やはり俺のVR青春ラブコメは間違っている   作:青鬼ちゃん

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仕事が休みの日くらい、執筆に精を出そうと思っていたのですが・・・
ヒロアカの劇場版をUーNEXTで見た後、プリヤも見たくなって、そのまま・・・
なんてことありますよね?

プリヤ見てたらプリヤ×俺ガイルの妄想が捗ってしまってね・・・
意外と少ないですよね、FGOとかは多いのに・・・

というわけで九話目です。
書き溜めも頑張らないと・・・浮気してる場合じゃないですね


一章 九部

 デスゲーム開始から、なんやかんやで半月が過ぎていた。

 現実の世界では今ごろ1月も終わろうとしている頃だろうか。

 

 そういえば、そろそろ小町の受験の時期だな・・・。

 小町のやつ、総武高受けるって言ってたけど大丈夫かな。

 俺のことで変に気が散って、影響していないといいけど。

 

 奉仕部の手腕と、キリトの協力により、攻略本も順調に出回っているみたいだ。

 ゲームの脱落者は減ったとはいえ、無茶な攻略をしようとして、ゲームオーバーになってしまったプレイヤーがいるのもまた事実ではあるが・・・正直、そこはもう手の付けようがない。

 やれることはやったんだ。

 それでも死に急ぎたい人間を止める術を、俺たちは持ち合わせてはいない。

 

 ちなみに“奉仕部アインクラッド支部”の呼び名はは長いとのことで、結局名前は奉仕部に決まった。

 

 ともあれ、現在の天気は快晴っ!とはいかなく、どんよりとした曇り空が広がっている。

 

 そんな中、俺は奉仕部の構える店内で足をなげだしてだらしなく座って、いや、眠っていた。

 つっても俺一人しかいないし、やることもないんだもん。仕方ないじゃない。

 

 アルゴは情報収集。他の三人は依頼を受けて出払っている。

 

 つまり今ここには俺一人しかいないのだ。

 我、ここに城を得たり。

 ぐははは、我が世の春ぞ!

 

 コンコンッ

 

 扉をノックする音が響きわたる。

 誰もいませんよーっと。

 

 あ、そういえば扉の札オープンにしたままだった。

 誰もいないと思って、諦めて帰ってくんねえかな。

 

「失礼しまーす」

 

 扉に付けられたベルの小憎たらしい音ともに、店内に侵入してくる若い男の声。

 

「参ったな・・・誰もいないのか」

 

「・・・いるぞ」

 

「うわっ!?ビックリしたぁ・・・。君、いつからそこに?」

 

 失礼なやつだ、最初からだ。

 いくら俺の存在感が薄いと言っても、そこまで空気扱いされるとたまったもんじゃないな。

 

「そんなことより、何か用か?」

 

「あ、あぁ。すまない。ここが奉仕部ってことでいいのかい?」

 

 ふむ、どうやらアルゴの紹介ではないようだな。

 

「あぁ、それで間違ってはいないが。アンタは?」

 

「これは失礼したね。俺の名前はディアベル。ドラゴンズ•ブルーというパーティのリーダーをやっている」

 

 そう自己紹介をする男。ディアベル。

 青い髪の毛はこっちで染めたのか?

 まあリアルでは悪目立ちするような髪色でも、ゲームだと自然に見えるしな。

 逆にリアルでもこの髪色だとしたら少し神経を疑うぞ。

 そういうのはバンドマンとか、コスプレイヤーを生業にしている人だけで十分だ。

 

「それで、あー、ディアベルさん?俺はハチマンだ。・・・それで、なんの要件だ?」

 

「おっと、これは失礼。実は折り入って相談があるんだ」

 

 さっきから失礼ばかりしすぎだろ。

 なんていうか声のせいか暑苦しいタイプっぽく感じるな。体操のお兄さんみたいだ。

 

「実はここに凄腕の男性プレイヤーがいる、という話を聞いてね。それで攻略のために手を貸してほしいんだ。それでその彼はどこにいるんだい?」

 

 凄腕の男性プレイヤーねえ・・・。誰がそんな噂を流したんだか。・・・大方の予想はつくけどな。

 

