悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第29話 魔の森

 

 

 フューはその瞬間をモニター室で迎えた。ヴェルテの権力でとある一室を貸し切って機材を置き前線基地としたのだ。

 無数のモニターや計測器が動く中、PCを弄ってはスマホや無線機を弄っていたのだが。

 

「シット! 通信系統が全部イカれてやがる。姫サマのおかげで職員室に顔が利くとは言え、連絡できないんじゃどうしようもないゼ!」

 

 歯噛みし、机をダンと叩いた。

 

「だが……校長も馬鹿じゃネエ。あの人のことだから、異常事態が起きれば教員を率いて避難誘導をしてくれるハズ。姫サマは……あの性格上、打って出るナ。こっちの位置情報は知ってるから。なるほど、じゃあこっちも戦わないわけには行かないナ」

 

 PCをカタカタ動かす。

 

「計測としてはこれで問題なし。自動的にストレージに保存されるようにした。さあ、俺も戦うぜ!」

 

 研究室を飛び出した。

 

 ……そして、そこで見たのは魔物と戦う教員。けれど。

 

「攻撃力6000となった『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』で、『古代の機械巨人』に攻撃【スカーレッド・ノーブルダークネス】。貴様の魂、そしてそこで震える者達の命を貰う。消え去れ、人間よ」

「馬鹿な……ぎゃあああああ!」

 

 一人の男が瘴気に侵され魂を奪われる姿があった。彼は倒れた。目を見開いたまま、しかしもう二度と動くことはないだろう。

 後ろの教え子たちが泣いている。

 

「テメエ! よくも、よくもやりやがったな! その人は少し姿を見たことがあるだけで、名前も知らねえ。だが、教え子を守るために立ち上がった勇気のある男だった。あの人のため、貴様だけは絶対にこの俺が倒す!」

「威勢の良い生贄がもう一人。良かろう、では始めようか。互いの魂を賭けた闇のデュエルを」

 

 それは、一言で言えば闇が凝った卵だった。暗黒の羽が生えていて、それがカードを繰る。羽で飛んでいるものかと思いきや、浮かんでいるのは何やら別の力らしい。

 

「「――デュエル!」」

 

・1ターン

 

 敵が、動く。

 

「我は手札から『流星方界器デューザ』を召喚。召喚時効果によりデッキから永続魔法『方界業』を墓地へ送る。そして墓地の『方界業』は、自身を除外して〈方界〉モンスターを手札に加えることができる」

 

「『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』を手札に加える。このカードは3種類の方界カードを相手に見せることで特殊召喚できる。私が見せるのは2体目の『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』、『方界帝ヴァルカン・ドラグニー』、そして『方界法』」

 

 そして、教員の彼にとどめをさしたモンスターが姿を現す。

 

「出たか。……いいか、俺は絶対にそいつをぶっ潰して、テメエを倒すゼ!」

「それは不可能だ。人間には届かない次元領域を見るがいい。暗黒の闇の底より現れろ、紅と黒の境界線! 闇司りし神よ、降臨せよ! 特殊召喚、『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』! このカードは元々の攻撃力が3000以下のモンスター効果を受けない!」

 

「……はん。神にしては中途半端な耐性だナ。闇属性で、神属性じゃねえシ」

「カードを1枚伏せてターンエンド。この瞬間『クリムゾン・ノヴァ』の効果発動、互いに3000ダメージを受ける。【カースト・クリムゾン】!」

 

「何だっテ! 相手どころか、自分にまで直接ダメージを与えるカードだとォ!?」

 

〇 フューライフ:8000ー3000=5000

〇 ライフ:8000ー3000=5000

 

「ヌグ……」

「があああああ!」

 

 暗黒の瘴気が両者を侵した。卵が震える。フューが膝をつく。

 

「我はこれでターンエンド」

 

場:『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』 ATK:3000

 『流星方界器デューザ』 ATK:1600

魔法+罠:セット1枚

 

・2ターン

 

 フューはがくがくと震える足を気合いで止めて立ち上がる。

 

