悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第18話 究極のブルーアイズ

 

 

 たった1枚のカードで墓地リソースを31枚も稼いだフェルは勝ち誇った笑みを浮かべている。それは勝利を確信してもおかしくないほどのアドバンテージ。対戦者にとっての悪夢に他ならない。

 

「さあ、絶望しろ。墓地から2体を除外して手札の『インフェルノイド・ベルフェゴル』、特殊召喚! もっともインフェルノイドはフィールドのモンスターの合計レベルが8以下でなければ特殊召喚できないため、追加召喚は不可能だがな」

 

 皮肉気な笑みを浮かべる。ああ、その通りだ。合計は決まっている、出せるモンスターは数少ない。……そんな甘い相手ではない。

 レベル・ランク8以下と言うのなら、それに当てはまらないモンスターがいる。

 

「――だが、リンクならば関係ない。『デカトロン』と『ベルフェゴル』でリンク召喚、リンク2『灼熱の火霊使いヒータ』! さらに墓地の2体のインフェルノイドを除外し、手札の『インフェルノイド・アシュメダイ』を特殊召喚!」

 

 すさまじい特殊召喚だ。さらなるリンクが来る。

 

「僕は『ヒータ』を2体分として『アシュメダイ』とリンク召喚。箱舟への道を示す聖遺物を持つ騎士よ、既に救済への道は燃え落ちたと知るがいい。煉獄にて無常を叫べ! リンク3『アークロード・パラディオン』!」

 

 聖騎士が現れた。だが、彼は煉獄を力と変える堕ちた騎士。

 

「まだだ! まだ絶望は終わらない。上級インフェルノイドは手札だけでなく墓地からでも特殊召喚できるのだ! 墓地の4体を除外、墓地の『インフェルノイド・アドラメレク』並びに『インフェルノイド・ベルフェゴル』を特殊召喚!」

 

「そして召喚した2体でリンク召喚、リンク2『ドリトル・キメラ』! このカードはフィールドの炎属性モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる。そして、こいつは『パラディオン』のリンク先に特殊召喚だ」

 

 500ポイントの攻撃力アップ、上昇値は小さいが……しかしこれで、ブルーアイズの攻撃力3000ラインを上回った。数値は小さくても、意義は大きい。

 

「更に4体を除外! アークロードのリンク先に『インフェルノイド・ヴァエル』を、そして別の場所に『インフェルノイド・アドラメレク』を墓地から特殊召喚!」

 

 パラディオンが煉獄を纏う。烈風が炎獄へと変化した。これこそ堕ちた騎士の本領、煉獄の力を纏う騎士。

 

「『アークロード・パラディオン』の効果! パラディオンはリンク先のモンスターの攻撃力を得る! リンク先には『ドリトル・キメラ』と『ヴァエル』! これで攻撃力は6000だ!」

 

 騎士の剣に炎が集約する。巨大化した。

 

「……ただし、リンク先のモンスターは攻撃できなくなるがな。しかし、上級インフェルノイドは自分フィールドのモンスターをリリースし、相手の墓地のカードを除外する効果を持つ! 攻撃不能と油断するなよ」

 

 パラディオンのデメリット効果、しかしデメリットは即座に打ち消し可能だ。アドラメレクの2回攻撃を含めて総攻撃力は実に17600、ライフを二回吹き飛ばしても余りある。

 

「さあ、この圧倒的な攻撃力の前に砕け散るがいい!」

 

 けれどアイズは不敵な笑みを崩さない。凡骨の攻撃など痛くもないと語っているようにその敵意を真っ向から受けて立つ。

 

「『インフェルノイド・アドラメレク』で『蒼眼の銀龍』を攻撃! 【ゲノム・インフェルノ】!」

 

◆『インフェルノイド・アドラメレク』 ATK:3300

 VS

◆『蒼眼の銀龍』 DEF:3000

 

 アドラメレクが放つ炎に銀龍が焼かれ、墜落した。

 

「……ぐ。銀龍よ、すまん」

「そして『アドラメレク』はモンスターを戦闘破壊した時、2回攻撃ができる。『ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン』を攻撃! 【ゲノム・インフェルノ】第二打!」

