悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第21話 アイドル登場

 

 

 次の日。ファニマがサロンに向かっていると騒ぎに出くわした。いぶかしげにその騒ぎを見やる。

 お嬢様は無軌道なお祭り騒ぎが嫌いだと知っているメイは、戦々恐々とする他ない。

 

「……何かしら」

「知らないんですか? アイドルがやってくるって皆さん噂してましたよ」

 

 もっとも、それで遠慮するようなメイではないけども。

 アイドルという単語を聞いてファニマは眉を顰めた。

 

「ライブ? 校長もよくやるものね。教員の誰かが熱心なファンかと思いきや、まさか自ら特等席に座るなんて」

「ライブしているのはアニー・フロストさんですね。私は詳しくありませんけど、大人気みたいです」

 

「ヴェルテ様ですか? こちらへどうぞ」

 

 気のない話をしていると、めざとく見つけたスタッフが話しかけてきた。そして裏口に通された。先客が見える、そこに居たのは校長だった。

 

「……おや、ヴェルテ嬢。あなたもアニーちゃんのファンでしたかな?」

「違うわ。ただ、少し興味が湧いただけ」

 

 近くの席に腰を下ろす。一言で言えば権力と言うやつだ。ファニマはメディアへ露出していないが、知っている者は知っている。

 学園で催し物をするなら最低限調べるべきことの範囲だ。学園長の許可がなければ開催できないが、ヴェルテの機嫌を損ねればこの国で仕事ができなくなる。

 

「ふむ……」

 

 中々悪くない――のだが、隣で年も考えずに夢中にハシャいでいる学園長を見ると萎えてくる。

 

 そして、一曲聞き終わった。

 

「いやあ、良かったですな」

「まあ、途中で席を立つほどではなかったわね。……うん、あれはスカーレッド・エルピィ?」

 

 いぶかしげな声を出した。

 

「おお、我慢できずに握手しようということですかな? アニーちゃんは可愛いですからね。ですが、エルピィ君も子供ではないのだからもう少し落ち着きを持ってもらわねば」

「そう言うことではないと思うわ」

 

 人波を割って威風堂々と歩いていく彼は不敵な笑みを浮かべていた。あの顔を見てファンだと思うやつはいないだろう。

 

「その歌、そのダンス――素晴らしいものだったと褒めてやろう! だが、この世にキングはただ一人、この俺だ! 俺以上に目立つことなど許されん!」

「へえ、飛び入り参加か。いいよ! アニーちゃんは歌って踊れて、そしてデュエルも出来るアイドルだ! 挑戦はいつでも受けて立ァつ!」

 

「ほざけ! このキングと戦う者は誰であれ挑戦者だと知るがいい!」

「あは! 自信満々な我様だ。観客を萎えさせるようなつまらないデュエルは勘弁だよ? 上げて行こう!」

 

「もちろんだ! キングのデュエルは如何なる時でもエンターテインメント! 全ての力を用いて、このキングに挑むが良い!」

「じゃあ、行くよ。ライブデュエル、スタート!」

 

「「……デュエル!」」

 

 互いにデュエルディスクを構えた。どことなくコミカルな雰囲気だが。

 

「面白いわね。スカーレッドは強いわよ」

「なんの、アニーちゃんが負けるはずはありません」

 

 ファニマは学園長と視線を交わした。本番はこれからだ。見ごたえのあるデュエル

となるだろう。

 

・1ターン

 

「キングの先攻!」

 

 コートをたなびかせ、叫んだ。ファニマにはスカーレッドでも敵わなかった……が、本気を出させた男として学園では勇名をはせている。

 あの奇矯な言動が許されるほどの実力は持っているのだ。少なくとも、教師まで含めても5本指に入ることは間違いない。

 

「俺は手札から魔法『緊急テレポート』を発動! デッキから『サイキック・リフレクター』を特殊召喚! そして特殊召喚時の効果を発動、デッキから『バスター・ビースト』を手札に加える」

 

「手札の『バスター・ビースト』は墓地に捨てることで、デッキの罠カード『バスター・モード』を手札に加えることができる。そして場の『サイキック・リフレクター』の効果! 手札の『バスター・モード』を見せることで、墓地の『バスター・ビースト』を特殊召喚。さらにレベルを3上げる、これでレベルは7!」

 

 キングの背後に気炎が燃え上がった。ファニマの時とはまた違うシンクロコンボ。また、簡単にシンクロが来る。

 