「痛エ。儀式とは比べ物にならない痛み、これが闇のデュエルだってカ。だがな、あの人はこれに耐えて教え子を守り抜くため戦っタ! ならば、俺はその志を継ぐ!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ふ、と笑う。デッキが燃える思いに応えた。だが、敵は相手を更なる絶望に突き落とすための行動に出る。

 

「この時、伏せていた罠『融合準備』の効果を発動、融合モンスター『暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ』を相手に見せることで、その融合素材である『クリムゾン・ノヴァ』を手札に加える」

「次のターンの『クリムゾン・ノヴァ』の召喚準備を整えた訳か。だが、このターンでテメエを倒せば関係ないゼ」

 

 瞳に怒りを燃やしたフューが勢いよくカードを叩きつける。

 

「俺は、手札から魔法『奇跡の穿孔』を発動! デッキから『風化戦士』を墓地に落とす! 墓地に落ちた『風化戦士』の効果でデッキから『化石融合ーフォッシル・フュージョン』を手札に加えるゼ!」

 

「さらに『マスマティシャン』を召喚、効果発動! デッキから『シェル・ナイト』を墓地に落とし、その効果で『地球巨人 ガイア・プレート』を手札に加える!」

 

「先ほど手札に加えた魔法『化石融合』を発動! 墓地の『風化戦士』と『シェル・ナイト』で除外融合。現れよ、古代の戦士『新生代化石騎士スカルポーン』!」」

 

 化石の騎士が現れる。骨の身体は細くて頼りない。だが、秘めたる力がある。

 

「そして、時代は(さかのぼ)る!」

 

 啖呵を切った。これからが『化石融合』の本領。

 

「手札から魔法『タイム・ストリーム』を発動! その効果により、『スカルポーン』は『中生代化石騎士スカルナイト』へ逆進化! 次代をさかのぼり現れよ、古代の騎士!」

 

 化石纏う重厚なる戦士へと姿を変えた。

 

「墓地の『スカルポーン』は自身を除外することで、デッキから『タイム・ストリーム』を手札に加えることができる! 2回目の逆進化だ、『スカルナイト』!」

 

「騎士は時代をさかのぼり、その魂の起源へ至る! 現れよ、古代世界を支配した王者『古生代化石竜 スカルギオス』!」

「攻撃力3500……」

 

 クリムゾンノヴァの効果は3000を超えるモンスターの効果を無効化できない。化石恐竜が、吠えた。

 

「そして墓地の『スカルナイト』の効果発動! 自身を除外し『デューザ』を破壊!」

 

 墓地から飛び出た騎士の魂が暗黒の祭器へ剣の一撃を与える。

 

「バトル! 『スカルギオス』で『クリムゾン・ノヴァ』を攻撃! この時、『スカルギオス』の効果発動! 相手の攻撃力を守備力を入れ替えてダメージ計算を行う! 【スキャッター・バイト】!」

 

◆『古生代化石竜 スカルギオス』 ATK:3500

 VS

◆『暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ』 ATK:0

 

「さらに、融合召喚した『スカルギオス』の与えるダメージは2倍となる。これで終わりだ!」

 

〇 ライフ 5000ー7000=0

 

「馬鹿な。闇より生まれし神が……人間ごときが……」

「あの人の魂は返してもらう!」

 

 スカルギオスは敵である闇の卵を丸ごと踏み砕いた。そして残骸から浮き出た魂は、襲われた教師へと帰って行った。

 

「――もしもし。もしもし。聞こえてるカ?」

「え? あ、ああ……」

 

 きょとんとして周囲を見渡す。異常はない。

 

「よし、起きられたのなら生徒たちを避難所へ案内してください」

「ああ、そうだったな。こんなところからは早く逃げなくては。君はどうするんだ?」

 

「事態の収拾に向かいます。あなたはどうか無理をせずに。辛いようなら彼らを連れて行ってそのまま休んでいてください」

「分かった。……君も、気を付けてな。無理はしないように」

 

「ええ、もちろん。これでも社会人なので、引き際は分かってますヨ」

「あのお嬢様にも宜しく」

 

「はは、了解。ちゃっかりしてるな、アンタ」

「――」

 

 応えず、ニヤリと笑って生徒達を立ち上がらせて向こうへ行く。フューもまた、かすかな苦笑を浮かべて逆に方向へ歩き出す。

 

 

 

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