ファニマを人数に任せて襲おうとした男たち。そこに颯爽とエクス・ジェイドが現れ正義の裁きを下す。
……あとは、エクスの実力次第。暴力で世を渡り歩いてきたこの男にどれだけ対抗できるか。調子に乗って女の前で恰好付けて、しかし暴力で黙らせられるなどどこにでもある話だろう。
・1ターン
「――俺の先攻だ」
ぎらぎらと欲望に取り付かれた目がエクスを睨む。金のためなら人を消すのも厭わないがめつい男だ。
「俺は『無限起動ハーヴェスター』を召喚、効果により『無限起動ロックアンカー』を手札に加える! そして、手札から『弾丸特急バレットライナー』を特殊召喚! このカードはフィールドのモンスターが地属性・機械族のみの場合に特殊召喚できるぜ」
無限軌道を付けたオレンジの戦車がその6つ爪で地面をならし、線路を敷いていく。そして、その線路を弾丸のごとき速度で走るロケット型の特急。
「『ハーヴェスター』は他の機械族モンスターを選択し、己のレベルと合計した数値にできる。『ハーヴェスター』はレベル2、そしてレベル10の『バレットライナー』を選択! 互いのレベルを12にする!」
衝突、否、連結した。2つの車両が凄まじい速度で線路を駆ける。そして、その先には宇宙の混沌が広がった。
「レベル12のモンスター2体でオーバーレイ。森を燃やし、大地を耕し、地上を鉄で覆い尽くせ! 大自然の破壊こそ、人が有する7つの大罪なれば。エクシーズ召喚、人が生み出した罪咎がここに顕現する、『No.77 ザ・セブン・シンズ』!」
混沌より生み出されしは機械蜘蛛。そのおぞましき八つ足で混沌を引き裂き、邪悪なる糸をたぐる。
悼ましいほどに強大な気配は、なるほど攻撃力4000に相応しい。
「このモンスターはエクシーズ素材を犠牲に破壊を無効化する! つまり攻撃力4000、そして3回破壊せねばコイツは倒せん! 表に居るプロなどただの芸人に過ぎんのだよ。真に最強なのは裏の人間なのだと知るがいい。俺はカードを1枚セットしてターンエンド」
そして、何より厄介なのは1枚の伏せカード。破壊されないだけなら、例えばファニマのクラーケンなら何も抵抗にならない。
そのカードさえなければ。なるほど、裏のデュエリスト……タクティクスも舐められない。
場:『No.77 ザ・セブン・シンズ』 ATK:4000
魔法+罠:セット1枚
・2ターン
「俺のターン、ドロー!」
だが、エクスに恐怖は見えない。よく言えば純真な男、そのまま言うならお馬鹿だ。一々何かを考える男ではない。ただひたすらに一直線に向かうのが持ち味なのだから。
「相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。来い『H・C 強襲のハルベルト』。さらに魔法『愚かな埋葬』を発動! 『H・C サウザンド・ブレード』を墓地に送る」
「そして魔法カード『火炎地獄』を発動、相手に1000、そして俺自身に500の直接ダメージを与える!」
地獄の火炎車が両者を燃やす。
〇 チンピラライフ 8000ー1000=7000
〇 エクスライフ 8000ー500=7500
「ツぅ。痛ってェ……テメエ、バーンカードだとォ!? 正々堂々と戦いやがれ!」
「婦女子を集団で襲う男の言うことではないな! そして俺は自身の弱さを自覚したばかり。勝つためならバーンすら実行しよう!」
「っち、王族と言うだけのクソみたいな馬鹿坊ちゃまがよ」
「自分にダメージが発生したことで墓地の『H・C サウザンド・ブレード』の効果を発動。攻撃表示で墓地より蘇生する!」
「なるほど、自分にもダメージを与えたのはそれが狙いだったわけだな。……レベル4が2体、来るか!」
「その通り! 悪を裁く聖剣を見せてやる!」
二人の戦士が混沌に飛び込む。そして生まれる聖剣。
「『ハルベルト』と『サウザンド・ブレード』でオーバーレイ! 王家に伝わりし聖剣よ、その雄々しき姿を現わし、悪を根絶せよ! エクシーズ召喚、『H-Cエクスカリバー』!!」
聖剣、それはあの時にファニマに大ダメージを与えたモンスター。全てはこのカードから始まった。
それはエクスの魂のカード。こいつさえ居れば何とかなると信じられる。彼の人生にはいつも傍らにこのカードがあった。
「っきひ! ぎゃははははは! それが王家の聖剣か? とんでもねえナマクラだ。お子様のチャンバラごっこなんざ終わりにしてやるよォ!」
「何だと!? エクスカリバーが折れることなど決してない!」
だが、その聖剣をその男は馬鹿にする。エクスは激昂するが、恐れる様子など一つもない。
「いいや、そのナマクラは錆びて折れる定めなのさ。罠カード発動、『激流葬』! フィールド全てのモンスターは破壊される!」
「馬鹿な……俺のエクスカリバーが折れる……だと……! だが、セブン・シンズも巻き込まれるはず」
大爆流が全てのモンスターを巻き込む。聖剣が色を失い、錆びて壊れる。