「レベル7となった『ビースト』にレベル1『リフレクター』をチューニング。我が魂の炎よ、今こそ竜の姿となり敵を燃やし尽くさん! シンクロレベル8『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」

 

 赤い炎を纏ったドラゴンが、吠えた。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

場:『レッド・デーモンズ・ドラゴン』 ATK:3000

魔法+罠:セット2枚

 

・2ターン

 

 アニーは額に汗を浮かべ、そのドラゴンを見る。

 

「ふふん。1ターン目で攻撃力3000のモンスターを出すなんてね、期待以上だよ。さすがは音に聞こえた学園、その中でも強い男の子だ。そして、その2枚の伏せカードも油断できないね。相手にとって不足はないよ! アニーちゃんのターン、ドロー!」

 

 よくやってくれたと言わんばかりの笑み。相手は強力であれば強力なほど燃える。そして、観客が湧くのだ。

 なぜなら、強力なモンスターをアイドルが倒すシーンはいつだって痛快だから。

 

「アニーちゃんは手札から『Live☆Twin リィラ』を通常召喚、そして効果発動! デッキから『キスキル』モンスターを特殊召喚できる! ツインライブの開催だ!」

 

 青色の髪の子がサメの人形に隠し持ったマイクを取ろうとして。

 

「俺は伏せていた『無限泡影』の効果を発動、『Live☆Twin リィラ』の効果を無効にする! その路上ライブ、キングの許可は出ていないと知るがいい!」

 

 竜の咆哮に驚いて、その子はマイクを取り落とした。そのマイクは泡にさらわれて消えてしまう。

 

「ありゃりゃ、ライブ失敗か。でも、アイドルはめげない! 何度だって立ち上がるのさ! アニーちゃんは手札から永続魔法『Live☆Twin トラブルサン』を発動! このカードは発動時に『ライブツイン』モンスターを手札に加えることができるよ」

 

「デッキから『Live☆Twin キスキル・フロスト』を手札に! そして『フロスト』は場に「リィラ」モンスターがいるとき、手札から特殊召喚できる! アイドルは失敗を指折り数えない! 行くよ、今度こそファーストライブ開催だ!」

 

 トラップで防いだのも元の木阿弥、この通りフィールドに2体のモンスターを揃えられてしまった。

 

「さあ、『リィラ』と『フロスト』でリンク召喚! その歌声でオーディエンスの心をわしづかみ! リンク2『Evil★Twin キスキル』!」

 

「『キスキル』の効果で墓地の『Live☆Twin リィラ』を蘇生。さらに墓地の光属性モンスター『フロスト』を除外することで、手札から『暗黒竜コラプサーペント』を特殊召喚!」

 

 前のターン以上の怒涛の特殊召喚、恐ろしい効果を持つモンスターが来る。

 

「『リィラ』と『サーペント』でリンク召喚、そのダンスでオーディエンスの目を釘付け! リンク2『Evil★Twin リィラ』! 『キスキル』モンスターが居る時に特殊召喚に成功した場合にカードを1枚破壊できる。『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を破壊! 【エビルシャウト】!」

 

 悪魔の羽根を生やした美少女がマイクを持ち、シャウトした。それは竜をも破壊する共振波。どこにも逃げ場はない。

 

「――させん! 俺は罠カード『バスター・モード』を発動! 『レッド・デーモンズ・ドラゴン』をリリースし、デッキから『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』を特殊召喚!」

 

 そのシャウトを竜の雄たけびがはじき返す。紅のアーマーを付けたその姿は、まさに悪魔竜と呼ぶに相応しい威厳である。

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』 ATK:3500

 

「バスターモードと化した『レッドデーモンズ』は、攻撃後にフィールドの自身以外の全てのカードを破壊する! さらに、このカードが破壊されたとき、墓地のレッドデーモンズを蘇生できるのだ!」

「へえ。まさか、アニーちゃんのシャウトをかわすどころか進化しちゃうなんて。でも、出演料は払ってもらうよ。永続魔法『トラブルサン』の効果で貴方は200のダメージ、そしてアニーちゃんはその分回復!」

 

「それだけじゃない。墓地の『サーペント』の効果を発動。デッキから『輝白竜ワイバースター』を手札に加える。ふふ、ライブ見たさに皆集まってきちゃったわ」

 

「――そして次は白銀の輝きを見せてあげる。墓地の『サーペント』を除外して、手札の『輝白竜ワイバースター』を特殊召喚するよ! 『ワイバースター』とリンク2『Evil★Twin リィラ』でリンク召喚! その輝ける羽で乙女を夢の舞台へ連れて行って! リンク3『トロイメア・ユニコーン』!」 

