やはり俺のVR青春ラブコメは間違っている   作:青鬼ちゃん

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今日はお仕事が休み、というこでと投稿です。

今まではスマホでフリックしていたのですが、キーボード打ちに切り替えたので、今書き溜めてある分も含めて再編中です・・・

私はこうした方が読みやすいのですが、もしかしたら読みにくいと言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、容認していだければ幸いです。



一章 六部

 ゲームオーバー=死に直結このデスゲームを生き残り、元の平穏な日常を取り戻すべく新たに加わった仲間、アスナとアルゴとともに生き残りを掛けた戦いに身を投じていくことになる・・・。

 

 なんてことはなく、俺はただゆったりと生き延びて、誰かがクリアしてくれるのを待つくらいしかできることはないだろう。

 ぼっちの俺には背景を歩くモブくらいがお似合いだ。

 

 そう思いながら重い瞼を開く。

 外は水を打ったように静かになっていることから、夜も深まった時間帯なんだろう。

 

 ・・・どれくらい外を眺めていただろう。

 暫くして寝室から人が動く気配。音を立てないようにしているあたり、アルゴか?

 

 最小限に音を立てないようにドアを開いて、大きく欠伸をしながら近づいてくる。

 

「ン、ハー坊ももう起きてたのカ。それで、もう行くのカ?」

 

「そうだな。行くか・・・」

 

 ソファからゆっくりと立ち上がり、アルゴを連れ立って玄関を出る。

 

「それで、どこに向かうんダ?」

 

 現在俺たちは、月明かりに照らされた石畳を歩きながらクエストボードのある広場へと向かっている。

 

「ちょっと気になるクエストがあってな」

 

「それってアノ討伐クエストのことカ?」

 

 さすがはアルゴ。やっぱり目を付けていたか。

 

「ま、ひとまずの活動拠点を得るにはちょうどいいだろ」

 

「でもたしかあれ、六人パーティ推奨のクエストだゾ」

 

「ま、なんとかなるだろ」

 

 話しながらも、目的のクエストボードの前まで辿り着き、ボードを確認する。クエストは・・・。まだあるな。

 どうやら未だクリアはされていないようだ。

 とは言っても、いつ他の人に先を越されてもおかしくはない。クエストを受けて動き出してるプレイヤーはもういるだろうしな。

 

 とりあえずクエストは受注するとして・・・。

 

「・・・いつまでコソコソ着いて来る気だ」

 

 後ろの物陰から気配が揺らめく。

 

「え、えーと・・・。いつから気づいてたのかな?」

 

「最初からだ、アスナ。・・・アルゴ。お前が連れてきたのか?」

 

「にゃははー。オイラがこっそり出ていこうとしたら気付かれちまってナ。どうしても着いてくるって言うもんだかラ・・・」

 

 仕方なくー。と少しバツが悪そうにする。

 しかしどうしたものか。ここで一人で帰したとしてもも、先刻の不埒な輩みたいなのに捕まってしまうのも目覚めが悪いというもの。

 もちろん宿まで送り届けるという選択肢もあるが・・・。

 

「アスナ、今レベルはいくつだ?」

 

「えと、今まだ1、だよ」

 

 今後、奉仕部の活動をしてもらう上で、もう少しレベル上げておいてもらうのも悪くない。

 幸いアルゴもレベルはそこそこに高いし、グラス・スプリンガーの慣らしも含めていい機会かもしれないな。

 

「わかった。今からクエストを受けるが少し危険もあるかもしれない。一応確認するが、着いてくるか?」

 

「もちろん!」

 

 即答ですか。ま、多少強引でも着いてくる気が無いならこんな夜中にコソコソとストーキングなんてしないだろうしな。

 

「んじゃ、行くぞ。」

 

 こうして俺たちは三人でパーティを組みクエストに挑むこととなった。

 

 

 

 これは果たして偶然なのだろうか?

 クエストを受けるため、依頼者の元へ訪れた先は・・・婆さんからもらった紹介状の薬問屋。

 え、このお店無くなるなら、紹介状で融通してもらう云々の話も無くなっちゃうじゃん!

