悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第26話 ファニマとオノマ

 

 

 サロンから出たファニマは一直線にある場所を目指す。瘴気と言うものは酷く”臭う”。そもそも奴らは人間を襲うことが存在意義みたいな魔物だ。ゆえに目で見て探すまでもなく、近くに居たらその邪悪な存在感で分かる。ゆえにわき目もふらず一直線に走る。

 

「……お嬢様。あの、メイも別に動いた方がいいんじゃ」

「だめよ、メイは私と一緒に居るの。あなたも強くなったけれど、万が一ということがあるものね」

 

「それはお嬢様だって同じです。お嬢様の身を危険に晒すくらいなら、メイが」

「メイは居てくれるだけで役に立ってるわ。だから、今は私についてきてね」

 

「お嬢様……!」

「しかし、瞬く間に酷い状況ね。四方八方から悲鳴が聞こえてくる。ここまでの侵攻速度、敵は侮れないわ」

 

 話は終わりだとばかりに周りを見渡す。聞こえるのは悲鳴と怒号。助けを求める声がそこら中に。

 そして、一際大きい悲鳴が間近から聞こえた。

 

「――行くわ」

「あ! お嬢様!」

 

 デュエルディスクを展開し、走り出した。

 

「ォォオオオ!」

 

 不気味な声を上げながら迫ってくるのは水魔。一言で言えば水死体のように見える不快な臭いを発する人型のそれが、生徒たちに手を伸ばしていた。

 男の子達が女の子をかばってモップを手に撃退しようとしているが、いかんせんその身体は恐怖に震えていた。

 

「ただのくだらない落とし仔が。私の学園に手を出すんじゃない……!」

 

 シャ、と投げたハサミがその腕を地面に縫い付ける。

 

「オオオ?」

 

 そいつが首らしき部分を傾げた瞬間。

 

「――ふ!」

 

 一瞬で距離を詰め、顔に蹴りを入れて吹き飛ばした。

 

「ヴェルテ! あんたも無事だったのか!」

 

 嬉しそうな声の主は。

 

「オノマね。あなた、無事だったの。良かったわ。そっちの子は女の子を避難所に連れて行きなさい。オノマには、この後で少し手伝ってもらおうかしら」

 

 いつか見たずっこけ3人組+女の子だ。女の子の方はどうやら気絶している。魔の森で死にかけた一件がトラウマになっているのだろう、無理もない。

 

「分かったぜ」

「ええと。じゃ、俺はチアを背負ってお先に」

 

「じゃ、俺も」

「いや、ハンドは残ってくれよ。何か俺たちの力が必要なことがあんだろ」

 

「でもよ、オノマ。ヴェルテ様は怖いって……」

「何も怖くねえよ。それに、俺たちに出来ることがあるならやんなきゃ。強くなくても、できることはあるんだから」

 

 そんな男の子三人組+女の子(気絶中)の話を聞いて、ファニマは眩しそうな目をして。切り替えて、敵に冷たい視線を投げる。

 

「……さあ、デュエルよ。あなたの魂ごと消し飛ばしてあげる!」

「デュエル!」

 

 笑みを消して、落とし仔に殺意を向けた。

 

・1ターン

 

 落とし仔は、その腐ったような手でカードを繰る。

 

「我は手札から『海皇子ネプトアビス』を召喚、効果でデッキの『海皇の竜騎隊』を墓地に送り、もう1枚を手札に加える! さらに墓地に落ちた『海皇の竜騎隊』の効果発動、『水精鱗ーメガロアビス』を手札に加える!」

 

 流々とカードを操る。海皇水精鱗、容易に1キルできる往年の最強デッキの一つだった。その展開力は凄まじいの一言、これは序盤ですらない。

 

「手札の『水精鱗ーディニクアビス』の効果発動! 手札に加えた『海皇の竜騎隊』を墓地に送ることで特殊召喚! 墓地に送られた『竜騎隊』、そして特殊召喚に成功した『ディニクアビス』の効果発動! デッキからもう1枚の『メガロアビス』、そして『水精鱗ーアビスグンデ』を手札に加える!」

 

「手札の『水精鱗ーメガロアビス』の効果発動! 手札の2枚の水属性モンスターを墓地に送り、特殊召喚できる! もう一枚の『メガロアビス』と『アビスグンデ』を墓地に送り特殊召喚! 特殊召喚に成功した『メガロアビス』はデッキから装備魔法『アビスケイルーミヅチ』を手札に加える!」

 

 この超高速召喚が海皇水精鱗の持ち味。さらに1ターン目だから使わないが、コストにすると表・裏表示のカードを破壊できるカードもある。

 相手の場を荒らしつつ展開するのがこのデッキだ。

 

