やはり俺のVR青春ラブコメは間違っている   作:青鬼ちゃん

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もう少し期間を空けて、とは思ったのですが勢いで二話目も投稿する事にしました。
日曜日だし、いいよね?

というわけで、前回の続きになります。


一章 二部

 ひょんな事からデスゲームに巻き込まれ、部員とは離れ離れになってしまった!

 偶然ぶつかった少女からの申し出により、同じ部活の部員を探すことになった八幡☆

 これからいったいどうなってしまうの〜??

 

 て、誰に向けてのあらすじだよ。

 雪ノ下と由比ヶ浜を探す道中、彼女、アスナと情報交換がてら話をすることになった。

 

 アスナは例の茅場晶彦扮する死神の言っていた事をほぼ覚えているみたいで、どうやら頭は良いみたいだ。しかしうっかり本名を名乗ったり、男にホイホイついてきているあたり、どうも世間知らずな部分もあったり、育ちの良さそうな雰囲気もあり、お嬢様。と言われてもしっくりくる。

 

 こちらからはSAOのシステム面について話した。アスナは未だ外には出たことは無いみたいで、戦闘も未経験とのこと。

 ソードスキルやステータスのことについて話すと、ふむふむと真剣そうに話を聞いていた。

 

「・・・あ、ハチマンくん!もしかしてあの子たちじゃない?」

 

 話を聞きながら周囲を見渡していたアスナが、前方の路地に歩いて入っていく二人組を指差す。

 二人ともローブを被っていたが、後ろの方を歩いていた一人の垂れた黒髪には見覚えがあった。頼むあの二人であってくれ!もう歩き疲れたし、初対面の女子と二人きりは気疲れするんだよお!

 駆け足で二人を追うと、アスナもそれについてくる。

 曲がり角に消えた二人組の人影を追いかけて、声をかける。

 

「ゆ、ゆいゆい!ゆきのん!」

 

 やべ、思いっきり声裏返った。めちゃくちゃ恥ずかしい。顔が赤くなって背中に汗をかいているのが分かる。最新VRってすげー!汗の感触まであるんだもん。

 この際緊張もなかったことにできなかったのかね?

 

 前方を歩く二人が振り返る。

 よかった、なんとか声は認識されていたみたいだ。これで人違いだったら、今すぐ墓穴を掘ってそこに永久就職するまである。墓石と一生を添い遂げる人生でした。

 

 前方を歩いていた人影が、こちらへ向かって小走りで走ってくる。夕焼けが逆光になっていて顔が見えん・・・。ふむ、しかしけしからんおっぱいだ。ばるんばるんと揺れておるわ。

 

「ヒッキー!」

 

 逆光で見えなかった人影のフードが外れ、いつもの部室で見慣れた顔が顕れる。相変わらずの顔だ。しかし、少し目元が赤いか?多分泣いていたんだろうな。

 

 由比ヶ浜は目の前でバッと手を広げて飛び込んでくる。このままでは、ばるんばるんに顔を埋めてばるんばるんにされてしまう。それは悪くない。そいつは最高に、気持ちがいいな・・・。

 

「だが断る」

 

 由比ヶ浜のフライングボディプレスを華麗に回避。横目で見るとアホ面を晒しながら、その体勢のまま石畳にダイブし、勢いで4.5mほどヘッドスライディング。oh・・・あれは痛そうだな。街の中だからダメージはないんだろうけど。衝撃はあるからな。

 

「な、なんで・・・」

 

 むくっと起き上がりスライディングで擦れたのであろう、少し赤くなった鼻をおさえながら恨みがましくこちらを振り返る。

 

「なんでもクソもねえよ、あのままだと俺がハラスメント警告受けちゃうだろうが」

 

 そんなことにはなりたくない。よくは知らないが、ハラスメントにはペナルティもあるみたいだし・・・。【私はセクハラをしました】なんて表記が頭上に出るペナルティでも課されてみろ。デスゲーム初日から笑いものだ。

 

「あら、そんなこと、あなたの顔面を見ればどうせ分かることなのだから、今さらでしょう?」

 

 そう言って、開口一番にディスりながらこちらへ近づく雪ノ下。あぁ、なんかすげぇ懐かしい感じがする。

 というかナチュラルに心の声を読むの、止めてくれませんかねえ。なに?俺の後ろに雪ノ下だけに見えるモノローグでも出てるの?俺のスタンドが要らん仕事してくれてるのん?

