やはり俺のVR青春ラブコメは間違っている   作:青鬼ちゃん

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コメントを下さっていた方や、こんな拙い文を待っていて下さっていた方々、大変お待たせいたしました。
すみません、大分久しぶりの投稿になります。

投稿しようとしたら下書きが3回消えるという事態に陥り、呪われてるかと思いましたよ…
何回も書き直すうちにどんどん長くなるし…

というわけで、久しぶりの投稿です
次もなるべく早く投稿できるように頑張ります!


二章 六部

 

 

 

 月夜の黒猫団の事件からしばらくが経ち、やがて11月になろうとしていた。

 そう、このデスゲームが開始してから、およそ10ヶ月程が経過しようとしていたのだ。

 

 人間の強味の一つとでも言えるのだろうか。

 さすがにこれだけの期間、ゲームの中に閉じ込められていれば、どうしても慣れてくるもので。

 階層攻略は順調に、と言って良いかは分からないが、現在39階層まで攻略が完了している。

 

 もちろんというか、意外にもというか、その攻略の中でそれはもう馬車馬の如く俺も働いていたわけだ。

 

 今日はそんな俺への安息日。休日である。

 何人たりともこの安らかなる一日を邪魔をする事はできない。いや、してはいけない!

 ……はずなのだが。

 

 ピコン♪

 

 先ほどからなり続くメッセージの着信を報せる、非常に不快極まる通知音。

 いや、差出人は見ない。というか見なくても大体の見当はつく。

 

 ピコン♪

 

 そもそもがだ。専業主夫を目指すところである俺がこんなに働いている時点でおかしいのだ。

 そうであれば、俺という人間の本質は攻めるよりも守り、攻城よりも籠城でこそ真価を発揮するというものだ。

 

 ピコン♪

 

 だからこそ、俺はこうして布団に包まり、護りの姿勢を見せている。よって、今、この時に俺とオフトゥンくんとのイチャラブタイムを誰が邪魔できようか。否ッ!出来ないはずだ。

 

 ピココン♪

 

 ……日ごろから身を粉にして働く者への休息というのは、正当な対価だと言えるのではないだろうか。むしろ休息を得るために働いていると言っても過言ではない。……はずだ。

 

 ピココココン♪

 

 いやいや、確かに今日予定を作られはしましたけどね、それはなし崩し的にというか、半強制的にというか…。俺に拒否権が無いも同然で無理やり作られた予定である場合、俺は参加しなきゃいけないんでせうか…?

 

 ピココココココココココン ピコン♪

 

『お そ い』

 

 この圧のある文。従わなければ後々面倒になることは容易に想像ができる…。

 ……OK、了解だ。分かった。行けばいいんだろ、行けば…。

 

「はぁ……。ほんとにめんどくさい…」

 

 しかし、後の憂いを断つためにも、今はメッセージに指示された待ち合わせ場所まで、大人しく行くとしますかね…。

 なんか最近の俺、流されすぎじゃない?

 

 

 

 

 

「よぉ、待たせたな」

 

「ハチくん遅い!遅刻だよ!」

 

 所定の待ち合わせ場所へ着くと、それはもうプリプリと怒りを顕にした、メッセージの差出人であるユナが腰に手を添えて待っていた。

 多分漫画とかなら“ぷんすか”とか漫符がついてそう。

 

「別に遅れてはいないだろ。ほら見てみろ時間ちょうどだろ」

 

「全然時間丁度じゃないよ!約束の時間より20分も遅刻だからね!」

 

 そんなことないだろう。1時間を10とみた時、20分なんてものは四捨五入すれば0寄りだ。よってこの差は誤差と言っても過言ではない。……いや遅刻か。

 

「どうせハチくんのことだから『面倒くさいし、行かなくてもいいかな。あっ、でも行かない方が後々面倒になるか』とかグダグダ考えてたんでしょ」

 

 えっ、こわっ。なんでそこまで俺のことが筒抜けになってるのよ。そんなにわかり易いですかねえ。

 

「まあまあ、落ち着けよ…。そんなことより急いだ方がいいんじゃねえの?目的地は35層、迷いの森だったな」

 

「もーっ!そうやってすぐ話をはぐらかそうとするんだから!」

 

 いやいや、これは話をはぐらかしているんじゃなくてね、そう、今取り得る最良の選択を提案しているわけですよ。うん。

 

「つっても、これ以上アイツらを待たせるわけにもいかないだろ」

 

 俺がどれだけ文句を言われるか分かったもんじゃないしね。

 

「むーっ…。いいもん!あとでハチくんのことはこってり絞ってもらうから!」

 

 俺はすだちレモンか何かですか。唐揚げにトッピングされちゃうのん?なにそれ怖いんですけど。

 はぁ…もう今から足が重い。帰っていいかしら?

