悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第19話 正統なるヒロイン

 

 ふと、ファニマは思う。

 

「――”ふわり”。あの女は今何をしているのかしらね」

 

 ちょうどアイネとメイと三人でお茶会をしていたから聞いてみた。エールはどこか別の場所でサボっている。

 

 ふわりには姓はない。完全な平民だ、なにがしかの権力でもあれば苗字は作れるというのに。ファニマのような貴族は生まれながらに持っている姓。それがない。

 それこそ、地区大会優勝でもよいのだ。フェルの方は得体が知れないが、キングことスカ-レッド・エルピィが苗字を持っていたのはそれが理由。自分でつかみ取ったと言う彼らしさ。

 

「いよいよ復讐と言うわけですか? ファニマ様。色々と派手に振舞っていたのも、あの一件が遠因ですよね」

「物騒ね、アイネ。私は何もする気はないわよ。それに、勝ったのにめそめそ泣くのは話がおかしいでしょう」

 

 婚約破棄、あれを受けてエクスへの恋愛感情は一切合切なくなったとはいえ、ショックを受けたのは違いない。

 気丈に振舞っていたので、周りからはただデュエルの鬼として恐れられるだけだったけれど。復讐する理由なら十分あると、ファニマ自身も思っている。

 

「彼女、あまり気にされていないようですね。あなたが何もなされないので物理的に何かはされていないみたいです。ただ、陰で滅茶苦茶言われていますが、その辺の声はむしろ取り巻きにしか届いていないようで」

「……ふぅん」

 

 メイの紅茶を飲む。

 陰口に晒されて精神病院に入院してしまえなんて思っていない。だが、多少面白くないと言う気持ちもある。

 ……だが、それ以上に”どういうことだ”と思う。

 

「少し話したことがありますが、感じのいい方でしたね。あれが大きなダメージになっていないのも、人徳なのかも……すみません」

「別にいいわ。――でも」

 

 ファニマは少し考える。

 あれは”主人公”だ。だが、原作=ゲームで言うと居ても居なくても変わらない……いや、攻略対象はCPUだから弱すぎて、主人公が戦わないとどうしようもないのだが。

 この現実では、攻略対象たちは強い。彼女が居なくても防衛戦力が一つ抜けるだけで済む。”済む”、はずだが。

 

「彼女、見定めておきたいわね」

 

 ストーリーそのものは陳腐。しかし、その裏にどんな設定が潜んでいたものやら分からない。本文に書いていないだけで、彼女が光の魔力を持っていて、だから再封印に成功したと言われても驚かない。

 

「そうですか。彼女、この時間は学校裏の花壇で花の手入れをしているみたいですよ」

「……業者がやるでしょう、そんなの」

 

「趣味じゃないですかね?」

「ふぅん。それにしてもお花畑、ね。それが文字通りかどうか確かめてあげようかしら……メイ、出るわよ」

 

「承知しました、お嬢様!」

「私も行きます」

 

 そういうわけで、花壇に行った。そして見つけた。

 

「――こんにちは」

「こんにちは!」

 

 彼女はジャージ姿で、少し土に汚れた顔で、はにかんだ。しかし、すぐに相手が誰かに気付く。

 

「……ファニマ・ヴェルテ?」

 

 きょとん、とした顔で言った。

 

「呼び捨てかしら? ねえ、ふわり。姓すらも持たぬあなたが」

「ごめんなさい。ヴェルテ様、あの……あなたが有名人だから」

 

 少し恥ずかしそうな顔。だが、これはどういうことだろう。およそ、あるべき姿ではない。

 ご令嬢から男を奪った女狐? ならば、こんなにぽややんとした顔は浮かべまい。

 成り上がろうと男を落としたけど、それで落ちぶれた負け犬? ならば、ファニマを恨む顔の一つは見せるべきだ。

 

「――そう。少しだけ理解したわ、構えなさい」

 

 ファニマがその異形のデュエルディスクを突き付けた。この女は普通で測れるようなものではない。女狐でさえあるものか。

 その化けの皮を剥がしてやると決意した。

 

「デュエル? ええ、受けて立つわ! あのヴェルテ様とできるなんて夢みたい!」

 

 跳び上がって喜ぶ。それは仔犬の様で……そう、それこそ男子のおもう”かわいい女の子”そのものだろう。

 ファニマの怜悧な美貌には比べるべくもないが、こういう愛らしい顔の方が好まれるものだ。

 

「ならば、互いの誇りをかけ……カードの剣にて切り合いましょう」

「はい。遠慮なく行きますよ」

 