 

「心の声なんて読めるわけないじゃない。勘よ」

 

 勘かよ、勘でこの的中率は尚更怖いわ。

 

「無事で、よかった・・・」

 

 本当に・・・。と顔を伏せながら呟く。よく見ると肩が震えてる。あの雪ノ下が・・・。

 

「お前、誰だ?」

 

「・・・随分なご挨拶じゃない、デスゲーム開始早々に宿に引きこもり、布団の中に閉じこもって『うえーん、怖いよー。助けてよー小町ぃー』と、泣きながら震えていたヒキコモリ谷くん、いえ、もはや引き谷くんね」

 

「いや、それもうただの比企谷だから。一周回って読みが一緒になっちゃってるから」

 

 そもそも宿には行ったが、すぐに出てきたし。

「それで、そちらの方は一体どちらの誰なのかしら?どういった弱味を握って連れ回し、挙句の果てにみだらな行為に及ぼうとしているのかしら。手遅れになる前に、いいえ、もう手遅れね。だけど今ならまだギリギリ、最終ライン1μm手前だけど、間に合うかも知れないわ。さあ、白状しなさい」

 

 なんでここでそんな慈愛に満ちた笑顔をだせるんですかねえ。そもそもなんで女の子と歩いていただけで事案発生してるの?あ、日頃の行いだわ。って日頃からそんなことしてんのかよ!してないよ!・・・してないよね?

 

「あー、こちらはアスナさんだ。たまたまぶつかった縁だが、二人を探すことに協力を申し出てくれた」

 

「そう、つまりは誘拐なのね。比企谷くん、有罪(ギルティ)ね。安心して頂戴。年に一回くらい、暇があれば・・・。そうね・・・ミトコンドリアの観察より忙しい用事がなければ、面会に行くことも吝かではないわ。それじゃあね、比企谷くん。更生して、その瞳の濁りが無くなったらまた会いましょう」

 

「それじゃヒッキーと一生会えないじゃん!」

 

 いや、俺の瞳は一生濁ってるのかよ。

 てかミトコンドリアの観察より忙しい用事ってなんなの。少し暇になったら「あ、ミトコンドリアの観察しよ」ってなるのかよ。いや、ならねえだろ。そんなことするなら、テレビでつまらない恋愛ドラマでも見ながらコロコロしてる方がよっぽど有意義だわ。よって俺の面会には一生来ない。QED証明完了。

 

「あ、あはは。はじめまして、アスナです。えっと、私のわがままでハチマンくんの厚意に甘えてご一緒させてもらってます」

 

 お、いいぞアスナ。あくまで俺が無理矢理連れ回しているわけじゃない、と伝えるあたり、八幡的にポイント高いぞー。

 ・・・あぁ、小町成分が足りない。

 

「アスナさん、と言ったかしら?いいのよ、大丈夫。その腐った男にそう言えと脅されているのでしょう?私たちはあなたの味方よ」

 

 全然ダメでした。うーんこの。全然聞く耳を持ちやしない。馬耳東風とはこのこと。熱血松岡先生に四字熟語習って来い。

それと腐ってるのは目であって、俺ではない。いや、性根が腐ってるから目が腐ってるのか?

 

「アスナちゃん?それならアスナンだね!よろしく!私は、えっと・・・ここではユイユイだよ!」

 

「私としたことが、目の前にいる危険人物に注視するあまり、自己紹介を忘れていたわ。はじめましてアスナさん。私のことは、そうね。ゆきのん、とでも呼んで頂戴」

 

 まさかとは思いますがその危険人物って目が腐ってて、アホ毛がチャームポイントだったりします?って俺の事じゃねえかよ!