 

 

 

 

 

 

 俺の淡い願いも虚しく、連行された35層転移門前にて彼女達は待機していた。

 

「ヒッキー遅いし!まじどんだけ待たせるの!?って感じ!」

 

「本当に呆れたものね。せめて時間の見方くらいは義務教育のうちに習熟していたと思っていたのだけれど、どうやら過大評価だったようね」

 

 そう、今日は雪ノ下と由比ヶ浜とも合同でのクエストになる。

 クエストと言ってもNPCから受注するものではなく、“奉仕部”として、他のプレイヤーから請けた依頼、ということになっている。

 

「あー、悪かったな。ほら、アレだ。昨日は夜遅くまで階層攻略の調査をしていてな…。それであまり寝れなかったんだよ」

 

「そ、それなら仕方ないっていうか…。ヒッキーが皆のために頑張ってくれてるのも知ってるから文句も言えないけど…」

 

 …うん、嘘は言ってない。実際、昨日は夜遅くまで39階層攻略のため、情報収集を兼ねて色々と調査をしてたしね。

 うん、決して朝から動きたくなくて布団の中から出ようとしなかったわけじゃないの。だからそんな目でこっちを見ないで雪ノ下さん。

 

「……はぁ…。まぁいいわ。そもそもこちらから多少無理を言って手伝いをお願いしたわけなのだから、糾弾はしないでおいてあげましょう」

 

 ゆ、許された…!って…、

 

「なんで俺が譲歩してもらっているみたいになって「何か?ハチマンくん?」いえ、ナンデモナイデス…」

 

 くそ…。なんでガツンと言い返さないだよ俺っ!はい、ヘタレだからですね。分かってました。

 

「ユナさんもごめんなさいね。こんな時間も守れないような男のために貴重な時間を使わせてしまって…」

 

「いえいえ!わたしもハチくんのことだから、もしかしたら二度寝も有り得るかなーって、心配だったので」

 

 うん、ユナさん大正解だよ。でもね、そんな信頼のされ方はハチマン的にポイント低いかなー。

 

「それより、もう行くんだろう?準備はもうできてんのか?」

 

「ええ、私たちは問題ないのだけ「ああーーっ!!」…ユイユイさん?」

 

「あ、あははは…。ごめーんゆきのん。あたし回復アイテム忘れてきちゃってる…かも…。」

 

「はぁ……。仕方がないわね。ごめんなさい、私はユイユイさんのアイテムの補充に付き合うけれども…。あなた達はどうするのかしら」

 

「それなら、わたしもご一緒させてもらってもいいかな?」

 

「ええ、もちろんよ、ユナさん。…ハチマンくん…は、聞くまでもないわね」

 

 さすが雪ノ下さん、よく分かってますね。そりゃ選択肢があるならここで待機する一択だ。済ませておきたい用事もあるしな…。

 

「あー…。ここで待ってるから早く行ってこい」

 

「ちゃんと待っててよヒッキー。帰っちゃダメだからね!」

 

 いや、帰んないよ?少しは頭を過ぎったけどさ…。ちょっとだけね?

 

「あっ、ハチくん今帰ろっかな、とか思ったでしょ!」

 

「思ってないよ?なんなの、その俺への逆ベクトルでの信頼感。少し傷つくんですけど」

 

「あら、あなたにも未だ人として常識の範囲内で傷つく心があったのね。意外だわ」

 

「…ほんとに俺への罵倒の時は楽しそうにするよね」

 

 めっちゃ雪ノ下の顔がイキイキしてるし。

 

「…だって、好きな子には意地悪がしたくなるものでしょ?」

 

 近い近い。そんなこと耳元で言われたら八幡勘違いしちゃう。いや、訓練されたボッチはこれくらいじゃ、まどマギしませんけど?してますねコレは…。

 

「…分かったからさっさと行ってこい。ちゃんとここで待ってるから」

 

「ふふっ…。それじゃ、お留守番は頼んだわね、ハチマンくん」

 

 

 

 

 

 ーーー来たか。

 買い出しに行った雪ノ下たちを見送って数分後、こちら…と言うよりも、俺に突き刺さっていた視線の主がようやく動いた。

 

「……久しぶりですね、ハチマンさん」

 

「おう、そうだな」

 

 背後の死角からかかる声の主はノーチラス。ユナの幼馴染だ。

 俺はこいつのことが嫌いじゃない。かといって好意的に接せられるかと聞かれれば、答えはNOだ。

 

 戦闘のセンスはからっきし、というか引け腰で攻略には向かない。だと言うのに最前線の攻略ギルドの血盟騎士団に入団する、というのはある種の自殺行為ではないかと疑ってしまう。

 

 まあ、少なからずとも攻略のために役立ちたい、という気持ちがあるだけマシなのかもしれない。

 英雄願望というか、“我”が強すぎるのがたまに見え隠れしていたりはするが、まだ目を瞑れる範囲だってアスナも言ってたしな。

 

 しかし、やはりと言うかなんと言うか、俺はかなり嫌われている。いや、嫌われるのには慣れているんだけどね。むしろ嫌われるのが常まである。

 ただ、単純に嫌っているというよりかは、ユナに近づく不審な男として警戒されているのかもしれない。というか大方そうだろう。

 

「こんな所で、なにをしているんですか」

 

 白々しい。俺が到着する前から見張っていたくせに…。

 

「…この後依頼の手伝いでな。ゆきのん達を待ってるんだよ」

「ユナも一緒に、ですか」

 

 …いちいちトゲがあるのねキミ。てか食い気味すぎぃ!

 ちょっと怖いからそのハイライト消えた瞳やめて?

