悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第27話 キングの喝破

 

 

 そして、走り出したアニーはその場面に出くわす。

 

「――『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』のダイレクトアタック! 人に仇なす魔物め、魂ごと滅せよ【天地創造撃】!」

 

 スカーレッドが魔物を粉砕する一幕。彼の後ろには逃げ遅れた生徒達が居る。彼らを守っているのだ。……が、あまりにも多勢に無勢。

 彼一人では守り切れない。腐った死体のような腐臭のするその手が伸ばされ、少年少女に向かい――

 

「アイドル見参! アニーちゃんの目の黒い内はファンには手を出させない!」

 

 間一髪、デュエルアンカーでそいつの腕をひっかけて邪魔をする。助けられた生徒たちから歓声が上がる。

 その声に応え、アニーは舞う。

 

「スカーレッド、背中は任せるよ!」

「ふん、キングに対して無礼な。だが、お前なら許そう! もっとも、油断すれば貴様の獲物ももらってしまうがな!」

 

「さあ、行くよ!」

「応!」

 

 背中合わせに、デュエルを始めた。

 

 

 背中をアニーに任せ、キングは吠える。

 

「さあ、貴様の相手はこのキングだ! このキングの目が黒いうちは貴様ら魔物の好きにはさせぬと知るがいい!」

 

 次の相手を狙い定めた。敵はボロボロの黒衣、一見すれば人間でもおかしくないが……ちらりと見えるその腕は機械。そして、そこに繋がっている青い肌。

 隠してはいるが、明らかに人間ではなかった。おそらく、フードの中にも人間の顔など入っていないのだろう。

 

 ――そいつが機械音のごときうめき声を漏らした。

 

「「デュエル!」」

 

 先攻は敵。錆びついた機械のような動きでカードを引く。

 

「……私の先攻。魔法『リロード』を発動! 手札を全てデッキに戻し、その枚数分カードをドローする!」

 

 時間をかけ、カードを眺めて。

 

「……さらに『リロード』を発動!」

 

 同じカードを使用した。

 

「これで奴の手札は3枚。何を考えている?」

 

 キングはいぶかしむ。手札交換は基本的にディスアドだ。悪い手札を交換することができても、それで手札が1枚減るのがキツい。

 普通は、大体何が来ても対応できるようなデッキの組み方をするものだ。事故前提のデッキの組み方はあまりにも拙いと言わざるを得ない。

 

 さてはまともにデッキも組めない素人かと訝しむが……

 

「『デビル・フランケン』を特殊召喚! その効果の代償としてライフを5000払う!」

 

〇亡霊ライフ 8000ー5000=3000

 

「馬鹿な、手札ばかりかライフまで塵のように捨てるか! ……いや、それをするだけの価値はあるということか!? ならば、このキングに立ち向かうに相応しいモンスターを用意することだ!」

 

 驕っているように見えるが、それは自信の現れだ。相手を甘く見ているわけではなく、何が相手だろうとキングとして粉砕してみようと言う宣言である。

 

「エクストラデッキより融合モンスター『DーHERO デッドリーガイ』を特殊召喚! そして手札を1枚墓地に送ることで起動効果を発動、デッキから『DーHERO ディアボリックガイ』を墓地に送りエンドフェイズまで攻撃力をアップする!」

 

◆『DーHERO ディアボリックガイ』:ATK2000+200=2200

 

「たかが200の攻撃力上昇、それもエンドフェイズまでだと? いや、奴の狙いは墓地にモンスターを送ることか!」

 

 やはり素人ではない。キングの敵ではないということに二言はないが、ここまでのタクティクス。学園生で相手をコレを出来るのは何人いることか。

 そして、今はこのレベルの敵が学内を徘徊して生徒を襲っている。

 

「墓地の『ディアボリックガイ』の効果発動! 自身を除外して同名モンスターをデッキから特殊召喚する!」

 

「2体の戦士族『DーHERO』でリンク召喚、リンク2『聖騎士の追想 イゾルデ』! このカードは特殊召喚時にデッキから戦士族モンスターを手札に加えられるが、この効果は発動しない」

「……何? 先の2連『リロード』といい、アドバンテージの概念が分かっていないのか? それとも、無駄と切り捨てているのか」

 

 キングは訝しむ。一見すると敵は素人じみたタクティクスだが、分かる人間は相当強力なそれだと見抜く。

 何でも出来るデッキを作っても、いざカードを引くと何もできないことがある。それは一言で言えば器用貧乏だ。何でもかんでもカードを入れていくからそうなる。

 逆にコイツは、”ただ一つ”のためにそれ以外の全てを切り捨ててている。凄まじい割り切り、つまり強敵だ。

 ――もっとも、この程度に苦戦するキングではないが。と、彼は不遜に構える。

 