でも一応確認のため後ろを見てみる。

 

「なにを確認する必要があるのかしら?危険人物と言えば、この場においてあなた以外居るはずないじゃない」

 

 ですよねー。うん、知ってた知ってた。

 

「とりあえず、こんなところで突っ立っててももうすぐ日が暮れちまう。話は宿に行ってからでもいいだろう」

 

 宿屋の方向をマップで確認しながら歩みを進め「待って!」ようとしたんだがなぁ・・・。

 声の主であるアスナの方を見ると、なにやらモジモジとしている。なんだ?トイレか?しかしVRに便意なんてものがあるのか?いや、風呂があるくらいだ。気分だけでも人の営み感を出すためにあるのかもしれない。

 

「あの、宿って私もついて行って、その、いいんです・・・か?」

 

 遠慮気味にこちらをチラチラと伺うような視線を送る。

 ははーん?なるほどなるほど?明らかに身内だけの空気、そこに部外者の自分がいてもいいのか?っていうとだな。わかる!わかるぞぉー、その気持ち。まあ俺はそもそもそんな空気に身を晒すことがないから知らんけど。だってその身内の外にいるのが俺だから。

 

 ちらっと二人に確認のため視線を送る。二人とも気づいてくれたようだ。

 

「んー、私は全然いいと思うけど。この時間に女の子一人で出歩くのも危ないしね」

 

「そうね・・・。ここまで一緒に私たちを探し出すのを手伝ってくれたのに、そこで「はいさようなら」じゃ後味悪いものね。そもそも宿をとったというのも比企谷くんなのだし、遺憾ながら、彼に決定権を委ねることにするわ」

 

 つまりはウェルカムオッケー☆てことね。

 それと、雪ノ下はもっと普通に簡潔に申せんのか。分かりづらい!いや、分かるけど。

 

「あー、そういうことだし、一緒に来るか?俺たちも大したもてなしは出来ないが、まあそっちの気が向けば、今日の寝床くらいは確保できる、と思う」

 

「・・・っ!うん!ありがとう!」

 

 パァっと笑顔になる。

 やめて!そんな純粋な眩しい笑顔こっちに向けないで!八幡溶けちゃう!って俺はスライムかよ。

 

「どちらかと言えばアンデッド系モンスター、グールね」

 

 いや、それ瞳の部分だけだからね。浄化されちゃってんじゃん。

 それとナチュラルに心の声にツッコミまで入れてくるなんて・・・やるじゃん、雪ノ下。

 

「どういたしまして♪」

 

 ふふん、と機嫌良さそうに前を歩いていく雪ノ下と、その腕に絡みついて百合百合している由比ヶ浜。いいぞもっとやれ。

 ま、あいつらが少しでも元気になってくれるなら、いいんじゃねえの。

 

 右手でアタマを軽く掻きながらアスナに「行こうぜ」と声をかけて雪ノ下と由比ヶ浜の後を追う。

 うん!と言って、俺の横で後ろに手を組み歩くその様子は、どこか機嫌が良さそうだ。

 まったく、なにをそんなに嬉しそうにしているんですかねえ・・・。生憎とこちとら勘違い耐性は高いものでね。ふはは、残念だったな。こんなことでコロッとはいかないのだよ!

 

  沈みかけている夕陽を背に、宿屋への路を行く。

 

 

 

 

 

 

 

 おーい、雪ノ下さんやーい。

 宿屋はこっちだぞー!

 

 どこの宿屋かも知らない上、方向音痴なのになぜ先頭を歩いて行ってしまったのか・・・。なんか修学旅行の時にも似たようなことがあったような気がするんだけど。

 

 歩いていた道を少し引き返すべく、ツカツカと早歩きでこちらに歩いてくる。無表情のように見えるがアレは違う。羞恥を必死に隠して取り繕った顔だ。

 

 すれ違いさまに「だめのん・・・」とぽしょっと呟く。

 由比ヶ浜はおろか、アスナまで吹き出した。

 ほほぉ、こんなに効果があるとは。

 

 雪ノ下はキッと睨みつけてくるが、ダメだ。今のだめのんは全然怖くない。むしろ可愛らしいまである。

 

 その後の宿への道中、少し間が空いたらだめのんを呟き、吹き出されては睨まれるということを繰り返した。

 

 というか女子三人でキャッキャウフフするのはいいけど、なんで俺の前を歩くの?

 いや、別にいいんだけどもね、宿の場所知ってるの俺しかいないよね?