 

「まぁ…そうだな。」

 

「攻略にも碌に貢献せずに、女子に守られて…いいご身分ですね」

 

 こいつの中で俺ってどういう認識なんだよ…。いくら嫌いだからって盲目すぎるでしょ。俺ってばそんなに弱そうに見えるのかしらん?見えるか…。

 別に、こいつにどう思われようとどうでもいいけどさ…。

 

「で、結局なんの用なんだ?特に用事がないなら…」

「今日は忠告に来ました」

 

「……は?」

 

 忠告?何言ってんのこいつ……。

 

「これ以上ユナに不必要に近付かないでもらえますか」

 

 ……あぁ、なるほど、そういうことね…。

 

「別に俺からユナに近付こうとなんてしてねえよ…なんならお前からもユナに…」

「あんたのそういう余裕そうな態度が気に食わないだ…っ!」

 

 ねぇ、良い加減俺の台詞に被せ気味でぐいぐいくるのやめえくれない?

 

「…どうせ何を言っても聞いちゃくれないんだろうけどさ、それならそれで俺に“忠告”とやらをする意味はあんのか?」

 

「あなたに釘を刺せれば十分なんでね。それじゃあ僕はもうもう行きます。…あなたのように遊んでるほど暇じゃないんで」

 

「いや、別に俺は遊んでるってわけじゃ…ってもう行ってるし…」

 

 ノーチラスのやつ、自分の言いたいことだけ言って行きやがったよ。別に弁明したかったわけじゃないからいいんだけどね。

 

「はぁ…。なんかもう疲れたんだけど…。帰っていいかな…」

 

 なんてボヤきながら、再び元の位置に腰を落ち着け、実際に帰るような度胸はない。俺がチキンなわけじゃない。ただ、ここで帰った方が後々面倒になることが目に見えるからそうしないだけ。ほんとだよ?

 

 

 

 

 

 

「ただいまーハチくん!ってなんだかお疲れだね?」

 

「本当ね。貴方は留守番一つまともにできないのかしら」

 

「ヒッキー、なんかあったの?」

 

 ノーチラスの姿が見えなくなり数分後、ようやく由比ヶ浜の買い出しを終えた三人が戻ってきた。

 

 ほんとにね。あともう少し早く戻って来てくれていればこんなに疲れることも無かったのに…なんて責任の無いこいつらに言っても詮無いことだな。

 

「別になんもねえよ…。それよりも、足りない分は補充できたのか?」

 

「あっ、うん。アイテムは問題なく買えたんだけどね…。帰り道にゆきのんが…」

 

「ゆ、ユイユイさん!?その話は…!」

 

「そ、そうだった!ごめんゆきのん!」

 

 あー、なるほどね。みなまで言わずとも分かってしまうのが雪ノ下の残念なとこだよな…。だからこその“だめのん”なんだけど。

 

「でも、まさか3秒目を離しただけでゆきのんさんが迷子になったのはビックリしましたよ!しかも逸れた理由がネコを見かけたからだなんて…、案外可愛いですよね!」

 

 …全部言っちゃったよこの子!ユナ…、なんて恐ろしい子…っ!

 あー、もうだめのんが顔真っ赤にしてプルプルしちゃってるじゃん。大丈夫だよ、俺は雪ノ下のだめのんな所、ある程度は知ってるから。今更恥ずかしがらなくていいんだよ。

 

「あー…ユナ?そろそろその辺にしておいてやれ。この後の活動に支障が出かねん」

 

「……あっ!」

 

 やっちゃいました?みたいな顔をしててへぺろをするユナ。はいはい、あざとい。

 

 

 

 

 

 

 

 多少のイレギュラーはあったものの、予定より少し遅れて“迷いの森”へ到着した。

 

 で、なんで迷いの森に来ているのかと言うとーーー。

 

「結局今日の目的は何をするんだ?」

 

 答えは“知らされていない”だ。だってそれを聞く前にあれよあれよ予定が決まってたんだから仕方ない。拒否権なんて初めから無かったんだ…。

 

「えっとね、確かこの迷いの森に出てくるどらんくどらごん?っていうモンスターが落とす追い亀?っていうのが必要なんだって!」

 

 フンスッとドヤ顔をかます由比ヶ浜。いや、ドヤ顔している所申し訳ないけど、そんなお笑いコンビみたいななまえのmobじゃないからね?それと追い亀ってなに?亀に追われるの?なにそれ怖くなさそう。

 

「ユイユイさん、ドランクドラゴンではなく、ドランクエイプよ。龍ではなく猿ね。それに追い亀でもなく、酔い瓶。ドランクエイプが低確率で落とすレアアイテムよ」

 

「し、知ってたし!ゆきのんのイジワルー!」

 

 先ほどの意趣返しのように雪ノ下からの反撃。やられたらやり返す!って言ってもダメージ量的にはユナの方が比率は高かったけどな。

 ポカポカとじゃれつくように雪ノ下の肩を叩く由比ヶ浜。ゆりゆりな光景を見れて、俺の心もぽかぽかするんじゃ〜。

 

「ドランクエイプってわたし初めて戦うけど、強いの?」

 

「どうだろうな。個体の強さはそこまででは無いが、アイツらはmobにしては珍しく連携を取ってくるからな…。集団戦になったり長期戦になると仲間を呼ばれて面倒かもしれん」

 