「エクシーズユニットを一つ使い、破壊を無効化だ!」
だが、大蜘蛛だけが激流を乗り越える。砕けた聖剣の欠片を機械眼が睥睨した。
「……ぐぐぐ」
頼りとするモンスターが何も出来ずに砕け散った。蘇生する手段はない。いや、蘇生したところでエクシーズ素材のないエクスカリバーではセブン・シンズに対抗できない。
エクスは歯を食いしばり、己の手札を眺める。けれど、そこに光明を見出すことはできなかった。
「あっはっは! テメエみたいな世間知らずのガキに、この盤面はどうしようもねえさ! 痛い思いをする前にサレンダーでもしたらどうだ?」
「…………ッ! 俺はターンエンドだ、攻撃でも何でも好きにするがいい!」
場:なし
・3ターン
「は。威勢が良くても何もできない有様じゃ怖くねえぜ! しょせんは失地王子、真の実力者であるこの俺様には敵わない! 俺のターン、ドロー!」
男が下卑た笑みを浮かべた。
「手札から『無限起動ロックアンカー』を通常召喚、効果で手札の『無頼特急バトレイン』を守備表示で特殊召喚! 『ロックアンカー』のもう一つの効果で己とバトレインのレベルを8にする! コイツはハーヴェスターと同じ効果を持つ」
「また、高レベルモンスターを揃えたか」
ドリル車両が地面を砕く。特急が線路を走る。もう一度線路の先に混沌の銀河が生まれる。
「2体のモンスターでオーバーレイ。人の手により汚れし大地、鉄と火の毒により死に絶えし古代の幻想種よ! 罪と影より屍の姿で再誕せよ、龍の神! エクシーズ召喚、『No.97 龍影神ドラッグラビオン』!」
それは影で出来た龍。その痛々しい姿に目を覆いたくなる。
「まずは『No.77 ザ・セブン・シンズ』でダイレクトアタック! 【セブン・デモンズ】!」
◆『No.77 ザ・セブン・シンズ』 ATK:4000
〇 エクスライフ 7500ー4000=3500
「っぐ。がああああ!」
これは儀式だ。現実化したダメージ、機械蜘蛛が発する負の波動がエクスを襲う! 肩にかけた上着は飛ばされ、胸は切り裂かれた。
たまらず片膝をつき、全身がガクガクと震え出す。
滝行のダメージも抜けていないのだ。少し火に当たった程度、下半身もずぶ濡れである。少しの間だけ精気を取り戻していた唇は、また真っ青になっている。
「ひゃはははは! 効いてるようだなあ! この一撃で魂ごと砕けちまいな、『No.97 龍影神ドラッグラビオン』でダイレクトアタック! 【シャドウカース】!」
◆『No.97 龍影神ドラッグラビオン』 ATK:3000
〇 エクスライフ 3500ー3000=500
「うおおおおおお!」
影が立ち上がる。目が光るとエクスが燃え上がり、爆発した! とうとう耐えきれず、後方に吹き飛ばされてしまった。
だが、倒れたままでも震える手でカードを繰る。
「『H・C サウザンド・ブレード』はダメージを受けたとき、攻撃表示で特殊召喚できる……!」
傷だらけの戦士が降り立った。
「攻撃力1300で何が出来る!? メインフェイズ2、『No.97 龍影神ドラッグラビオン』の効果発動! EXデッキから『No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon』を特殊召喚! そしてEXデッキからエクシーズ素材を補給する!」
影より生まれし骸の偽龍が、1枚のカードを飲み込んだ。
正しき龍は人の鉄で出来た文明が滅ぼした。ここに居るのは、悼ましき死にぞこないばかりだ。
「偽骸神龍はバトルダメージを跳ね返す! さらにターンエンド時に相手が召喚・特殊召喚・セットしたカード全てを除外する! もはや貴様に打つ手などあるまい! ターンエンド」
場:『No.77 ザ・セブン・シンズ』 ATK:4000
『No.97 龍影神ドラッグラビオン』 ATK:3000
『No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon』 ATK:0
・4ターン
「……」
エクスのダメージは大きい。倒れ伏したまま、顔を敵へと向けた。
いや、立ち上がったとしてもどうなのか。相手のライフは7000。そして、防御を固めようとも偽骸神龍が居る限りエンドフェイズには全てが除外される。
「くひゃひゃひゃ! 立ち上がれないデュエリストにターンは回ってこない。このままくたばっちまいなァ」
そして、エクスの身体をまじまじと見る。
「そういや、テメエなんで上半身裸なんだ? しかも、ズボンの方はびっしゃびしゃだしよ。どんな変態的趣向だよ、そりゃ。まあいいさ、テメエは顔だきゃイイもんなあ。写真撮って女生徒に売りさばいてやるよ。そりゃいい、高く売れそうだぜ。ぎゃはははは!」
手を叩いて笑いだした。
「俺は……貴様のような下種には負けん! おおおおおお!」
瞳に熱を燃やし、立ち上がった。体温低下は命に関わるレベルに達している。だが、魂を燃やし復活する!