 

 

 

 

 

「さて、着いたぞ」

 

 おおっと言う歓声が聞こえる。もちろん実際には聞こえてはいないのだが。そう思うことにした。

 受付を済ませ、追加で三人分のカードキーを受け取る。

 カードキーといっても、別にかざしたり差し込んだりする必要はない。ストレージの中にでも入れておけば勝手に認証して入れてくれるスグレモノ。

 逆に持っていなければ入れない。というのは当然のことだが、鍵の持ち主が許可しなければ、例えドアが開いていようと中に侵入することは不可能なのだ。

 

「すっごーい!ひろーい!」

 

「まあ、もともと六人部屋だしな」

 

 興奮してはしゃぐ由比ヶ浜とは対極的に、雪ノ下はと言えば、へー、ふーん、といった様子だ。普段一人暮らしで広いマンションに住んでますからね。このブルジョワジーめ!

 

「そういえばお前ら、どこからログインしているんだ?」

 

 そう、雪ノ下は一人暮らしなのだ。まさか雪ノ下がVRゲームをしている、なんて誰も予想できないだろうし、下手したら発見されることもなく、病院にも移送されず衰弱死する恐れまである。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。私は今晩由比ヶは・・・ユイユイのお家に泊まっているの。明日は学校もお休みだし、徹夜になるかもって誘われて、ね・・・」

 それがまさかこんなことになるなんて、とは続かなかったが、表情から予測はできた。

 

「だ、大丈夫だよ!家にはママもいるし、今ごろ病院のふかふかのベッドで仲良く並んでお休み中だよ!」

 

「ええ、そうね。きっと大丈夫よね」

 

 病院ですら百合百合ですか、ゆるゆりですね、わかります。しかし、病院のベッドは決して、ふかふかの限りではないことを教えておきたい!

 

「アスナンは?」

 

「私は実家からだよ。今ごろお父さんもお母さんも大騒ぎしてると思う」

 

 そう言って渇いた笑いを出すアスナの表情は、困ったような、それでいてどこか安堵したような表情に見えた。俺の考えすぎかもしれんが。

 

「そうか、俺も実家だから、たしか小町が夕方には帰ってくるって言ってたし・・・。まあ大丈夫だろう。ひとまず全員の身体は大丈夫そうだな」

 

 ひとまずの安心に心を少し落ち着かせ、四人で丸テーブルを囲むようにして座る。

 

「とりあえず、そうだな。これからのことを話そうか」

 

 そう、今一番大事なことだ。

 今日のような状況が、明日には終わるかも知れないし、1ヶ月、2ヶ月。下手をしたら・・・、考えたくはないが、一年続くかもしれない。

 それに、俺はあまり参加出来なかったが、βテストの時は確か二ヶ月で8階層までしか到達出来なかったはずだ。

 アスナから聞いた、クリア目標の100層到達、というのがどれだけ困難かは計り知れないが、ここは死んだら終わりのゲームの世界。動かすの画面のキャラクターではなく自分自身だ。

 並大抵の難易度ではないだろう。

 

「あ、ちょっと待って、お茶を淹れるわ」

 

 ってあら?せっかく今シリアスな回想モードだったんですのよー?ほんとだめのんなんだから!

 

「ふふっ、さっきティーセットとお茶請けを見つけたの」

 

 ほーん、俺があれやこれや心配してる間にお茶の心配ですか!雪ノ下らしいですね!まったく。

 

「あ、私も手伝います」

 

 そう言ってアスナも手伝いをしに席を立つ。

 

「それじゃ、私も・・・」

 

「ユイユイはここで座ってろ」

 

 立ち上がりそうになった由比ヶ浜の手を掴み、再び席に座らせる。

 ふぅ・・・、危ない危ない。下手に手を出して爆発でもされたらかなわんからな。

 

「さすがにお茶淹れるだけで爆発はしないし!ヒッキーひどい!まじキモイ!」

 

 ぷいっと横をむいてむくれる由比ヶ浜。

 ひどいのはあなたの暴言ですよ、由比ヶ浜さん。てか雪ノ下といい、なんで俺のモノローグに突っ込めるの?もしかして俺ってサトラレだった?・・・ないな。だって俺理数系が一番苦手だもん。むしろ真逆のサトラヌの方が有り得るな。他人の感情を決して悟らない。何それ、ただの空気読まない奴じゃん。