 躊躇もなく儀式のデュエルを受けるが、これも無邪気ゆえにとしか思えない言動だ。

 

「「デュエル!」」

 

・1ターン

 

 ふわりが元気よくカードを引き抜いた。太陽のような笑みは、それこそ他愛もなく遊んでもらっているかのよう。

 

「先攻は私がもらいます! 私は『ふわんだりぃず×ろびーな』を召喚、効果でデッキから『ふわんだりぃず×いぐるん』を手札に加えて、追加で召喚をします。『いぐるん』を召喚して効果でデッキから『ふわんだりぃず×すのーる』を手札に加え、更に追加で召喚を行います」

 

 下級ふわんだりぃずは効果を使った直後に通常召喚を行う効果を持つ。この効果で特殊召喚メタを踏まずに展開することができるのが最大の特徴だ。

 もっとも、効果を使えないと追加の通常召喚はできない弱点があるがそれはよほどの長期戦になった場合の問題だろう。

 

「『ろびーな』と『いぐるん』をリリースしてアドバンス召喚、来て。海のお友達、ツンドラの狩人『ふわんだりぃず×すのーる』!」

 

 3匹の青い鳥、フクロウが現れた。

 

「下級ふわんだりいずはフィールドから離れた場合に除外され、そして鳥獣族モンスターが召喚された時に手札に加えることができる。除外された『ろびーな』と『いぐるん』を手札に加えます。さらに『すのーる』の効果を発動、あと2回通常召喚できるようになります」

 

「手札から魔法『ふわんだりぃずと旅じたく』を発動、さきほど手札に戻った『ろびーな』を除外してデッキから『ふわんだりぃず×えんぺん』を手札に加え、さらにライフを500回復します」

 

〇 ふわりライフ:8000+500=8500

 

「追加された召喚権で『ふわんだりぃず×とっかん』を召喚。除外されている『ろびーな』を手札に戻し、同時に『ふわんだりぃず×いぐるん』を召喚します。『いぐるん』はこのターン効果を使ったので追加召喚はできません」

 

「でも、『すのーる』の効果で追加した3回目の召喚権が残っています! 『とっかん』と『ろびーな』をリリースしてアドバンス召喚! 私の頼りになるお友達、王様の威光で敵を追い払って。『ふわんだりぃず×えんぺん』!」

 

 ペンギンが偉ばって鳴いた。一見愛くるしいように見えて、その威光は絶大。そいつはただ居るだけですさまじい能力を発揮する。

 

「鳥獣族モンスターが召喚されたので、除外されている『とっかん』は自身の効果で手札に戻ります。そして『えんぺん』の召喚時の効果発動! 2枚目の『ふわんだりぃずと旅じたく』を手札に加えます!」

 

 2体のふわんだりぃず。だが、生半では破ることができない。どれだけ強力なモンスターでも1体ではどうしようもないと断言できる。

 

「『すのーる』の効果は相手ターンに一度、特殊召喚されたモンスター全てを裏側守備表示にできます。さらに『えんぺん』は特殊召喚された攻撃表示モンスターの効果発動を封印し、バトルの瞬間に相手モンスターの攻撃力を半減させます。私はこれでターンエンド! です!」

 

場:『ふわんだりぃず×えんぺん』 RTK:2700

  『ふわんだりぃず×すのーる』 ATK:2900

 

・2ターン

 

 相手は洒落にならないモンスターだ。だが、真の意味での最強デッキとは呼べないとファニマは知っている。

 あれはまだプレイングも、そして制圧盤面としても弱い。あのデッキには足りないものがある。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 怜悧な笑みを浮かべる。ふわりと言う少女の本質が知れるのはこれからだ。

 

「手札から魔法『魔玩具補修』を発動、『融合』と『エッジインプ・チェーン』を手札に加え、そのまま『融合』を発動。手札の『チェーン』と『ファーニマル・ペンギン』で融合召喚、深き海の底より現れよ『デストーイ・ハーケン・クラーケン』!」

 

「この子は守備表示で召喚。これで『えんぺん』の効果範囲から逃れられるわ。そして、クラーケンは敵を墓地送りにする能力を持つ」

「私のお友達が!? 『すのーる』お願い、仲間を守って! 手札の『ふわんだりぃず×とっかん』を除外して効果発動、『クラーケン』を裏側守備表示にします!」

 

「……ふふ。起動効果は裏側守備表示にすれば恐るべきことはない。まあ、『ふわんだりぃず』を使うならそれくらいはしてもらわないとね。けど、仲間を守って……ねえ。それ、本気?」

「? ――本気ですよ。墓地に行ってしまったら悲しいじゃないですか」

 

 ふわんだりぃずは除外か手札の二択だ。墓地に送らないのを優しいと言えばそうなのだろうが……ファニマとしては墓地も手札もリソースには違いない。

 一番悲惨なのは使いこなせないことでしょう?