 もともと棚ぼただったから別にいいんどけどさ・・・。使い道ゼロのアイテムがストレージにあるのってあんまり好きじゃないんだよね、俺。

 ちなみにエリクサーなんかは、ラスボスまで使わないと思ってても、結局ラスボスでも使う機会はなく、裏ボスで、と思ってても結局使わないってのがいつもの俺の定番だな。

 

 まあいい。融通云々の話は元から無かったものと諦めよう。

 

 意を決して扉を叩く。

 

「・・・どなたかな?」

 

 扉を開いて顔を出したのは中年くらいのおじさん。名前はバジルと言うらしい。

 クエストの受注手続きを終えると説明が始まった。

 バジルさん曰く、店舗を移転することにしたのだが、新店舗で出すための道具を卸に来る行商人が街道に現れたモンスターのせいで足止めを食らってしまっているとのことだ。

 モンスターはフレンジーボア。グラスウルフにグラスワスプ。それと大きな影も見られたらしい。

 ちょっとそれボスフラグじゃないですかー、やだー。

 

 とはいえ、やると決めたからには、受けたクエストはこなさないとな。

 話もそこそこに気になっていたことを聞いてみるか。

 

「そういえば、これを見せろって言われたんだが・・・」

 

 そう言って紹介状をバジルに手渡す。紹介状を読んだバジルは少し驚いた顔をして。

 

「おおっ、あんたがネリス婆さんとリーリア嬢ちゃんの恩人か!少し待っていてくれ」

 

 そう言って店の奥にそそくさと入っていってしまった。

 

「ハチマンくん、いまのは?」

 

「ああ、なんか困ってるみたいだから手助けしたら貰えた」

 

 うむ、我ながらなんて完璧で簡潔な説明だろうか。行動と結果だけを伝える。説明が面倒な時にはこれにかぎるな。

 

「ククっ、またしてもオレっちの知らない情報カ?ハー坊」

 

 後で詳しく聞かせろヨ。って言われてもなあ・・・。でも今回はアルゴの名前を出した部分もあるし、まあ説明しておくべき、かな。

 

 少ししてから再び奥からバジルが出てきた。

 

「俺は昔ネリス婆さんには随分と世話になっていてな。これはネリス婆さんを助けてくれた、礼だぜひとも受け取ってくれ」

 

 そう言って差し出されたのは回復結晶が5個、回復ポーションが20個、SPポーションが10個、解毒薬が10個、解痺薬が10個。

 随分と大盤振る舞いだな。

 

「なに、俺の世話になった人の恩人への感謝の印だ遠慮せず、受け取ってくれ」

 

 まあ、貰えるっていうんなら貰っておくか。

 回復アイテムはいくつあっても困るものでは無いし、回復結晶はレアなようだから有難い。

 

「俺はこれだけあればいい。後はお前らが持っていてくれ」

 

 そう言って回復ポーションを4つと回復結晶、SPポーション、解毒薬、解痺薬を1つずつ手に取りストレージへ収納する。

 

「え、でもこれはハチマンくんが貰ったもので・・・」

 

「俺はストレージの中がゴチャゴチャしてるのが嫌いなんだよ」

 

 アルゴは仕方ないな、とばかりに肩を竦める。なんなの、その「はいはい、分かってますヨ」と言わんばかりの態度は。

 

「・・・わかった。とりあえず預かっておくね」

 

「おう、そうしてくれ」

 

 二人が残ったアイテムを半分ずつストレージに収めたのを確認して俺たちは店をあとにした。

 

 

 

「それで、ホントの所はどういった経緯なんダ?」

 

 三人でフィールドへ続く門を目指す道中、アルゴから先ほどの件について尋ねられる。アルゴの名前も使ってしまったし話しておくのが筋か。

 

「お前らが風呂に入る時、俺は外に出てただろ?その時にプレイヤーに絡まれてるNPCを助けることになったんだが、その縁でな」

 

「それと事後報告で悪いんだが、その時にアルゴの名前も使わせてもらった。手を出してきたりはしないと思うが・・・。悪かった。何かあったら言ってくれ」

 

「うんにゃ、それに関しちゃオイラ気にしてねーヨ。むしろ宣伝してくれて感謝してるくらだゼ」

 

 アルゴはにゃははーとカラカラと笑う。まったく、気持ちのいいやつだな、こいつは。

 