「あー、生憎とその凄腕かどうかは分からないが、男のプレイヤーなら俺一人しかいないな」

 

「そ、そうか!これは失礼をした。それならば君に攻略の手伝いを依頼しよ「断る」・・・は?」

 

 だから何回失礼するんだこの男は。いっそのこと数えてみるのも面白いかもしれない。

 

「ちなみにどうしてなんだい?報酬が必要というのなら・・・」

 

「報酬云々じゃないんだよディアベルさん。アンタは奉仕部を勘違いしている」

 

「勘違い、だって?」

 

「そうだ。奉仕部は便利屋なんかじゃない。飢えた人には魚をあげるのではなく、魚の捕り方を教える。・・・ 要は自立できるために手を添えてあげることだ」

 

「それなら、攻略を手伝ってくれるのだって、十分に自立を促すことに繋がるんじゃないのか?」

 

「そうはならないな。それはあくまで『捕り方を教えるから見ててね。あ、今捕れた魚はあげるよ』って言ってるようなものだろ。」

 

「でも、それじゃあ・・・攻略が一向に進まないじゃないか!」

 なぜそこで熱くなる?

 このディアベルという男、何か引っ掛かるな。少し鎌をかけてみるか。

 

「なあ、アンタ。何をそんなに焦っているんだ?」

 

「・・・仲間が、死んだんだ」

 

 思ったより簡単に釣れたな。

 いや、これは用意してあった回答、かな。

 

「ふむ、それで?」

 

「これ以上、ムダな犠牲者を出さないために・・・っ。一日でも早くこのゲームを攻略しなければならないんだっ!そうだろうっ!」

 

 ・・・どうやら嘘は言っていないようだ。だが真実も言っていないんだろう。

 

 この場に他の奉仕部員がいなくてよかった。アイツらなら特に疑念を抱かずに手を貸しそうだしな。

 だがそんなことはよろしくない。

 他人のために気安く命をベットほど、俺は正義の味方なんかでも、奉仕精神に溢れたマザーテレサでもない。

 

「そのために俺に、俺らに命を張って無駄死にをしろと?」

 

「そうじゃない!協力をしてくれと頼んでいるんだ!」

 

「だがアンタのお仲間は死んだんだろう?十分な強さを持って挑んだんじゃないのか?それでも死んだと言うのなら、それは変わりに補充要員として入った俺にも死ねと言っていることと変わらないぞ。・・・そして死ぬのは俺かも知れないし、アンタの他のお仲間かもしれない。もしかしたらアンタかもしれないな。・・・いや、ヘタしたら全滅なんてことも有り得るな」

 

「それは・・・たしかに君の言い分にも一理ある・・・。でも・・・っ!」

 

「まあ待ってくれよディアベルさん。一つ聞きたいんだがアンタ、パーティは今何人いるんだ?」

 

「・・・昨日一人抜けて、今は4人だ」

 

「ということは亡くなったお仲間と、昨日抜けたという一人を合わせて、フルメンバーのパーティで攻略に挑んでいたのか?」

 

「そうだが・・・」

 

「なぜだ?」

 

「それが最善じゃないか!」

 

 ふむ、またなにか、俺の思考の片隅に引っ掛かったな。この違和感の正体はなんだ・・・?

 

「レイドだ」

 

「レイド?」

 

「アルゴの攻略本を読んでいないのか?ボス戦にはレイドパーティ、つまりは複数のパーティで挑むよう書かれているだろう」

 

 これは実際に書かれていることだ。さて、どう反応するかな。

 

「それは、人数を集めたりなんかは大変だし、それこそ命を投げうてと言っているのと変わらないじゃないか。それなら連携のとれる仲間だけで組んだ方が効率的なんじゃないか?」

 

「・・・ダウトだな」

 

「は?」

 

「・・・いや、なんでもない。それならアンタにいい案がある。ーーー攻略会議を開くんだ」

 

「攻略会議?」

 

「そうだ。ディアベルさんを発起人として、公前でこのゲーム攻略をするためのパーティを集めて、先頭で指揮を取るんだ」

 

「けれど・・・それで上手く行くかな」

 

「大丈夫だろ。実際みんなこの状況に焦れてきている。それなら誰かがやらなきゃいけない。ディアベルさんがやらないって言うなら他のやつにやらせるさ。実際アテはあるからな」

 

「それはダメだ!」

 

 かかったな。

 おっといかんいかん。ここで笑っては不自然だ。

 

「あ、いや。この話を相談に持ってきたのは俺だ。そうだろ?それならその先頭で指揮を取るのも俺がやらないと、筋が通らないんじゃないか?」

 

 もっともらしい事を言ってはいるが・・・欲しいのは名声か?