 

 なんてアホなことを考えている間に、カチャカチャと食器の音を響かせて、アスナがティーカップとお茶請けの乗った盆を、雪ノ下がティーポットをそれぞれ持ってきて、各々のカップに注いでいく。

 

 うーん、この香り。紅茶のことはイマイチ分からないけど、雪ノ下の淹れるお茶だ。美味しくないわけがない。

 

 昨日も部室で飲んだはずなのに、すでにあの空間で飲むお茶を恋しがっている。あれ、もしかして俺餌付けされてる・・・?

 紅茶を少し冷まして口の中へ流し込む。う〜〜ん。・・・うん?

 

 なんか・・・。

 

「味が薄い、ね.・・・」

 

 そう、それだ!由比ヶ浜のぼやきに違和感の正体に気づく。香りは十全に漂うのに、味といまいちリンクしない。恐らくSAO製作者の茅場晶彦は紅茶の味を知らないんだな。

 

 ズズっと味の薄い紅茶で口を潤したところで、議題へと戻ろう。

 

「それで、これからのことなんだが」

 

 全員の視線がこちらへ向けられる。やめろよ。そういうの、ぼっちは苦手なんだよ。というか、なぜに俺が進行を?

 

「と、とりあえず先ずは一つ目、アスナさんはこれからどうしたい?」

 

「え、えっと・・・。」

 

 アスナは少し困ったように視線を泳がせる。どうしたい?と漠然と聞かれてもそりゃ困るよな。

 

「あー、選択肢はいくつかあるが、まず一つ目だ。とりあえず今晩はここに泊まって、明日また別の宿を探す。早い話が明日からは別行動だな、と言ってももちろん宿がすぐに見つかるとは限らないし、それなら見つかるまで一緒に探すことに協力させてもらう。二人を探すのに協力してもらったんだから当然だな」

 

 うーむ、イマイチ浮かない表情。プランAはお気に召さなかったか・・・。

 

「二つ目は俺たちと一緒に行動し「いいの!?」・・・」

 

 食い気味だなぁ、考えてたC〜Fまでのプラン飛んじゃったよ・・・。

 

「あ、ああ、勿論だ。ゆ・・・イユイとゆきのんはどうだ?」

 

「私は全然さんせー!女の子の友だち増えてうれしいしー!」

 

「まあ、そうね。比企谷くんがリーダーぶって勝手に決めたのは甚だ、ええ本当に甚だ遺憾なのだけれど。その案が彼女にとっても、そして私たちにとっても最良の案だということには同意するわ」

 

「そうかい、ありがとよ。で、だ。そうなれば次に決めるべきは、俺たちの指針だな」

 

「ししん?」

 

 そうだ、由比ヶ浜、こいつはおバカの子だった。

 

「あー、まあ、目標みたいなもんだ。何を目標とするのか。そのために何をしていくのか、ってな具合だな」

 

「なるほど!それならそうと言ってよヒッキー!」

 

 これは由比ヶ浜にも分かるように伝えなかった俺が悪いのか?そう思い雪ノ下を見ると、目を瞑り首を横に降っていた。“むだよ、諦めなさい”と言っているようだ。

 

 由比ヶ浜のアホの子に付き合っていたら、時間がいくらあっても足りない。

 

「とりあえず、だ。指針を決める。その前に一つ重大な問題を提起しなければならない。それは・・・」

 

「それは・・・?」

 

 雪ノ下が問いかけると三人でゴクッと喉を鳴らす。案外ノリいいなーこいつら。特に雪ノ下なんて、リアルとキャラブレしてんぞ。ゆきのんもといだめのんだからか?

 

「実は俺・・・男なんだ・・・」

 

 ピシッ

 場の空間が凍りつく音がした・・・。気がした。

 これはまさか、成功してしまったか?

 

 一撃必殺 絶 対 零 度!

