただ単にさっきまでの狼型のmobと大差ない。体が4倍くらいに大きいだけだ。いや、それでも十分に脅威なんだけどね。
それでも人数が足りていれば、ヘイト管理をしっかりやっていれば苦戦する相手じゃないようだ。
・・・だがそうは問屋が卸さないのがここ、“ソードアート・オンライン”なのだ。
体力ゲージが五本あるうちの一本を切った時、再び耳をつんざく様なハウリングが放たれる。そしてお約束のように体が硬直し、またしても数秒体の自由を奪われる。だが、今回はそれだけじゃなかった。
「おいおい、嘘だろ・・・」
冷や汗を流しながら、思わず悪態を吐く様に呟いたリーダー格の無精髭の男。しかしそう言いたくなる気持ちは、恐らくこの場にいる全員同じだろう。
どこからともなく、狼型のmobが出現する。どうやら、大狼のハウリングによってもたらされた効果は硬直だけではないようだ。
「クラインっ!どうするよ!さすがに同時に相手取るのは無茶だぜ」
赤い武者鎧のメンバーの一人が無精髭に向かって指示を仰ぐ。ようやく名前が分かったわ。“クライン”って言うらしい。いや、だってねーーー。
『俺の名前はハチマンだ。よろしく!お前は?』
『おう!俺はクラインだぜ!よろしくなんだぜ!マジやべーっしょ!』
ーーーなんてやりとり、ぼっちには無理、却下、不可能。てか今の誰?若干戸部入ってきてなかった?なんか久しぶりにあいつの事思い出したな。
「だとよ、どうするよ大将・・・?」
「いや、俺に聞くなよ・・・」
いやほんとに。なんでこっちに回すの?聞かれたのはクラインだよね?頼られたんならそっちで対処してよね・・・。
とはいえ、今は肩を並べて共闘する身。そうも言ってはいられないか。
「とりあえず、雑魚は俺が引き受ける。その間抜けるが、ボスを頼めるか?」
「おお、それは構わないが、大将一人で大丈夫か?なんならうちから一人か二人行かせるか?」
「いや、大丈夫だろ」
いきなり知らない人と連携して、なんて無理ゲーにもほどがあるからね。なんなら一人の方が動きやすいまである。
「そうか、でも無茶はするなよ!なんかあったらすぐに呼んでくれよ!」
このクラインという男。さすがにリーダーを務めているだけあるというか、慕われる理由がなんとなくわかる気がする。
本人は計算も打算も無いかもしれないが、自然に気を使ったりできる人間なんだろうな。俺には到底無理だな。計算や打算で埋め尽くされているからな。リスクリターンの計算は大事。
一先ず、ボスはクラインたちに任せることにして、雑魚狼たちの処理に専念する。
四体だけなら、そんなに時間もかからないだろうな。
近付きざまに、先ずはターゲティングをとるため、持ち手に鈴の付いた苦無を新たに登場してきた狼たちの群れの中に投げる。
“コーリング•エネミー”投擲スキルの一つで、範囲を指定してヘイトを集中させられるから中々便利なスキルだ。なんでみんな使わないのか不思議だが、投擲スキル自体が不人気、というか不遇扱いを受けてるから仕方ないのか。まぁ元々、剣を振るゲームだしな。
猛然とこちらへおそいかかってくる狼型のmobの爪による攻撃をかわす。が、少し違和感を感じる。別に俺の動きが鈍くなったとかじゃない。これは・・・。
「ーーーやっぱさっきまでのヤツらよりレベルが高いな」
確認してみたところ、案の定というかなんというか・・・。あのフィールドボスである大狼のmob“ボーンエッジ・ウルフ・オルタネィティブ”に招ばれたmobはレベルが高くなっているのかも知れない。なにそれ聞いてないんだけど・・・。名前にもなんか“アルファ”とか付いてるし。
しかし泣き言も、恨み言も今言っていても仕方がない。やれることをやる。いつも通りのことだ。
そうと決まれば腹を括り、mobの攻撃を捌く。レベルが上がったと言っても十や二十も上がったわけではない。すこしばかり敏捷性が増したところで、危険度が少し上がるだけだ。さした問題じゃない。
「ふっ!」
