やはり俺のVR青春ラブコメは間違っている   作:青鬼ちゃん

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今回は早めの投稿が出来ました!
読んで下さっているみなさんのおかげでモチベーションもぶち上がります!
文の質に左右されるかは分かりませんが…

設定ガバなところもありますが、二次創作の醍醐味だと思って暖かく見てくれると嬉しいです。


二章 七部

 

 

 

 満点の星空の下、深い森の中で、次のボス攻略に備えて今夜もレベリングに勤しむ男が一人。

 そう、俺だ。

 

 こんなに月がキレイな夜には、なにかが起こる気がするゼ……。月の見え方なんて階層によってバラバラだけどな。

 

「よぉ、ハチマン…。久しぶりじゃねえか」

 

 そら来た。お呼びではない厄介者が。

 

「……なんの用だよ……PoH」

 

 皮のポンチョに顔を深くまで覆い隠したこの男の名前は“PoH”。

 以前、とあるクエストでかち合って決闘をして以来、何かと俺の目の前に姿を現すレッドプレイヤー…要するに“PK”ってやつだ。

 

「おいおい、ツレねえじゃねえかよ。お前とここで会ったのは偶々だよ」

 

「“たまたま”ねぇ…。こんな所にレッドプレイヤーがなんの用だ」

 

「クックック…。なぁに、仕事だよ仕事。ちょっとお使いを頼まれてな」

 

 チッ…。コイツらの言う“仕事”なんてロクなもんじゃないことは明白だ。関わらないに限る。

 

「…そうかい。俺はもう撤収するから、後は勝手にやってろ」

 

「ハァー…。ほんっと、相変わらずツレねえな。俺の事を知っている奴なら、普通は捕らえようとするなり、恐れるなりするもんだがなぁ……」

 

「生憎と興味がないんでな……。勝手にやってろ」

 

 周りにお仲間を配置させておいてよくも言うもんだ。

 取らなくてもいいリスクにあえて手を伸ばす必要はない。

 

「ハッ!やっぱり、相変わらず面白い野郎だ。どうだ?今からでもコッチ側へ来ねえか?」

 

「……前にも言ったと思うんだかな…。その頭にはプリンでも詰まってんのか?答えはNOだ」

 

「ハァーハッハッ!相変わらずおもしれぇよ、ハチマン!でもな、それならオレ様も前に言ったぜ?お前は必ずコチラ側へ来る、ってな」

 

「……言ってろよ」

 

 そう吐き捨ててPoHへと背中を向けて帰路へ着く。無論、警戒は最大限に引き上げたまま…。気配察知と索敵のスキルを併用しながら、鷹の目スキルにより周囲を注意深く警戒する。

 隠れたお仲間は複数……十二人といったところか……。

 殺気こそ飛ばされてはいるものの、動き出す輩は居なさそうだ。

 

 ーーーっ!

 

 キンッーーー

 

 飛んできた投げナイフを、左手に構えたナタク製のクナイで弾く。

 麻痺毒の塗られた投げナイフは、そのまま地面へと落ち、エフェクトとなり消えた。

 

「……なんのつもりだよ」

 

「オーオー。そんな怖ぇ顔すんなって。な?どうせこんなお遊びなんかじゃ、お前を仕留めきれるなんて思ってねえよ」

 

「…今の一撃は確実に仕留めに来ていただろ」

 

「……クックック。あぁ、その通りだよハチマン!やっぱりお前は最ッ高だ!俺がこれだけやっても仕留めきれないのは、あのブラッキーとハチマン、お前くらいだよ」

 

 なんだそりゃ。相手を持ち上げといての巧妙な自分アゲってやつか。

 

「ーーーそう言えば、ハチマン。お前がツルんでる女…ありゃあ良い女だな。特に黒い髪の方は気が強そうで、屈服のさせ甲斐が「黙れ」…」

 