 

 がはは。勝ったな。

 

「・・・あなたねぇ」

 

「まあ聞けよ、ゆきのん」

 

 雪ノ下を言葉を遮る。どうせ口を開かせても罵詈雑言ラッシュが繰り出されるだけからな。

 

「男一人に女が三人。この比率はよろしくない。ひじょーによろしくない」

 

 少し大げさに、アホっぽく切り出す。アホっぽすぎたか?

 

「まず寝床だ。六人部屋とはいえ、個室があるわけではない。ここはあくまで宿屋。ベッドがあるとはいえ、寝室は一つ。となれば同じ部屋で寝ることになり「あら、そこに丁度誂えたようなソファがあるじゃない」・・・」

 

 oh・・・そうか、ソファで寝ればいいんだよね、いや、人並みにベッドで寝ることを期待して、なんかごめんなさい。

 

「それに、ほら、アレじゃん?やっぱ周りの目だってあるじゃない?『なにあいつ、女に囲まれてハーレム気取りかよ』とかさ」

 

「それもなんか今さらって感じだよねー」

 

 ん?ガハマさん、今なんですと?

 

「だって奉仕部の時だって私とゆきのん、それにいろはちゃんもほぼ毎日いたし、ヒッキーが女の子に囲まれている状況っていうのはあんまり変わんないかなーって」

 

 味の薄いお茶請けのクッキーをもぐもぐさせながら淡々と告げる。よくそんなに食べれるね。確かにお腹には溜まるけど口の中パサつかない?

 ってそうじゃない!俺は!いま!由比ヶ浜に論破された、だとっ!?

 アホの子代表である由比ヶ浜に論破されるなんて・・・。恐ろしすぎるーーこれがデスゲームか・・・!

 

「だ、だとしてもだ!これだけ綺麗どころが三人もいるんだ!俺だって男だからな。『ぐへへへ、今日はどの子にイタズラしてやろうか』くらい考えてもおかしくないだろ」

 

「「それはない(わ)ね」」

 

 バッサリと一蹴ですか。ええー、なにその信頼度。いつの間にそんなに信頼度積み上げてたの?

 藁に縋る思いでアスナを見る、が、あははと困ったように笑うだけだった。退路はなし、か。

 

「そもそもヒッキーそんな度胸ないし、あってもその、む、胸とか、見てくるくらいだし?」

 

 いや、由比ヶ浜さんのそれは見るというか、つい目がいってしまうというか。見てますね、はい、ごみんなさい。てか普通にバレてたのね・・・。

 

「そもそもハラスメント警告、だったかしら。それがある以上比企谷くんから手を出すことはできないのではないかしら。

もっとも、そのいやらしい目で嬲るように視姦してくることは、比企谷もその、男の子なのだし、これだけ魅力的な女の子が近くにいるのだから致し方のないことだと思って諦めることにしましょう」

 

 まあ、ハラスメント警告に関してはその通りなのですがね・・・しかし雪ノ下さん、あなたは大きな間違いを犯している。

 それはその慎ましく起伏の少ない体のどこを見て視姦すると「なにか?」こわ〜・・・。

 睨まれただけで一瞬、心臓まで止まったかと思ったよ。メデューサなの?バジリスクなの?バジリスクタイム 突入!しません!

 

「・・・はぁ、まあいいや。それじゃ俺も同じグループに入れてもらえるってことで。アスナさんから何か要望とかはないか?」

 

 ぼっちのぼっちによるぼっちのためのささやかなぼっちライフを送るための計画が頓挫した以上、諦めるにかぎる。

 出来そうなことは試みるが無理そうなことはやらない。これ、人生を省エネするための秘訣ネ。

 

「それじゃあ要望っていうか、ハチマンくん、なんで私に“さん”づけなの?」

 

「え、だってアレじゃん?今日初めて会ったんだし、いきなり呼び捨てとかはちょっと「アスナ」・・・」

 

「アスナ、リピートアフタミー」

 

 いやだって、ねえ。アスナって本名でしょ?

 そんなのいくらプレイヤーネームだとしても、同年代の女子を下の名前で、しかも呼び捨てするなんてハードル高すぎィ!