「さすが、35層の攻略の際に単独でこのエリアをクリアした人は言うことが違うわね」

 

「…別に、ただゲリラ戦法が上手くハマってくれただけだ」

 

 そう、35層攻略の時に俺は単独でここを調査し、クリアしている。と言っても本当にただのマグレで、元々単独で攻略するつもりは無かった。だというのに攻略をした…というかせざるを得なくなったのはこの森の性質のせいだ。

 

「この森は10分に一度森が地形ごと動くからな。迷子ならないように気をつけろよ」

 

「…そこでどうして私に下卑た視線を送るのかしら。穢らわしい」

 

 いや違うからね。特に気をつけろよって意味で見てるんだよ。

 

「…まあ、迷わないように一人一個これを渡しておく」

 

 各人にそれぞれ手渡したものは色違いの発煙筒。

 迷いの森はインスタンスエリアとなっており、外部からは分からないが、内部に入ると思っている以上に木が生い茂っていて、迷いやすくなっている。

 加えて、地形ごと移動するというギミックもあるが、発煙筒があれば狼煙の元へと集まればいいからな。

 以前に攻略した時はソロだったから要らんかったけど。

 

「あら、あなたにしては気が利くじゃない」

 

「ハチくんありがとう!」

 

「わっ!これなんか花火みたいじゃない!?パァーって、夜とか映えそう!」

 

 …頼むからそんな好奇心のために俺の労力を無駄遣いしないでくれ。それ、アイテムの素材集めるの大変だったんだから。

 

 なんて思っている横で早速発煙筒を使おうとする由比ヶ浜を、慌てたユナが制止するという羽目に…。もう俺は突っ込まんぞ。これ以上無駄に疲れたくない。

 

 

 

 

 

 

 そんな茶番のような一幕を演じていた俺たちだったが、迷いの森に入ってからの戦闘は、割かし好調だと言えるのではないだろうか。

 

「ユイユイ!」

 

「うん、任せて!」

 

 ドランクエイプの丸太のような腕から繰り出される右の拳をパリングによりいなし、一撃の威力が高い由比ヶ浜とのスイッチにより、より高い致命攻撃により、DPSをさらに上昇させる。

 

「ゆきのん!スイッチ!」

 

「行くわよ…、フッ!」

 

 体勢を崩した敵を、由比ヶ浜とスイッチした雪ノ下がトドメを刺す。

 

 お互いにスイッチにより位置を切り替えながらヒットアンドアウェイ戦法により、着実にmobを撃破していく。

 

「ユイユイ!一体がユナの方に向かってる!こっちは抑えておくから、カバーに回ってくれ!」

 

「分かった!」

 

 そして現状、余裕を持って立ち回れているのはユナの“吟唱”のスキルによるエンチャント、バフの効果によるところが大きい。

 

 ユナ曰く、いつの間にか生えていたという“吟唱”のスキル。ユナの唄を媒介として、周囲のプレイヤーに一定時間ステータス上昇のバフ効果を与える。

 

 町でいつも通りユナのリサイタル後に何気なくステータスを見たら、各種ステータスが上昇していたことをユナに確認したところ、いつの間にかエクストラスキルとして発現していたんだとか。

 

「ユナ!10秒後にバフが切れる!頼めるか!」

 

「うん!ユイユイさん、ソイツお願いします!」

 

「まっかせて!てりゃあ!」

 

 流石に連携をとってくるドランクエイプは厄介だな…。現状は優勢だが、これ以上追加で仲間を呼ばれると、いつ戦況がひっくり返ってもおかしくはない。

そんな状況でバフ効果が切れるのは致命的になりかねない…。

 

「ゆきのん、こっちは抑えておくから、お前も向こうを頼む」

 

「でも、あなたは大丈夫なの…?」

 

「まぁ、ドランクエイプの三体程度なら大丈夫だろ…知らんけど」

 

「…その無責任な最後の一言が無ければ安心できるのだけれど…。分かったわ、ムリはしないでちょうだい」

 

 珍しく心配するような言葉を残して、雪ノ下は由比ヶ浜とユナの下へと向かって行った。

 さて、俺は俺で自分の仕事を済ませるかね…。

 

「行くぞ…エテ公」

 

 両手に持った短剣とクナイを構え直し、人の身の丈よりも大きな猿、ドランクエイプ三体を正面に見据える。

 先に動いたのは左側のドランクエイプ。大きく跳躍し、飛びかかりながら、右腕を振りかぶる。

 しかし、これはフェイク、陽動。おそらく本命は…。

 

「その後ろかっ!」

 

 大きく動き、こちらの注意を引きつける。悪くない作戦だが、鷹の目スキルにより視野が広がっているからその手は通用しない。

 

 跳躍したドランクエイプの下を掻い潜り、正に今飛び込まんと構えていた一体を素早く斬りつける。

 すかさずもう一体がフォローに入らんと突進して来るが…これはクナイではいなせないな…。跳躍して回避し、そのまま空中のドランクエイプの背中を足場に踏み込みながら真下に向けてソードスキルを発動させる。

 “ファントムピアース”残像を残して二連撃を浴びせながら対象を通り抜けながら突進する短剣ソードスキル。

 