「ま、そうだな。ディアベルさんがやるっていうならまかせるさ。攻略会議の時には俺も参加する。何かあったらフォローするから安心してくれ」

 

「ああ、ありがとう。なにか吹っ切れたよ」

 

「そうかい。それならよかった。こっちも知り合いに声をかけておく。・・・会議はいつにするんだ?」

 

 まあ、声をかけるほどの知り合いなんていないけどな。

 かけるとしたらアイツくらいか。

 

「それは心強いよ。そうだな、性急すぎてもみんな予定もあるだろうから、一週間後でどうだろうか」

 

「一週間後だな。わかった。それならその旨を掲示板にでも張り出しておくか。ディアベルさんの名前は使ってもいいのか?」

 

「ああ!構わないよ!何から何までありがとう!胸がすいた思いだよ!」

 

 そう言ってディアベルは手を取って握手をしてくる。

 やっぱり暑苦しい人だな。

 

 厳しく突き放してから優しく、耳触りの良い言葉で相手に精神的隙を作らせて取り入る。

 映画やマンガとかでは使い古された手法、所謂“飴とムチ”が、画面の向こうで見ると誰がそんなのに引っかかるんだよ。なんて思われがちだが、実際に対面してやられると存外に効くものだ。

 特に今回は煽って理性をのタガを弛めたところに、だったからな。

 ディアベルの目にはさぞ厳しい条件下でもアドバイスをくれる親切な人。にでも映ったことだろう。

 そっちも俺を利用しようとしてたんだ。俺だって利用したっていいだろう?ディアベル・・・。

 

 

 

 

 ディアベルが店を出てどれくらい経っただろうか。

 未だ誰も帰ってきてはいない。

 まあ、一人の時間を満喫できるからいいんですけどね。

 ビバ!ぼっち!

 

 しかし今日は喋り疲れたな。

 あのディアベルという男、どうにも隠し事をしている気配だったな。

 嘘をついているわけじゃないだろうからまだいいけど。

 あとでアルゴにでも調べてもらうか。

 

 コンコンッ

 

 本日二度目のノック。

 あいつらはノックなんてしない。ということは依頼人か?

 普段は依頼が来ない日だってあるっていうのに、なんだって俺しか居ないこんな日に・・・。今日は厄日か!?

 

 しかも扉の札はまたしてもオープンにしたままだ。

 頼む、返事しないから帰ってくれえ!

 

 カランカランとまたしても小憎たらしいベルの音。

 

「お邪魔するぞーってなんだ。誰もいないのか?」

 

「・・・いるぞ」

 

「うわっ!?って驚かすなよ・・・。なんでそんな所で堂々と気配隠してるんだよ」

 

 あれ、なにこれ場面の使い回しなの?デジャヴなの?

 なんなのみんなして。そんなに俺って存在感薄い?もしかしてミスディレクション発動しちゃってる?幻の六人目になるのも夢じゃないですね。

 

 てか堂々と気配を隠すってなんだよ・・・気配隠す気あるのかないのかどっちなんだよ。

 

「・・・で、なんか用か?キリト」

 

「いや、別に。この天気だしフィールドに出るのもなーって思ってな。お茶飲みに来ただけだ」

 

 要するに単なる暇つぶしなのね。まあ依頼人じゃないだけマシか・・・。

 

「茶を飲むだけならそこら辺の喫茶店でもいいだろ」

 

「いやー、やっぱりゆきのんが淹れてくれたお茶がおいしくてさ」

 

「生憎だが今日はあいつは出払っているぞ」

 

「まじかー。それじゃハチマンが淹れてくれよ」

 

「俺はコーヒーしか煎れないからな」

 

 先日少し資金に余裕が出来たので、コーヒーメーカーと豆を買ったのだ。

 

「そうは言いながらも、着々とコーヒーの準備をしてくれるハチマンなのであった」

 

「うっせ。俺が飲むついでだ、ついで」

 

 二人で煎れたてのコーヒーを啜る。

 ああ、落ち着くな・・・。しかし、このコーヒーに足りないものは、それは!