 

「アスナ」

 

 え、めっちゃグイグイ来るじゃないですかー、やだーもー、最近の子怖いー。

 とはいえ、呼ばなくては引いてくれそうにないな・・・。覚悟を決めるか。

 

「ア・・・」

 

「ア?」

 

 いや、怖いよ。字面だけみたら半ギレの人だよ!

 

「ア→ス↑ナ⤵︎ ︎」

 

「・・・なんでそんなイントネーションなのかな?」

 

 ヒィッ!名前呼ぶだけでこんなに苦労してるのに、世のパリピ連中(葉山グループとか)はこんな苦行の末その座に着くのか!いや、多分違うな。

 

「・・・アスナ」

 

「!もう一回言って!」

 

「アスナ」

 

 パチパチと両の手を叩いて喜びはしゃぐ。なんだこれは?初めて言葉を喋った赤ん坊と母親かな?マッマ、マッマてか?

 

「ねえヒッキー、あたしは?」

 

「ゆ、ユイユイ」

 

「私はどうかしら?」

 

「・・・ゆきのん」

 

 だからなんだこれ、この状況。便乗して言葉を覚えさせようとする親戚のおばちゃんたちかな?

 

「なんでゆきのんはサラッと言えるのにあたしの名前は少しつまっちゃうんだろ?」

 

「これが信頼の差というものよ。」

 

 なんでそんな薄い胸を張「なにか?」いえなんでもありません。

 

「ユイユイ、は、なんかアホっぽくて恥ずかしい。ゆきのんはまぁ、ほら、アレだ。だめのんだから」

 

 ぶふっと盛大に吹き出す二人。これはあれですね、完全にツボにハマってますね。声を必死に抑えようとしているが、肩が震えて苦しそうだ。仕方ない、助け舟を出してやるか。

 

「・・・だめのん」

 

 ブッフー!!

 

「「あっははははははははは!!!」」

 

 デデーン アスナ ユイユイ アウトー

 

 年越しお笑い番組なら、即ケツバットものだぞ。

 しかし女の子が仲良く笑い合う様はよきかなよきかな。おや、雪ノ下さん、そんなに顔を真っ赤にしてどうしたの?

 VRでは感情が表面に出やすくなるという。悲しければ涙がでるのだ。

 これもVR空間の効果なのか?

 

「比企谷くん、死ぬ準備はいいかしら?」

 

 そうか、俺・・・ここで死ぬのか・・・。

 

 すっと立ち上がり、おもむろに右拳を心臓に掲げ、左手は肘を曲げ背中へ回す。進撃の巨人の敬礼ポーズだ。

 さっきまで笑い転げていた二人も、何事かとこちらを見つめる。少し照れくさいから顎を少し上げ、視線は少し上の虚空を見つめる。

 

 軽く深呼吸を一つ・・・。

 少し張り詰めた空気。

 

「比企谷八幡。享年17歳。死因、だめのんに笑い殺される」

 

 ブッフォーー!!

 

「「あはははあはあははははは!!!!」」

 

 ダメー ヒッキー モーホントムリー!!

 ゴ ゴメンナサイ!! デモッ ハチマンクンガダメノンサンガ・・・

 

 ふむ、これだけ笑ってもらえるなら、体を張る価値もあったというものだ。

 

「我が生涯に一遍の悔いなし」

 

「そう、なら死になさい」

 

 瞬間、反転する世界。

 スローモーションのように世界が回る。

 そういえば護身術に合気道を習ってるって言ってたなぁ、なんて、のんびり考える。

 

 衝撃、それとともに暗転する視界。

 あぁ・・・雪ノ下には後で謝っておこう・・・。

 そう考えたかどうか、というところで俺の意識は途切れた。

 

 

 後頭部に感じる、心地よい感触に目を覚ます。

 

「あら、起きたのね。そのまま永眠すればよかったのに」

 

 知らない天井、というか寝ている俺の顔の上に、雪ノ下の顔。

 なぜだ?アタマが回らない。

 

「危うく俺の将来の夢が叶うところだった」

 

「将来の夢、専業主夫、だったかしら?」

 

「いや、一生を自堕落に寝て過ごす」

 

「・・・次はもっとキツめにしようかしら」

 

「冗談だから、勘弁してくれ・・・」

 

 そう呟いて、横になっていた体を起こす。

 頭や体を触ってみるが、どこも異常はない、さすがはVRと言ったところだろうか。

 ギャグ漫画などでは大怪我した次のコマではピンピンしてることなどがあるが、まさにそれだ。街の中だからケガすらしないのだが。

 

 横を見ると、雪ノ下がソファに座っている。

 ふむ、ということは雪ノ下が膝枕をしていた?なぜ?