「でも、NPCを襲おうとするなんて、そんな酷いプレイヤーもいるんだね・・・」

 

「・・・まあこんな極限状態だ。色んな奴もあおるだろうし、ソイツらだって現実ではそんなことしない、マジメな奴だったかもしれないしな」

 

「うん、そうだね・・・。そうであって欲しいな・・・」

 

 ぽつりと呟いた言葉はアスナの心の優しさを表わしているようだった。

 だから、人間の本質なんてそう変わらないだろうな。という言葉は胸に飲み込んでしまい込んだ。

 

「そういえば、その時に【鷹の目】ってスキルをもらったんだが、アルゴ、何か知ってるか?」

 

「鷹の目・・・。いや、オレっちも聞いたことがないガ。もしかしたらエクストラスキルかもしれないナ。どうやったら出現したのか、もう一度詳しく聞かせてクレ」

 

 そのエクストラスキルってのがなんなのかは良く分からないんだが、まあこの情報が何かの役に立つというなら伝えない訳にはいかないだろう。

 

 俺は鷹の目習得に至った顛末をアルゴに説明した。

 

「ちなみにそのエクストラスキルってのはなんなんだ?」

 

「エクストラスキルってのは、普通の武器スキルやソードスキルと違って、とある条件下で出現するスキルだなナ。例えば特定の武器を使い続ける、規定のクエストをクリアするってのが一例に挙げられるナ。」

 

 どうやらβテストの時点でもいくつかのエクストラスキルの出現は確認されていたようだ。それならゲームバランスを壊すようなものでも無いからひとまずは安心かな。

 そもそも視力がちょっと良くなる程度だし。

 

「問題は、ハー坊のソレが未だ情報が出てきていないってことダ」

 

「下手に公開すればチートだのあらぬ疑いをかけられて、攻撃の的になる、か」

 

 人間てのは、オンリーワンだのワンオフだのってのが大好きだ。

 しかし、それは自分に降りかかるからこそ好きなのであって、他人のソレは妬みや嫉みの対象になりかねない。

 特に(偏見かもしれないが)こういうゲームをプレイする人間からしたら余程だろう。

 

「アァ、だから詳細な情報が出るまでは、その件は公言しない方が良いだろうナ」

 

 ま、初めからそのつもりだけどな。

 そもそも言いふらすような相手もいないし。

 

「アスナも、この件は奉仕部の連中以外には内緒にしといてくれ」

 

「うん、わかったよ!」

 

 アスナは素直だから話しやすくて助かるなー。

 どこぞの口を開けば罵倒と理屈をこねくり回す女王様とは大違いだ。・・・誰とは言わないけど。

 

 そうこうしている内に門の前までやってきた。

 昨日と変わらず人はまばら。むしろ少し減った気がする。

 

「昨日から今日で何人かのプレイヤーがやられたみたいダ。警戒しているんだろうナ」

 

 なるほどな。改めてデスゲームの最中であることを認識させられるな。

 隣りを見れば、暗い報せにアスナの表情には緊張が見られた。

 

「ま、大丈夫だろ。無茶はしないし、危なくなればすぐ転移結晶を使えるようにしておこう。・・・油断はよくないが、それよりも恐怖で足を止めてしまうのは論外だろ」

 

 少しでも鼓舞する言葉をアスナにかけるが、果たして効果はあるのかね。

 生憎と、俺はそんなセンスは持ち合わせてはいない。

 

「うん、大丈夫。行こ」

 

 どうやら少しは気持ちが前向きになってくれたようだ。元々芯の強いやつだ。要らん世話だったかもな。

 

 フィールドに出たところで、早速鷹の目を発動してみる。

 なるほど、確かに気持ち分遠くが見える、ような気がする。まあスキルレベルに応じてって注釈してあったし、今後次第だろうな。

 

 それよりも特筆すべきは、明らかに視界が見やすくなったことだ。

 夜なのに断然周囲が見やすくなっている。

 

「昨日と同じような要領でいいのカ?」

 

「あぁ、だがアルゴはアスナのフォローを優先してくれ」

 

「昨日は二人でフィールドに出てたの?」

 

