ラブライブ!スーパースター‼︎・響きの記憶の戦士 作:ニントという人
テスト前日です。
テストなんて滅んでしまえ!
……だれか…僕に…ガイアメモリを…
そんな欲望が生まれる前に書いた35話、どうぞ。
前回の、ラブライブ!スーパースター!!・響きの記憶の戦士!
「前回、選挙にボロ負けした俺たち……というかすみれ。」
「うるさいわね…ともかく、選挙に勝った葉月恋の暴挙の真意を知るために、尾行を始めた私達。」
「その尾行はうまくいくかどうか、さあ続きの第35話をどうぞ!」
◆◆◆◆
で、尾行始めて数分。
俺たちは、一応順調に葉月さんの尾行を続けていた。
……と、思っていたが。
おそらく家へ向かって歩いていたはずの葉月さんが急に立ち止まると、脚を動かし……って、まずい!
「こっち!」
俺が短くみんなに呼びかけると、千砂都は電柱の真裏、かのんは植え込み、すみれも植え込みに隠れ、可可は道の境目にあるよく分からんあれに隠れた。俺も何とか植え込みに飛び込み、身を隠す。
その数瞬後、葉月さんは完全にこちらに向き直り、俺たちが隠れている方を見つめた。
それからどのぐらい経ったかわからないが、草の合間から葉月さんが向こうを向いたことを確認した時、俺たちは隠れるのをやめた。
「あっぶねぇ…」
「さすが葉月さん……、音楽科でもいつもきちんとしてて、周りに注意を払ってるから……!」
「気配を察知する能力というわけデスか…」
「超能力バトルかよ……で、どうすんだ?」
俺の問いに答えたのは、俺の横に座る少女。
「それなんだけど……すみれちゃん。」
「え?」
「………お願い。」
………何を?
この感想は、すみれ当人も同じだっただろう。
◆◆◆◆
「ギャラ?………不本意なんですが……」
すみれがそんな声を出した訳は単純だ。彼女が身に纏う服が、結ヶ丘の制服から奇抜な、ピンクをメインとした服装へとチェンジしているからだ。
……おまけに、帽子はその……人間誰しも出す汚物の固形物の方な形をシている。
「うんちだー!」「うんちー!」
コラ少年!頑張って隠したのに読者にバレたじゃねえか!
「うるさい!」
すみれ…すまない…だが犠牲になってくれ…
少年にそう言われたすみれは、やや…というかほぼやけくそ気味に、葉月さんの方まで歩き始めた。
…で、その一瞬後。
「はうぁぁ!?」
ちょーど振り向いた葉月さんと、バッチリ目が合いましたとさ。
まあ、サングラスを一応掛けてるから顔バレはシないだろうけど…
二人は見つめ合うこと数秒、葉月さんのほうが先に目をそらし歩き出すことで、この膠着事態は終わった。
「さっすがすみれちゃん!」
「全然気づかれてなかったね!」
すみれに駆け寄った俺たちがすみれの影の薄……気配を消す能力を称賛するも、当の本人は
「褒めないで、傷つくから。」
と、何故か傷ついていた。なんでだろうね。(すっとぼけ)
「とりあえず、追跡再開だな。」
「そうだね。」
俺たちは、再度葉月さんの追跡を始めた。
◆◆◆◆
そして、追跡すること数分間。俺たちは、葉月さんがある一棟の建物にはいっていくさまを見届けた後、その建物へと近づいた。
その建物はまごうことなき家であり、門のそばにある表札には、間違いなく『HAZUKI』の文字が。
「ここが…」
「葉月さんの家ぇぇ!?」
可可が叫んだわけは簡単で、その家がとんでもない豪邸だったからだ。いわゆるお屋敷と言えるサイズの。まさしく超豪邸。
「で、、これからどうすんだ?家の特定は出来たけど。」