 

「ユニコーンの効果発動! 手札を1枚墓地に送り、『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』をデッキに戻す! 【ホーリー・スクリーム】!」

「なにィ……! これでは破壊されたときの効果が使えん……!」

 

 ユニコーンがいななくと、悪魔竜はその神聖なオーラを喰らって力を失う。溶けるように消えていった。

 

「さらに、『ユニコーン』が相互リンク状態の時デッキから1枚カードをドローできるよ。それと『ワイバースター』の効果で新たな『暗黒竜コラプサーペント』を手札に加える。さあ、これからが本気のライブ! 武道館ライブの開催!」

 

 相互リンク。リンクモンスターというものはそのリンク分の矢印を持っていて、EXゾーンか矢印の先にしかリンク召喚できない特徴がある。

 だが、互いに矢印が向く特殊な状態がある。それを相互リンクと呼ぶ。本来、意味は何もないが……相互リンクを特殊効果のトリガーとするモンスターが居る。

 

「リンク3『トロイメア・ユニコーン』と『Evil★Twin キスキル』でリンク召喚。太陽の様に輝く最高のアイドル! 皆のイイネを独り占め! リンク4『Evil★Twin's トラブル・サニー』!」

 

 そして、アイドルが降り立った。

 

「『トラブルサニー』でダイレクトアタック! 【エビルシャイン・ソング】!」

 

◆『Evil★Twin's トラブル・サニー』 ATK:3300

 

〇 スカーレッドライフ:8000ー3300=4700

 

 二人の歌がキングを打ち据える!

 

「ぬ……ぐおおおお!」

 

 吹き飛ばされた。……が、どこか嬉しそうだ。

 

場:『Evil★Twin's トラブル・サニー』 ATK:3300

魔法+罠:『Live☆Twin トラブルサン』

 

・2ターン

 

 すっくと起き上がってカードを引く。

 

「キングのターン、ドロー! っふ。アイドルなど軟弱と思っていたが、どうやら芯のある相手らしい!」

 

 感心の声を漏らした。相手にとっては不足なしと、不敵な笑みを浮かべている。

 

「なるほど。女子ながらすさまじいパワーだ。まさか、バスター化した『レッドデーモンズ』が、こともなげにやられてしまうとは。……だが、ここからはキングのターン! 貴様のライブは見せて貰った! 次はキングのエンターテインメントを見せよう!」

 

「俺は手札からチューナーモンスター『レッド・リゾネーター』を通常召喚し、効果発動。手札の『レッド・スプリンター』を特殊召喚!」

「シンクロ召喚に繋げる気だね? でも、これはアイドルの舞台! アイドルに手を出す怖いドラゴンさんは、お帰り願っちゃうよ!」

 

「『Evil☆Twin’s トラブル・サニー』の効果発動、自身をリリースして墓地の『イビルツイン』モンスターを2体特殊召喚、【突撃コーリング】。さあ、再びのオンステージだよ『Evil☆Twin キスキル』! 『Evil☆Twin リィラ』!」

 

「二人は同時に特殊召喚されたことで、どちらも効果は使える。『キスキル』の効果で1ドロー、さらに『リィラ』の効果で1枚カードを破壊できる。アニーちゃんは……そうだね。レベルの高い『レッド・スプリンター』の方を破壊するよ!」

 

 リィラがシャウトすると炎の馬が砕け散った。

 

「……ぬぅ。『レッド・スプリンター』がやられたか」

「シンクロは当然、チューナーと非チューナーが必要! でも、もうあなたは通常召喚権を使ってしまっている! あなたの場はチューナーだけよ」

 

「だが、この程度で止まる俺ではないわ! 手札の『使神官ーアスカトル』の効果発動、手札の『シンクローン・リゾネーター』を捨てて特殊召喚! さらにデッキから『赤蟻アスカトル』を特殊召喚だ!」

 

 『シンクローン』はファニマとのデュエルで見せたモンスター。破壊されていなければ、あの恐るべき無効効果を持つ【アビス】まで繋がっていた。

 だが、キングのデュエルは一つ妨害されたくらいで終わるものではない。

 

「モンスターと、チューナーが2体……?」

「そうだ、キングのデュエルは常識を超越する! 見せてやろう、2体のチューナーを使うシンクロを!」

 

