エールとファニマが向かい合った。浮かべるのは楽しそうな笑み、これから始まるのはプロレベルすら超えた試合。
そう、痛みを伴わないエンターテイメント。究極域の力を持つ者だけが踏み込める場所。
・1ターン
「エールの先攻!」
エールが5枚のカードを引いた。そして、彼女ほどの魔力を持つ者が手札事故などありえない。
「エールは『金満で謙虚な壺』を発動! EXから6枚のカードを除外し、デッキの上から6枚のカードをめくるわ!」
空中に大きく表示されたのは『ウィッチクラフト・マスターピース』『ウィッチクラフト・シュミッタ』『マジック・クロニクル』『ウィッチクラフト・ドレーピング』『ウィッチクラフト・サボタージュ』『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』。
「エールはこの中から『マジック・クロニクル』を手札に加える。……まあ、このターンはデッキからドローすることはできなくなるけど」
残された5枚はデッキの底へ。もっとも、これからいくらでもシャッフルされるはずだから手札に来ないとも限らない。
「『ウィッチクラフト・ピットレ』を通常召喚、自身をリリースし手札の魔法『ウィッチクラフト・バイストリート』を墓地に捨てることでデッキから『ウィッチクラフト・シュミッタ』を特殊召喚! そして、これは下級の共通効果よ!」
「場の『シュミッタ』と手札の魔法『ウィッチクラフト・クリエイション』をリリース! さあ出番よ、最上位の魔力を秘めし工房のリーダー、『ウィッチクラフト・ハイネ』を特殊召喚!」
湾曲した魔導機械を持った魔女が現れた。浮遊する縫い針が周囲を睥睨する。
「『ハイネ』は1ターンに1度、手札の魔法カードを捨てて相手フィールドの表側表示カードを1枚破壊できるわ。そして、このターンは相手のターンにも使える。この子を倒してエールにまで攻撃を届かせることができるかしらね」
幼い顔にニヤリと笑いを浮かべた。ハイネを倒せる者はごく一握りだが、ファニマなら朝飯前だと確信している笑みだ。
「さあ、エールの本気はこれからよ! 永続魔法『マジック・クロニクル』の効果発動、手札をすべて捨ててデッキから魔法カードを5枚除外する。捨てたのは『愚かな副葬』。そして、除外するのはこの5枚」
また、宙に5枚のカード達が映し出された。『ウィッチクラフト・ドレーピング』『ウィッチクラフト・デモンストレーション』『ウィッチクラフト・コラボレーション』『ウィッチクラフト・スクロール』『ウィッチクラフト・サボタージュ』。
今回は宙の黒渦に飲み込まれた。
「相手が魔法を発動するごとにカウンターが乗り、2つ取り除くことで相手が選んだカードを手札に加えることができるわ。ただし、このカードが破壊されたとき、除外されているカード1枚につき500ポイントのダメージ、最大で2500のダメージを受けるわね」
そこまで言い終えてエールは挑発的に、からかうように、空になった両手で頭を抱える動作をしてみせた。
「次のターン、あなたが『サイクロン』なんかを引いたら大ダメージを受けてしまうかも。墓地の『シュミッタ』の効果、自身を除外して『ウィッチクラフト・パトローナス』を墓地に落としておくわね」
「これでターンを終了。エンドフェイズ、フィールドにウィッチクラフトモンスターが居る時、ウィッチクラフト魔法は手札に戻ってくる。永続魔法の『バイストリート』をフィールドに、『クリエイション』を手札に戻す」
バイストリート、魔導を商う店々がハイネに加護を与える。灰色の髪に隠れていない方の片目でウィンクをした。
「『ウィッチクラフト・バイストリート』がフィールドにある限り、私の魔法使い族モンスターは1ターンに1度だけ破壊されない。『ハイネ』を破壊するには二回破壊しなければならないけど、『バイストリート』を先に狙っても次のターンに復活するわ。さて、どうするかしら。私はこれでターンエンド」
楽しそうに笑って手招きした。
・2ターン
ファニマも楽し気に笑い、言う。
「ウィッチクラフトは手札の魔法カードの枚数が重要なデッキ。でも、今のあなたにはたった1枚の手札しかない。遠慮なく動かせてもらうわ」
もちろん、異世界の魂から知識を得たファニマは知っている。相手の手札は1枚どころではないのだと。
だが、関係ないとばかりに挑む。
「魔法『魔玩具補修』を発動、『融合』と『エッジインプ・チェーン』を手札に加える。そして『融合』を発動、『ファーニマル・ペンギン』とチェーンで融合する。ペンギンとチェーンの効果で『デストーイ・リニッチ』と2枚のカードを手札に加え、『ファーニマル・ウィング』を捨てる」
悪魔の鎖がペンギンの人形を縛り、解体して錬金の渦の中へ。そして現れるのは蛸型の悪魔!
