悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

20 / 39
第20話 魂=プレイヤーのいない主人公

 

 

 ファニマの場には3体のモンスター。そしてふわりのライフは2700。遊戯王ではライフは飾りとは言えど、儀式のデュエルではそれだけのダメージを負ったと言うこと。

 倒れ伏したふわりは、それだけ満身創痍であるのだ。その意味は決して軽くない。

 

・2ターン

 

「う……まだ、負けていません。あなたと戦える機会なんて、多分二度とない。だから――最後までやり通すんです! 私のターン、ドロー」

 

 ふわりがよろよろと立ち上がる。その顔には笑みが浮かんでいる。ダメージは負った。だが、それ以上に楽しいデュエルはやめられない。

 

「私は『ろびーな』を通常召喚して効果発動、デッキから『すとりー』を手札に加えて更に通常召喚を行います。更に、この瞬間除外されている『とっかん』と『いぐるん』が自身の効果で手札に戻ってきます」

 

「『すとりー』を効果で通常召喚、墓地の『えんぺん』を除外してもう一度通常召喚。手札の『いぐるん』を召喚して効果発動! 効果でデッキから2枚目の『ふわんだりぃず×すのーる』を手札に加え、『ろびーな』と『いぐるん』をリリースしてアドバンス召喚します!」

 

「もう一度力を貸して、狩人さん『ふわんだりぃず×すのーる』!」

 

「除外されている『ろびーな』が手札に戻ります。私は――」

「この瞬間、手札の『エッジインプ・サイズ』の効果発動! 自身と『ファーニマル・ペンギン』で融合召喚! 現れろ海の悪魔! 『デストーイ・クルーエル・ホエール』! 守備表示よ。さらに『ペンギン』の効果で2枚引いて『エッジインプ・シザー』を捨てる」

 

「私のターンなのに!」

「ふわんだりぃずを使う癖に自分のターンしか展開出来ないの? 分かりかけて来たわ、あなたはただのお花畑。その頭の中には何も詰まっていない。『ホエール』の効果発動! 場の『ドルフィン』と『すのーる』を破壊する! 【ロアー・オブ・ホエール】!」

 

「え……そんな、『すのーる』が!」

「ふわんだりぃずの中でも『すのーる』だけは発動する効果。その効果は通さない。さあ、次はあなたのタクティクスを測ってあげる。もはや召喚権はなく、下級が一体。次のターンに攻撃するだけで私の勝ちね」

 

「うー。ううー。これで終わりなんて酷い。……ううん、私のお友達ならまだ諦めないはず。うん……手札の魔法『ふわんだりぃずと旅じたく』を再び発動します、『ふわんだりぃずと謎の地図』を手札に加えてライフを500回復」

 

〇 ふわりライフ 2700+500=3200

 

「……へえ。それなりには出来るようね」

「フィールド魔法『ふわんだりぃずと謎の地図』を発動、デッキから『ふわんだりぃずと未知の風』を除外して、手札の『とっかん』を通常召喚します。除外されている『えんぺん』を手札に加え、『すとりー』と『とっかん』をリリースしてアドバンス召喚!」

 

「もう一度、力を貸して海の皇帝『ふわんだりぃず・えんぺん』! そして除外されている『すとりー』は自身の効果で手札に戻り、『えんぺん』の効果でデッキから罠『ふわんだりぃずと夢の町』を手札に加えます!」

 

 ファニマがふぅんと感心したようなため息を吐いた。なるほど、主人公に相応しいだけの実力はある。ならば、足りないのは……

 

「『えんぺん』で1体目の『ホエール』に攻撃。【あくあだいぶ】!」

 

「この瞬間、『ホエール』の効果発動! 守備表示で召喚した2体目なら効果は通る。1体目の方の攻撃力を1300アップさせる! 【マックスホエール】!」

「『えんぺん』の効果、相手の攻撃力を半減させます。【はいどろぷれっしゃー】!」

 

◆『デストーイ・クルーエル・ホエール』 ATK:3000⇒4300⇒2150

 VS

◆『ふわんだりぃず×えんぺん』 ATK:2700

 

〇 ファニマライフ:8000ー550=7450

 

「……く! なるほど、この痛み。力だけは一級ね」

 

 『えんぺん』が翼を広げ、クジラに体当たりした。そして、その衝撃波でファニマの頬がわずかに裂けた。

 

「やった! やっとダメージを与えられました! 私はカードを2枚伏せてターンエンドです!」

 

場:『ふわんだりぃず×えんぺん』 RTK:2700

魔法+罠:『ふわんだりぃずと謎の地図』、セット2枚

 

・4ターン

 

「私のターン、ドロー」

 

 ドローしたカードを見、そして相手の場を見て一瞬考え込む。フィールド魔法、そして1枚は先ほど加えたカード。もう一枚が謎だが……分かっている2枚は役割をかぶっている。

 

「『夢の町』そして『謎の地図』がある限り、私のターンでの展開は止められないわね。私は『ファーニマル・ドッグ』を召喚して『ファーニマル・ペンギン』を手札に加える。さあ、どうぞ」

 

 ファニマが嘲笑混じりにひらひらと手を振るが、ふわりは何も気付かずに「はい!」と元気良く返事をする。

 

「相手が通常召喚に成功した時に『ふわんだりぃずと謎の地図』の効果を発動します! 手札の『すとりー』を通常召喚、効果で墓地の『すのーる』を除外。この瞬間、除外されている『いぐるん』、『ろびーな』、『とっかん』は手札に戻ります」

 