 

「さすがに私だって少しやりすぎたと、少しだけ反省しているわ」

 

 とてもそうは見えない態度でそう告げる。が、本人がそう言うのならそうなのだろう、

 

「あー、さっきは悪かった。少しからかいすぎた」

 

「分かってるわ、あの子たちのため、でしょ」

 

 お見通しですか。少し恥ずかしくなって顔を背けてしまう。

 

「あいつらは?」

 

「ぐっすり眠ってるわ。笑い疲れて、ね。ふふっまるで子どもね」

 

 さいですかい。そりゃ恥をかいた甲斐があったってなもんです。

 

「こんな状況だもの。不安に押し潰されそうになったっておかしくないわ」

 

 特に今日は一日目だ。これから先、どれだけこの世界での生活が続くかも分からない。

 先に待つのは地獄か、苦痛か。少なくとも天国だろう、という楽観視は、どうしてもできない。

 

「それなら今日、一日だけでも笑って終わらせられたらっていう。あなたの優しさね」

 

 そんなんじゃねえよ、ただいつもの仕返しにちょっとだけね?というか、もうモノローグと会話するのがデフォになってるじゃないですかー。

 

「正直ね、以外だったわ。あなたがあんな行動をとるなんて。そして少し嬉しかったの」

 

 不覚にもね・・・。雪ノ下はそう零す。

 

「たまたま。今日だけだ」

 

 明日からはまたいつも通りの比企谷八幡だ。

 

「お前も早く寝ろ」

 

「あら私には何もないのかしら?安眠出来るおまじないとか」

 

 くるっと優雅にターンした雪ノ下がこちらに近づく。

 その様と月明かりのコントラストが妙にマッチしていて、少し妖艶で、同い年の女子を相手に不覚にもドギマギしてしまう。別に、あれはそんなんじゃないんだけどなあ。

 

「はあ、どうすりゃいいんだよ・・・」

 

 俺にはピエロの真似事はできても、女の子を喜ばせることはできないぞ。一発芸でもして笑わせろってか?

 

「そうね、頭を撫でて頂戴」

 

 む、そんなことか。と雪ノ下の頭に手を持っていきながら、ふと気づく。やれやれ、本当に俺らしくもないことばかりだ。

 小町の頭をイメージして撫でる。

 黒く、細い絹のような指ざわりが本当にVRなのかと疑問を抱かせる。

 

「んっ、もういいわ。へたくそね。今度する時までにはもう少し上達していなさい」

 

 これが事後のピロートークなら、一生のトラウマとして引きずる自信がある。

 

「ばっかお前、小町の頭を撫でさせたら俺は世界一だっつの」

 

「それは妹さん限定でしょ、本当にシスコンね」

 

 どうも、そりゃ最高の褒め言葉だ。最高の褒め言葉と、おやすみなさいという言葉を残して雪ノ下は寝室へと入って行った。

 

 数分後、しばらくボーッとして、雪ノ下たちが寝静まったのを気配で確認して、ソファから立ち上がる。

 

「さて、行くか・・・」

 

 時刻は2時ちょい。夜はまだ長そうだ。

 

 

 




連投で申し訳ないです。

投稿する前に一度読むようにはしているのですが

やはり文が拙い...。上手に書けない...。見づらい...。

まあ、ぼちぼちやっていきますよ。

話のストックが尽きる前に次々書いて行きたいと思いますので、これからもよろしくお願いします




次回予告てきなもの

「よう、いるんだろ。出て来いよ。」

「おれっちの名前はアルゴ。情報屋なんてのをやっていル。」

「お、なんダ?お人好しが発動しちまったのカ?」

「なんとかな。生きてるよ。」

「自己紹介がまだだったよな。俺はキリトだ。よろしく。」

「つまり俺こそがお兄ちゃんなんだっ!」
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