悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第36話 鏡の中の悪魔

 

 

 そして、次の日の日中にキングは一人学園へと足を踏み入れた。

 

「――どこからかかってくるがいい、キングはここに居るぞ!」

 

 叫ぶ。基本的に戦場は人気の消えた学園となる。

 そして、フェルもまた閉鎖されている学園に侵入していた。自信家の二人だからこそ、敵地を闊歩し敵を吊り出すことを目論んだのだ。

 これはファニマの策ではない。むしろ、彼女は敵を焦らそうとしていた。学園の周辺を監視し、外に出た敵を一人づつ倒していくのが彼女の策だった。出てこないのなら来ないで、エールの研究時間が稼げるからどちらでも良い。はずだったが。

 ……キングも、フェルも、勝手にここまで来てしまった。彼はファニマに付いたわけではないので、指示に従う必要がないと言われればそれまでなのだが。

 

「……ふふ」

「ふふふ」

「あははははは」

 

 それはざわざわと蠢く不気味な笑い声。それは不気味さを煽り、不安をかき立てるゴーストタウン。

 これでは敵が何人居るのか分かったものではない。奴らは不意打ちくらいは普通にやる。人間同士のルールなど通用しない、なにせ人ですらないのだから。それでもキングは怯まず、奧へと進む。

 

「そっちか」

 

 靴音響かせて奧へと突き進むと、進むと幾多の砕けた鏡面が転がる幻想的な風景に出た。ガラスは光の反射で鏡になるが、明らかに割れた窓よりも数が多い。

 割れたガラスの鏡面、その奥で何かが蠢いているのが見えた。敵の気配を感じるのに、敵はさっぱり出てこない。

 

「何の小手先か知らんが、それでキングの行く手を阻めると思うな! さあ、さっさと姿を現わすがいい!」

 

 ガラスが密集する森の奥へと進む。笑い声が収束していく。

 

「――ふん。まさか君の方から来てくれるとはね」

 

 現れた彼は黒髪の男の子に見える。言葉も流暢、大量に湧き出た雑魚とは格の違う存在感。それは四枚の黒い翼を生やした悪魔だった。

 

「あのイレギュラーと言ったら、家の鏡を全て黒く塗りつぶすほどに用心深いのに」

 

 一瞬だけ姿がぶれた。……と思えば、いつのまにやら女の子へ変わっている。翼も、コウモリのそれから鳥類の羽根へ。

 摩訶不思議な現象だが、雑魚どもで凄惨な姿は見慣れた。姿だけを見るなら可愛らしく見えるだけこちらの方が随分マシというもの。そして、キングが外見で手加減することなどない。

 

「誰の差し金か知らんが、ファニマ・ヴェルデも日和ったものだな! 敵は叩き潰し、蹂躙するのがキングの生き様である!」

 

 献策したアルは「反撃を許さず弱者を叩くのが高貴なる者のやり方」と反論するだろうが。

 そう、セブンスターズは(一般の)人より上位の存在と思い勝ちだが、その真なるところは歴史から消え去った敗北者たちだ。ただ地上に姿を現わすだけでも命がけであるほどに。どちらが生命として下かは言うまでもない。

 

「アハ! けれど、君の愚かさのおかげで僕も待ち惚けはしなくて済む! さすがの僕だって、あのイレギュラーが策を巡らす中に敵陣に躍り出るほど無謀ではないからね!」

 

 ニヤニヤと笑う。どちらが獲物か、それを決めるのは。

 

「ならば始めようか」

「ああ、我らの運命を決める決戦を!」

 

「「――デュエル!」」

 

 互いにデュエルディスクの盾を構えた。

 

・1ターン

 

「私の先攻!」

 

 女の子がカードを引く。くすりと笑うと男の子になっている。

 

「私は『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』を通常召喚、デッキから『夢魔鏡の使徒ーネイロイ』をサーチ! そして『逆徒』は、属性が反転し光属性となる。そして手札に加えた『使徒』は〈夢魔鏡〉モンスターが場に居る時、特殊召喚できる! 属性は反転し闇属性となった。さあ、鏡の世界へようこそ」

 

 鏡の中の夢魔。それが敵の正体だ。水泡(うたかた)のように儚く消える夢の中でしか生きられない彼らは、地上へ進出することを望み人を殺す。

 

「『逆徒』の第二の効果発動! フィールドの『使徒』をリリースすることで、デッキから『夢魔鏡の乙女ーイケロス』を特殊召喚! さらに『乙女』のテキストに記されたフィールド魔法、『暗黒の夢魔鏡』を手札に加える!」