「さらに墓地に送られた『アビスグンデ』の効果で、墓地に落ちたもう1枚の『メガロアビス』を蘇生!」

 

「『メガロアビス』はフィールドの水属性モンスターをリリースすることで2回攻撃ができるモンスターだ。2体合わせて攻撃力2400の4回攻撃だが、1ターン目ゆえに攻撃できない」

 

 敵の動きが一瞬止まる。相手に止めを刺すだけならばこの展開で構わないが、あいにくと2ターン目を相手に渡す必要がある。

 

「よって、レベル7『メガロアビス』と『ディニクアビス』でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 海の王者よ、今こそその王冠の元に人間どもの手から地上を奪い返せ! 現れよ、ランク7『水精鱗ーガイオアビス』!」

 

「このカードがある限り、レベル5以上のモンスターは攻撃できず、さらにエクシーズユニットを一つ取り除くことで、このカードの攻撃力以下のモンスター効果を無効にできる!」

 

 無効化効果を持つモンスター。それが居ると実に厄介である。

 

「『ガイオアビス』に装備魔法『アビスケイルーミヅチ』を装備! 『ミヅチ』ある限り、魔法カードが発動した場合にそのカードを無効にして自身を墓地に送る。さらにカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

場:『ガイオアビス』 ATK:3600 

 『海皇子ネプトアビス』 ATK:800

 『メガロアビス』 ATK:2400

魔法+罠:『ミヅチ』、セット1枚

 

・2ターン

 

 魔法無効化とモンスター効果無効化。これは実に厄介である。だが、ファニマはその程度かと不敵に笑う。

 

「私のターン、ドロー。強固な盤面を築いたと思っているのでしょうけど、私の眼から見れば穴だらけね」

「なんだと? 我の『ガイオアビス』と『ミヅチ』を攻略できる気になっているのか? 神の加護もない人間ごときが、不敬と覚えよ」

 

「神の加護など要らない。力なら持っている! 手札から魔法『融合』を発動、そして無効となる!」

「ふん……融合使いか。だが、無効化されてしまってはどうしようもあるまい」

 

「馬鹿め、これで『ミヅチ』が消えたわ。融合使いにとって、一枚の『融合』などものの数じゃないことを教えてあげる」

「なんだと……? 融合使いが『融合』を失って何ができる」

 

「融合は考えなしにすればいいものではない。タクティクスというものが必要なのよ。ちなみにこれが通ってしまうと、私はこのターンに1回しか融合できなくなってしまったのだけれど。……おあいにく、『ミヅチ』は強制効果ね」

「――全て計算づくというわけか? ならば」

 

「ええ、全ては想定内よ! これで私は自由に魔法を使える! 手札から『おろかな副葬』を発動! デッキから永続魔法『トイポッド』を墓地に落とし、『ファーニマル・ドッグ』を手札に加える! さらに『魔玩具補修』を発動、デッキから『融合』と『エッジインプ・シザー』を手札に加える!」

「馬鹿な、『融合』の2枚目を……そう易々と……」

 

「たった1枚を無効にしたところで、私の展開を止められるわけがないでしょう? そもそも、無効にするタイミングを敵が選べるカードに随分と信頼を寄せたものね。私は2枚目の『融合』を発動!」

 

「手札の『ファーニマル・ペンギン』と『エッジインプ・チェーン』で融合召喚、現れよ海の王者『デストーイ・クルーエル・ホエール』! 効果発動、自分と相手のカードを1枚づつ破壊する! 【ロアー・オブ・ホエール】!」

「だがそいつの攻撃力はたかが2600! 『ガイオアビス』の効果発動、ユニットを一つ使い、相手の場の攻撃力2800以下のモンスターの効果を無効にする! 【アビス・ジャッジメント】!」

 

「ならば、『ホエール』のもう一つの効果発動! EXデッキから『デストーイ・チェーン・シープ』を墓地に送り、攻撃力を3600にアップする! 【マックスホエール】! これで『ガイオアビス』の効果範囲から逃れた!」

「おのれ……破壊効果の発動を許してしまったか。何を破壊する?」

 

「『ガイオアビス』が居る限り、私の融合モンスターは攻撃できない。そのカードから破壊する! 『ホエール』は自身と『ガイオアビス』を破壊!」

「ぬぅ……我が『ガイオアビス』が、なすすべもなく……!」

 

 ファニマがくすくすと笑う。相手の行動を強力に制限するカード、しかしファニマは全てにおいて上回っている。魔法無効化の『ミヅチ』、モンスター効果無効化の『ガイオアビス』。もう墓地に行った。

 