 情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!!

 甘さが足りない!!

 

「なあ、ハチマン。そのコーヒー甘くないのか?」

 

「まだまだ足りないに決まっているだろ。砂糖を5個しか入れてないんだから」

 

 本当はもっと砂糖多く入れてミルクもたっぷり入れたいんだがな。

 雪ノ下に制限かけられてるからな。

 別にいくら飲んでも糖尿病になるわけでもないのに・・・。

ここに練乳がないのが惜しまれる・・・どこかに入手するクエストでも無いのかな?クリームがあるんだから練乳もあるだろうけど。

 

「はは、まあハチマンが美味しいっていうんならいいけどさ」

 

 はて、まったくおかしなことを言うやつだ。

 おかしと言えばだ。

 

「ほれ、クッキー。食べるか?」

 

「お、まじか!ゆきのんのか?食べる食べる!」

 

「いや、今日のはアスナが作ったやつだ」

 

「はぁー・・・。ハチマンはいいよなあ。身近に料理ができる。しかも可愛い女の子が何人もいて」

 

 確かに、アルゴの攻略本のおかげで料理スキルのことが広まり“味のする料理”が周知されてきたとはいえ、あくまで趣味スキルの一環でしかない料理スキルをとるプレイヤーはまだ少ないようだ。

 だがしかし・・・。

 

「・・・いいか、周りに女子ばかりってのは、いいことばかりじゃないからな」

 

 むしろデメリットの方が多いんじゃないかと思うまである。

 

「そんなことないだろ。可愛い女の子がいるってだけで。大きな癒しになるだろ」

 

「それこそ、そんなことない、だ。いいか、考えてもみろ?そもそも同じ空間に居るということは、プライバシーもプライベートも無いんだぞ」

 

「あー・・・。たしかにそれは、な・・・」

 

 キリトは俺の生活のことを知っているからこそ同情の目を向けてくる。

 

「寝起きするのはリビングのソファだ。誰かが起きてくれば嫌でも目が覚める。それが4人もいるんだぞ。下手したら1時間置きに目を覚ます時だってあるんだ。・・・それに風呂だって気を使わなきゃならん。女子が入浴中は部屋から追い出されるし、その後もしばらく待たなきゃならんのだ」

 

「はは、それはご愁傷さまだな」

 

 こいつめ、他人事だと思いやがって。

 実際他人事なのだろうけど。

 そういえばキリトは知っているのか?

 

「なあ、キリト。話は変わるんだが、ディアベルってやつ知ってるか?」

 

「いんや、知らないけど。新しい女か?」

 

 なんでだよ。俺がしょっちゅう違う女を取っかえ引っ変えしているような言い方をするな!

 

「男だよ。青い髪の。そいつがさっき依頼に来てな」

 

「で、断ったのか?」

 

 だからなんでだよ。俺が働かない前提で話を聞かないでいただけます?

 まあ、間違った認識ではないけど。

 

「いや、ちゃんと受けたよ」

 

「あちゃー、それでこの天気かあー。こりゃ本格的に一雨くるかもなー」

 

「おい、そろそろ泣くぞ」

 

「悪かった、悪かったって。・・・で、その依頼人のディアベルがどうかしたのか?」

 

 まあ、キリトはディアベルのこと知らないみたいだし、聞いても知らないだろうな。

 

「いや、今度本格的に攻略を進めるための攻略会議ってのを開くことになってな。それに一緒に参加して欲しいんだよ」

 

「へえ、それは構わないけど。なんで俺なんだ?」

 

「まあ、少し気になることがあってな」

 

「ふうん、その確認のために俺を連れて行きたいってわけか。いいぜ。参加するよ」

 

「ありがとな。よし、これで例の貸し借りはチャラだな」

 