 

 そして始まる怒涛の特殊召喚。見た目麗しい少年が、少女がくるりくるりと姿を変じる。

 

「特殊召喚された『乙女』の効果発動! デッキから〈夢魔鏡〉カード、『夢魔鏡の聖獣ーパンタス』を手札に加える! さらに先ほど手札に加えたフィールド魔法『暗黒の夢魔鏡』を発動! 『乙女』はこのカードが発動されている時、自身をリリースしてデッキから『夢魔鏡の夢魔ーイケロス』を特殊召喚できる!」

 

 『暗黒の夢魔鏡』そこは悪魔が闊歩する瘴気に塗れた鏡の世界だった。その中で天使は変貌し悪魔へと変じる。 

 感じる幾多の気配。人を喰らおうと狙っている。

 

「特殊召喚された『夢魔』の効果発動! 先ほどサーチした『夢魔鏡の聖獣ーパンタス』を特殊召喚! 『聖獣』の効果発動、墓地から『使徒』を蘇生! 『夢魔』と『聖獣』でリンク召喚、現れよ命与えられし人形たち、リンク2『クロシープ』!」

 

 流れるような高速召喚だ。本番が来る。

 

「……ふふ、見るがいい。私の真なる姿を!」

 

 女の子が黒い翼を持つ女性へと変じる。強い波動が放たれる。

 

「手札から〈夢魔鏡〉専用融合魔法『混沌の夢魔鏡』を発動! このカードはフィールドに『暗黒の夢魔鏡』が発動している時、墓地のモンスターも融合素材にできる! 墓地の『夢魔』と『聖獣』で除外融合!」

「墓地のモンスターを融合素材にするのか!? やって見せるがいい。キングの足を止めることなど出来ぬと思い知る羽目になるだけだがな!」

 

鏡の中の世界(ミラー・イン・ワールド)にて天使と悪魔が交わりし時、夢の支配者が降誕する! 今こそ人世界の終わりを告げよ、融合召喚『夢魔鏡の天魔ーネイロス』!」

「――だが、一体だけで何が出来る!?」

 

「もちろん、一体だけじゃないさ。『クロシープ』は、リンク先にモンスターが特殊召喚されたときに効果が発動する! 場に融合モンスターが居るため、墓地の『乙女』を蘇生できる! 【リカバリー・ウール】!」

 

「私はカードを1枚セットしてターンエンド! この瞬間、フィールド魔法『暗黒の夢魔鏡』の効果発動! 自身を除外しデッキより『聖光の夢魔鏡』を発動! そして、『聖光』も同じ効果を持っている! 『暗黒の夢魔境』を再び発動!」

「……フィールドが戻った。奴は一体、何を考えている?」

 

「『乙女』はフィールドに『暗黒の夢魔鏡』が存在するとき、『夢魔』へと転身できる! さらに、『天魔』は他の夢魔鏡が転身したときにカードを1枚破壊できるのだ! さあ、この布陣の前に、何もできずに死んでいけ人間!」

 

場:フィールド魔法『暗黒の夢魔鏡』

『夢魔鏡の天魔ーネイロス』 DEF:3000

『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』 ATK:1500

『クロシープ』 ATK:700

『夢魔鏡の乙女ーイケロス』 DEF:500

『夢魔鏡の使徒ーネイロイ』 DEF:1000

魔法+罠:セット1枚

 

 

・2ターン

 

 敵の布陣にも関わらず、彼の眼には燃える闘志がみなぎっている。

 

「キングのターン!」

 

 みなぎる気迫が轟風を巻き起こす。

 

「手札から魔法『コール・リゾネーター』を発動! デッキより『レッド・リゾネーター』を手札に加え、召喚! 効果で手札の『スカーレッド・ファミリア』を特殊召喚!」

「『暗黒の夢魔鏡』が存在する限り、相手が特殊召喚するたびに300のダメージを与える。300の直接ダメージを喰らえ!」

 

「……ぐっ! だが、この程度ではキングは怯まん! レベル4『スカーレッド・ファミリア』に、レベル2『レッド・リゾネーター』をチューニング、シンクロレベル6『レッド・ライジング・ドラゴン』!」

 

「『ライジング』がシンクロ召喚に成功した時効果発動、【リゾネーター・コーリング】! 墓地の『レッド・リゾネーター』を蘇生! さらに『レッド・リゾネーター』の効果で2100のライフを回復! 【ライフ・チューニング】!」