 

◆『インフェルノイド・アドラメレク』 ATK:3300

 VS

◆『ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン』 ATK:3000

 

〇 アイズライフ 8000ー300=7700

 

「ぐぬ……! 『ジェット』は破壊されるが、効果発動! 『パラディオン』を貴様の手札に戻す! さあ、EXデッキに帰るがいい!」

 

 さらにジェットまでもが焼けて堕ちる。が、墜落する直前に炎を振り切って飛翔する。堕ちた騎士を貫き、限界を迎えて消えた。

 

「『パラディオン』が消えたか。だが、その程度で我が煉獄を防ぎ切れるものか! これで貴様のモンスターは居なくなった! 『インフェルノイド・ヴァエル』でダイレクトアタック!」

 

 ヴァエルの煉獄の炎がアイズの魂までも焼き尽くそうと迫る。

 

「永続罠『真の光』の効果発動! 手札・墓地のブルーアイズを特殊召喚する!」

「墓地の『亜白龍』を呼び、破壊されることで『ジェットドラゴン』を呼び戻すつもりか!? だが、させんぞ。攻撃の終了した『アドラメレク』の効果発動! 自身をリリースし、貴様の墓地の『青眼の亜白龍』を除外する!」

 

「ならば、手札の『青眼の白龍』を特殊召喚!」

「チィ! それは最初のターンで見たカードだな。このまま攻撃すればジェットを特殊召喚されるな。貴様の目論見通りにはならん! 『インフェルノイド・ヴァエル』、効果発動! 自身をリリースし、墓地の『ジェットドラゴン』を除外だ!」

 

 アイズを焼き尽くさんと迫った炎が向きを変える。墓地のジェットを除外した。

 

「……ふん。圧倒的な攻撃力とやらはどうした? オレはまだかすり傷しか受けておらんぞ」

 

 挑発するアイズ、まだ300しかダメージを受けていないのだ。

 

「何を勝ち誇った気になっている……! フィールドにブルーアイズを召喚して調子に乗っているのなら、今すぐその余裕を潰してやるよ! 吠え面を見せろ!」

 

 ぎりぎりと歯ぎしりするフェル。だが、恨み言だけでは終わらない。『名推理』によって獲得したアドバンテージはまだ残っている。

 

「メイン2に移行! 『ジェットドラゴン』が消え、そして『蒼眼の銀龍』の効果を受けたモンスターもいなくなったことで貴様の鉄壁は崩れ去ったと知れ」

 

「墓地のインフェルノイドを3体除外することで、『インフェルノイド・リリス』を墓地より特殊召喚! 効果発動、フィールドの全ての魔法・罠を破壊する! 【ディザスター・テンペスト】!」

「……『真の光』が破壊されたことにより、フィールドの『ブルーアイズ』は破壊される」

 

 極光が降り注ぎ、ブルーアイズが破壊された。これで、アイズの場にはモンスターも魔法も破壊された。まさに焼け野原、絶体絶命。

 

「さあ、これでアンタのフィールドは更地だ。さらに『リリス』は自分フィールドのモンスターをリリースすることで、モンスター効果を無効化できる能力を持つ! 手札1枚のアンタでは、もうどうしようもないだろ? さあ、俺はターンエンドだ」

 

場:『インフェルノイド・リリス』 ATK:3400

  『ドリトル・キメラ』 ATK:1900

墓地のインフェルノイド:4体

 

・3ターン

 

「オレのターン、ドロー」

「いいカードを引けたか? モンスター効果を無効化する『リリス』が居る限り、たった2枚の手札じゃシンクロすら怪しいがな」

 

 フェルはいやらしく笑みを浮かべた。墓地のインフェルノイドは残り少ないが、敵にもそれだけのリソースを使わせた。

 それに、シンクロはその前にモンスター効果を使うケースが多い。警戒すべきは『ブラックホール』などの魔法による除去からのシンクロ召喚だが、手札2枚では厳しいはずだ。最初のコンボにしたって、魔法を使えば残りの手札は1枚になる。