「なに言ってんだハチマン。これはあくまで俺が個人的に攻略会議に参加するって話だろ?奉仕部に対する貸し借りは、チャラにはならないだろ」

 

 またこれだ。

 面倒だからと、ことあるごとに借りをチャラにしようとしてるのにいつも拒否される。

 なんで貸してる側が圧されるんですかね。

 

「わかった、わかったから肩を組むな暑苦しい」

 

 暑苦しいのはディアベルだけでお腹いっぱいだ。

 

 

 

 

 

 それから一週間は何事もなく・・・というわけにもいかず、慌ただしく過ぎていった。

 

 主な理由としては、一週間後に控えた攻略会議が開催されることが公表されたせいだろう。

 誰だよ攻略会議なんて面倒くさいこと考えたやつは。

 ってそれ俺のじゃん。

 自分の首を締めてしまったのか・・・。

 

 まあ過ぎたことを後悔しても仕方がない、と柄にもなく依頼に精をだすことに・・・。

 とはいっても、大半は採取依頼の護衛だったり、クエスト情報の提供だったから、そこまで大事だったわけではないがな。

 

「てなわけで今日が会議当日なんだがな・・・」

 

 一緒に参加するはずだったキリトがまだ来ていないため、未だ奉仕部の前で待ちぼうけてるとはどういうことだ。

 

 待つこと10数分後・・・。

 

 これもう行った方がよくね?

 ディアベルには攻略会議行くと言った手前、行かないわけにもいかないし、義理立てするつもりはないが、色々と気になる懸念材料もあることだし・・・。

 

「あれ?ハチマンくん、今日は攻略会議ってのに参加するんじゃなかったっけ?」

 

「・・・アスナか。そうなんけどよ、キリトが未だ来てなくてな・・・」

 

「そうなんだ?ねえハチマンくん。その会議、私も参加してもいいかな?」

 

 別に参加自体は個人の自由だし、俺の許可を得る必要なんてないんだが。

 

「ボス攻略に参加するつもりか?」

 

「んー、状況による。かな」

 

 さいですか。とはいえ、俺個人的には、ボス攻略には参加して欲しくはない、というのが本音だ。

 不確定要素の強すぎる中、ぶっつけでのボス戦になるのか、それともエリアを自由に行き来できるのか。

 未だに情報が不足している状態なのだ。

 もしかしたら・・・死人もでるかもしれない。

 

「ま、話を聞いて決めればいいさ」

 

 しかし他人の意志を捻じ曲げるほど傲慢であるつもりもない。

 いざとなったら、やんわりと参加しない方向にアスナを言いくるめればいいだろう。

 

「悪いっ!待たせた!」

 

 少し遠くからキリトが駆け寄ってくる。・・・あの様子じゃおそらく寝坊だろうな。

 

「遅いぞキリト。ペナルティとして後でゆきのんを笑わせるまで一発芸だ」

 

「本当に悪かった!だからそのペナルティだけは勘弁してくれ!」

 

 以前、キリトが今日と同様に遅刻した時に、同じペナルティを課したのだが、結局1時間経っても雪ノ下は全く笑う様子もなく、キリトの心が折れてお開きになったことが相当にトラウマになったようだ。

 

「まぁ、まだ会議までは未だ少し時間があるし、まだ間に合いそうだな」

 

「なんだよ。それならいいじゃないか。それよりも、アスナもここにいるってことは、攻略会議に参加するのか?」

 

「うん。まあハチマンくんの付き添いみたいな感じだけどね。一応ゆきのんとユイユイにも頼まれたし」

 

 え、なにそれ聞いてないんだけど。知らぬは本人ばかりというわけですか。

 この歳になってわざわざ付き添いなんて必要ありませんことよ?

 そもそも頼まれたって、何を頼まれてるんだよ。

 あ、攻略会議の概要をまとめて来てくれってことかな。そんなの俺に任せてくれればいいのに。うわっ・・・俺の信用度、低すぎ・・・?