 そういえば三人にはアルゴとはたまたま出会ったって話していたんだっけ・・・。

 

「まあ、少しだけな。お互いを知るためのコミュニケーションの一環だ」

 

 なんて、適当くさいことこの上ないな。

 しかし、それでも少しの疑念に持たないアスナに、少し罪悪感が胸を差す。

 

「それよりもアスナは戦闘訓練も兼ねてるんだ。武器はいいモノを使っても腕が見合わなければ意味が無いからな」

 

「うん!がんばるよ!」

 

 そう言って気合いを入れる。

 なんなのこの子、素直すぎじゃない?お兄ちゃん心配になっちゃうよ・・・。

 

 目的の街道に行く道すがら、アルゴが敵を引き付けてアスナが攻撃するという形で狩りを繰り返しながら先へ進んでいく。

 

 俺?俺はアレだよ。

 二人の後ろをついて行って余計な敵が引き付けられないように露払いだ。決してサボっていた訳ではない。目的地の街道に着くと早速mobがポップされる。

 

「そんじゃ、俺も働きますかね。二人とも、そっちは任せたぞ」

 

 そう言ってmobの中へ突っ込む。目標討伐数こそ多いが、一斉に現れるわけではなく、4、5体が数種類で現れて倒されたらその都度補充されるって感じだ。

 

 昨日と同じ要領。攻撃を見極め、いなしてカウンター。それを繰り返しmobの数を順調に減らしていく。うん。多対一の練習にちょうどいいなこれ。

 倒していくうちにだんだんと要領を掴み、半分を超えたあたりでだいぶ余裕が出てきた気がする。

 

 蜂を優先して叩き、ヘイトを集め攻撃をこちらに集中させ、パリィを決めては攻撃を二人に任せて次のパリィを決めていく。

 

「ハチマンくんすごっ・・・。なんなのあの動き」

 

「さあナ。ハー坊のアレばかりはオレっちにもさっぱりだ・・・」

 

 なんですの?二人して俺を理解できない生物みたいに。UMAなの?チュパカブラなの?ネッシーならぬヒッキーなの?ってそれ俺じゃん。

 

 あほな事を考えてるうちにも終わりが見えてきた。そろそろかな・・・。

 

 mobのリポップが止み、一時の静寂が訪れる。

 

「アルゴ、アスナ。今のうちに回復をしておけよ」

 

 俺のその言葉に従い、二人とも回復ポーションを使用し、HPゲージが回復していく。

 街道沿いの林から現れたのは、グラスワスプの亜種のイエローワスプが7体。その後ろに二回り以上大きい。多分2mくらいはあろう大きな蜂、クイーンイエローホーネットが出現する。

 いや、さすがにこれは大きすぎるだろ。敵の体力ゲージも2本半あり、明らかに雑魚モブとは違うであろうことが伺える。

 

「アルゴ、こいつらは?」

 

「イエローワスプは針の突き刺しに加えて、毒液を飛ばしてくるから注意だナ。」

 

 なるほど、グラスワスプの上位亜種ってところか。

 

 短剣を構え、イエローワスプの出方を窺う。

 

 7体は編隊を崩しバラバラに動き、こちらの隙を突こうと縦横無尽に動き回り、クイーンは未だ動く気配を見せない。

 背後からのイエローワスプの一突きをパリィして反撃を試みるも、もう一体からの追撃に身を捩り回避に専念せざるを得ないところだ。

 こりゃ速攻で、二.三沈めないと厳しいな。

 

 こちらを窺うように旋回する三体に対して、昨夜の戦法をとるべく敢えて背を向けて攻撃を誘う。

 案の定、釣り針にかかった蜂共は、我先にと針を突き刺さんと攻撃を仕掛けてくる。

 一体目、背中、腰への攻撃を振り向きざまに受け流す。二体目、右肩に触れようとした針を受け流しながら、三体目の攻撃のタイミングをずらすべく体を一回転させ、流れてきた刃で針を先の二体がいる方向へと受け流し、一箇所にまとめる。

 ゲームの中だからか体がめっちゃ動くな。現実では到底できそうにない動きだ。

 

「サイドバイトっ!」

 

 一箇所にまとまったところ一閃。踏み込みからの横薙ぎの一撃で、二体はエフェクトを残して消え、一体は瀕死だ。

 