「だが、起動効果は発動させてもらう! デッキから装備魔法『念動増幅装置』を墓地に送り、レベル1『焔聖騎士ーリナルド』を特殊召喚! 特殊召喚時効果発動、今墓地へと送った『念動増幅装置』を手札に加える!」

「落としたカードを……! 無駄がないな!」

 

 そして、当然のごとく押さえるところだけはキッチリと押さえている。いやらしい相手だ。

 

「そして『イゾルデ』と『リナルド』でリンク召喚。現れよ、改造の果て自らすら忘れ去った恐竜よ。汝は忘却の獣、リンク2『リプロドクス』! このカードはリンク先のモンスターの種族、または属性を変更できる! 『デビル・フランケン』をサイキック族に変更! 【ウイルスコンバート】!」

 

「そしてサイキック族専用装備カード『念動増幅装置』を装備! この効果により、装備モンスターのライフコストは不要となる!」

「馬鹿な……ライフコストを払うことなくその強力な効果を使用するのか!」

 

 しかも実際に使ったのはただ1枚、デビル・フランケンのみ。後は手札コストが1枚だ。ただのそれだけで、融合モンスターを好きなだけフィールドに並べることができるこの能力。

 ――確かに、”それ”以外を全て切り捨ててもお釣りがくる。

 

「私は『デビル・フランケン』の効果を4回使用!」

「おのれ、ライフコスト20000も踏み倒したな!」

 

「現れよ、我が最強のモンスター達よ! 『青眼の究極龍』、『サイバー・エンド・ドラゴン』、そして2体の『ナチュル・エクストリオ』! これぞ邪神の力! 人類を皆殺す闇の下僕達よ! 人の身に余る災厄をその身に受け塵と消えるがよい!」

 

 三つ首の龍が恐ろし気な咆哮を上げる。機械の三つ首龍がモーター音響かせてキングを睥睨する。そして、その後ろには森の王が鋭い視線を投げかけている。

 ……凄まじい圧迫感だった。

 

「『サイバー・エンド』は貫通効果! 『ナチュル・エクストリオ』は魔法・罠を無効化する効果を持つ! もはや貴様にできることは何もない! 私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

場:◆『青眼の究極龍』:ATK4500

◆『サイバー・エンド・ドラゴン』:ATK4000

◆『ナチュル・エクストリオ』:ATK2800 ×2体

◆『デビル・フランケン』 ATK:500

◆『リプロドクス』 ATK:800

魔法+罠:セット1枚

 

・2ターン

 

「なるほど。たったの1ターンで4体もの強力な融合モンスターを並べたか。そして、一体だけ倒そうと魔法・罠は使えんか。かと言って防御に回ろうと貫通効果がある。……強敵だな。それ”だけ”を見るなら、あのファニマ・ヴェルテすら超えた布陣だ。――だがな、それだけではキングには勝てぬと知るがいい!」

 

 轟、と風が吹く。

 

「キングのターン、ドロー!」

 

 勢いよくカードをドロー。その瞳にはこのターンで倒すと決意が宿っている。敵はまだほかにもいる。ただの一体にそう時間をかけられない。

 

「手札から『レッド・リゾネーター』を召喚。このカードは手札のレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。来い『スカーレッド・ファミリア』!」

 

「レベル2『レッド・リゾネーター』にレベル4『スカーレッド・ファミリア』をチューニング! シンクロレベル6『レッド・ライジング・ドラゴン』!」

 

「『レッド・ライジング』の効果! 墓地の『レッド・リゾネーター』を蘇生! さらに墓地の『ファミリア』を除外して『レッド・ライジング』のレベルを6から7に変更!」

 

 炎纏う龍が吠える、炎の中で悪魔が音叉を響かせて哄笑を上げる。

 

「レベル2『レッド・リゾネーター』にレベル7となった『レッド・ライジング・ドラゴン』をチューニング! 王者の咆哮が天地を揺るがす! 悪魔が地上を蹂躙する! シンクロレベル9『えん魔竜レッド・デーモン・アビス』!」

 

 そして現れし悪魔龍。すさまじい咆哮を上げた。

 

