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旅は続く。
――それは星の瞬きのような体験だった。
中学二年生のときだった。当時の俺はコンビニへガリガリ君を買いに真っ昼間のクソ暑い中を小銭を握りしめてダラダラと歩いていたら突然、まばゆいばかりの光に覆われて気が付いたら知らない森の中に放りだされていて。
――目に飛び込んできたのは、蒼い、空色の少女。
たぶん、きっとあの瞬間。彼女が泥だらけでへたれ込んだ俺に綺麗な笑顔向けた時。
俺の運命は劇的に変わったんだと思う。
突然喚び出された知らない世界、託された聖剣、たった二人で始まったあてのない旅、増えていく旅の仲間。そのすべては世界を救う為に。
ただ、がむしゃらに突っ走ってきた三年間、気がついたら勇者なんて呼ばれてて。
……とどのつまり簡単にいうと、一目惚れした少女のために、世界の悪の具現と戦ったという、そんな簡単な話。
やがて訪れた彼女との別れは悲しかったけど、俺には帰るべき場所があるから。きっとあの意地っ張りの幼なじみも心配してるにちがいないだろうし。だから、また必ず会おうと約束して。
出会った時と同じように彼女は綺麗に微笑んで、送り出してくれた。
帰るための標の光がやんで目を開けたら暑い空気が肌を焼く感触があって、体は三年前の体。近くのコンビニの時計によるとあれから数分間しかたってなかったらしい。
夢だったんだろうか、なんて思ったりもしたけれど小さな手のひらにはあの日受け取った聖剣が現れて確かにあれは現実だったと教えてくれた。
……たぶんきっと、たとえ何年たったとしても、あのうだるような夏の日を俺は、笠原輝一は一生忘れない。