 着地の寸前に体の重心を傾け、体を横向きに倒しながら、体術スキル水月を発動させ、“なんちゃって胴回し蹴り”を真下にいたドランクエイプの後頭部に浴びせる。

 

 不意の一撃を受け、そのまま前のめりに倒れ込んだドランクエイプ首元をかっ斬りトドメを刺すと、先ほど突進してきたドランクエイプがユナたちの方へと向かわんと、ターゲティングを切り替えていた。

 

「まあ、行かせないんだけどね」

 

 鈴付きのクナイをドランクエイプの足元に投擲し、エネミーコーリングを発動させる。と同時に再びこちらターゲティングを切り替えたドランクエイプが四足で駆け、その丸太のような右腕…ではなく、地面に配置されていた丸太を掴み、フルスイングする。

 猿のフルスイングを見るとミスフルを思い出すのは俺だけじゃないはず。いや、そんな事考えてる場合じゃないな。

 

 余計な思考を早々に切り上げ、迫る丸太をクナイと短剣を駆使してパリング。フルスイングをいなされ、体勢の大きく崩れたドランクエイプの背後へと回り、思い切り踏み込み短剣をその頚椎に突き刺す。

 “ラピッドバイト”スキルクールタイムも短く、攻撃の隙を狙われにくい単発攻撃だが、致命攻撃と背後攻撃によるダメージの上乗せでも、残りのHPゲージを失くすには威力は十分だ。

 

「っと…、残るは一体か…」

 

 先ほど上空で追撃していた一体を見据える。

 奴さんも既に体勢を整えており、こちらを睨みつけるように見ている。気持ち、その視線には殺意が込められているようにも感じるが…そんなはずはない。

いくら現実のような感覚でリアルとの境目がボヤけていようと、ゲームはゲーム。あくまでもデータ上の存在であり、どこまで行ってもデジタルなのだ。

 

 回復アイテムであるところのポーションを口元に運び、イエローゲージまで減った体力を回復させる。

 

 結論から言えば、勝負は実に呆気なくついた。

 連続で振り回される腕を、軽業スキルをもってして回避し、隙が出るタイミングを窺い、パリングしてトドメを刺す。

 なんてことは無い。一対一であればいつも通りの作業ゲーだ。

 

 HPゲージが0になったのを確認し、消滅のエフェクトを視ること無くユナたちの方へと向かう。

 

 近づいたころには、丁度由比ヶ浜がソードスキルを使って戦闘が終わったところだったみたいだ。まあ、こいつらのHPゲージは確認してたし、別に焦ってなんかなかったけどね。

 

「ふぃ〜…、疲れたぁ…。ってヒッキー!?もう倒しちゃったの!?」

 

「ん?あぁ、そっちも大したダメージは無さそうだな」

 

「……あなた、三体を相手にしていたはずよね…。もしかして逃げてきたのかしら?」

 

「いやいや、ちゃんと倒してるから。リザルトに反映されてるから」

 

「…どうやら嘘は言っていないようね。あなた、一体今のレベルはいくつなの…?」

 

 レベルねえ…。なんか前にアルゴからステータスを聞くのはマナー違反だ、みたいなこと聞いたけど…。まぁ、こいつらならいいか。

 

「今62だな」

 

「えっ!?ハチくん、わたしより20も高い…」

 

 そりゃ夜中に一人でレベリングしてるしな。

 

「くっ…。不覚だわ、この私があなたに遅れを取るなんて…っ」

 

「いや、別にそんなに悔しがらなくてもいいだろ。攻略の前線に駆り出されていればこれくらいは必要ってだけだし」

 

「……あなたの横に並べないのが悔しいのよ」

 

「…は?」

 

 今なんて言ったんだ雪ノ下のやつ。俺の聞き間違いで無ければ…。

 

「なんでもないわ!それよりもユナさんの“吟唱”スキルだったかしら。…噂には聞いていたけれども、実際に見ると凄いわね」

 

 なんだか無理やりはぐらかされた気がしないでもないが…。

 たしかにユナのスキルはかなり有用だ。現状、このSAOの中でも他にエンチャントができるスキルは“吟唱”以外に確認されていない。

 戦闘中にバフがかかるだけで戦術がぐーんと上がる。正にダンチ。ヒキオヒキオって気安く呼ぶんじゃねえよ…。オヒキだっけ?まあどっちでもいいか。

 

「ねーねーハチくん、わたし凄い?役に立ってる?」

 

「あー、はいはい。スゴイスゴイ。チョータスカッテル」

 

 なにこの子。褒めてほしくて堪らない子犬なの?小町ならハグしてヨシヨシしてるところ。そんでキモがられるまでがワンセット。いやキモがられちゃうのかよ。

 

「ヒッキー!そんな適当な反応しちゃユナっちが可哀想だよ!」

 

 いやちゃんと褒めてるよね?なんで俺怒られてるのよ…。

 

「あーあー、ハチくんの反応にガッカリすぎて、わたしお腹空いちゃったなー」

 

「ユナの空腹に俺関係ないよね?いちいち俺が悪いみたいな風評を流すのやめてね?」

 

「でも、たしかにもう良い時間になってきたわね。どこかの誰かのせいで予定より少し遅くなってしまっているけれども、お昼にしましょうか」

 

「いや、確かに遅れたのは俺が悪かったかもしれんが、その分余計に働いてるんだからプラマイ…いや、むしろ加点評価だろ」

 