「俺のターン」
デッキに手を置いた。
「どうした? 威勢の良いこと言っておいて、サレンダーかよ」
「――新しく引いたカードなんて必要ない、か。そうだな。大切なのは今を見ること。それすらできないのに未来ばかり見ていても、つまづくだけだものな」
それは、エクスに引導を渡したときのファニマの科白。あの時、ドローしたカードなど使わずにエクスを倒してしまった。
「何を言ってやがる」
「貴様を倒す算段はすでに付いている! 俺は、俺の手札を信じる! ドロー」
そして、引いたカードをポケットにしまう。
「ふざけてんのかよ、テメエ」
「ならば見よ! フィールドに居る『H・C サウザンド・ブレード』の効果発動! 手札の『H・C ナックル・ナイフ』を捨て、デッキから『H・C モーニング・スター』を特殊召喚する! 更に特殊召喚時の効果で『ヒロイック・チャンス』を手札に加える!」
先のターンで特殊召喚したサウザンド。前のターンでは激流葬で破壊された。そして、盾に使っていればドラッグラビオンに破壊されていたそのカード。
「俺はレベル4モンスター2体でオーバーレイ。輝けし剣よ、魔眼の王を倒した力を今この我が手に握らん! エクシーズ召喚。汝、悪を倒す
光り輝く剣を持つ黄金の戦士が降臨した。雷の威光を背負い、6枚の輝ける翼で降りてくる。
「まだだ、貴様を打ち倒すにはこの程度では足りん! 魔法『Hーヒートハート』でクレイヴソリッシュの攻撃力を500アップ! 装備魔法『アサルト・アーマー』を装備。攻撃力を300アップ! そして『ヒロイック・チャンス』を発動! クレイヴソリッシュの攻撃力を2倍にする! さらに『クレイヴソリッシュ』自身の効果でライフを500になるように払い、自身の攻撃力を2倍にする!」
これで手札は0。いや、ポケットにしまったのが1枚だ。
・エクスライフ 500⇒500
だが、全てを使いつくして得たものは怒涛の攻撃力上昇だ。光の剣が天すら斬り伏せるほどに大きく、強靭になった。
デッキという未来ではなく、手札という今を信じる。今を全力で駆けなければ、未来など来ない。
「馬鹿な、貴様のライフは500! 払えるライフがどこにある!?」
「知らん! ディスクが判定を下したのだ!」
「『H-C クレイヴソリッシュ』で『No.97 龍影神ドラッグラビオン』に攻撃! この瞬間に効果発動! 『No.77 ザ・セブン・シンズ』の攻撃力を更に加算だ! 耐性も、除外も知ったことか! この一撃で砕け散るがいい、悪党! 【グレート・シャイニング・クラウ・ソラス】!!」
◆『H-C クレイヴソリッシュ』 ATK:16200
VS
◆『No.97 龍影神ドラッグラビオン』ATK:3000
〇 ライフ 7000ー13200=0
「馬鹿な。俺の、完璧な布陣がァァァァ!」
光の剣が振り下ろされる。それは、男だけではなくその仲間たちにも裁きを下す! 圧倒的な光輝が全てを飲み込む!
「「「ギャアアアアア!」」」
すさまじい衝撃が走り抜ける! 残るは荒野、死屍累々。立っているのは勝者のみ。
「彼らを保健室に運ばなければならないか。……誰か、と呼んでも来てくれないんだったな。仕方な……うっ」
エクスも目の前が真っ暗になる。ダメージは甚大、それは変わらない。ただ、気力で持っていただけだ。
「まったく、手間のかかる弟だよ。お前は」
ふわりと受け止められた。
「兄さんか。……すまない」
「いい。俺に任せておけ。――このクズどもも俺の方で処理しておこう」
エクスは安心して目を閉じた。
「さて、コレらも処理しておかなくてはな。……消したらエクスが悲しむか。エクスの慈悲に感謝することだ。俺は弟ほど甘くはない」
そしてエレメは冷たい目で倒れ伏す男どもを一瞥して電話をかけ始めた。
無限軌道+列車はNRフェスで苦しめられた人が多いかなと思います。まあ、本当に私が苦しめられたのは展開途中に一々手が止まるメガリスですが。
エクス君はかなり回ったこのデッキ相手によく勝利できました。名実ともにかなり強いこのデッキを倒せたのは名誉挽回としては中々ではないでしょうか。