「さらに墓地に送られた『ペンギン』と『チェーン』の効果発動! デッキから2枚ドロー、さらに『魔玩具融合』を手札にくわえ、『ファーニマル・ライオ』を捨てる!」

 

「それと、そのセットカードは怪しいわね。何かされる前に破壊してしまおうかしら。私は先ほどのドローでこのカードを引いていた! 手札から魔法『ハーピィの羽根帚』を発動! そのセットカードを破壊!」

「ならば、破壊される前に永続罠『アビスフィアー』を発動、デッキから水精鱗モンスター『水精鱗ーアビスリンデ』を特殊召喚!」

 

「『アビスフィアー』、デッキから特殊召喚する効果か! けれど、特殊召喚系の永続罠は破壊されたら大抵がモンスターも道ずれよ!」

「その通り。永続罠『アビスフィアー』が破壊されたことで『アビスリンデ』は破壊される。だが、このカードが破壊されたとき、デッキから『水精鱗ーアビスディーネ』を特殊召喚! さらに『アビスディーネ』の効果により『アビスリンデ』を蘇生! どちらも守備表示だ」

 

 罠カードを破壊したと思ったら壁が2枚増えていた。これも海皇水精鱗の強さの一つ。罠を破壊してもこれだ。

 

「けれど、『アビスディーネ』の効果は1ターンに1度。もう復活はない。その壁ごと打ち砕いてあげる! 私は『ファーニマル・ドッグ』を召喚、その効果で『ファーニマル・ウィング』を手札に加える!」

 

「そして手札から永続魔法『デストーイ・ファクトリー』を発動! 墓地の『融合』を除外し融合召喚を行う。場の『ドッグ』、そして手札の『ウィング』並びに『シザー』で融合! 現れよ、森の支配者。獰猛なる狩人よ『デストーイ・シザー・タイガー』!」

 

「『シザー・タイガー』は融合素材の数、3枚のカードを破壊できる! 目障りなカードを破壊してしまえ! 【シザース・デストラクション】!」

 

 選択されたのは『メガロアビス』、『ネプトアビス』、『アビスリンデ』。3つのハサミを射出、破壊した。

 

「馬鹿な……我がモンスター達が……」

「そしてこれが貴様に引導を渡すカード、手札から魔法『魔玩具融合』を発動! 墓地の『エッジインプ・シザー』と5体の『ファーニマル』で融合召喚! 現れなさい、そして我が敵を八つ裂きにしてしまえ、その飢餓を血で満たすがいい我が狼よ! 『デストーイ・シザー・ウルフ』!」

 

「『シザー・ウルフ』は6回攻撃ができ、さらに『シザー・タイガー』の効果により攻撃力が600ポイントアップする!」

 

「4体も居たモンスター達が……今や弱小モンスター一匹となりおおせたか。やはり、貴様は注意するべき存在……」

「まずは『アビスディーネ』に攻撃! 【シザーダンス】第一打ァ!」

 

◆『デストーイ・シザー・ウルフ』 ATK:2600

 VS

◆『アビスディーネ』 DEF:200

 

「ぬぅ……!」

 

 爆風が敵を揺らす。

 

「そして、5回のダイレクトアタックを受けろ! 【シザーダンス】五連打ァ!」

「ああ、人間の味を思い出したかっ……!」

 

◆『デストーイ・シザー・ウルフ』 ATK:2600

 

〇 ライフ 8000ー2600ー2600ー2600ー2600ー2600=0

 

 文字通りに八つ裂きにされた水魔はゴミクズのように散らばり、そして影のように消えていく。

 

「さて、一匹目の駆除を完了。どれだけ入り込んでいるのかは分からないけれど、私たちが全て駆除するのよ」

 

 メイがファニマに駆け寄り、ペットボトルを渡す。あなたにしては珍しく用意がいいのね、と言ってそれを飲む。

 一口飲んでメイに返して、オノマ達に向き直る。

 

「奴らは私が相手する。あなたたちは怪我した人が居たら運んでほしいのよ。駆除係がそこまでやると非効率だから」

「……ああ、分かった。俺とハンドに出来る事ならなんでも言ってくれ!」

「オノマァ!? ああ、ちくしょーが! お前と居るといつもそうなるんだ。分かったよ、俺も一緒に地獄に突っ込んでやらあ!」

 

「ふふ、元気がいいのね。じゃあ、宜しく頼むわ」

 

 生徒たちを襲う落とし仔たちはまだまだ居る。ファニマは増えた仲間を伴って歩き出した。

 

 

 






オノマ君は一発キャラの予定でしたが、いいキャラしてるのでちょくちょく出てもらうことにします。
ファニマはホームルームには出るので、少し話すくらいの仲になっています。

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