 

「オレは手札から魔法『調和の宝札』を発動、『伝説の白石』を捨てて2枚ドロー。そして、『白石』の効果で『青眼の白龍』を手札に加える。……無効化してみるか?」

「……いいや、しない。いいぜ、手札に加えろよ」

 

 2枚ドローを潰せるのならば躊躇はないが、ここで使っても潰せるのは召喚できないモンスターだ。リリスをリリースするほどの価値はない。

 

「次に墓地の『太古の白石』の効果発動。自身を除外し墓地のブルーアイズモンスターを手札に加える。オレは『青眼の白龍』を手札に加える。これも無効化は可能だ」

「何体ブルーアイズを手札に加えようが、肝心のチューナーが居なけりゃどうしようもないぜ。『リリス』は使わない」

 

「……ふ。常識的で、慎重なデュエルだな。勝利するため、己の殻を破る『青眼の白龍』を見せることで特殊召喚、現れろ2体目の『青眼の亜白龍』!」

「宝札の効果で手に入れていたか。召喚ルール効果はリリスで無効化できない……! だが、破壊効果を使えばリリスの餌食だ。そして、リリスの攻撃力は3400。……『ドリトル・キメラ』を先に破壊すれば、手が足りんぞ」

 

 ドリトル・キメラさえ破壊すればリリスの攻撃力は2900。だが、相手に次のターンを渡しても何とかなると思うのはデュエリストレベルが足りない。

 当然、相手はターンが回ってきた瞬間、強力な一撃を準備するのだから。

 

「オレを常識で測るな! そう、オレこそが――強靭・無敵・最強! 貴様ごときデュエリストでは手の届かぬ天空の頂きと知るがいい!」

「何を馬鹿な……! この状況で打開できる手などあるわけがない……! ただの強がりだ」

 

「吠えたな。では、見るがいい! オレは手札から魔法『融合』を発動!」

「『融合』……融合だと! そんな馬鹿な、融合など!? シンクロ使いではなかったのか!?」

 

 驚愕する。そう、本当に常識外れだ。異なる召喚法を扱う、そんなものは聞いたことがない。……ファニマとて、それは主人公の特権だと思っていた。

 その常識を覆す存在が、ここに。

 

「オレもまたヴェルテの系譜、そしてオレほどの最強デュエリストが一つの召喚方法しか出来ん訳があるか! 常識など、このオレの前では儚く砕け散る幻想に過ぎん!」

「……奴の手札にはブルーアイズが2体。そして」

 

「『青眼の亜白龍』はフィールド・墓地に居る時『青眼の白龍』として扱う。オレはこの3体の『青眼の白龍』で融合召喚を行う!」

 

 3体のブルーアイズが宙を舞い、号砲を叫ぶ。これから来る究極モンスターの前哨だ。

 

「クク。クハハ。クハハハハハハ! アーハッハッハ! フハハハハハハ! ハハハハハハハハ! ワーハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハ! 現れ出でよ、『真青眼の究極龍(ネオ・ブルーアイズアルティメットドラゴン)』よ!」

 

 3つ首の龍。それは圧倒的なまでの存在感、究極と呼ばれるに相応しい威厳を持つモンスター。”最強”の名に相応しい存在が今ここに生誕した!

 

「『アルティメット』よ、『リリス』を粉砕せよ! 【ネオ・アルティメット・バースト】!」

 

◆『真青眼の究極龍』 ATK:4500

 VS

◆『インフェルノイド・リリス』 ATK:3400

 

 3本の光条がリリスを粉砕し、フェルを焼く。

 

「馬鹿な……強化を受けたリリスの攻撃力を上回るモンスターなど! ぐわああああ!」

 

〇 フェルライフ 8000ー1100=6900

 

「ネオ・アルティメットはEXのブルーアイズ融合モンスターを墓地に送ることで追加攻撃ができる。EXから『青眼の双爆裂龍』を墓地に送り、【ネオ・アルティメット・バースト】 第二打!」

 

◆『真青眼の究極龍』 ATK:4500

 VS

◆『ドリトル・キメラ』 ATK:1900

 