息を吐き、追加で向かってくる二体のmobの攻撃を、パリングしてはカウンターのタイミングを合わせる。ここ数ヶ月で何千と繰り返して身についた動作を、条件反射よろしく淡々とこなす。
二体を捌いたらまた次のmob。背後からの荒い息づかいとともに、肩に噛み付かんと飛びかかってくる気配。ここは無理に体勢を変えてパリングを狙うより、左足で踏み込み、体の重心を右へとズラし、回避に専念する。それと同時に、今襲いかかってきたmobを、右足から繰り出される体術スキル“水月”によって5m程吹き飛ばし、様子見をしていたであろう一体にぶつかる。ぱっと見はただのミドルキックだが、相手の勢いとの相乗効果で中々吹っ飛んだな。
息をつかせないままに、mobの連携により更なる追撃が襲いかかる。次は右側面から噛みつき、左側前方からは突き出た骨状の突起物を利用しての刺突か。
一瞬早くくる刺突をパリングによりいなす。そしていなした先には・・・噛みつきをしようとして大口を開けた顔がそこにはあった。
同士討ちにより一体を仕留め、残りは三体・・・。
クラインたちの方は・・・大丈夫そうだな。一先ずは連携を保ちながら、ボスに着実にダメージを与えているようだ。
そんなよそ見をしているのがバレてか、再び激しい猛攻に襲われる。他所を気にしてる余裕は無さそうだな。
mobの攻撃を弾く、返す、躱す、斬りつける。
この世界で生きるために身に染み付いた一連の動作を、脳が、体が反応するままに、流れるように動いていく。
次第に、だんだんと戦闘のために割いていた脳のリソースを、別の部分に割けるようになったためか、思考がクリアになっていくのが分かる。やべえ、これがゾーンってやつか。今ならキセキの世代とだって渡り合えるかもしれん。いや、それはむりか。
そうこうと余計なことを考える余裕が出てきたのは、果たして良いことなのだろうか。もちろん油断はしないけどね。最期に考えていたことが、キセキの世代と渡り合えるかどうかなんて、間抜けにもほどがある。
というか、さっき“アルファ”の一体を倒したところに浮いてる紫色の玉。なにあれ、嫌な予感しかないんだけど。
mobが飛びかかってくるのを躱しながら、短剣を構えた右手を左手で抑えて、横を通り過ぎるmobの毛皮に短剣を突き刺す。慣性に従い、短剣を突き刺した所からmobの体は切り裂かれ、光るエフェクトとなり消滅する。
ここまで来ればあとは楽勝、とは言わないが、まぁ楽にはなるだろう。残る二体も先の倒れたmob同様に既に死に体だ。おそらくあと3.4回の攻撃で倒せる。
その考え通り、残る二体も特に苦も無くトドメを刺す。
もう帰って良いかな・・・。いや、けっこう頑張ったよ?敢闘賞をあげたいくらい。・・・というかなんで俺こんなに戦ってるんだっけ。
・・・そうだよ、あそこで今フィールドボスの大狼と戦っているクライン達に巻き込まれたんだ。
もう俺要らなくない?帰って良いよね?うん、いいよ!よし、脳内の八幡議会では満場一致で帰るという答えがでたようだ。というか最初からそれしかない。
「大将!ちょっとこっち来てくれ!」
しまった!にげられない!普通にダメだったよ・・・。
「なんだよ。そっちももう倒せるころ・・・だろ・・・・・・」
ーーーソレを見た瞬間、言葉が出なくなった。
体は二回り以上も小さくなっているが、確認するまでもない。確実に強化されているであろう“元”大狼の姿がそこにあった。
体毛は赤褐色から紫がかった体毛へと変わり、突き出ていた骨ののような突起物は、肩や肘の部分から伸びる刃のようになっており、攻撃性・・・というか殺人性を高めていた。
ああいう姿に、なんとなくだが覚えがある・・・。某七つの珠を集めて願いを叶えてもらうバトル漫画で五人組の特戦隊を連れていた、バイ○ンマンと同じ声の人だ。変身をすることで、無駄がなくなり、より洗練されたフォルムになるらしい。
ほら、今にも喋り出すんじゃない?「こんどは木っ端微塵にしてやる・・・。あの髭バンダナのように!!!」
あの髭バンダナ・・・?クラインのことか・・・。クラインのことかーーー!!!