「さあ、暗い海の底より現れ、墓地と言う闇の中に引きずり落としてあげなさい! 融合召喚、『デストーイ・ハーケン・クラーケン』!」
「『バイストリート』の効果を無視してモンスターを狙って来たわね。でも、させないわ! 『ウィッチクラフト・ハイネ』の効果発動! 手札から『クリエイション』を捨てて『クラーケン』を破壊する! 【マギウス・ソウ】!」
蛸が矢に刺されて撃破された。無念気に触手を蠢かすが、やがてそれも墓地に引きずり込まれてしまった。
……生きていれば、墓地送り効果は破壊耐性を無意味にしてしまったのだが。
「ならば魔法『デストーイ・リニッチ』を発動、墓地からデストーイモンスター、破壊された『クラーケン』を守備表示で特殊召喚! 効果を発動、『ハイネ』を墓地に送るわ。……ただし、このターンはダイレクトアタックはできなくなる」
蘇生して相手を倒した。効果を使われる前に倒されるのならもう一度出せば良いとの脳筋戦法だ。しかしこれでは1キルまでは行けない。初めから2回出す気で動いたために、3度目の蘇生の目途はつかなかった。
リニッチはサーチしたカード、もう一度融合を行うための『デストーイ・ファクトリー』をサーチしては蘇生ができなかったジレンマ。
――だが、ファニマはまだ手札を残している。
「『ファーニマル・ドッグ』を召喚、『ファーニマル・オウル』を手札に加える! 更に魔法『魔玩具融合』を発動、墓地のチェーンとペンギンを除外融合。現れなさい、呪いを振り撒く悪魔人形『デストーイ・デアデビル』!」
「『ドッグ』と『デアデビル』で攻撃。【テラーバイト】! 【デビルズジャベリン】!」
◆『ファーニマル・ドッグ』 ATK:1700
◆『デストーイ・デアデビル』 ATK:3000
〇 エールライフ:8000ー1700ー3000=3300
犬のぬいぐるみにガジガジされ、エールが少しほほ笑んだ瞬間に槍を投げ込まれて爆発。奇麗な蒼い髪がアフロになって地団駄を踏む。
「っく。そっちのワンちゃんはいいけど、槍はムカつく!」
ソリッドビジョンだ、次の瞬間にはアフロは元のさらさらとした長い髪に戻る。
「私はターンエンド。あなたの手札は0枚、どうするかしらね。クロニクルにカウンターが何個乗っていても、回収できるのは1ターンに1枚だけよ」
「1枚? それはどうかしらね。エールは墓地のパトローナスを除外して効果発動、除外されたウィッチクラフトマジックを手札に加えることができる。5枚すべてを回収!」
エンドフェイズ、0枚だったエールの手札は5枚となった。強力なコンボだ。そもそもクロニクル自身の回収効果を使う気などみじんもなかったということだ。
・3ターン
「さあ、エールのターンよ。ドロー!」
これで手札は6枚。
「墓地のピットレの効果を発動。この子を除外、もう1枚ドローして手札の『ウィッチクラフト・スクロール』を捨てるわ」
1ターン目は『金満で謙虚な壺』の誓約効果で使えなかった。ウィッチクラフト魔法は単体では弱い、交換するのが効率的だ。
それに、手札にモンスターが一体は居なくてはウィッチクラフトは動けない。手札の6枚中5枚は回収した魔法カードだった。
「『ウィッチクラフト・ポトリー』を通常召喚、手札の『コラボレーション』とともに墓地に送りデッキから『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』を特殊召喚。さらに手札から魔法『ウィッチクラフト・サボタージュ』を発動、墓地の『ウィッチクラフト・ハイネ』を復活!」
ここにウィッチクラフトの切り札が2体揃った。偉そうにふんぞり返るヴェールの前で、不埒者は通さないとばかりにハイネが敵を睨みつけている。
「我が工房の主とリーダー。2人揃えばどんな敵だろうと相手じゃないわ! これぞウィッチクラフト、魔導工房の力を結集した技術の粋をみなさい!」