「だが、貴様はさらに600のダメージを受ける!」

 

〇 キングライフ 8000ー300×3=7100

         7100+2100=9200

 

「効かんと言ったはずだ!」

 

 特殊召喚の度に湧き上がる瘴気でキングはボロボロになっている。はためくコートは擦り切れ、今にも千切れそうだ。

 

「レベル6『レッド・ライジング・ドラゴン』にレベル2『レッド・リゾネーター』をチューニング!」

 

 キングの気迫が炎となって燃え上がる。竜の形となって点を目指す。

 

「荒ぶる魂よ、敵の全てを撃砕し骸に変えるがいい! シンクロレベル8『レッド・デーモンズ・スカーライト』! このモンスターは特殊召喚された攻撃力3000以下のモンスターをすべて破壊できる!」

「私のモンスターを全滅させる効果か! そんなことはさせないよ! 『乙女』の効果発動! 『夢魔』に転身、そして『天魔』の効果で『レッド・デーモンズ・スカーライト』は破壊だ! 【ミラー・パニッシュメント】!」

 

 天魔が羽ばたく。そしてドラゴンが苦しみ、破壊された。

 

「ぬうっ! 我が『スカーライト』が破壊されたか」

「あはは! そう簡単に効果を通すと思わないでよ。君が相手をしていたのはただの雑魚さ。そして、僕らはその戦いを見ていた。それだけのことだよ」

 

「だが、キングは媚びぬ! 退かぬ! 諦めぬ! 手札から魔法『緊急テレポート』を発動! デッキから『サイキック・リフレクター』を特殊召喚!」

 

 ロボットが現れる。カードをその手の中に生み出そうとして。

 

「ここから更にシンクロするのか!? させないよ、罠カード『夢魔鏡の夢物語』を発動! 除外されたフィールド魔法『暗黒』と『聖光』をデッキに戻し、貴様の『サイキック・リフレクター』を除外する!」

 

 鏡の世界に取り殺された。破壊される。

 

「……ぐぅ。これで『リフレクター』によるシンクロコンボが封じられたか。なるほど、確かに見られてたようだ。だが、効果は残る! 『バスター・スナイパー』を手札に加える!」

「次のターンにもう一度と言うわけかい? キングは懲りないというわけだ。けれど、君に次のターンが来るかな!?」

 

「来るか、だと? 愚問だな。未来は己の手で掴み取るもの! 手札の『使神官ーアスカトル』の効果発動! 手札の『スカーレッド・カーペット』を墓地に送り特殊召喚! そしてデッキから『赤蟻アスカトル』を特殊召喚! 【プリースト・スペル】!」

「馬鹿な……! これだけ妨害したのに、まだシンクロをするつもりなのか!?」

 

「レベル5『使神官ーアスカトル』に、レベル3『赤蟻アスカトル』をチューニング! 燃え上がれ、我が不屈の魂! 王者の鼓動、ここに再誕! 天地鳴動の力を見るがいい! シンクロレベル8『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」

「だが、溜まった『暗黒』の直接ダメージは受けてもらうよ」

 

〇 キングライフ 9200ー300×5=7700

 

「ぐあっ! だが、バトルだ! 『レッド・デーモンズ・ドラゴン』で『夢魔鏡の天魔ーネイロス』に攻撃!」

「なに……? 攻撃力と守備力は互角のはずだよ……!」

 

 紅い竜が咆哮を上げる。その爪を地面に突き刺すと紅蓮のマグマがあふれ出る。それは守備表示モンスターの全てに襲い掛かる。

 

◆『レッド・デーモンズ・ドラゴン』 ATK:3000

 VS

◆『夢魔鏡の天魔ーネイロス』 DEF:3000

 

「ふん、この効果は見せたことがなかったな。『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は守備表示モンスターへの攻撃終了後、相手の守備表示モンスターを全滅させる! 【クリムゾン・ヘルフレア】!