「あら、あなたのその働きも織り込んでの予定よ」

 

 結局俺のせいで遅れてることになるんですかそーですか。

 

「ヒッキー、前にここを攻略したことあるんだよね?どこかご飯食べれるような、ゆっくりできるとこってあるかな?」

 

「お前、ここインスタンスエリアの中だぞ。セーフティエリアなんて…」

 

 …そう言えば、多分あったわ。不自然にmobが出現しないエリアが。

 

「心当たりがありそうな目をしているわね…。それじゃあ、そこに行くことにしましょうか」

 

「いや、目じゃないから。それを言うなら表情だから」

 

 それと雪ノ下さん…目的地も分からないのに、先頭を歩かない方がいいんじゃないかしら?まただめのんになっちゃうよ?

 

 

 

 

 

 雪ノ下が迷子になるという面白イベントを回避しつつ、俺が先頭にたち、心当たりのあるエリアへと三人を誘導する間も女子三人は楽しそうにお喋りをくり広げている。

 俺?俺はいつも通りだよ。いつも通りと言うのはつまり安定のぼっちスタイルということ。

 

 というか、三人とも結構仲がよろしいんですね。特にユナがそこまで仲が良いのには驚いたが、話を聞けば…というより聞き耳のスキルで勝手に入ってきたわけだが…。なんでもちょくちょくお茶をしに奉仕部へ遊びに行って、アルゴも交えて色々と情報交換をしているらしい。どんな情報をやり取りしているんだか…。

 

 

 

 ーーーソイツは突然に現れた。

 

「ーーーッ!?敵だ!」

 

 俺の声に後ろにいた三人もすぐさま臨戦態勢をとる。

 

が、おかしい…。

 

「ヒッキー…、索敵には何もかからないよ?」

 

そう、索敵スキルにも鷹の目スキルにも反応はない。

…が、絶対にいる…。と思う…。

 

 ーーーそこかっ!

 

 振り向きながら雪ノ下の方へ鈴付きのクナイを放る。

 

「ッ!ハチマンくん何を…っ!?」

 

 クナイは雪ノ下の頭部の若干右通りーーー“何か”に刺さった。

 

 何かに突き刺された鈴の付いたクナイは、チリンと音を立てながら虚空を駆けていく。

 

「お前ら、ここで待ってろ!未確認のmobかも知れない…!」

 

「ちょ…っ!待ってよハチくん!」

 

 ユナの制止の声に聞こえないフリをしながら、俺は走り出していた。

 せめて正体くらい突き止めないと、後にここに来るプレイヤーに危険があるかも分からんしな。放置して被害が出たら目覚めが悪い…。

 

 

 

 

 木々の生い茂る中を全速力で走るっていうのは、案外集中力を使うもんだ。俺なんかは特にAgiに特化させているから足が早くなっている分、気を抜けば木に衝突してしまったり、地面に付けでた根や茂った草むらに足をとられて転んでしまう。

 かと言って、少しでも減速をすれば、ヤツを見失ってしまう。

 

 それならばどうするか…。

 最近だんだんと分かってきた。意識して例のスローモーションみたいな状態へ移行する方法。

 感情を波立てず、限りなく“0”にして深く集中する…。そうすると、みるみる周りがスローモーションになって、頭の中もクリアになり、思考速度が上昇した感覚が分かり、五感が冴え渡る。

 

 飛ぶような速さで、目まぐるしく変化する周囲の地形情報を瞬時に把握、処理をしていく。

 

 ーーーパパンッ!

 

 破裂音を出しながら両手に構えたクナイを二本連続で投擲する。

 距離、軌道、タイミング、ともに良し。……中る!

 

「グギェア!!」

 

 姿は相変わらず見えないが、鈴の付いたクナイが何かの悲鳴とともに荒ぶっているところをみると、無事ヒットしていたみたいだ。

 鈴の耐久度が無くなる前に、すかさず追加で鈴付きのクナイを投擲する。

 

 宙に浮いているように見える刺さったクナイを見れば大体の位置は把握できるが、姿形…今どんな姿勢をとっているかは見えない。

 

 暫しの沈黙…。恐らくヤツも足を止めて様子見をしているのだろう。

 クナイと短剣をそれぞれ逆手に構え、頭部を守りやすく構える。

 

 チリンーーー

 

 ーーーッ!?

 

 音に反応したころにはその気配すらなく、ガラ空きとなっていた右の横腹を切り裂かれる。

 くそっ、油断した…というより過信していた…っ!

 多少の速さには反応できると思っていたが、それどころでは無い。

 

 音がしてから反応するのではダメだ。

 音がする気配を感じとれ…ここはゲームの世界だ。それなら確実にデータの揺らぎが存在するはず…。頭を空にして感覚をより研ぎ澄ませろ…っ!

 

 ーーーーここっ!