まぁ、クライン生きてるんですけどね。なんなら俺が脳内でDBごっこやってる間、さっきからずっと「どうする?なぁ!おぃ!」とかなんとか言ってる。なんだよ、俺ライフカードじゃないからそんなに選択肢出せないぞ。
「・・・とりあえず、あの“アルファ”どもの魂を吸収したっぽい姿が、奴の発狂攻撃なんだろうな」
これは推測、というよりもほぼ確信だな。だってさっきまで俺が戦ってたところにあったはずのなんか紫色のふよふよ浮いてた玉がなくなってるもん。あれ?もしかしなくても俺のせい?
いやいや、ないないない。そんなん初見で見破れなんて、無理ゲーすぎるだろ。
考えてる間にも奴さんはやる気満々だ。飛びかかり、爪での攻撃を繰り出さんと跳躍する。
明らかに形態が変わる前より溜めの時間が少ないし、スピードも上がっている。
爪をなんとか躱すも、突き出た刃のような骨が体を掠め、ダメージが入る。まじで油断できねえな。
唯一の救いは体が小さくなってくれていることか。これで大きいままだったら、間違いなく躱せずに直撃していたな。
この状況を打開するためには・・・
「クライン、俺がなんとか奴を引きつけるから、その間に総攻撃して体力を削ってくれ」
「お、おう、分かった!でも無茶はしないでくれよ!」
いや、俺もしなくていいなら無茶なんてしないんだけどね。どうやら無茶を通さないと倒せる相手じゃなさそうだ。
クラインは仲間達に指示を出し、手はず通りに攻撃を畳み掛ける。
その間、ヘイトを稼いでは回避に集中し、攻撃が他所に向こうとすればコーリングエネミーを発動させ、再びヘイトを集中させる。
いや、きっつい。まだ倒しきれないのか。ボスmobの体力ゲージを見れば多少減ってはいるものの、まだまだかかりそうだ。
これは、あれかね。俺も攻撃に参加しなきゃダメなのかな。
「クライン!隙を作る!合わせろっ!」
クラインは俺が何をしようとしているのか、未だ分かってはいないようだが、目が合うと黙ったまま頷いた。頼むぜ、ほんと。
ボスmobの幾度目かになる跳躍による飛びかかり、からの爪と骨刃を用いた切り裂きによる多段攻撃。
一撃目、目が慣れてきたためか、爪を少し余裕を持って躱す。
二撃目、俺にとっての本命である骨の刃をダメージの判定が下される直前で弾く。
破裂音とともに、飛びかかったままの体勢のボスmobは、地に着くことなく、空中で体勢を大きく崩す。
「クラインっ!」
「おう!」
俺の呼びかけに呼応し、クラインとその仲間たちが、空中で体勢を崩したままのボスmobに一斉に攻撃を仕掛ける。
ジリジリと体力ゲージは減って往きーーーー。
「やったか!?」
いや、ダメだろそのセリフは。完全にフラグだぞクライン・・・。
しかし、ここから第三形態に・・・ということは無さそうだ。さすがに未だ28階層でそんな変身する敵なんてさすがに出ないだろ・・・。出ないよね?