「馬鹿な……!」

 

 マグマに曝され、残ったのは攻撃表示の『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』に『クロシープ』。攻撃力の低いモンスターたちだ。

 

「貴様のモンスターを壊滅させてやったぞ!」 

「だが、破壊された『天魔』の効果発動、墓地から『使徒』を特殊召喚。そして『使徒』の効果発動、フィールドに『暗黒』が存在するときに特殊召喚されたため、カードを1枚ドローして1枚デッキに戻す」

 

 視線を交わす。殺意と殺意が交錯した。

 

「バトル終了、場にシンクロモンスターが存在するため、手札から『シンクローン・リゾネーター』を特殊召喚! そしてレベル8『レッド・デーモンズ・ドラゴン』にレベル1『シンクローン』をチューニング、シンクロレベル9『えん魔竜レッド・デーモン・アビス』!」

 

 竜が新生する。新しき姿を得て、地上へ舞い降りる。

 

「『シンクローン』がシンクロ素材として墓地に送られたとき、墓地の『レッド・リゾネーター』を手札に戻す!」

 

「『アビス』は1ターンに1度、フィールドのカード効果を無効にできる! 俺はこれでターンエンドだ!」

「ならば私は『暗黒』の効果発動、『聖光』へと入れ替える。そして、『聖光』を『暗黒』へと入れ替える」

 

場:『えん魔竜レッド・デーモン・アビス』:ATK3200

 

 妨害の嵐、潜り抜けたはいいものの厄介な『クロシープ』が残っている。強力な『アビス』が居るとはいえ、ただの1体では頼りない。

 

・3ターン

 

「私のターン、ドロー」

 

 有利を悟ったか、悪魔は歪んだ笑みを浮かべた。

 

「私は手札から魔法『混沌の夢魔鏡』を発動、墓地の『夢魔』と『天魔』を除外融合、再び現れよ『夢魔鏡の天魔ーネイロス』!」

 

「そして『クロシープ』の効果、墓地から『乙女』を特殊召喚。そして、『乙女』の効果発動、『夢魔』へと転身する!」

「『アビス』の効果発動! 『天魔』の効果を無効にする! 破壊はさせんぞ!」

 

 天魔が羽ばたこうとして、竜が咆哮で止めた。

 

「ならば、特殊召喚された『夢魔』の効果発動! 手札の『乙女』を特殊召喚。そして『乙女』の効果によりもう1枚の『夢魔鏡の夢物語』を手札に加える」

 

「そして見るがいい、これが神より与えられし最強のカードだ!」

「何だと!? 一体何が来ると言うのだ!?」

 

「リンク2『クロシープ』に、『使徒』と『乙女』でリンク召喚! その強大なる翼で弾丸のごとく敵を撃ち抜け! 閉ざされし世界を切り開く烈風よ、我らの世界に光をもたらさんことを! リンク4『ヴァレルソード・ドラゴン』!」

「〈ヴァレル〉だと!? なんだ、そのカードは!」

 

 鏡の世界を切り裂き現れたのは刃の羽根を纏う竜。全ての鏡が叩き割られて幻想的な光景が生まれる。

 けれど、そこは無数の刃が舞うキルゾーンに他ならなかった。

 

「『ヴァレルソード』で『アビス』に攻撃! この瞬間効果発動! 攻撃対象の攻撃力を半分にし、その分自身の攻撃力をアップする! 【電光のヴァレルソードスラッシュ】!」

 

◆『ヴァレルソード・ドラゴン』 ATK:4600

 VS

◆『えん魔竜レッド・デーモン・アビス』:ATK1600

 

「馬鹿な……我が『アビス』が簡単に……! ぐわああああ!」

 

 まき散らされた電光がキングを焼く。

 

〇 キングライフ 7700ー3000=4700

 

「『ヴァレルソード』第二の効果、『逆徒』を守備表示にすることでこのターン2回の攻撃を可能にする!」

「……なんだとォ!?」

 

「『ヴァレルソード』、『天魔』で攻撃! 【電光のツイン・ライトニングストリーム】!」

 

◆『ヴァレルソード・ドラゴン』 ATK:4600

◆『夢魔鏡の天魔ーネイロス』 ATK:3000

 

〇 キングライフ 4700ー4600ー3000=0

 

「馬鹿なアアアアア!」

 

 電光によりキングが吹き飛び倒れ伏す。……そして二度と目を覚ますことはない。

 

「さあ、これで一本目。あのイレギュラーには注意が必要だけど、別に僕たちは彼女を始末しなくてはならない理由もないしね」

 

 キングの懐で鍵が灰となる。

 

「あいつら全員、学院に来てくれれば楽なんだけどね」

 

 ケタケタと笑って、姿を消した。

 

 

 





 ちなみにファニマのカリスマはかなり下です。エールも友人として気に入っているものの、命令は受け付けません。フューは大体従ってくれますが、報告が叔父の方へ行きます。本当の部下と呼べるのはメイとアルくらいです。

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