俺の問いに答えたのは可可で、当然と言った調子で答えた。
「とりあえず呼び出しまショウ」
「ああ…はぁ!?」
俺が叫んだときには、可可はすでにインターホンに手をかけ、ボタンをしっかりと奥まで押し込んでいた。
「おい!尾行したのに自ら明かしてどーすんだ!?」
「尾行って言っても、こうするために来たんでしょ?」
「まあそれはそうだけども…」
俺は一瞬納得しそうになるが、いやいやだとしてもだろと思い直し、もう一度口を開こうとすると、インターホンから
『どちら様ですか?』
と声が聞こえた途端、俺は考えるのをやめた。
ちょうど目の前に立っていたかのんがたじろく中、かのんを押しのけたすみれが対応した。
「あの、私達、結ヶ丘の生徒で葉月さんの知り合いなんですけど!」
その声に対する返答は、声で帰ってくることはなかったものの、
「…あ、開いた…」
ドアを開ける形で帰ってくることになった。
俺たちは無言で顔を見合わせ、その土地へと足を踏み入れた。
◆◆◆◆
「どうぞ。」
「ありがとうございます!」
先程の声の主───この家に使えているのであろうメイドさんから紅茶をいただき、代表してかのんが礼を言う。なぜか妙になめらかな動きで。笑顔を一つも崩さずに。
「いまお嬢様をお呼びしますので。」
「はい!」
応対を終え、俺たちを案内した部屋から立ち去っていくメイドさんの姿が、完全に見えなくなった時。
「どうしよう!約束も何もしてないのにぃ〜!」
……かのんが本性を表した。
「尾行してきたからねー。」
「ああ〜!葉月さんになんて言えば解ってもらえるかな〜!」
千砂都の言葉に、さらに追い打ちをかけられるかのん。
「あ、おいしい。」
いや何のんきに紅茶飲んでるのよ千砂都。状況まずいよ?
「いきなり怒るんじゃないの?話すことはありません、帰りなさいったら帰りなさい、的な?」
「そうなるよねー…」
「でも今から帰るわけにも行かないしなー…」
「そうだよねー…」
そんなこんなで、絶賛大ピンチな我々。
そんな状況でも可可は観察眼というものを失っていないようで。
「それにしても、立派なお家デスねぇ……見てください!大きなぬいぐるみデス!」
そう言って可可が指し示すのは、この部屋の隅に鎮座する、巨大な犬。
……ぬいぐるみ…だよね?
「ぬいぐるみ?剥製じゃないの?」
俺と似たような疑念を抱いたらしいすみれが聞くものの、可可は犬に頬を擦り寄せ、
「こ〜んな大きな犬いるわけないじゃないデスカ……あぁ〜!あたたか~い…」
「暖かい?」
そういったすみれも犬に近づき、同じ用に頬をつける。
「ほんとだ…それにトクン、トクンって…」
……ん?もしかして:心音
「何言っているのデスカ?ま〜た適当ばかり言って…」
いや可可、コレはもしかして…
「ワン!」
…あっ……
犬のぬいぐるみ…と思われていたものは一吠えすると、口から舌を出し、そのままハッハッハッと声を出す。
現状を認識した、あの二人がする行動は一つ。
「ほ………」
「ほ……」
で、全員揃って。
「「「「「本物だァァァ!?」」」」」
…俺も含め、全員揃って部屋を飛び出した。
「何なのですかあの犬は!」
「知らないわよ!」
「何なのって犬は犬だろ!」
「その割には大きすぎない!?」
「遺伝子操作…もしくは巨大化改造…」
ショッカーじゃあるまいし!と叫びたくなる心をぐっと堪えて、俺は走り続けた。変身しちゃえば余裕で振り切れるが、すみれの前で変身できないし、犬相手に流石に大人気ない…いや、人間気ない…?いやどうでもいい!