ボスの体力ゲージが0になると同時に、空中に浮かぶ【Congratulations】の文字を見て、大きく脱力する。下手したら今までのどの階層ボスより苦戦したかもしれん・・・。
ふとクラインたちを見ると、肩を組んで喜び合っている。別に羨ましいとかは思ってない。
そんなクラインたちを横目に、戦利品のチェックをする。どれどれ・・・経験値は結構美味しいな。まぁパーティも組まずにソロでほとんどのmobを倒してたからな。ソロプレイの旨味だな。
それと、ストレージに入っていた“ボーンエッジ•ウルフ”の素材と“アルファ”の素材、それに・・・。
「ウルフ•オルタネィティブのブーツ・・・?」
ストレージの中には見覚えのない名称の装備品が。フレーバーテキストによると、どうやらボーンエッジ•ウルフ•オルタネィティブに認められし証、らしい。いや、特に認められようなことしたか?俺。
大狼にトドメを差したのは俺じゃないから、ラストアタックボーナスとはまた別の報酬か?単なる運か、それともなにかしらの条件が起因するのか。アルゴに調べてもらうか・・・。
「よー、大将!お互いに無事でなによりだな」
少し離れた所からヘラヘラした顔のクラインがこちらへ歩いてくる。いや、大変な目にあったのは大体君のせいだからね?
「・・・まぁそっちもな」
見たところ、疲労やダメージはあるようだが、幸いなことに死人は出ていなかった。いや、ほんとよかったよ。俺のせいになんかされたらたまんないもんね。
「それでよ。大将・・・話があるんだけどよ」
「いや、その前に大将じゃねえし。・・・ハチマンだ」
今更だけど自己紹介。いや、でもいつまでも“大将”なんて呼ばれてても恥ずかしいしね。
「そうか、ハチマンだな!どっかで聞いたことあるような気もするけど・・・まぁいっか。それでよ、大将話があるんだけどよ・・・」
いや、俺の話聞いてた?会心の自己紹介無駄になっちゃってる?もしかしてファンブルってる?
「今回のお礼・・・になるかは分かんねえんだけどよ、これ受け取ってくれよ」
そう言って差し出されたのは“クルーアル•ダガー”。多分だけど、ラストアタックボーナスだろう。
「・・・なんでこれを俺に?」
「いやよ、今回の件は大将には迷惑かけちまったからな。その詫びっていうの?
それによ、俺たちの中に短剣使うやつ居ないし、大将に丁度いいんじゃねえかなって、他の奴らもよ」
まぁ貰えるって言うんなら貰うけどさ。
「しかし、俺は養われる気はあるが、施しを受ける気はないぞ」
「なんだそれ?違いがよく分からんが・・・。今回助けてもらったのは俺たちなんだから、気にせずに受け取ってくれよ」
「・・・まぁ、そうだな。そこまで言うんなら貰っておくが、後から『やっぱ返せ』とか言うなよ」
「言わねえよそんなこと。・・・ほんとありがとな。命拾いしたぜ、大将」
・・・まぁ、単に目の前で死なれちゃ目覚めが悪いってだけだったんだけどな。別に、こんな見も知らないような奴等のために命をベットした訳じゃない。
「じゃあ、俺はここら辺で帰るけど・・・。もうあんなことにならない様に気をつけろよ」
そう最後にクラインに忠告を残してその場を去る。はぁ、ほんとに早く寝たい。めちゃ疲れたわ・・・。
貰った“クルーアル•ダガー”は・・・帰ってから性能確認させて貰えばいいかな。ほんと、今は何もしたくない。
「大将ー!」
なに?未だなんかあんの?やっぱ返せって・・・?
「大将!もし何か困ってるようなことがあったらいつでも言ってくれ!命の恩人のためならどんなことでも力になるからな!」
まぁ、そんな困るような事態になる前に撤退するのが俺なんですけどね。押してダメなら諦めろ。
それはさておき、クラインの言葉を背中に受けながら、俺は帰宅の路につく。あんまし期待はできなさそうだしね。
クライン達と別れ、ようやく今の住処である宿屋へ帰って来れた。
途中でナタクの所へ寄り、苦無を追加注文した時は目玉ひん剥いてたな。ははっ、笑える。
いや、雑に扱ってた訳じゃないんだよ。こっちも命からがらでね。ほんと、アレなきゃ死んでたかもしれんな。我ながらちょっと無茶したものだ。八幡、ちょっと反省。
何はともあれ、こうして今日も生き延びることができた。それだけでも良しとしようじゃないか。
宿屋の自室へと到着し、ベッドにドサッと腰を降ろす。が、この気配は・・・。
「・・・なにやってんだ、アルゴ」
「にゃははー。流石だナ、ハー坊」
物陰から出てきたのは、情報屋として今や知らぬ人は居ないと言っても過言ではない人物。
「ハー坊がまたトンデモをやらかしたって聞いてナ。面白・・・心配で様子を見に来てやったんダ」
いや、今明らかに『 面白そう』って言いかけたよね?全然取り繕えてないからね?