 

 反射的に身を捩りながら回避するも、左の腿を爪のようなもので切りつけられる。だが……。

 

「…今回は相打ちだな」

 

 今度は捉えた!どこ切れたかは分からないが、確かに短剣で深く斬った感触を得た。

 その証拠に、ヤツは着地の体勢を崩したのだろう。鈴の音を激しく鳴らしながら茂みの中を転がっていったようだ。

 

 畳み掛けるなら今しかないっ。

 

 音の鳴る方へ踏み込みながら短剣を横薙ぎに振るう。ギリギリ当たりはしたが、かなり浅い…けど位置は把握できた。 

 ソードスキルは…スキル後の硬直のリスクが大きすぎる。使わない方がいいだろう。

 

 そのままもう一度流れるように体を回転させ、逆手に持ったクナイを突き刺し、確実な位置を把握したところにダメ押しに短剣を深く突き刺す。確かな手応えに昂る気持ちを落ち着かせる。

 

 姿は見えなくとも、振りほどこうと暴れているのが十分に分かる。だがこちらも簡単には振りほどかせまいと体を使って抑え込む。

 ここまで苦労させられたんだ…!今さら逃がす手はない!

 

 HPゲージは既にレッドに突入しており、0になるまであと少し…!しかしこちらのHPゲージも抵抗を受けている内にみるみると減り今はイエロー、レッドまで数秒と保たない。

 回復アイテムを使う余裕はない。今片手を離したらすぐにでも振りほどかれてしまう。

 

 あと4%ほどか…。3…2……1。ポカン。

 じゃなかった。間違えたわ。

 

 mobのHPゲージがようやく0になり、光のエフェクトとなり消滅する。その直前に一瞬だけ見えた姿は人型…なのだろうか、全身は黒光りする鱗のようなものに覆われてはいたが、その頭部は確かに人のソレと変わりないように見えた。

 

 このmobのデザインを担当した奴は全くもって趣味が悪い…。

 

 疲労感に抗えず地面に座り込み自分のHPを確認する。

 …うん、見事にレッドゾーンまじで三倍アイスクリーーーーム!!いや、アイスクリームは全然関係ないんだけどね。

 

 とりあえず回復アイテムでHPを回復させてリザルトを確認すると…やべえな経験値めちゃウマじゃん。コルも大量に獲得できたし、ドロップ品は…。

 

「キナア・ゴゥリ…?」

 

 何語だよ。明らかに英語じゃ無さそうだけど…。

 アイテムを見てみると、これまた…なんとも趣味の悪い仮面だことで…。黒い革製のハーフフェイスマスクに口にあたる部分には歯茎まで剥き出しにして並べられた歯。しかもこの口のデザイン、ご丁寧にファスナーで開閉可能ときたもんだ。

 

 好きな人は好きなんだろうけどね、このデザイン。でも俺はちょっと遠慮するかな…。ただでさえ目付きがアレだって言われているのに、こんなマスクしたらそれこそ通報されかねない。

 

 しかし、その付与されている効果は目を見張るものがあった。

 

 追加の効果として、Nameが非表示になる…は使い道が分からんが、AgiとStrの上昇に加えて走力上昇、背面攻撃に確定で致命攻撃追加。それとアバターの容姿に変化と、あとは…悪食スキル?

 ドロップアイテムであれば生肉でも食用可…はまだいいとして、通常の10倍の早さで状態異常飢餓を発症ってなんだよ。

要するに常に何か食ってろってことか?

 

 てか“飢餓”ってアレだろ?HP最大ゲージ低下にスタミナ消費量増加になるやつだろ、たしか、知らんけど。

デスゲーム開始直後は発症していたプレイヤーも居たみたいだが、攻略が安定してきた今、飢餓状態になるやつなんて見たことないぞ…。

 

 まるで呪いの装備だな…。まさか装備したら外せなくなる、なんてことはないだろうが…ないよね?協会で解呪もできない環境で呪いの装備とかまじでシャレにならないからね?

 

 ……まあ、詳細が分かるまでは倉庫の肥やしだな。記念トロフィーみたいなもんだ。

 …べ、別にチキってるわけじゃないんだからからねっ!

 

 

 

 

 

 回復アイテムで十分にHPを回復させた俺は、発煙筒を使って雪ノ下達を待つことにした。

 自分から飛び出しておいてなんだけど、どうやってここまで来たのか道も覚えていないしな。まさかの雪ノ下より先に俺が迷子になるなんて…。かと言って歩き回って探すような気力もない。

 

「ヒッキーやっと見つけたー!」

 

「もーハチくん!急に走り出して心配かけないでよね!」

 

「あら、迷子谷くんじゃない。ふふっ…こんなところにいたなんて…まったく困ったものね」

 

 なんだろ、この理不尽に恥ずかしくなる感じ…。昔小町と逸れた時に迷子センターに呼びだしされた時と似てる。

 というか、めちゃくちゃ嬉しそうですね、雪ノ下さん。表に出さないように堪えてるつもりだろうけど、堪えきれてないからね。

 

「ていうか、結局何だったの?新しいモンスター?」

 

「だな。これまで発見報告は無かったから、出現率が極めて低いか単に遭遇しなかっただけか…」

 

 それともあるいは…遭遇=死だったか……。

 なんにせよアルゴに情報を共有させないとな…。

 

「ハチくんがいきなりゆきのんさんに攻撃したかと思ってびっくりしたよ…」

 

「ええ、ついにあなたが正気を失ってしまって、その劣情の赴くままに牙を剥かれたかと思ったわ…」

 

「なんで俺が欲求不満になっているのが前提なんだよ」

 

「あら、違ったかしら?」

 

「全然ちげえよ…」

 

 まぁぶっちゃけ?そういう妄想をした事がないわけじゃないですけど?俺も年頃の男の子だし?ちゃんと節度は守ってるけどね。

 

「…んなことより、悪かったな…昼飯の時間遅れちまったな」

 

「ほんとだよー!もうお腹ペコペコ…早くヒッキーの心渡りがあるところに行こー!」

 

 なにその怪異だけが斬れる妖刀みたいなの。俺そんなもん持ってないよ?