エールがない胸を張ってどや顔を見せる。
「『ハイネ』で『ドッグ』を攻撃! 【マリシャスクロス】!」
◆『ウィッチクラフト・ハイネ』 ATK:2400
VS
◆『ファーニマル・ドッグ』 ATK:1700
〇 ファニマライフ:8000ー700=7300
ハイネが一瞬にして色とりどりの布を縫い上げた。それは不気味に明滅し脈動する生きた布。それが、ぬいぐるみの犬を絞め殺した。
「……く。だが、700ごときのダメージで!」
「続きよ、ヴェールでデアデビルを攻撃! この瞬間効果発動、手札の2枚の魔法カードを相手に見せることで攻撃力を2000アップする、【マギウスリンク】。喰らいなさい【マリシャスクリスタル】!」
◆『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』 ATK:3000
VS
◆『デストーイ・デアデビル』 ATK:3000
攻撃力は互角、ヴェールの放った水晶の槍とデアデビルの悪魔の槍がぶつかり合いせめぎ合う。
その凄まじい攻撃は一歩も引かずに……爆発する。
「『デアデビル』!」
「『ヴェール』は『バイストリート』の効果で破壊を免れるわ!」
爆発が晴れた後、『ヴェール』だけが宙に浮かびつつ地を睥睨していた。バイストリートの上手い使い方だ。どっちみち、ライフを多少削ったところで意味はない。
相手のモンスターを素早く潰す、残してターンを返さない。それが遊戯王の常道。
「けれど破壊された『デアデビル』の効果を発動、破壊されたときに500ポイントのダメージを相手に与える!」
「そんなのエールには痛くもかゆくもないもん!」
地から染み出た瘴気がエールを襲う、とうの彼女はぷんぷんと怒っている。
〇 エールライフ:3300ー500=2800
「モンスターは残さない! 『ハイネ』の効果で『クラーケン』を破壊するわ、【マギウス・ソウ】! 捨てるのは『ウィッチクラフト・デモンストレーション』よ」
『クラーケン』は『ハイネ』の縫い針に刺されて風船のように萎む。風船のように破裂した。
「そしてエンドフェイズ、墓地のウィッチクラフト魔法が戻ってくる。ただし『サボタージュ』は効果を使ったので戻って来ない。これでエールの手札は5枚! さあ、ファニマのターンよ」
場
モンスター:『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』、『ウィッチクラフト・ハイネ』
魔法:『ウィッチクラフト・スクロール』、『ウィッチクラフト・バイストリート』
・4ターン
「私のターン、ドロー! 再び『魔玩具補修』を発動、『融合』とチェーンを手札に加え、『融合』を発動。『チェーン』と『ドルフィン』で融合召喚、『デストーイ・クルーエル・ホエール』! その邪魔な『バイストリート』を破壊してあげるわ【ロアー・オブ・ホエール】!」
「『ヴェール』の効果発動! 手札の『ドレーピング』を捨てて破壊効果を無効にする!」
ヴェールの紡ぐ幻想的な光の糸に抑え込まれ、ホエールは雄たけびを上げることを許されない。
「ならば、更にチェーンして『ホエール』のバンプアップ効果を発動、【マックスホエール】! 無効化効果を発動するよりも前なら、効果は通る!」
「やられたわね。『ハイネ』の効果は温存、そして『ヴェール』もまだフィールドに残っているわ」
クジラは光の糸をその巨体で引きちぎり、今度こそと恐ろしい絶叫を上げた。
「ならばEXから『デストーイ・チェーン・シープ』を墓地に送り、『ホエール』の攻撃力を3900にアップする。そして『チェーン』の効果でデッキから『魔玩具融合』を手札に加える。死人に口あり、さすがのマスター様の効果でも墓地までは止められなかったわね」
鋭い笑みを浮かべた。
「さあ、フィナーレまでの道を作りましょう!」
ファニマが勢いよく手札のカードをディスクに叩きつける!