 

「さて。私は『チェーン』が墓地に行った時の効果で『魔玩具融合』を手札に加える。さらに『ペンギン』が融合召喚に使用され墓地に送られたとき、2枚ドローして手札の1枚『ファーニマル・オクト』を墓地に送る」

 

「さて、一つ使わせた。次よ。手札から魔法『おろかな副葬』を発動。『トイポッド』を墓地に落とし、『トイポッド』の効果で『ファーニマル・ドルフィン』を手札に加える」

 

「そして召喚、効果発動! デッキから『ファーニマル・ウィング』を墓地に落とし『トイポッド』を裏側表示で復活! 表側表示に反転、そこから墓地の『ウィング』の効果発動! 自身を『オクト』と除外、さらに『トイポッド』を墓地に送る! これで2枚ドロー、さらに『ファーニマル・ペンギン』を手札に加える!」

 

 一手凌がれた。ならば、次の一手をこのターンに打つまでの話。ふわんだりぃずを一矢で破れるとは思っていない。

 

「手札の魔法『魔玩具融合』を発動! 墓地の『チェーン』と『ペンギン』を除外して融合召喚、現れなさい『デストーイ・クルーエル・ホエール』、守備表示! 効果発動、裏側表示の『クラーケン』と『ふわんだりぃず×えんぺん』を破壊! 【ロアー・オブ・ホエール】!」

「きゃあ! 『えんぺん』、あなたは墓地で待ってて。すぐにあなたを取り戻して上げるから」

 

 クジラが吠えて、ペンギンを爆殺。

 

「更に手札から永続魔法『デストーイ・ファクトリー』を発動、墓地の『魔玩具融合』を除外して融合を行う。場の『ドルフィン』と『ホエール』を融合、現れなさい『デストーイ・サーベル・タイガー』!」

「まだ来るの? これじゃ、『すのーる』まで……!」

 

「下僕を潰して、その化けの皮を剥がしてあげる。『タイガー』の効果で『デストーイ・クルーエル・ホエール』を蘇生! 【リターン・フロム・リンボ】! 『えんぺん』が消えた今、『すのーる』に成す術はない!」

 

「もう一つおまけをあげるわ。手札からペンデュラムモンスター『ファーニマル・エンジェル』をセッティング!」

「……ペンデュラム!? 融合じゃないの!」

 

「確かに私ではペンデュラム召喚は扱えなかった。けれど、この子を魔法カードとして扱うことはできる! 『エンジェル』の魔法効果を発動、墓地の『ファーニマル・ドルフィン』を蘇生! ただし、このターンはEXから融合モンスターしか特殊召喚できなくなるわね」

 

 並んだ3体のモンスター。制圧盤面を返すどころか、逆に戦意を挫かれかねないほどの圧倒的な布陣。

 

「バトルフェイズ! さあ、痛みを知るがいい! 『ホエール』で『すのーる』に攻撃。この瞬間効果発動、EXから『デストーイ・チェーン・シープ』を墓地へ送り攻撃力を1300アップする! 【マックスホエール】!」

 

◆『デストーイ・クルーエル・ホエール』 ATK:4700

 VS

◆『ふわんだりぃず×すのーる』 ATK:2900

 

〇 ふわりライフ 8500ー1600=7100

 

 空高く飛んだクジラがふくろうを押しつぶし、その衝撃がふわりを襲う!

 

「きゃあああああ!」

 

「そして『ドルフィン』と『タイガー』でダイレクトアタック! 【ツインダンス・アクアジェット】!」

 

◆『ファーニマル・ドルフィン』 ATK:1600

◆『デストーイ・サーベル・タイガー』 ATK:2800

 

〇 ふわりライフ 7100ー1600ー2800=2700

 

「うっ! あああああ!」

 

 タイガーはその刃にドルフィンが放った水流を纏わせ、斬った。彼女はたまらず吹き飛んでしまう。それだけの威力だ。

 

「窮地にこそ人の本質が現れる。さあ、あなたを見せて頂戴。ターンエンド」

 

場:◆『デストーイ・クルーエル・ホエール』 ATK:3000

   ◆『ファーニマル・ドルフィン』 ATK:1600

   ◆『デストーイ・サーベル・タイガー』 ATK:2800

 

 

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