「・・・いいからとっとと本題に移ってくれ。疲れてるんだよ」
「ムー・・・。なんだツレねえナ、ハー坊。そんなんじゃおネーサンいじけちまうゾ」
そう言ってアルゴはベッドに腰掛ける俺の横に同じ様に腰を降ろしたかと思えば体を密着、というか腕を絡めてくる。ええい鬱陶しい!俺じゃなきゃ勘違いしちゃうんだからね!純情な男子心を弄びやがって。
「分かった、分かったから。とりあえず話すから離れてくれ頼む」
俺のリアクションに満足したのか、アルゴはニヤニヤとした表情のまま、体の密着度は弛まるが、依然として腕は絡めたままである。このネズミ・・・いつか泣かす。
「ハァ・・・で、聞きたいのはフィールドボスのこと、でいいのか?」
「おう、ハー坊の武勇伝を聞かせてクレ」
別に武勇伝ってほどのモンでもないんだが・・・。兎に角、俺はフィールドボスと戦った事のあらましを伝えた。
「ーーーつまり、今回の階層ボスからは形態を変えてくるボスが出てくるかも知れない、ト?」
「あくまで推測だがな。形態変化じゃなくても、なんらかのトリガーで強化される奴とかは出てくるかもな。知らんけど」
「なるほどナ・・・。ン、大体のことは分かったゾ。ありがとうナ」
「・・・役に立ちそうか?」
「おいおい、オレっちを誰だと思ってるんダ?せっかくの情報ダ。役に立たせてみせるサ」
そりゃ心強いこって。実際、アルゴの発信する情報のおかげで命拾いしているプレイヤーも少なくはないだろう。俺だってその一人だし。
「でだ、さっきハー坊が言ってた赤武者鎧のパーティなんだがな...」
「なんか知ってるのか?」
「んまぁ、知ってるって言うよりオレっちも少し聞いただけだけどナ。
最近そこそこ頭角を出してきているギルド“風林火山”ってヤツらだナ。まぁ悪いヤツらじゃねえヨ。ハー坊のことだから、どうせ聞きたかったのはそんなとこダロ?」
うるせえよ。なんで俺が気になってたことバレてるのん?さっきの情報だけでそこまで分かるかね普通。こいつ、探偵になった方がいいんじゃね?