 あらん限りの殺気を込めてPoHを睨めつける。

 “それ以上喋るなら殺す”と明確な殺意を持って。

 周囲の奴らが、俺の放った殺気に反応するが、知ったことじゃない。

 

「ハッハ!平和なニッポンの、ヒトも殺したことがないようなガキが……どう生きたらそんな目が出来るのやら……。全く興味が尽きねえな!」

 

「……」

 

 無言のままPoHを一瞥して、そのまま予定通り帰路に着く。

 PoHもそれ以上喋ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「……つかれたっ」

 

 ベッドにうつ伏せのまま、重力という名の物理エンジンに従って倒れ込む。

 ベッドの軋む音が耳に心地よく染み込んでいく。

 

「お疲れサマってやつだナ。ハー坊」

 

 ……なんでアルゴがここに居るんだよ……。って俺が呼んだのか。ついさっきまで、久しぶりにイライラしたもんだから頭が上手く回ってないな。

 

「それで、アイツらレッドプレイヤーの連中があそこに居た理由は判ったか…?」

 

「大体の見当は、ナ……。どうやら、ハー坊の言ってた通り…というか、奴らの言う通り“仕事”だったってのは本当らしいゾ」

 

 仕事…ということは……。

 

「……依頼者がいる、か」

 

 脳を少し覚醒させるべく、ベッドに倒れ込んだ体を起き上がらせて腰をかけ直す。そうでもしないと本当に寝ちゃいそうだしね。

 

「みたいだナ」

 

 そう言いながら俺の隣にアルゴも腰を掛ける。だからなんで毎度そう距離感が近いの?なんかいい匂いまでさせてくるし……。俺が紳士じゃなきゃ大変なことになっていますのことよ?

 

「……ちなみに見当はついているのか?」

 

「ンー、教えてもいいケド、こっから先は有料コンテンツだゾ。ハー坊なら特別価格で…あ、頭を撫でてくれればいいゾ」

 

「じゃあ課金で。いくらだ」

 

「即決かヨ!?ハー坊は相変わらずいけずだナ……。残念ながら、課金制度は現在受付けておりまセン」

 

 ええー…。なんだよそれ、金で済むんなら金で解決させてくれよ。

 とは言え……。

 

「仕方がない、か」

 

 大体の情報の予想はついている…が、情報を精査をするに越したことはない。

 

 アルゴの頭に適当気味に手を置く。

 

「おっふぅ!」

 

「なんでアルゴが予想外みたいな反応するんだよ…」

 

 こっちがリアクションに困っちまうだろ。

 

「……で、いつまでやってればいいんだ」

 

「何言ってんのダ、ハー坊。まだ撫でてねーゾ」

 

 え、頭ポンは撫でるに入らないんですか?触れてる表面積的には一緒だから別によくないですかね?

 

「……別に、これが初めてって訳じゃないダロ」

 

「うっせ。恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ……」

 

 だからといって、このまま頭の上に手を置いているというだけでは、ただいたずらに羞恥心が募るだけで、一向に進む気配がない。諦めるしかないか…。

 

 ーーーさわっ

 

「ふにゃー…」

 

 ……っ!落ち着け八幡!コイツはこんな若い…というか幼い容姿をしていても歳上……っ!だから惑わされるなっ!

 ……しかし歳上、ということはあんなことやこんなことが許されるんじゃ…?っていかんいかん!疲れと眠気で思考回路が停止しているぞ!

 

「ーーーっ!もういいだろ…っ!」

 

「ちっ。相変わらずハー坊はケチんぼだナ。ユナ助には甘いっていうのにヨ」

 

 えっ、もしかして今舌打ちされた?羞恥プレイを強要された挙げ句、この仕打ちはあんまりじゃないですかねぇ…。

 

「マ、仕方ないな。報酬分の情報は譲ってやるサ」

 

 しかも何故か妥協されたし……。本当になんなの?

