悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第38話 エールの猛攻

 

 

 1ターン目、エールは強力な布陣を用意した。モンスター効果を無効化する『マスターヴェール』。そして魔法と魔法使い族に反応して様々な効果を使える『バイスマスター』。

 二重の封殺効果を前に、簡単には突破出来ようはずもない。

 

場:『ウィッチクラフト・マスターヴェール』 DEF:2800

  『ウィッチクラフト・バイスマスター』 ATK:2700

魔法+罠:『バイストリート』

 

・2ターン

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 対する夢魔は男の子の姿になり、荒くカードを引いた。自らの手札に可能性を探る。突破し、さらに奴の喉元に噛み付くために。

 彼とて負けるわけにはいかないのだ。互いに命を賭けている。なによりも大切なそれ()を守るため、あらゆる手段を講じるのだ。

 

「その程度の備えで、我ら〈夢魔鏡〉を押しとどめることができると思うなよ……!」

 

 そして、反抗の手段は固まった。殺気を解き放つ。

 

「手札から永続魔法『夢幻の夢魔鏡』を発動! このカードは発動時に〈夢魔鏡〉モンスター1体を手札に加えることができる!」

 

 発動される永続魔法。だが、それは〈魔法〉であり、しかも〈永続魔法〉。永続魔法は通常魔法と違い、破壊されれば効果は使えない。

 

「あは、キングとのデュエルは見せてもらったわ。愚かね、夢魔。デッキから『夢魔鏡の逆徒』を手札に加えるつもりでしょう? それがないとあなたは動けない。そんな効果は通さない! 『バイスマスター』の選択効果を発動! 手札に加える前にその永続魔法を破壊させてもらうわ、【アトリエアート・1st・デストラクション】!」

 

 当然、エールはサーチを通さない。だが、その効果は明かされている。そもそも夢魔だって、学園中に解き放った魔物たちの戦いを見ているのだ。

 ――戦法を知るのは互いに同じ。

 

「残念だったね。そのモンスターの対策は考えてある! 手札から『夢魔鏡の黒騎士ールペウス』と『暗黒の夢魔鏡』を捨てて、速攻魔法『禁じられた一滴』を発動! モンスター2体の攻撃力を半減し、効果を無効にする! そして、捨てたカードと同じ種類、つまりモンスターと魔法はチェーンできない!」

「く……ッ! そんな強力なカードを!?」

 

 『バイスマスター』の破壊効果を無効にし、そして第二の選択効果もチェーン不可の効果で封じ込める。

 凶悪な盤面が、ただのかかしに変えられた。

 

「僕は『バイスマスター』、そして『マスターヴェール』の効果を無効にする!」

「これじゃ、あいつの『逆徒』を通してしまうわね。まさか2体のモンスターによる封じ込めが、1枚のカードで突破されてしまうなんてね」

 

 エールが顔を歪めた。けれど、その顔には余裕が残っている。カード1枚といったところで、コストが2枚だ。それは決して小さな犠牲ではない。

 その笑みを消してやると、夢魔は強力なモンスター召喚に動く。

 

「その通りだ。『夢幻の夢魔鏡』が破壊されなかったため、デッキから『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』を手札に加える。さらにこのカードはフィールドに『暗黒の夢魔鏡』が存在するときに相手モンスターの攻撃力を500下げ、そして『聖光の夢魔鏡』が存在すれば我がモンスターの攻撃力が500上がる効果を持つ」

「たかが500、どうでもいいわね」

 

「ほざけ。今度はお前自ら悪夢を体験するがいい。僕は『逆徒』を通常召喚、『夢魔鏡の使徒ーネイロイ』をサーチする。そして『逆徒』は属性が反転し光属性となる。そして『使徒』は〈夢魔鏡〉モンスターが場に居る時、特殊召喚できる! 属性は反転し闇属性へ」

 

「さらにフィールドの『逆徒』の効果発動! 『使徒』をリリースすることで、デッキから『夢魔鏡の乙女ーイケロス』を特殊召喚! さらに『乙女』の効果に記されたフィールド魔法『暗黒の夢魔鏡』を手札に加える!」

 

「特殊召喚された『乙女』の効果発動! デッキから〈夢魔鏡〉カード、罠『夢現の夢魔鏡』を手札に加える! さらに手札からフィールド魔法『暗黒の夢魔鏡』を発動! 『乙女』はこのカードが発動されている時、自身をリリースしてデッキから『夢魔鏡の夢魔ーイケロス』を特殊召喚できる!」