〇 フェルライフ 6900ー2600=4300

 

「更にEXから『青眼の究極龍』を墓地に送り、【ネオ・アルティメット・バースト】 第三打! ダイレクトアタックだ!」

「馬鹿な……この煉獄が、光に焼き尽くされる……? ぐわああああああ!」

 

◆『真青眼の究極龍』 ATK:4500

 

〇 フェルライフ 4300ー4500=0

 

 膝をつき、崩れ落ちたフェル。絶死と言えるだけのダメージ。生きているどころか、身体を起こせるだけでもファニマの計り知れない何かがある。

 

「さあ、我が社の尋問室でゆっくり話を聞かせてもらおうか」

「それには及ばん……!」

 

 パチリ、と指を鳴らすと彼の身体は無数のカードとなって散らばり消え去った。満身創痍ではあったが、逃げられた。

 

「チ。奴もなにがしかの能力を持っていたか」

「そのようですわね。王家の力とはまた別の起源、ヴェルテすらも知らない謎の力」

 

「また出てくるならば粉砕してくれるわ。人の英知は世界の全てを解き明かす。それは当然、オカルトの世界も例外はない」

「おじさまなら本当にやってしまいそうなところがアレですね。デュエルモンスターズの力も、それはまだ解き明かされていないと言うだけ。テクノロジーが解き明かしてしまえば、人が利用できる”技術”に零落する」

 

 一息つく。身内だ、堅苦しいことなどパーティの時だけでいい。

 

「……で、何用だ。ファニマよ」

「ああ、濃いのが来たせいで忘れるところでした。学園の禁じられた森で負のエネルギーが発生しています。ちょっと調べたいので、専門家を貸してほしいのですよ」

 

 ファニマは今思い出したように頬に人差し指を当ててそう言った。実際、デュエルに見入ってしまって言われるまで忘れていた。

 

「なるほど。アレを見る限り、相当ではあるようだ。ならば良い、興味が湧いた。良かったな、協力してやろう。磯野、フォシル・フューを呼べ!」

「……は!」

 

 そして、現れたのは片目を眼帯で隠した伊達男。年の頃は10台に見えるが、しかし30台と言われても納得できそうな風格がある。

 攻略対象とはまた別の意味で魅力的な男性だ。

 

「――フォシル・フュー参上しまシタ。どうぞお見知りおきを、レディ」

 

 気障たらしくファニマの手を取り、手の甲に口づけしようとして。

 

「……ッ!」

 

 振り払った。慌ててメイが立ち塞がり、がうがうと威嚇した。

 

「おや、これは申し訳ない。姫サマ。どうも、このあたりの常識には疎いノデ」

「いえ。私もやりすぎたわ」

 

 無理やり笑顔を取り繕って握手する。もう片方の手はメイの手を握っていた。婚約破棄の一件、ファニマは気丈に振舞っているが一部トラウマが残っている。

 

「こいつは地質学者にして考古学者。要するにオカルトの専門家だ。その力、存分に使ってやるがいい」

「感謝しますわ、おじさま」

 

 彼を連れて、家へ帰った。

 

 ファニマには原作の知識がある。ゆえにこれから邪神が復活し、攻略対象達と邪神の下僕が世界を賭けて戦うことを知っている。

 だが、以前に述べた通りだ。彼らに任せるなど自殺行為だろう、とても任せてはいられない。ゆえに殴り込みをかける、そのための準備は流々だった。

 開発者としてエール、そして調査要員としてフォシル。ファニマは指揮官と戦闘要員の兼任だ。だが、邪神の下僕が7人居ると知っている以上、もう少し戦闘要員が欲しいが。

 

「……いざとなれば、おじさまを呼べば来るかしらね?」

 

 車の中で、もの思いにふける。その手はずっとメイの手を掴んで離さなかった。

 

 

 






オカルト専門家さんに世界観を解説させようと思っていましたが、需要なさそうなのでカットカットカット。需要なかろうがお嬢様とメイドのいちゃいちゃは書きたいけれど、そっちは筆が進まない……

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