 短剣のソードスキルはスキル硬直が少ないのが幸いした。ソードスキルを使うまでもなく、返す刃で残る一体にトドメを差す。

 

 アスナ達は二体を相手にして、残りの二体は隙を窺い旋回をしている。距離はそこまで遠くない。

 

「アーマーピアース!」

 

 旋回している蜂の背後から、腹部に踏み込みからの短剣での一突き。体力ゲージを削り、そのまま突き刺さった短剣を横に引き、ダメージを与え、消滅させる。

 旋回していたもう一体の蜂は、既に毒液をこちらへ飛ばしており、横に回避しても毒液の一部が当たると判断してバックステップで回避。

 こちらへ攻撃した隙をアスナが逃さず、胴と腹部の間に一突きをねじ込み消滅する。

 アルゴもその間に一体を倒しており、今まさに最後の一体を縦に切りつけ、トドメを差したところだった。

 

 ザコを殲滅できれば、残すはお待ちかねのボス戦だ。こちらへとゆっくりとホバリングして近づいてくる。デカい図体だから動きが遅いのか?

 

 と、思ったが違った。一瞬でトップスピードへ切り替わり、体制の整わないアスナの方へ向かっていた。

 

 くそがっ、緩急の差に目が慣れないっ。

 

 昨日のアレを思いだせっ!。アルゴの助けに入ったあの時の感覚を・・・。

 

 集中しろ。

 全てのリソースを足に、瞬発力に回せっ!

 スローモーションのようになった世界で自分一人だけが素早く動けるような、そんな感覚・・・。

 

 聞き慣れた破裂音を背後に残し、アスナと蜂の間に入り込む。

 

「間一髪、だな。」

 

「ハチマン、くん・・・?」

 

 クイーンの針が胸の寸前まで迫る。短剣でいなし、背後へのスライド。一度、二度切りつけるも余りダメージを与えられてはいない。

 さすがはボスというだけのことはあるということか。

 

「俺が奴の攻撃弾くから、その隙に二人で同時に攻撃を与えて離脱してくれ。」

 

「わ、わかっ・・・」

 

 わかった。という返事を待たずに前へ飛び出す。少しでも距離を空ければ毒液を飛ばして来かねないからだ。

 再び針に刃を合わせていなす。

 

「今だっ!」

 

 その声に呼応する様に、アスナとアルゴが攻撃をくり出しては後ろに退く。

 そして再びクイーンの針を引きつけ、SPが回復してはところどころでソードスキルを放ち、アスナたちとの連携により順調に体力を削りきり、残す体力も最後のゲージの半分までになった。

 残り30%。恐らく発狂攻撃、攻撃のアルゴリズムが変わるころだろう。

 

 用心のため、少し距離をとる。クイーンはこちらに狙いを定めて、尻の針から毒液を連射する。これがコイツの発狂攻撃か?

 サイドバイトで毒液三つを相殺し、残りを短剣で捌く。

 

 一、二、三・・・針ィ!?

 

 毒液の中に突然現れた針に対処できず、肩に食らってしまう。針も飛ばせるなんて聞いてないよ・・・。

 

「ハチマンくん!!」

 

 体が動かすことが出来ず、膝をついて地面に伏してしまう。

 くそっ、パラライズか・・・っ。

 

 アスナとアルゴがこちらに駆け寄ってくる。クイーンは針を再装填しているようだ。

 

「ア・・・スナ・・・。解痺・・・薬を・・・」

 

 体が動かない以上、自分でストレージを操作して使用することがほぼ不可能な今は、回復の手段は近くにいたアスナに頼る他ない。

 

「わ、わかった。待ってね。・・・ヒール!」

 

 光を放つエフェクトとともに徐々に体が動くようになるのが分かる。

 

「悪い、少し油断しちまった」

 

「大丈夫!?ムリはしてない?」

 

「あぁ、大丈夫だ。もう立てる・・・」

 

 立ち上がりながらクイーンを見やるとアルゴが上手く足止めをしてくれていたみたいだ。

 

「アルゴ!スイッチだ!」

 

「っ!オウっ!」

 

 アルゴが連撃を加え終わったタイミングで体を入れ替え、すかさずパリィングを加える。

 