 

「…ユイユイさん、“心当たり”です…」

 

「ちょ、ちょっと間違えただけだし!ユナっちひどい!あとヒッキーキモい!」

 

 いや、その流れ弾が一番酷いんだけど。俺何も言ってないよね。

 

 

 

 

 

 それから俺たちは今度こそmobの出現しない、大きなもみの木のある広場にたどり着くことができた。

 大きなもみの木を見てユナと由比ヶ浜は、はしゃぎながら来月のクリスマスの話をしている。なんでもキリトやアスナ、エギルなんかも誘ってここでクリスマスパーティーを企画しているみたいだ。

 

 そんな様子を見ながら女子三人の作った弁当を軽く摘む。こうして平和な光景を見ていると、ただピクニックに来ただけみたいだ…。

 

 元々静かなやつではあるが、殊更静かな雪ノ下の方を見れば、大きなもみの木に寄りかかって船を漕いでいた。

 その様子を見ていると、暖かい日差しも相まってなんだか俺も瞼が重くなっていき、そのまま睡魔に身を委ねていたーーーー。

 

 

 

 

 ーーーー程なくして目を覚ますと、三人とも寄り添うようにして眠っていた。

 いや本当に仲良しだねキミら…。

 

 時間を確認すれば2時間ほど眠っていたらしい。

 

「おい、起きろお前ら。もうすぐ日が傾くぞ」

 

 夜になるとmobどもが活性化する。そうなるとエンカウント率も高くなり、ここでは特に面倒になるからな…。

 

「ん……ひきがやくん…?服も着てるし、ハラスメントコードは…ちゃんと機能しているわね」

 

「お前は俺の事をなんだと思ってるんだよ…」

 

「ケダモノ、じゃないかしら?」

 

「なんでお前が疑問形なんだよ…そこの二人も起こしてくれ」

 

「あなたはどこへ行こうと言うのかしら?」

 

「出口の方向を確認してくるんだよ」

 

 ユナと由比ヶ浜を雪ノ下に任せて、広場の外周部を散策する。

 無秩序に変動しているように見えるこの迷いの森だが、一定の規則性をもって変動している。それさえ確認できればそうそう迷うことも無い。

 俺が初めて来た時には8時間近く迷っていたのは内緒だゾ☆

 

 

 

 

 

 

 かくして、目的を達成した俺たちは、無事に迷いの森から街区へ戻ってくることができた。

 なんでもお昼を食べるころには、目標の必要個数を達成していたらしい。そういうことはもう少し早く伝えてくれない?無駄な労働をするところだったじゃん…。

 

「じゃあねユナっち!ヒッキーも!また遊ぼーね!」

 

 遊びじゃないよね?仕事だったんだよね?

 

「ユナさん、ハチマンくん。今日は助けられたわ。ありがとう」

 

 珍しく礼を言われ…あ、今日はユナがいるからか。八幡、気づいちゃった。

 

 転移門に消えていく二人を見送り、残るのは俺とユナの二人だけ…とは言ってもさすがに今日はユナもライブを敢行しようとはしないだろ。そうなればあとはこのまま帰るだけだ。

 

「今日は楽しかったね、ハチくん」

 

「ん、まあ…そうだな」

 

 ニッと笑いながら話しかけるユナに対して、少し素っ気ないかとも思う対応で返事をする。いや、仕方ないじゃん?そんなにノリノリなリアクションを返せるぼっちは居ないんだよ。

 でも、それに対してユナも気分を害した様子はない。こんな俺の在り方にも慣れてきた、ということだろうか。

 

「またみんなで遊びに行こうね」

 

「…まあ、今度はこっちからアイツらを誘ってもいいかもな」

 

 ユナの提案にふと口から溢れ出た自分の言葉に驚く。

 どうやらいつの間にかずいぶんと今の環境に毒されているいるようだ。以前までの俺だったら有無を言わさず拒否をしていただろうに。

 

 しかしこう…、なんだ?まぁ、こういうの悪くない…なんて。平和を享受している俺のことも、案外嫌いじゃないのかもしれない。

 

 

 




というわけで18話目でした

いや、これだけ書いてまだアニメの3話目のところって…
もう少しテンポの良い文が書けるようになりたいものです…

次こそは早めに投稿したい!



次回予告的なもの


「おいおい、ツレねえじゃねえかよ。お前とここで会ったのは偶々だよ」

「生憎と興味がないんでな……。勝手にやってろ」

「ハー坊なら特別価格で…あ、頭を撫でてくれればいいゾ」

「おー!大将じゃねえか!久しぶりだなあー!」

「会議に参加する気がないのであれば、退出を命じます」

「お前…!ユナに何を吹き込んだ…っ!!」

「ハチくんのバカっ!ボケ!オタンコナス!」
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