 

「とは言っても、何分直近の出来事だからナ。オレっちも裏が取れていない情報は、あんまり伝えたくはないんダガ……」

 

「…構わない。言ってくれ」

 

「ーーーどうやら、小規模ギルドの内輪揉め、ってヤツらしいナ。アイテムの取り分で揉めたみたいダ」

 

 “また”か……。

 

「……最近、その手のきな臭い問題が増えているみたいだな」

 

「あぁ…。奉仕部でもゆきのん達が対応をしてくれてはいるケドーーー」

 

 解決には至らない……か。

 そもそも解決する、というのが間違っているんだ。

 

 今現在、このSAO内は、いわゆる“中弛み”の中にある。

 デスゲームが始まってから一年近くが経ち、緊張感が弛み、この状況に慣れ、現状を受け入れてしまっている。

 

 そうなると、協力をし合おうと思う人間と同じくらい、出し抜いてやろうと考える人間が出てきてもおかしくはない。

 …いや、それ自体は間違ってはいないし、問題はない。

 限られたリソースを、仲良くみんなで分け与え合いながら攻略しようなんて無理があるってなもんだ。

 

「……」

 

 問題になっていると思われるのは、死への認識が薄れていることだろう。

 プレイヤーが一人消えたところで、仮想世界だから問題ない。気にも留めない。

 

 だから良いアイテムを持っているプレイヤーや、考えが合わないプレイヤーを闇討ちの様なやり方でひっそりと始末できる。

 レッドプレイヤーへの依頼は、そんなところか……。

 

 そもそも、“やってはいけない事”ならば出来ないはずだ。ハラスメント行為や圏内PKのように…。

 それなら、フィールドや迷宮区内でのPK行為は、推奨こそされてはいないが、勝手に俺たちがやってはいけない事として謳っているだけで、禁止されている訳ではない。

 極端に言ってしまえば、“やってもいい事”となる。

 

 それなら、ソレを止めるやり方はーー……。

 

「ハ、ハー坊…顔が少し恐いゾ……」

 

「ふむ…?」

 

 しまったな…アルゴが来ているのに思考に耽ってしまったな。

 

「…悪い、少し考えごとを、な」

 

 今考えるべきは、多発している闇討ちの依頼を止めること。それとレッドプレイヤー達を現状でどう抑えるか、だな。

 

「とりあえず、アルゴは攻略本にレッドプレイヤーの危険性を載せておいてくれ。…あんまり不安は煽らないような書き方で頼む」

 

「まったく…ムチャを言ってくれるもんダ……。この借りは高くつくゼー?」

 

「へいへい。俺にできる範囲でな」

 

 ま、俺に出来ることなんてたかが知れてるんですけどね。

 

「そう言えバ、もうそろそろじゃなかったカ?次の攻略会議…準備は出来てるのカ?」

 

「…そっちはまあ、ぼちぼち、ってとこだな」

 

 正直なとこ、もう少しレベルを上げておきたいところだが、ソロで行ける狩場だと、現状が頭打ちだ。

 

「ハー坊のことだから心配は要らないと思うケド、気を付けてくれヨ」

 

「……おう」

 

 大丈夫だ。

 俺は油断はしないし、慢心もしない。

 なんて言っても命がかかっているんだからな。

 

 

 

 

 

 11月も半ばに差し掛かったころ。ついに40階層の攻略会議が開催された。

 

「よっ!ハチマン。元気してたか」

 

「エギルか…。それ、会う度に聞かなきゃダメなのか?」

 

 黒人のガタイの良い大斧使いのエギル。

 攻略組の中において、タンク部隊として文字通り体を張って前線にたち続けている。ちなみに妻帯者らしい。くそっリア充め。

 

「当たり前じゃねえか。ハチマンはただでさえ生きてるか分からない目をしているんだからな。…っと、アイツらも来たな」

 

 それ、一言余計すぎませんかね…。

 エギルの視線を追う先には赤い甲冑に身を揃えた一団。

 赤っぽい茶髪にバンダナ、無精髭の男を先頭にこちらへ歩いてくる。

 