「アスナァ!」

 

「任せて!リニアーッ!!」

 

 示し合わせたかのように、アスナの細剣から閃光が突き放たれる。

 

 そしてついに、クイーン・ホーネットの体力ゲージが0になり、光り輝くエフェクトと共にボスの消失を確認した。

 

「・・・ふぅー。終わったか・・・」

 

 ドサッとその場に腰を降ろし一息つく。

 

 今回は危なかったな・・・。正直少し舐めていたかもしれない。

 ヘタをすれば・・・。それこそ薬問屋で解痺薬を貰わなければ・・・。もしも独りだったら・・・。ゲームオーバー、恐らく俺は死んでいたんだろう。

 

 独りでなんでも出来る、だなんて思い上がってなんかはいない。それでも誰の助けも必要はない。とは思っていたのも事実だ・・・。

 もし、この場にアスナが、アルゴがいなければ死んでいた。

 

 その事実が恐怖となり心を蝕む。

 

 む、いかんいかん。

 恐怖で足が動かないのは論外。

 俺がさっきアスナに言ったことじゃないか。

 それでも・・・今日のことは、教訓に活かさないとな・・・。

 

「お、ドロップアイテムはクイーンホーネットの羽か。そっちはどうだった?」

 

 ドロップアイテムを確認すると恐らく素材アイテムだろうものと討伐の証というアイテムがストレージに入っていた。

 

「オレっちはクイーンの複眼だったゼ」

 

 こちらに歩きながらアルゴが報告をする。

 おつかれサマと言いながら、ストレージから取り出したペットボトルの容器に入った水をアルゴから受け取り、それを飲み干して戦闘後の渇いた喉を潤す。

 うん、うまいっ!

 

「私は・・・女王蜂の魂、だって」

 

 お、なんかレアそうな名前だな。アルゴに聞いていた、ラストアタックボーナスってやつか?

 

「それなら俺のもらった羽もやるよ。なんか装備が作れるかもしれないしな」

 

「え、ありがとう。いいの・・・?ってそうじゃない!ハチマンくん!正座!」

 

「・・・え」

 

 な、なんで?なんか俺やっちゃいました?

 

「いいから、正座!」

 

「・・・はい」

 

 この年上に対して有無を言わさない感じ、一色を彷彿とさせるな。

 違うな、アイツは有無を言わさず隙を見ては他人をコキ使おうとするやつだからな。

 可愛ければなんでも許されると思うなよ。それは小町と戸塚だけの特権だ。

 

「ハチマンくん、私はね、怒ってます」

 

 まあ、それは語気で何となく分かりますが、イマイチ怒り慣れてないような感じとか、逆に可愛く見えちゃうんですよね。

 それで、なんで怒られてるんですかね。

 

「ハチマンくんが本当はすっごく強いって事を隠していた事もそうだけど。キミは、一人で、無茶をしすぎ、だよぉ・・・」

 

コツンっ

 

 頭に小さく衝撃が与えられる。

 一応反省しているポーズをとるために、正座して目線を伏せているから一瞬分からなかったが、どうやら可愛い拳骨を食らったようだ。

 平塚先生の拳骨なら脳漿が出るくらいはあるだろうな。いやねーよ。拳にチタンでも埋め込んでるのかよ。・・・あの人ならやり得かねないな。ないか・・・。

 

 顔を上げてアスナを見ると、その目尻には薄らと涙が見えた。

 そうか、心配してくれたのか。こんな俺なんかをな・・・。

 

 そう思うと、こう・・・。胸のモヤッとしたあたりが、チクッと痛くなった。

 この痛みは、いつか味わった痛みだ。

 

 ーーーー『あなたのやり方、嫌いだわ。』

 

 ーーーー『もっと人の気持ち、考えてよ。』

 

 かつて彼女たちに咎められ、素直になれずに仲違いをしてしまった、修学旅行の時の一件。

 

 後悔はしていない。けれど、その反省を未だ活かせてなかったってことか・・・。

 だから、同じ誤ちは繰り返さない。

 

「悪かった。・・・次はもっと頼らせてもらう」

 