「俺はレベル5『使神官』にレベル2『シンクローン』とレベル3『アスカトル』をダブルチューニング、王者の燎火(りょうか)が天地を焦がす! 悪魔が天地を踏み(なら)す! 今こそ見果てぬ荒野に君臨せよ、絶対王者! シンクロレベル10『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』!」

「――でも、王様だろうか入場料は絶対だよ。計800ポイントのライフは支払ってもらう!」

 

「ふん。タイラントを召喚できた今、800のライフごときどうでもよいわ! 『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』の効果発動! このカード以外のフィールドの全てを破壊する! 【タイラント・メテオ・エクスプロージョン】!」

「く。アニーちゃんのライブ会場が粉々に……!」

 

 文字通りにフィールドは焼け野原。全てが砕け散り、残り火がそこかしこで燃えている。その荒野の中で一人立つ暴君。

 

「『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』でダイレクトアタック! 【森羅爆砕撃】!」

 

◆『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』 ATK:3500

 

〇 アニーライフ:9200ー3500=5700

 

 炎纏う拳がアイドルを殴り抜く!

 

「う……きゃあああああ!」

 

・4ターン

 

 ボロボロになったアイドル衣装で毅然と前を向くアニー。通常のデュエルだからソリッドビジョンに過ぎないが、女の子としては受け入れがたい。だが、それはデュエリストとして立派な姿だ。

 

「アニーちゃんのターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見てニヤリと笑う。

 

「『タイラント』……凄い効果だね。でも、このスリリングで楽しいライブもそろそろお終い。そのモンスターさえ倒してしまえばあなたの手札は0、後はない。行くよ!」

 

 このターンでけりを付ける気だ。タイラントの攻撃で悲鳴を上げ、悲壮感ただよっていた観客が……突然湧いた。

 

「アニーちゃんは『Live☆Twin キスキル』を通常召喚! 効果でデッキから『Live☆Twin リィラ・トリート』を呼ぶ!」

 

「『キスキル』と『リィラ』の2体でリンク召喚、リンク2『Evil★Twin キスキル』! そして効果で墓地の『Evil★Twin リィラ』を蘇生! 『キスキル』モンスターが居る時に特殊召喚した場合、フィールドのカード1枚を破壊できる!」

 

「アニーちゃんは『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』を破壊! 閉幕ライブの祝砲を上げよう、【エビルシャウト】!」

「なんだと……! そんな簡単に……我が『タイラント』が!」

 

 全てを破壊する力を持つ究極の悪魔竜。だが、その力はあまりにも強大なために弱点がある。効果での除去が通じてしまうのだ。ファニマを苦しめた『スカーレッドレイン』があれば話は違ったのだが、彼の手札は0枚だ。

 

「2体のモンスターでリンク召喚、最高のアイドルはいつでも全力! 皆に笑顔を! リンク4『Evil★Twin's トラブル・サニー』!」

 

「ダイレクトアタック! 【エビルシャイン・ソング】!」

 

◆『Evil★Twin's トラブル・サニー』 ATK:3300

 

〇 スカーレッドライフ:3500ー3300=200

 

「ぬ……ぐおお! だが、俺のライフは尽きていない! キングはどんな時でも己のデッキを信じて戦う!」

「駄目だよ、閉幕ライブだって言ったでしょう! 『トラブル・サニー』、効果発動! 自身をリリースして墓地の『イビルツイン』モンスターを2体特殊召喚、【転換コーリング】。さあ、アンコールに応えてあげて、『Evil★Twin キスキル』! 『Evil★Twin リィラ』!」

 

 トラブルサニーが手を振り、姿を消すとキスキルとリィラが歓声に応えて同時にウィンクを返した。

 

「『キスキル』でダイレクトアタック、【ファントム・ソング】!」

「馬鹿な……このキングが破れるだと……!」

 

◆『Evil★Twin キスキル』 ATK:1100

 

〇 スカーレッドライフ:200ー1100=0

 

 キングが崩れ落ちた。ズタボロの姿は、そう……まさに元キング。

 

 そこに彼女が走り寄る。そこでソリッドビジョンは消えて、互いに奇麗な姿となった。

 

「ナイスファイト!」

「ふ……こういうのも悪くない」

 

 わずかに顔を紅潮させて、握り返した。

 

 

 





 ちなみにアニーちゃんと言う一人称は名前を覚えてもらう企業努力の一つという裏設定があります。


 また、前回にふわりの人格について追記しました。よろしければ見て行ってください。
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