 全然いいんですけどね。今さらそんなことで凹まないし。うん・・・。

 

「・・・なに考えてるのか大体予想はつくけど、ゆきのんたちが私に任せてくれたのは、ハチマンくんは別の案件で忙しいかもしれないから、ってことだからね。

ちなみに私が教えなかったのは聞かれなかったからです」

 

 なるほど、まぁ最近は少しバタバタしてたところもえるから気を遣われたってことかな。

 人差し指を上に向けふふーんと胸を張るアスナは、正直ちょっと可愛いと思ってしまったが、俺は騙されてはやらない。

 女子のこういう仕草には、男を勘違いさせるものだと某生後輩徒会長様のおかげで学習済みだ。

 

「そうかい、時間もないしさっさと行くことにしようか」

 攻略会議が開かれるという広場にアスナを加えた三人で向かうことになった。

 

 

 

 

 攻略会議の開かれる会場は、小規模の円形劇場のようなところだった。

半円のすり鉢状になっている席には、すでに40人近くのプレイヤーが集まっているようで、俺たちも適当なところに腰をつける。

俺個人的には端っこがいいのに、なんでわざわざ二人とも両サイドに座るんですかね。

 

 アルゴの気配がすることから、どこかで遠巻きに見ているのだろう。

 席に腰を下ろしてから間もなく、舞台袖の方から主催者であるディアベルが姿を現す。

 

「はぁーい、みんなー!今日は俺の呼び掛けに集まってくれてありがとー!それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!」

 

ディアベルの挨拶に、客席に座っていた皆の注目が一気に舞台の方へと集まる。

相変わらず体操のお兄さんみたいなテンションだな。

 

「俺の名前はディアベル。職業は気持ち的には“ナイト”なんてやってます!」

 

 会場に軽い笑いが起こる。

 掴みは上々のようだ。何が面白いのか俺にはさっぱり分からんが。

 

 結局、“会議“とは名ばかりのディアベルの演説になってしまったが、これはこれで予想通り。

 ディアベルの目的は、この会議で主導権を握ることにあるのだろうからな。

 そのまま会議は何事もなく、平穏に終わる・・・。

 

「ちょおーーーっ待ってんかあーー!」

 

 なんてことはないみたいだ。

 声の方向に振り向くと、背後の最上段に立つ男の影アリ。

 誰だよ、逆光で全然見えねえよ・・・。

 

 男は三段飛ばしで客席を飛び越えていき、舞台に立つディアベルの横に並ぶ。

 

「ワイはキバオウってもんや。そのボスと戦う前に、言わしてもらいたいことがある」

 

 キバオウと名乗るプレイヤーの乱入に、会場内にざわめきが起こる。

 アスナとキリトも何事かと様子を伺っている。

 

「こん中に、今まで死んでいった2000人のプレイヤーに詫びィ入れなあかんヤツらがおるはずや!」

 

 その言葉に一層会場がざわつく。

 詫びを入れなければいけない人間・・・と言われれば大方の予想はつく。

 それが正しいかどうかは別として、いつかは誰かが言い出すものだと予想はできていた。

 

「キバオウさん、君の言うヤツらって言うのは、もしかして元βテスター達のことかい?」

 

「決まっとるやないか!」

 

 キバオウは息巻いてそう言うが、そんなものは暴論でしかない。

 その後キバオウは、やれベーターは初心者を見捨てた!だとか、狩り場を独占している!効率の良いクエストを独占している!

 まあ、要するに聞くに耐えない内容ではあった。

 

 挙句の果てには・・・。

 

「こん中にもおるはずやで、ベータ上がりのやつが!そいつらに土下座させて、溜め込んでた金やアイテムを差し出して貰わんと、共同戦線なんて夢のまた夢や!」

 

 まるで駄々をこねる子どもだな。

 いや、他人の批判に夢中で、自分がどれだけ論理的でないかを理解できていない分、子どもの方がまだ可愛げがあるかもしれない。

 

「発言、いいか」

 

 突然前の方から響いた男の声に、ザワついていた会場も水を打たれたかのように静まりかえる。

 

 男性は立ち上がり、キバオウの元へと歩いていく。

 デカイな・・・。それに、黒人か?