 気恥しさと気まずさに頭をかきながら、謝罪の言葉を口にする。あの時はこんな簡単なことも出来なかったのだ。

 

「・・・うん、約束だからね」

 

 俺のとった選択肢が正しいのか間違っているのかなんて俺のぼっち脳じゃ分かりっこない。

 それでも・・・。

 

 彼女の表情を笑顔にできたのなら、少なくとも同じ徹は踏まずに済んだのだろう。

 

「さて、お説教も終わったことだし、帰るとしますカ」

 

 アルゴの号令で俺たちは街への帰路につくのだった。

 

 さすがにボス戦で疲れていただけあって帰り道はなるべくmobを避けて行くことにしたのだが、これには鷹の目が大活躍し、mobとの遭遇を回避することができた。

 

 結局街に戻ってきたのは2時を回ったくらいだった。

 

「そういえばアスナはレベルいくつになったんだ?」

 

「えへへー、なんと7レベルまで上がりました!」

 

ほお、あれだけの戦闘で3も上がったのか。やはりフィールドボスともなれば、経験値もなかなか美味しいのかね。

 

「オレっちは11だナ。多分、今のこのアインクラッドでの最高レベルだゾ」

 

 なに?それじゃ俺のレベルは2番目って事か。

 

「ハチマンくんは?」

 

「・・・10だ」

 

「・・・アーちゃん、くれぐれも外ではレベルのことは正直に言わない方がいいゾ」

 

「え、どうして?」

 

「ハー坊といると感覚が麻痺しがちになるガ、普通はもっと慎重に戦うだろうから、あんなにサクサク敵は倒せないんダ」

 

 いやー、おれだって慎重にやってるよ?ただ、たまたま致命攻撃が連発してるだけだよ。

 

「レベルが5を超えた辺りから必要経験値がうんと上がるんダ。だから他のプレイヤーの最高レベルでも、アーちゃんくらいの人は中々いないハズダ。」

 

「ようするに、悪目立ちしないように気をつけろってことだろ」

 

 下手に目立ち過ぎると攻略の最前線に駆り出されかねない。それは最早人柱も同義だろう。

 

「どっちにしろ注意しておくのに越したことはないだろ。ステータスなんかはプライバシーだ。他人にホイホイ教えるものでも無いしな」

 

 分かりきってはいることだとは思うが、一応釘を刺しておく。アスナは人が良すぎるきらいがあるからな。

 

 話をしているうちにも、いつの間にか薬問屋までたどり着いた。ようやくクエストが終われる・・・。

 

 トビラをノックして少し待つとバジルが顔を出す。

 どうでもいいけどNPCって寝ないのかな?こんな時間に訪れてる俺が言うのもなんだけど。

 店の中へと通されてクエストアイテムの討伐の証をバジルへと渡す。

 

「おおっ!ありがとうございます。これでようやく新店舗へ移転することができます。ーーーお約束通り、この建物は好きに使ってください。今日の夜明けには引き渡しもできるでしょう。本当に感謝します」

 

 そう言って俺たちは建物の所有書をバジルから受け取り、新しく開くという店舗の宣伝を受けて店をあとにした。

 正直眠すぎて全然頭に入ってこなかったな。

 

「・・・ハー坊、さっきの新店舗のことなんだがナ、アレはβテストの時には無かったんダ」

 

 ふむ、となると・・・。

 

「クエストフラグによる分岐・・・か」

 

 コクッと黙って頷くアルゴ。なにやら妙に神妙な顔というか、マジメな顔をしているな。

 何か引っかかることでもあるのかしらん?

 

「アルゴさん、何か気になるの?」

 

 アスナも俺と同じように気になっていたようだが。

 

「イヤ、そんなんじゃねーヨ。ただの推測ダ」

 

 そう言っていつもの飄々とした表情に戻る。一体なんだったというのだろうか。

 

「あー、早く帰って寝たい」

 

 今ならあのソファだって恋しく感じられる。最早俺の相棒と言ってもいいな。うん。

 

「ふふ、そうだね。私も帰ってシャワーを浴びたいけど・・・。さすがにゆきのん達起こしちゃうのも悪いかな?」

 

「別に大丈夫だろ、そんなことで一々腹を立てたりしねえよ、アイツらは」

 