「おー!大将じゃねえか!久しぶりだなあー!」

 

 隣に立つなり肩をバシバシと叩く馴れ馴れしい男、クラインがリーダーを務めるギルド風林火山。

 リアルでも知り合い同士だという彼らは、持ち前のチームワークとタフさで、攻略組の一端を担うギルドになっていた。

 

「いてぇよ。つか大将なんて呼ぶな。あと痛い」

 

 俺の言葉を完全に無視しながらナッハッハと笑いながら、尚も肩を叩くクライン。こいつ、本当は俺のこと嫌いなんじゃねえの?

 

「……そう言えばキリトは?」

 

「キリトなら……ほれ、あそこだ」

 

 エギルの指差す方向を見ると、会議部屋の隅っこの方に一人壁にもたれかかり、腕を組んで佇むキリトの姿があった。

 いや、見えづらいし怖ぇよ。黒髪で黒服だから、思いっきり背景と同化してるよ。

 

「キリの字のやつ…まぁたあんな所で一人で居やがって……」

 

「そっとしておいてやれ。仲間を失う辛さは、俺たちには分からんさ……」

 

 おお…。さすがエギル。大人の対応だ…。どこぞの煩い奴と違ってな。

 

 時間が経つにつれ、他のギルドも集結してきた。

 中には聖龍連合のディアベルや…モヤッとボールを筆頭に、チラホラと見かけた顔も多数見受けられた。

 

 会議部屋の中の人口密度が上昇しきったところで、白を基調とした団服を身にまとった血盟騎士団が入室した。

 その先頭を歩くのは……アスナだ。

 

 各ギルドのリーダーは、それを合図に長机を囲む椅子へと腰掛ける。

 俺やキリトはソロでの参加になるため、その後ろに立ってでの参加だ。

 

「それでは、これより40階層の攻略会議を始めます。今回は血盟騎士団の副団長である私が指揮を執らせていただきます」

 

 はえー…堂々としたもんだ。伊達に階層攻略を数度仕切ってないってことか。

 なんて、ぽけーっとしながらアスナを見ていると、目が合う。

 ……がしかし、直ぐにその視線は逸らされてしまった。

 え、なんか無性に傷ついたんですけど……。

 

「あちゃー、大将振られちまったのか?」

 

「…いや、アレは照れ隠しをする乙女の反応だと睨んだな」

 

 いや、すこぶるどうでもいいんだけど、俺の両隣でおっさんが二人して勝手に実況しながら盛り上がらないでもらえます?

 

 再びアスナがこちらを見る。が、今度は少し厳しめの視線だ。

 

「そこの三人。会議に参加する気がないのであれば、退出を命じます」

 

 ほら怒られた。ってかなんで俺まで……。一言も喋ってないよね?

 とは言え、とりあえず会釈気味に謝罪の意志を伝え、姿勢を正して傍聴する。

 アスナもそれ以上は突っ込まずに、会議は滞りなく進行された。

 

 

 

 

「ーーーで、今回も攻略組の第二軍がそれぞれにパーティを作って迷宮区のマップ埋め。その後に俺たち大一軍が階層ボスを攻略、って流れでいんだよな?」

 

 会議が終わり、クラインの確認のための質問に答えながら、閑散とした部屋から退出する。

 

「まあ、ざっくり言うとそうだな。ついでに言えば、クラインの風林火山を含む、各ギルドから数人規模で第二軍に回すって話だが……」

 

 別々のギルドを混合させて、即席のパーティを作る…?