「別にそこまで気になってたわけじゃねえけどな。単に後になってへんな要求する様なヤツじゃないか気になっただけだ」
「そういえばラストアタックボーナスを譲ってもらったんだってナ。どんなのダ?ちょっと見せてくれヨ」
え、嫌だよ・・・って分かった分かったから!お願いだから俺の右腕に絡まないで!そして強制的にメニューを開かせようとするんじゃありません!こえーよコイツ、ほんとに。
「ほれ、そいつがラストアタックボーナスだ」
“クルーアル・ダガー”をストレージから取り出し、アルゴの方へと放る。
「おっ、ととと・・・っ。・・・へぇ、なかなかいいモンじゃねえカ。強化可能数も結構多めだナ。それに、【致命攻撃が出るごとにAgiの上昇】って・・・ちょっと強すぎやしないカ?」
え、なに?そんな能力付いてたの?アルゴが帰ってからでもゆっくり確認しようと思ってたから、未だ見てなかったんだよ。
それにしてもこの追加能力、まるで・・・。
「正にハー坊にピッタリの能力だな」
「・・・・・・」
そう、ピッタリなのだ。いや、俺としては願ったりだけどさ。もう12層からずっと武器変えてなかったし、丁度いい頃合いに棚からぼた餅だけどさ。
「まっ、これはハー坊だから使いこなせるようなもんだナ。多分他の人間には使いこなせねーヨ」
そうは言うが、そんなことはないだろ。多分俺にできることなんざ他の誰がやってもそれなりにできることだろ。俺はただ、その気付きが他人よりも早かっただけにすぎない。
「・・・どれくらいAgiが上昇するのかとかは検証しなきゃな。効果も分かんないんじゃおちおち使ってられん」
「それじゃあ、何か分かったらおしえてくれヨ」
分かればね。どっち道そんなもん明日以降だ。今日は早く眠りたい。
「オイオイ、ハー坊。なに寝ようとしてんダ。オレっちからの報酬がまだだぞ」
「・・・そういえばそうだったな」
さっさと取引を済ませてお帰り願おう。
「報酬ハーーーオネーサンと添い寝カ、いつものカ・・・どっちがイイ?」
なんだそのポーズは。ベッドの上で横になり、布団を広げてウェルカムポーズ。妙齢の女性が男のベッドで布団に潜るんじゃありません。全くはしたない。俺じゃなきゃ頂戴されてもおかしくねえぞ。見てくれは悪くないんだからな。
「・・・いつものだ」
「ちぇっ。据え膳食わぬはなんとやらだゼ、ハー坊。
・・・まぁいいカ。じゃあ報酬はいつものように払っておくゾ」
「あぁ、よろしく頼むわ」
「・・・なぁ、ハー坊。たまにはのんちゃんやユイっちの所に顔を見せてやれヨ」
そういえば、ここしばらくは奉仕部に寄り付いてないな・・・。由比ヶ浜は兎も角、雪ノ下は心配なんかしてないだろうけどな。
「・・・まぁ気が向いたらな。それよりほら、俺はもう寝るんだから、とっとと帰りやがれ」
アルゴに向けてしっしと手を振り部屋から追い出そうとするも、アルゴはその手を掻い潜り再びベッドの方へと向かい、布団の中へと潜っていく。いや、ほんとになにしてんの?
「・・・なにしてんだよ」
「・・・ごろにゃーん?」
え、なんだって?ゴローニャ?なんだよそのポケモン知らねえよ。少なくとも俺のボックスにおは居なかったぞ。なんでかって?察してくれ・・・。ヒントは通信・・・うっ、頭が・・・っ。
「ちょっと可愛いけど、あざとい。12点だ」
「10点満点中カ?」
「100点満点中に決まってるだろ。ほら早く出ていけ」
布団を引っぺがし、アルゴの首根っこを掴んで、部屋の外へ放り投げる。こんな漫画みたいなこと、ゲームの世界じゃなきゃできねえな。
アルゴが部屋の外に出たのを確認して扉を閉め、鍵をかける。
ふぅ・・・これでようやく寝れるってなもんだ・・・。
ドレッサー機能を使い、瞬時にインナー姿に着替え、ベッドにダイブして目を閉じる。
・・・別にアルゴの残り香なんか感じてない。感じてない感じてない感じてない。俺は無だ。
ってかアイツ、どうやって部屋に入ってたの?俺間違いなく鍵かけてたよね?なんか考えたら怖くなってきちゃう・・・。考えるだけ無駄だな。アルゴだしな。
というわけで14話目でした
なんやかんやでもう14話目か・・・早いものです・・・
でも話が全然進まない・・・
だって書きたいこといっぱいあるんですもん!
取捨選択が苦手なんです
次回予告てきなもの
「・・・なにしに来たんだよ、ユナ」
「メッセージ送ってもハチくん全然返してくれないから、来ちゃった♪」
「あぁ本当だ。ハチマンウソツカナイ」
「え?そんなこと言ってたたっけ?」
「ハチくん、わたし歌うね。今日、ここで・・・」
「あぁ・・・。実は俺、ギルドに入ることにしたんだ」
なんなら一人の方が動きやすいしね。