 

 怒涛の特殊召喚。阻むための『マスターヴェール』と『バイスマスター』は効果が無効になっている。……対抗手段がない。

 

「特殊召喚された『夢魔』の効果発動! 先ほどサーチした『夢魔鏡の聖獣ーパンタス』を特殊召喚! 『聖獣』の効果、先ほど捨てた『夢魔鏡の黒騎士』を墓地から特殊召喚!」

 

「〈夢魔鏡〉モンスターの効果により特殊召喚されたこのカードは、フィールドのカード1枚を破壊する! 『バイストリート』を破壊! 【ダークネス・エッジ】!」

 

 黒騎士が鏡の中へ斬撃を放つと、周囲のあらゆる鏡から斬撃が発生、魔導の城下町を切り刻んだ。エールのフィールドが崩れ去っていく。

 

「そしてフィールドの『夢魔』と『黒騎士』でリンク召喚。現れよ命与えられし人形たち、リンク2『クロシープ』!」

「このカード……融合が来る!?」

 

「その通りだ! 手札から〈夢魔鏡〉専用融合魔法『混沌の夢魔鏡』発動! このカードは『暗黒の夢魔鏡』が発動している時、墓地のモンスターも融合素材にできる! 『逆徒』と『使徒』で除外融合!」

 

鏡の中の世界(ミラー・イン・ワールド)にて天使と悪魔が交わりし時、夢の支配者が降誕する! 今こそ人世界の終わりを告げよ、融合召喚『夢魔鏡の天魔ーネイロス』!」

 

「『クロシープ』のリンク先にモンスターが特殊召喚されたとき、効果が発動する! 場に融合モンスターが居るため、墓地の『乙女』を蘇生! 【リカバリー・ウール】!」 

 

「さらにフィールドの『聖獣』の効果発動! 『暗黒の夢魔鏡』が発動されている時、転身召喚が可能! 『聖獣』は『夢魔鏡の魔獣ーパンタス』へと転身! そしてダイレクトアタック効果を得る!」

「ダイレクトアタック? 今更そんな効果、何ほどのものでもないわ!」

 

「この瞬間、『天魔』の効果が発動する! 『マスターヴェール』破壊! 【ミラー・パニッシュメント】!」

「『天魔』の効果。それに、この布陣……!」

 

 苦い顔をしたエール。夢魔は見たことかと勝ち誇り、キングの時に見せた最強のモンスターを召喚する。

 

「リンク2『クロシープ』に『夢魔』、『魔獣』でリンク召喚! その強大なる翼で弾丸のごとく敵を撃ち抜け! 閉ざされし世界を切り開く烈風よ、我らの世界に光をもたらさんことを! リンク4『ヴァレルソード・ドラゴン』!」

 

 そして出てきた鏡の世界を破壊し尽くすモンスター。このカードがあれば1killなど容易な超強力モンスターである。攻撃力3000、二回攻撃。そしてどんな攻撃力を持つモンスターが相手でも倒せる攻撃力強化。

 神から頂いたというに相応しい超ド級のモンスターだ。天空にてエールを見下ろし、その牙で引き裂く時を今か今かと待っている。

 

「バトル! 『ヴァレルソード』で『バイスマスター』を攻撃! この瞬間、『ヴァレルソード』の効果で相手の攻撃力を半減させ、自身の攻撃力に加える。喰らえ【電光のヴァレルソードスラッシュ】!」

 

◆『ヴァレルソード・ドラゴン』 ATK:3850

 VS

◆『ウィッチクラフト・バイスマスター』 ATK:850

 

「残念ね! さっきのじゃ使えなかったけど、このカードは攻撃対象になったときにも発動できる! 私の魔法使い族モンスターが効果対象、または攻撃対象になった時……手札の『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』を特殊召喚できる!」

 

 そして現れる美しいゴーレム。ウィッチクラフトの最高傑作(マスターピース)が、ハンマーをかざす。

 そして竜を叩き伏せる。

 

「そして『ヴァレルソード』を手札へ戻す! 【シークレット・オブ・ダークネス】!」

「なんだとォ!? 僕の最強カードが……デッキに戻された……だとォ!? けれど、特殊召喚したな? 『暗黒』の効果で300の直接ダメージだ!」

 

 そのフィールド魔法は夢魔のターンに発動された。だからこれが1回目。

 

「あは! そんなダメージ、エールにはいたくもかゆくもないよ!」

 

 けれど、エールはその程度と見下している。

 

〇 エールライフ 8000ー300=7700

 

「ならば、『天魔』で攻撃! 攻撃力の半減したそのモンスターを叩き潰せ! 【スペクトラム・レイ】!」

 

 鏡から放たれる光がバイスマスターを切り裂く!