 しかし俺は例外として除かれるけどね。何事にも例外は存在するするといういい例ですね。例外という例って矛盾を孕んだ言葉っぽいね。

 

「オレっちはもう少し調べたいことがあるから二人は先に帰っててクレ」

 

 そう言ってアルゴは俺たちと別れ、街の外縁部に向かって行った。

 

「さて、俺たちもさっさと帰ろう・・・」

 

 そういえば、こうやって女子と二人きりで歩くのにも少しは慣れてきたかな。

 いや、嘘ですね。すみません。意識し始めると、途端に緊張してきた。ダメだなー俺ってやつは。こんなんだから“ごみぃちゃん“なんて呼ばれるのかしらん。

 

「ハチマンくん」

 

「お、おう」

 

 なんですの!急に話しかけるからどもっちゃったよ!挙動不審で気持ち悪いとか思われてないよね?

 

「さっきの約束、忘れないでね」

 

「・・・おう。ま、善処するよ」

 

 俺だって好きで独りでやってきたわけじゃない。ただ、独りの時間が長すぎて、頼り方が分からないからーー。

それもこれから治していければいい、と思う。

 

 

 

 

 宿へと帰りついた俺たち。といっても二人だけだが。

 

「そういえばシャワー浴びるんだったか?外に出てるよ」

 

 そう言ってたった今来た道をUターンしようと振り返って外に出ようとしたところを首根っこを捕まえらて、思わずグエッとヒキガエルのような声が出る。

誰がヒキガエルくんだ、コラ。

 

 首根っこを捕まえた犯人の正体は言わずもがなアスナだった。

 

「べ、別に私はそこまで気にしないし、外に出るまでもないよ。・・・でもなるだけ音は聞かないでくれると助かる、かな」

 

 ふむ、まあ気にしないと言うのならお言葉に甘えようではないか。なんて、神経の図太さがあれば俺もここまで苦労はしないんだろうなあ。

 

 しかし、また外に出てブラつくのも面倒というのもまた事実。

 

「あー、それなら俺は寝てるから。それなら問題ないだろ」

 

 返事を待たずソファへと向かう。ソファくん、やっと会えたね。

 別れたのはつい数時間前のはずなのに、ひどく懐かしく感じるよ・・・。

 

「それじゃシャワー浴びてくるね」

 

「・・・うす」

 

 ソファに体を沈め、体を横にする。

 ひとまずの活動拠点は確保できた。これでアイツらも少しはいつもの平穏を取り戻すことができただろう。

 思えば上手くやったもんだ。意図していたわけではないとはいえ、アイツらにこの世界での友人ができ、情報屋という心強い味方もできた。

 

 友人は心の楔となり、あいつらの無茶な行動を抑えてくれるだろう。

 情報があれば、それだけ安全マージンを確保できる。大きなアドバンテージだ。

 

 とはいえ、未だデスゲームは始まったばかり。いつ、どこで誰がストレスを爆発させて、暴動が起きてもおかしくはない。

 

 だから俺は、俺だけは変わらないようにしなければならない。変化を嫌っているわけではない、ただ不用意に、用心を欠くようなことは避けたいだけだ。

 卑屈になり、疑い、守る。俺の居場所を。あのどこか陽だまりのような居場所を。

 たとえどんなに道化を演じることになったとしても、それが最善手であるならばどんな汚い手段も誰を利用することも厭わない。

 

 そんなことをアスナのシャワーの音を聞きながら考える。

 

 ・・・寝れねー!




というわけで完全にオリジナル展開ですね
いや、だいぶ最初の方からなんですけどね
話が進まない進まない・・・

今書き溜めてる分でなんとか一章は完結できそうです。
二章からは少し駆け足になるかな?
GGOや、アリシゼーションまでぜひ行きたいので。




次回予告てきなもの

「おはよう、ハチマンくん。よく眠れたみたいね。」

「ついに生きることから逃げるだけでなく、雑務からすら逃げるようになったのかしら。」

「へいへい。」

「ハチマンくんたちは目的の物は買えた?」

「ただ同じ学校で同じ部活。部員と部長の関係だ。」

「攻略本をつくるんだよ。」

その姿は月明かりを浴びてまるでセイレーンのようだった。
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