「効果で『ろびーな』を召喚、2体目の『とっかん』を手札に加えます。さらに『いぐるん』を通常召喚、このカードを手札に加えます。『ろびーな』と『とっかん』をリリースしてアドバンス召喚! 現れて、『ストーム・シューター』!」

「……『ストーム・シューター』? さして見どころのないカードだったはずね。あなたが作れるとも思えないし、王子様からの貰い物かしら? 見る目のない男だものね」

 

「うん、エクス君からの贈り物だよ。知ってたの?」

「――チ」

 

 彼女に他意など欠片もないものだから、ファニマは思わず舌打ちする。彼女には悪意と言うものが一切ない。

 だから、こんなふざけたことになるのだ。陰口が効かないのもむしろ当然、彼女にとっては異次元の論理だろう。日本語が分かっても、意味が理解できない。

 

「えっと……除外されていた『とっかん』は自身の効果で手札に戻ります」

 

「ふん、展開は終わりね。それで終わりならば、『ふわんだりぃず』など取るに足りないわね」

「むー。私のお友達はとっても強いんですよ! いくらヴェルテ様でも悪く言っちゃメ、です!」

 

「……くだらない。墓地の『エッジインプ・シザー』の効果発動! 手札をデッキトップにもどして自身を蘇生! さらに墓地の『融合』を除外して『デストーイ・ファクトリー』の効果発動! 場の『シザー』、『ドッグ』、さらに手札の『ペンギン』で融合召喚!」

 

「獲物を引き裂き、その牙で地上に這い出た魚類どもを殲滅せよ! 『デストーイ・シザー・タイガー』! 2枚のセットカードと『えんぺん』を破壊!」

「……なら、罠カード『メテオ・プロミネンス』の効果発動! 手札の『とっかん』と『神の恵み』を捨てて、相手に2000のダメージを与えます!」

 

「バーンカード!? そんなものをためらいもなく……きゃあ!」

「やりました! まだ楽しいデュエルは終わってませんよ」

 

 ふわりは天真爛漫に笑う。バーンを扱うものにありがちなサディスティックさは何もない。おそらく、相性がいいからと”貰ったから入れた”だけなのだろう。

 そして、一泡吹かせたと言うわけだ。

 

〇 ファニマライフ:7450ー2000=5450

 

 燃やされたファニマは煤を払う。彼女の本質、大体掴めた。彼女は、どうしようもない。どうしようもなく……下らない。

 

「私は墓地に送られた『ペンギン』の効果で2枚ドロー、手札から『おろかな副葬』を捨てるわね。そして、このデュエルはもう終わりよ」

「切り札が来るんですか!? 楽しみです!」

 

「その減らず口、後悔させてあげ……いえ。あなたはしないわね、そんなもの。羨ましい能天気。ならば、見せてあげる! 私の切り札! どこへ向けていいのかも分からない恨み!」

 

「私は手札から魔法『魔玩具融合』を発動。墓地の『シザー』、『ドッグ』、『ペンギン』を除外融合。現れなさい、まつろわぬ憎しみの集積。悲しみの呪い人形よ! 全てを憎め、『デストーイ・ナイトメアリー』!」

 

「リニッチの効果で除外された『ウィング』を墓地へ戻す。さらに『ホエール』の効果でEXから『デストーイ・デアデビル』を墓地に落とし、『ナイトメアリー』の攻撃力を1000アップ」

 

「――そして『ナイトメアリー』は私の墓地の天使・悪魔族の数の300倍、その攻撃力をアップする! 【ゴースト・コーリング】! さあ、この一撃で幕引きにしましょう」

「『ナイトメアリー』……これが、ヴェルテ様の切り札……! かわいい……!」

 

「あなたの減らず口を聞くのも終わり。『ナイトメアリー』で『ストーム・シューター』に攻撃【ナイトメア・ポゼッション】!」

 

 『サーベルタイガー』、『シザータイガー』、『ホエール』の3体が喝采を叫ぶ。その3体までも攻撃に加わらないのはせめてもの情けか。

 

◆『デストーイ・ナイトメアリー』 ATK:7300

 VS

◆『ストーム・シューター』 ATK:2300

 

 ナイトメアリーの瘴気がストーム・シューターを破壊し、ふわりを侵す!

 

「きゃあああああ!」

 

〇 ふわりライフ:2700ー5000=0

 

「あら……負けちゃいました。やっぱり、お強いんですね。ヴェルテ様」

 

 痛いだろうにへたりこんだまま微笑みかけるふわり。やはりか、と思う。

 

「中身のない薄っぺら。その頭の中はお花畑ね。空想を詰め込むのが好きな夢見がちな男子向け。主人公にプレイヤーという中身がなくなれば、誰も彼もを誘う毒婦となったか」

 

 

 ファニマは歯に衣着せず何も隠さず言い放っている。だが、言われるふわりはほほ笑んでいるだけだ。何を言われているのかすら分かっていない。

 

「……何より、この私ですらあなたのことが嫌いになれないのがおぞましい」

「えっと、お友達になってくれますよね? 一度デュエルしたらお友達、です!」

 

「じゃあね、ふわり。気が向いたらまた相手してあげなくもないわ」

「はいっ!」

 

 大輪のような笑顔を見せる彼女に背を向けて、サロンへ帰った。

 

 

 

 






追記
ふわりは血も涙もないサイコパスだと思っている方がいらっしゃると思いますが、彼女は図抜けた洞察力を持っているので、例えば通夜なら誰より悲しんでいたという評判を勝ち取ることが可能です。(実際には死の概念すら理解していませんが……)
彼女がバグるのはマイナスの感情を自分に向けられた時だけです。それ以外では誰よりも人格者とみられる行動と表情を作っています。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。