 それなら小規模ギルドをいくつか第二軍として派遣した方が安定して攻略できそうだが……。

 まあ攻略に参加するギルドにもメンツやらがあるんだろうしな…。

 面倒くさいことこの上ないな。

 

 厄介事にならなきゃいいんだけどな……。

 

 

 

 

 

 

「は?今なんて言った?」

 

 攻略会議が終わり、宿屋へと帰ってきた俺の部屋の前でユナが待っていた。どこで部屋を知ったのか…は大方アルゴの仕業だろうが、今はそんなことはどうでもいい。

 

「ハ、ハチくん、少し怖いよ……」

 

 怖い?俺はただ、たった今聞いた内容が信じられなくて聞き直しただけだ。いたって俺はクールだ。平常心、平常心。

 

「……で、何がどうなるんだって?」

 

「だからその……。わたしも今度の階層攻略の第二軍として参加することになったの!」

 

 …聞き間違えじゃなかったのか……。

 いや、そもそもなんでそんな話になった…?

 アスナの指示か…?いや、アスナは賢い。そんな馬鹿な判断はするはずが無い……。だとすれば血盟騎士団の団長とか言うやつか?それも無いな。今回はアスナに全任するという話だったハズだ。それなら一体誰がーーー…。

 

 

『ユナの隣にいるべきなのはあんたじゃない…。ユナを護るのはこのボクだ…っ!』

 

 

 ……アイツか。

 

「ユナ…。ノーチラスは今どこにいる?」

 

「えっ?ノーくんなら34階層の山椒亭って宿屋に……ってハチくん!?」

 

 制止するユナを振り切り、宿屋を後にする。

 向かう場所は34層のノーチラスの泊まっているという宿屋だ。

 

 

 

 

 ノーチラスの泊まっている宿屋、山椒亭は直ぐに見つけることが出来た。

 が、しまった……。部屋を聞いていなかった…。どうやら我ながら冷静さを欠いているようだ。

 

 しかし、救いの手は直ぐに現れた。血盟騎士団の団服を着た男性プレイヤーが丁度宿屋から出てきた。

 勢い余って掴みかかりそうになったところを、なんとか自制心をもってセーブさせ、極めて穏便にノーチラスの部屋を聞き出すことができた。

 怯えたような表情をしていたのは、きっと気の所為だろう。うん。

 

 すぐさま部屋へと向かい、扉を叩く。

 多分不壊オブジェクトじゃなかったら扉を破壊してたかもしれない。

 

「おいノーチラス!居るんだろ!出て来いっ!」

 

 扉は直ぐに開き、中から怪訝そうな顔をしたノーチラスが現れた。

 

「なんですか…。僕疲れてるんで休みたいんですけど…っ!?」

 

「お前…!ユナに何を吹き込んだ…っ!!」

 

 考えるより先に手が出ているとは、この事なのだろう。

 気づいた時にはノーチラスの胸倉を締め上げていた。

 

「はっ…!吹き込むなんて、人聞きが悪いですね…。それより、手、離してくれませんか」

 

 そこでようやく、自分がノーチラスの胸倉を締め上げていることに気がつき、手を離した。

 

「は、ははっ…。あなたでもそんな表情をするんですね」

 

「うるせえ…っ。質問に答えろ!」

 

「別に、なんにも…?吹き込むなんてしていない、唆すなんてことももちろんしていませんよ。ボクはただ、ユナの意志を尊重しているだけですよ。どこかの誰かと違ってね」

 

「ユナの…意志だと……?」

 

「ええ、そうですよ。ボクはただ、ユナに声をかけてみただけです。『階層攻略の第二軍として参加してみないか』ってね」

 

「だけどユナは…っ!」

 

「ーーーわたし、そんなに頼りないかな…?」

 

 不意に背後から聞こえる声に、思わず体が硬直する。

 

「ユ、ユナ…。いつから」

 

「そんなことはどうでもいいっ!…ねえハチくん答えてよ。わたし、そんなに頼りないの……?」

 

「……あぁ、頼りないね。レベルが多少上がったからって、戦闘経験もまともに積んでいないだろ。そんなの犬死にか、囮役がせいぜいだろうよ」

 

 言葉を吐きながら自然と握られた拳が痛い。言葉が震えないように噛み締めた唇が痛い。

 何より、こんな事をユナに言わなきゃいけない現状に胸が…痛いーーー。

 

 分かってる。半分は八つ当たりだ。

 でも、もう半分は本音なのかも知れない…。だからこそ、胸の痛みを堪えながらでも、今言わなきゃいけない…!