「手札の『使神官ーアスカトル』の効果発動! 手札を1枚捨てて特殊召喚! さらにデッキからチューナーモンスター『赤蟻アスカトル』を特殊召喚! レベル3『赤蟻』にレベル5『使神官』をチューニング。傷痕残りし龍よ、その傷こそ牙持たぬ者を守る勲章であれば! 今一度キングの元で立ち上がるがいい! シンクロレベル8『レッド・デーモンズ・スカーライト』!」

 

「このカードは自分の攻撃力以下の特殊召喚されたモンスターをすべて破壊し、その数かける500ポイントの直接ダメージを与える!」

「――だが、そのモンスターの攻撃力はたかが3000! その効果では我がライフを削りきれん! そして弱小モンスターを狙うつもりだろうが、無駄だ! 永続罠発動! 『女神の加護』。私は3000のライフを回復する! ただし、このカードがフィールドから離れれば私は3000のダメージを受けるがな」

 

〇亡霊ライフ 3000+3000=6000

 

 これで、攻撃表示で残っている弱い2体を攻撃してもライフは削りきれない。

 

「……ふ。2体の攻撃では貴様のライフを削りきれんか。そして、『究極龍』と『サイバー・エンド』の攻撃力は越えられん。だが、キングを舐めるな! 雑魚を潰して勝利をかすめ取るなど、誇り高きキングのすることではないわ!」

「何だと!? 狙いは攻撃表示のままの『デビル・フランケン』と『リプロドクス』ではないのか!」

 

「キングの戦いはエンターテイメントでなくてはならん! 貴様の最強のモンスターを踏み潰し、勝利をこの手に掴み取る! なぜなら、キングは誰より高く聳え立つものだからだ! 手札から魔法発動『フォース』!!!」

「――馬鹿め、魔法カードは無効だ! 墓地のカードを1枚除外、そしてデッキトップを墓地に送り『ナチュル・エクストリオ』の効果発動!」

 

 森の王が叫ぶ。『フォース』の力を打ち消さんと猛り狂い――

 

「その『エクストリオ』とやら、2体揃えたのは用心深いと褒めてやろう! だが、キングは更にその先を行く! 『えん魔竜レッド・デーモン・アビス』で、効果を使用した方の『エクストリオ』の効果を無効にする!」

「何!? 私のフィールドに『ナチュル・エクストリオ』は2体居る。一体が倒されても、もう一体が止める手はずだったが……」

 

 『アビス』の咆哮がその力を打ち消す。2体目が隙を窺うが、立ち入る隙などどこにもない。

 

「しかし、魔法・罠無効化のためには直接チェーンする必要がある! そいつが2体居てもすでに発動した『フォース』は止められん! 無駄だったな!」

「馬鹿な……!」

 

「『フォース』の効果! 貴様の『究極龍』の攻撃力を半分にして、その分『スカーライト』の攻撃力を上げる!」

「ぐ……我が最強のモンスターが見る影もなく……!」

 

 『究極龍』が見る影もなく小さくなった。そして、『スカーライト』はフィールドの誰よりも巨大となっていく。

 全てを睥睨し……その咢に炎を貯める。

 

◆『レッド・デーモンズ・スカーライト』:ATK3000+2250=5250

◆『青眼の究極龍』:ATK4500/2=2250

 

「そして『スカーライト』の効果発動! 特殊召喚した貴様の2体の『エクストリオ』に『サイバーエンド』、『リプロドクス』。そして我が『アビス』を破壊! 2500の直接ダメージを与える! 【デモンズインフェルノ】!」

 

 ひときわ高い咆哮を上げる。究極龍の力を奪い巨大化したスカーライトが煉獄の炎を吐き出した。莫大な炎が全てを破壊する。

 通常モンスターである究極龍、通常召喚されているデビフラは頭を下げて情けなくその災厄から逃れるのみ。

 

「……ぬ。ぐおおおお!」

 

〇亡霊ライフ 6000-2500=3500

 

 そして、その炎をぶつけられた亡霊は黒衣が吹き飛び、焼け焦げた青い肌と火花が散る機械腕を晒す。

 

「これで終いだ! 我が一撃で魂ごと消し飛べ! 『スカーライト』で『デビル・フランケン』を攻撃! 【レッド・ストレート】!」

 

◆『レッド・デーモンズ・スカーライト』:ATK5250

◆『デビル・フランケン』:ATK500

 

〇亡霊ライフ 3500-4750=0

 

「ば……馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 傷跡だらけの龍がフランケンを右ストレート、そのまま敵を爆砕した。

 

「ふ、次の相手はどいつだ!? このキングを恐れぬ奴から貴様らの元居た地獄へ叩き返してやろう!」

 

 意気揚々と宣言した。

 

 

 

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