そんな状況でありながら、スマホを操作する余裕があった千砂都が、
「あ、あった」
「「「「???」」」」
「これ。ほんとにいる犬だって。」
あーホントだ。白いしでかいしそれっぽい。…でもだからどうした。
「でもどうすんだよ!?普通の犬でもこんな速度って…」
「とりあえず、誰かに助けを呼ぶしか…」
「ソレだ!」
その発想の元、見えるドアすべてを開けて助けを求めてみたのだが。
「誰か!」
「すみません!」
「誰かぁ!」
……誰も居ない。二桁ぐらいドアを開けても、その先に広がるのはイスとテーブルぐらいのものだ。
「なんで誰もいないの〜!?」
「人手不足の演劇とかである、使用人がほぼ全員休暇取ってるとか!?」
「そこに鉢合わせるってどういう偶然よ!?」
「それは確かに!」
「そんなこと言ってる場合じゃ………あっ、そうだ!」
かのんは手元に視線を向けると、何故かそこにあった物に気付いた。
そして、持っていたもの……犬用のバウンドするボールを振りかぶって───
「えぇい!」
ぶん投げた。壁に反射しまくりながら進んだボールに目を取られた犬は、それを追いかけ猛ダッシュ。
長い長い追いかけっこは、こうして終わりを迎えた。
◆◆◆◆
あれから更に走り、一応あそこから離れること数分。
これまた大きい階段にまで進んだ俺達は、そのままぶっ倒れていた。
「こんなに大きいお屋敷なのに、誰も居ないなんて…」
「まじで全員休暇してんのか…?」
「じゃああのメイドさんはなんで…?」
「確かに、それも気になるかも…」
そう思考を巡らす俺達だったが、その思考は、かのんがあるものに気づいたことで打ち止められた。
「…ん?」
「…どした?かのん?」
「いや…」
そう言ったかのんは立ち上がると、壁に掛けられている一枚の写真に歩み寄った。
「それって……結ヶ丘?」
「うん…制服とか、校舎はそれなんだけど…」
「ちょっと古くない?」
その写真には、俺たちがよく知る制服と、よく知る校舎が。だが、その写真は今撮られたにしては古く、俺たちが一期生のはずなのに、映る生徒に見覚えはない。
「うん……?あれって…」
そう言ったかのんは再び歩き出し、傍のテーブルに置いてあった、一冊の本を手に取った。
「…これって…」
その本は、複数の写真が貼られた、いわゆるアルバム。そこには様々な写真が貼ってあるが、そのすべてが結ヶ丘と思しき場所で撮られたもの。
まだ結ヶ丘が迎えたことのない冬の写真もあり、俺たちが疑問に思っていると────
「駄目です!受け取れません!」
不意に、遠くから声がした。
俺たちは顔を見合わせることすら無く、声のした方へ向かった。
その先では、先程応対してもらったメイドさんと……
「受け取ってください。いままでありがとうございました。」
「駄目です!お金なんていりませんから!」
「そういうわけには行きません。もう、貴方を雇ってあげるお金もなくなってしまいました。貴方のような人をタダ働きさせたら、母に怒られてしまいます。」
………葉月さんが立っていた。
学校で見たこともない柔らかい表情を浮かべる葉月さんは、さっきのメイドさんに一つの封筒を手渡そうとしていた。
「ですが、私が辞めればお嬢様は本当に一人に…」
「私なら大丈夫です。私にはチビが居ますから。」
そう言って、あの白犬を撫でる葉月さん。
「あのサイズでチビ…?」
「しーっ!」
静かにしとこう、俺たちドアの隙間から見てるわけだし。ほぼコレ盗み聞きだし。
「ワン!」
おっとわんわんお?ちょっとまって?こっちに来たりしないよn(
「ワン!」
「おわぁぁっっ!?」
ハイ予想通りだよ!
……真面目に解説しようか。
さっきの声で、俺たちに気づいたであろう白犬は、一声鳴くとドアを突き開け、そのまま俺たちに激突した。
「ちょっそこはだめだって……ハハハハッ!ちょっとくすぐったいって…!」
まあ、俺達つってもかのん…とその下敷きになってるすみれだけなんだけど。
「誰?…え?」
あ、どうもです葉月さん。お邪魔してます。
「ちょっと…!助けてぇ!ハハッハはハ!」
「チビ、come.」
メイドさんの指示で、即座にかのんから離れる犬…改めチビ。
「sit. stay.」
ちゃんとしつけしてるんだなぁー…って、それはどうでもいいわ。
「聞いていたのですか?」
ええ、バッチリ。あらかたの事情も。
「一人って、どういうこと?お金がないって…」
立ち上がったかのんはが問い返すと、葉月さんは答えた。
「そのままの意味です。この家に残ってるのは私一人。お金もありません。このままでは、学校を運営していくことも。」
「……え?」
「母が残した学校を続けるためには、私が頑張るしか無いのです。」
「…葉月さん……」
俺たちは想像もしていなかった。
葉月さんがその両肩に、背負いきれるわけもない重荷を背負っていたことなんて。
次回、ラブライブ!スーパースター!!・響きの記憶の戦士!
「それで結ヶ丘を…」
少女の現実は、
「……後は頼む。」
一人の憎悪によって、
「サヤ……さん……?」
容易く崩れ去る。
第36話 Sの本心/事実は憎悪とともに