 

「だから…っ「でもそれって、結局自己満足なんですよねー」」

 

 ……は?何を言っているコイツは…?

 

「ユナを大事にしたいって言うのは、まあ何となくですがボクにも伝わりましたよ?でも、それってユナの意志は関係ないんですよねー…。ただあなたが勝手そう思っているだけ、思いたいだけ」

 

 落ち着け…。落ち着け……!

 いつもの、冷静な俺ならこんな弁論で苛立たないだろ…っ!

 頭を切り替えて反論できるハズだ…!

 すぐに論破して、マウントを取り返すだろ…!

 いつもの屁理屈を捻りだせよ……っ!

 

「戦闘経験が足り無いと言うのも、あなたが前線で戦うユナを知らないだけでしょう。大体、野良のソロプレイヤーのクセに、何を一丁前言ってるんだか…攻略組の第二軍のボクからしたら、ちゃんちゃらおかしいってなもんですよ」

 

「ノーくん!ハチくんは…「ユナ。ボクは今ハチマンさんに話しているんだ」」

 

 何かを言いかけたユナを、ノーチラスは言葉を被せて遮る。

 

「……結局、あなたは何がしたいんですか?あなたはユナのなんなんですか?

 ……あなたにとってユナは、なんですか?」

 

 俺は……ユナの……?。

 

 ダメだ…。考えが上手く纏まらない……。

 いつか見た夢…傷だらけのユナが脳裏に過ぎる……。

 

「俺にとって……。ユナは…」

 

「ほら、答えられないでしょう。そんな曖昧な気持ちで、ユナを護れるわけがないんですよ」

 

「ハチくん、なんで答えてくれないの…?ねぇハチくん…答えてよ…っ。ねえっ!わたしはハチくんのなんなの!?」

 

 あぁ…そうか。全部図星なんだ……。だから俺には何も答えられないんだ……。

 

「…ユナはボクが護りますよ。それを証明してみせます」

 

 そうか…俺がやってきたことは……。

 もしかしたら、俺である必要なんか無いのかもしれない……。

 そう考えると胸の中に得体の知れない感情が去来する。どうしようなくムカムカして、モヤモヤして、今にも吐きそうだ。

 

「……悪い、ユナ。俺、帰るわ……」

 

 その場から素早く身を翻し、ユナの横を大股で通り過ぎる。

 怖くて、ユナの表情を見ることはできない……。

 

「ーーーハチくんのバカっ!ボケ!オタンコナス!ハチくんなんてどっか行っちゃえ!バカぁ…っ!」

 

 俺は、逃げる様にして宿屋を出た。

 どうやって自分の寝泊まりしている宿屋まで帰ったかは…覚えているような覚えていないような……。

 

 

 

 

 

 

 

 朝、目が覚めて昨日の出来事が夢だったのではないか、という淡い希望を抱いたが、宿屋の床に散乱した花瓶に倒れたテーブルや椅子が、昨日の事は夢ではなかった事実を突きつける。

 

 

 とりあえず、散らかった部屋を片付けるか……。

 

 

 




というわけで、19話目でした!

ノーチラスのキャラがイマイチ掴めないせいで迷走しそうです…もう手遅れかも?

次回もなる早で投稿できるように頑張りますね!



次回予告的なもの

「生憎とこの顔は生まれつきでな。文句なら親父と母ちゃんに言ってくれ」

「そっとしておいてやれ。難しいオトシゴロってやつさ」

「たった今、仲間から連絡があった。……どうやらノーチラスがヘマをやらかしてーーー」

「良かった……生きてるようだな……。」

「ヒール!ヒール!ヒール!ヒール…っ!」

「えへへ…。…大好きーーーー』
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