 

◆『夢魔鏡の天魔ーネイロス』 ATK:3000

 VS

◆『ウィッチクラフト・バイスマスター』 ATK:850

 

〇 エールライフ 7700ー2150=5550

 

「……くぅ! エールの『バイスマスター』。けれど、『アルル』はフィールドに残ったままね。……あはは! たかだか攻撃力2800のモンスターを倒し切れないのかしら?」

 

「ぬぐぐ。僕はカードを1枚セットしてターンエンド、そしてと『暗黒』は『聖光』へと移り変わり、『聖光』は『暗黒』へ変わる」

 

 フィールド魔法が入れ替わり、除外ゾーンに2枚が揃う。キングのときに見せた罠カードの準備は整った、が。

 

「くすくす。除外されたフィールド魔法を2枚貯めても、あなたの今伏せたそれは『夢魔鏡の夢物語』じゃないでしょ?」

 

 悪戯気に笑うエール。

 

「――」

 

 夢魔は睨みつけるしか出来なかった。

 

フィールド魔法:『暗黒の夢魔鏡』

場:『夢魔鏡の天魔ーネイロス』 ATK:3000

  『夢魔鏡の乙女ーイケロス』 ATK:0

魔法+罠:『夢幻の夢魔鏡』、セット1枚

 

・3ターン

 

「エールのターン! ドロー!」

 

 にやにやと笑いながらカードを引く。

 

「手札から『ウィッチクラフト・ポトリー』を通常召喚、自身と手札の『コンフュージョン』をリリースしてデッキから『ウィッチクラフト・ハイネ』を特殊召喚! そして『ハイネ』の効果発動! 手札の『クリエイション』を捨てて『天魔』を破壊する! 【マギウス・ソウ】!」

 

 針が突き刺さり天魔が爆散する。

 

「おのれ……! だが、罠カード『夢現の夢魔鏡』を発動! 自分のフィールドに『暗黒の夢魔鏡』を! 相手のフィールドに『聖光の夢魔鏡』を張る!」

「へえ、エールの場にフィールド魔法を張るのね。……これじゃ、次のターンに『ハイネ』で破壊し切れないわ。確かに、エールのことも研究しているわね」

 

「さらにフィールド魔法『暗黒』がある時、『乙女』の転身効果発動! 『夢魔』へと転身する! 守備表示!」

「けれど、その効果が発動した今はすでに『天魔』は墓地へ行っている! 破壊効果は発動しない!」

 

「だが、『天魔』が破壊されたときの効果は発動する! 墓地から『黒騎士』を蘇生して破壊効果を発動する!」

「けれど『ハイネ』が居る限り他の魔法使いは対象に取れないわ!」

 

「ならば、『ハイネ』を破壊! 【ダークネス・エッジ】!」

「『ハイネ』は破壊される」

 

「――でも、エールの攻撃はこれからが本番! 手札から魔法『ウィッチクラフト・サボタージュ』を発動! 墓地から『バイスマスター』復活!」

 

「そして墓地の『ポトリー』の効果発動! 墓地から自身を除外して、墓地の『サボタージュ』を回収する!」

 

「そして魔法使い族のモンスター効果が発動したことで『バイスマスター』の選択効果を発動! 『夢幻の夢魔鏡』を破壊する! 【アトリエアート・1st・デストラクション】!」

 

「これで攻撃力上昇&低下効果が終了したわ。バトル! 『アルル』で『夢魔』を攻撃! 【ロケットパンチ】!」

 

◆『ウィッチクラフト・ゴーレム・アルル』 ATK:2800

 VS

◆『夢魔鏡の夢魔ーイケロス』 DEF:500

 

「……くっ! だが、『イケロス』は守備表示のためバトルダメージは受けない! さらにお前のモンスターでは僕の『黒騎士』の攻撃力を超える事は出来ない!」

 

「まあ、そうね。エールはこれでターンエンド。そして墓地の〈ウィッチクラフト〉魔法の回収効果を発動。『サボタージュ』、『クリエイション』を手札に戻し、『バイストリート』を復活。そして『バイスマスター』の選択効果によりデッキから『ウィッチクラフト・シュミッタ』を特殊召喚」