 めちゃくちゃ日本語上手そうだったが。

 

「俺の名前はエギルだ」

 

 自己紹介をするエギルと名乗った男のその声は、どっしりとしていて、どうにも話を聞かなければ、という気分になる。

 

「アンタの言いたいことは、元βテスターが初心者の世話をしなかったからビギナーが大勢死んだ。

だからその責任をとって謝罪と賠償をしろ。ということなんだな?」

 

 そう言うとエギルが懐から一冊の冊子を取り出した。アルゴと一緒に奉仕部が作った攻略本だ。

 

「このガイドブック・・・いや、攻略本と呼ばれているんだったか?・・・アンタも読んだことあるんじゃないか?

一冊500コルで購入することができるし、広場のクエストボードには“奉仕部”という所で入手できることも書かれていたし、各町や村のショップで無料版も配布されているみたいだしな」

 

「お、おう。買うたで。・・・それがなんや」

 

「この攻略本に記載されている内容は、元βテスターから寄せられた情報を元にしている」

 

「うっ・・・!?」

 

「いいか?確かに亡くなった人たちには心の底から気の毒に思う。だが、それを一番感じていたのは、この攻略本を作ったβテスターたちなんじゃないのか?」

 

「せ、せやけど、それがなんやって言うんや!それが贖罪のつもりかいな!そんなんで死んでいったヤツらが死んで良い理由になるはずがあるかい!」

 

「そうだ。だが生き残るための努力を怠ったのは、当人たちだ。ちがうか?」

 

 完全に正論だな。あの黒人、エギルだったか?見た目の割にかなり頭がキレるみたいだな。

 黒人は陽気キャラなんて偏見を持っててごめんなさい。

 

 とはいえ、潮時だな・・・。

 あの関西弁も頭に血が上っていて引っ込みがつかなくなっている。

 

 席を立ち上がろうとした俺の裾をアスナが握りしめる。

 何を言わんとするかは、アスナのその目と表情を見ればわかる。そんな表情をすんなよ。

 

「大丈夫だ、変なことも無茶もしない」

 

 アスナの頭に被られているフードに手を置いて安心させる。

 しまった、いつも小町にやるクセが出てたか?

 

「・・・約束、したからね?」

 

 とりあえず怒ったりはしてないようだな。

 階段の方へ歩いていき行き、舞台へと上がった瞬間に、今まで二人のやり取りを見ていた客席の目線がこちらへ注がれる。

 

 あー、やだやだ。“視線はぼっちを殺す“という言葉を知らんのかね。

 まあ俺が考えたんだけど・・・。

 

 一呼吸おいて口を開く。

 

「あー、はじめまして。ハチマンだ。ーーーさっき話にチラッと出てきた奉仕部の人間だ」

 

「な、なんやお前、急にでてきてからに!」

 

 お前も急に乱入してたじゃねえか。なんて突っ込みは面倒くさいのでしない。

 それにしてもこの関西弁、名前なんだっけ?

 わかんないからから、モヤッとボールでいいか。

 

「まずは、このような形で会議の場へしゃしゃり出てきて汚してしまったことを、お詫びさせてほしい」

 

 ペコっと頭を下げる。これで最低限話を聞いてもらえるだけの形は出来たはずだ。

 

「この中にも知っている人がいるかも知れないが、先に言っておくと奉仕部ってのは、慈善事業のボランティア団体なんかじゃなければ、便利屋なんてものでもない」

 

「そんな奉仕部がどうして攻略本を出すなんてことになったのか、だが・・・。詳しい内容は個人の為に伏せるが、依頼があったからだ。ーーーソイツのいう初心者を見殺しにしたというβテスターからな」

 

 モヤッとボールを指差して、視線を集めさせる。

 エギルも呆然とした様子で口を開けていた。

 

「なあ、アンタは今まで何をしていたんだ?少なくともそのβテスターは状況を改善しようと一番早く動いた。もしもソイツが動かなかったとしても誰かが動いてたかもしれない。

 ・・・だけどそれは1ヶ月後か?2ヶ月後か?