「手札の『ファーニマル・ベア』を捨てて、『トイポット』をデッキから発動。さらに墓地の『ウィング』の効果発動、自身と『ドルフィン』を除外、さらにフィールドの『トイポット』を墓地に送って、2枚のカードと『エッジインプ・シザー』を手札に加える」
「そして『ファーニマル・オウル』を召喚! 効果で『融合』を手札に加え、発動。『オウル』と『シザー』で『デストーイ・シザー・タイガー』を融合召喚! このカードは融合素材の数だけフィールドのカードを破壊できる。『ハイネ』と『バイストリート』を破壊!」
『バイストリート』は永続魔法、同時に破壊するのなら破壊耐性付与は意味をなさない。
とはいえ、強化能力持ちの『ヴェール』は取れなかった。『ハイネ』が居る限り他の魔法使い族モンスターは対象に取れないのだ。
さらに、『ハイネ』とてやられっぱなしではない。
「『ハイネ』の効果発動、フィールドの『バイストリート』を墓地に送り、『ホエール』を破壊する!」
狙われた『バイストリート』をコストにして、『ホエール』を倒してしまった。が、自身も破壊された。
「でも、エール。あなたの工房は、手品のタネを使い切った!」
「そうね。なら、次には何を見せてくれる!?」
「ファーニマル最強のモンスターを見せてあげる! 『魔玩具融合』を発動! 墓地の『ドッグ』、『ベア』、『チェーン』を除外して融合召喚。捨てられし数々の玩具の怨嗟を受け継ぎ、現世に呪いを! 現れよ、『デストーイ・ナイトメアリー』!」
「墓地の『リニッチ』の効果発動! 自身を除外、除外されている『ファーニマル・ウィング』を墓地に戻す」
「『ナイトメアリー』の効果、墓地の天使族・悪魔族モンスターの数×300ポイント攻撃力をアップする。墓地のモンスターは7体。そして『シザー・タイガー』の効果により更に600ポイント上がる!」
「――よって、攻撃力は4700!」
『ナイトメアリー』が墓地の底から湧き上がる瘴気を喰らい巨大化する!
「けれど、『ヴェール』は自己強化の能力を持っている!」
「ええ、あなたの手札は4枚。そのうちの3枚は知っている。ゆえに……」
「この1枚が勝負を分ける。恐れず立ち向かってくる? ファニマ」
「当然よ。――あなたの最後の手札が魔法カードかどうか、勝負ね!」
「ええ、来なさい!」
「『デストーイ・ナイトメアリー』で『ヴェール』を攻撃、【ナイトメアポゼッション】!」
「『ヴェール』の効果発動、3枚の魔法カードを相手に見せて攻撃力を3000ポイントアップさせる。【マギウスリンク】!」
ヴェールの掲げる杖から放たれる光輝は3つの魔法カードの力を得て、己の力を増大させる。地表すら覆い尽くしてしまえと大水晶壁を放った。
が、ナイトメアリーもまた墓地のぬいぐるみ達の呪いを束ねて地上の全てを呪い殺さんと怨嗟を上げる。
◆『デストーイ・ナイトメアリー』 ATK:4700
VS
◆『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』 ATK:4000
〇 ライフ:2800ー700=2100
勝利したのは呪いであった。マスター・ヴェールが苦しげな顔で消えていく。そして、その呪いは術者にまで届く。
「私の勝利よ、『デストーイ・シザー・タイガー』のダイレクトアタック【シザーダンス】!」
◆『デストーイ・シザー・タイガー』 ATK:2500
〇 ライフ:2100ー2500=0
「……負けちゃったぁ」
シザーがハサミでヴェールの頭をこつんと叩く。決着が着いた。
シンクロフェスをマシンナーズで回していると、モンスター破壊効果に対してパシフィスのトークン召喚効果を使われました。(どちらもシンクロしないと言う)
パシフィスはトークンが存在しないことが条件ですが、破壊効果が発動した瞬間にフィールドに居ない者扱いになっていると言う……ライフで0ポイントを払うとかありますし、遊戯王では目に見えるものが信じられませんね。