「特殊召喚に成功したことにより、お前には300のダメージだ」

 

〇 エールライフ 4950ー300=4650

 

「あは、小賢しい効果。それしか出来ないのね。……お前はもう何もできずに死ぬ」

「――調子に、乗るなよ」

 

場:『ウィッチクラフト・バイスマスター』 ATK:2700

 『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』 ATK:2800

 『ウィッチクラフト・シュミッタ』 DEF:600

魔法+罠:『ウィッチクラフト・バイストリート』

 

・4ターン

 

「僕のターン、ドロー! 僕は……!」

「スタンバイフェイズ! フィールドの『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』はエールの手札に戻る。この瞬間、『バイスマスター』の選択効果、デッキから『ピットレ』を特殊召喚! さあ、あなたのターンよ。少しは動いて見せなさい」

 

「僕のターンに好き勝手を……! 僕は手札から『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』を通常召喚! デッキから『使徒』をサーチする効果を発動!」

「この瞬間、エールはフィールドの『ピットレ』の効果発動! 自身と『コンフューション』をリリースし、デッキから『ウィッチクラフト・マスターヴェール』を特殊召喚! 守備表示!」

 

「そして『バイスマスター』の選択効果を発動する! 『黒騎士』を破壊! 【アトリエアート・1st・デストラクション】!」

 

「さらにフィールドに居たもう一体のウィッチクラフト、『シュミッタ』の効果発動! 自身と『サボタージュ』をリリース、デッキから2体目の『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』を特殊召喚!」

「どこまでも、好き勝手にいい加減に……!」

 

「ううん! まだ手番は返してあげない! エールは『バイスマスター』の選択効果発動! 今捨てた『サボタージュ』を手札に戻す! 【アトリエアート・2nd・コール】。あは、これでエールは効果処理を終了」

 

「やっと終わったね。今度こそ僕のターン! 手札からさっきサーチした『使徒』を特殊召喚! リリースして『逆徒』の効果を発動!」

「気持ちよく回させてあげない! エールは『マスターヴェール』の効果発動! あなたのフィールド上のモンスター全ての効果を無効にする! 【シャイニー・オーバーラップ】!」

 

「ぐぐぐぐぐ……僕は……これで、ターンエンドだ」

 

フィールド魔法:『暗黒の夢魔鏡』

場:『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』 ATK:1500

 

・5ターン

 

「あは! ついに諦めちゃった? なら、このターンで終わらせてあげる! エールのターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見もせずにカードを繰る。もはや決着は付いている、新しいカードの出番などない。

 

「手札から魔法『サボタージュ』を発動! 『ハイネ』を復活!」

 

「守備表示の『マスターヴェール』を攻撃表示へ! そして、『アルル』を対象に魔法『ウィッチクラフト・コラボレーション』を発動! このターン2回攻撃を可能にする!」

 

 ゴゴゴ、と人形の背後にゆらめくオーラが見える。

 

「『アルル』で『逆徒』に攻撃! 【ゴーレムパンチ】!」

 

◆『ウィッチクラフト・ゴーレム・アルル』 ATK:2800

 VS

◆『夢魔鏡の逆徒ーネイロイ』 ATK:1000

 

〇 ライフ 8000ー1800=6200

 

「そしてエールの全モンスターでダイレクトアタック! 【ウィッチクラフト・カルテット・マジック】!」

 

◆『ウィッチクラフト・ゴーレム・アルル』 ATK:2800

◆『ウィッチクラフト・バイスマスター』 ATK:2700

◆『ウィッチクラフト・ハイネ』 ATK:2400

◆『ウィッチクラフト・マスターヴェール』 ATK1000

 

「そんな……嘘だ! 鏡の中の世界が……砕ける……!」

 

〇 ライフ 6200ー2800ー2700ー2400ー1000=0

 

 夢のごとき儚い世界、鏡の中――そこが割れて歪む。全ては泡沫のように消える。邪神が復活させたセブンスターズは敗北すれば死者に戻る。死体すらもない、夢の存在へ。

 

「あは! 所詮は消えていった可能性。ずうずうしく現世にしがみついているなんて、なんて醜い。お笑い種ね――消えろ亡霊」

 

 ケタケタと笑いながらそこを後にする。黒ずんで砕けていた鏡の数々を踏みつけながら校門へと帰る。

 そして、校門を潜った先にはエクスが居た。

 

「――あら? 何か言いたげね、エクス。あなたごときがこのエール様に何を言うのかしら」

 

 嘲るように笑った。

 

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