 あのペースなら脱落する人間の数は増えていく一方だっただろうな。・・・2000人も死んだ。残念なことだがそれは事実ではある。だが、ソイツが動いてくれたからこそ、未だ2000人に留められているんだ。

 ・・・俺はソイツに感謝しているんだ。・・・だからこそ、貶められているのは我慢ならなくて、こうして出しゃばっちまった」

 

 客席に座るプレイヤー達の顔を見る。

 まあ理解をしてくれていそうな人間がいくらかいるだけマシか。

 

「俺からは以上だ。貴重な時間をいただいてしまって済まなかった。改めて謝罪する」

 

 再びお辞儀をして、固まったままのモヤッとボールとディアベルを横目に、舞台をあとにする。

 エギルと目が合うと、ニカッと笑ってその白い歯を見せてくれた。

 

 

 

 舞台から降りるころには、視線の集中は、締めの言葉に入っていたディアベルに向かっていて、俺は特に注目を浴びることなく、元いた席へとたどり着いて、キリトを真ん中にしてその横の端の席に座ろうとしたら、アスナに“元の席に座れ”目で訴えられた。

 そんな目で見られてしまっては俺に勝てるはずもなく、あえなくしれっと端に座る作戦は失敗した。

 

 そんな怒らなくてもいいじゃない・・・。アレなの?教室で勝手に席替えとか許せない系なの?

 教室で席に座ろうとしたら、自分の席で女子が談笑してて「そこ、俺の席なんだけど・・・」と言えずに教室の後ろの方で立ちつくすしかない、なんて記憶でもあるの?

 それ俺じゃねえか。

 

「・・・約束、守ってくれたんだね」

 

「守れたかどうかは分からんが、一応、な」

 

 別にアスナとの約束を守るためじゃない。

 その場の効率の良い手段をとったにすぎないからな。

 

「ハチマン、さっきのって俺のため、なのか?」

 

「あ?勘違いすんなよ。いずれ必要になる処置だったからな、ついでに今実行しただけだ」

 

「なんだよー。素直じゃないな、親友!」

 

 うっせ、誰が親友だ。友だちからのランクアップ早すぎだろ。そもそも友だちとかですらねーし・・・。おい、肘で小突くな。鬱陶しい。

 それとアスナもニヤニヤして、暖かく見守るんじゃありません!

 

 はしゃぐキリトを無視して舞台を見ると、ディアベルが各々パーティを作って当日のボス戦に挑むという旨を告げて、会議は閉幕したところだった。

 

「さて、俺たちも帰るか。キリト、なんか怪しいと思った点はあったか?」

 

「いや、特には見受けられなかったな。印象としては、リーダーシップを張れる人って感じかな」

 

 ふむ、そうか。それなら俺の思い過ごしか?

 

「まあいいか。人前で喋って疲れたわ。早く帰って寝たい・・・」

 

 立ち上がって伸びをすると、どうやら劇場の後ろの方から見ていたらしいアルゴがこちらへ近づいてくる。

 どこにいるかと思えば、そんなとこにいたのかよ。

 

「よ、ハー坊。いい演説だったゼ。んで、これからどうするんダ?オレっちとしては一度奉仕部に戻って、今後について話し合いたいんだガ」

 

「あぁ、俺たちも丁度帰るところだ」

 

「それじゃあ早く帰ろうぜ!ゆきのんの淹れてくれるお茶を飲んで落ち着きたい」

 

 キリトがそう言って先頭立って劇場をあとにする。

 と思ってたんだがなあ・・・。

 

「あー、悪い。お客さんみたいだからみんなで先に行っててくれ」

 

 どうやら俺が昼寝を貪れるにはまだ少し先になりそうだ。




というわけで九話目でした。

ようやく攻略会議までこれた・・・
ここから少しは展開を早くなると思います。

次回もお楽しみにしていただけると嬉しいです。




次回予告てきなもの


「実は俺、あんたのファンなんだ」

「もしかしてソッチなのか?」

「とあるクエストを手伝って欲しいんだ」

「それなら私も少しは役に立つかな?細剣なら振るっていうより突くのがメインになるし」

「倒しても倒してもキリがない。無視して突破する訳にはいかないのか!」

「キリトがな、俺の戦い方が変わったって言うんでな。少し考えてたんだ」

 妹は世界に平穏をもたらすのかも知れない。
 やっぱり妹ってすげー!
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