悪役令嬢はカードで世界を征服する   作:Red_stone

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第5話 愚かなる王族・後編

 

 

 エレメはまだ立てていない。むしろ6300ものダメージを受けてなお動けたファニマの方が異常……というかあれはズルだ。これは肉体以上に魂を傷付ける戦い、ファニマは異界からの魂を吸収して回復した。

 彼には、そんなお役立ちアイテムはない。

 

「ふふ、立ち上がれないようね? 立ち上がれないデュエリストにターンは回ってこない。このまま『ホエール』のダイレクトで勝負を決めてあげる」

「――ふざけるな! 俺はまだ、負けていない。俺のターン、ドロー!

 

 立ち上がり、カードを引き。

 

「……これは」

 

 祈るように目を閉じた。そして、目を開いて宣言する。

 

「このカードで俺はお前に勝つ! 魔法『HEROの遺産』を発動、墓地の3体のHEROをEXデッキに戻して3枚のカードをドローする!」

「ふふ、この期に及んで神頼みかしら?」

 

「ほざけ! 正義は、HEROは必ず勝つと教えてやる! 魔法『ヒーローアライブ』を発動

ライフを半分払い……ぐぅ!」

 

 彼は胸を抑えた。ライフを払うにも痛みが伴う、当然だろう。

 

〇エレメライフ:1100/2=550

 

「デッキから『E・HERO ブレイズマン』を特殊召喚、そしてその効果によりデッキから『置換融合』を手札に加える。このカードは」

「置換融合は『融合』として扱うカード。私にその説明は不要よ」

 

 それはルールにより名称を変えるカードだ。代表的なのは『海』だろう。名前を指定するカードだが、ルールにより『置換融合』は『融合』になっているし、デッキに入れられるのも両方合わせて3枚までだ。

 

「……手札から『E・HEROソリッドマン』を召喚、そして効果により手札の『E・HEROオーシャン』を特殊召喚! そして『置換融合』を発動、『ソリッドマン』と『オーシャン』融合、『E・HERO アブソルートZero』を再び融合召喚!」

 

 大氷壁を割って絶対零度のHEROが再び姿を現わした。モンスター全滅効果を持つ厄介なモンスターだ。

 だが、自爆特攻をしようにもホエールが居る限りライフ550ではひとたまりもない。

 

「墓地に送られた『ソリッドマン』の効果発動、墓地の『エアーマン』を蘇生する。さらに『エアーマン』の効果でデッキから『E・HERO シャドー・ミスト』を手札に加える。そしてこれが俺の最後の力……手札の『融合』を発動、『E・HERO アブソルートZero』とシャドーミストで融合! 太陽よ、その威光を再び掲げよ! 融合召喚『E・HERO サンライザー』!」

 

「そして、融合により墓地へ送られた『アブソルート』の効果発動! 相手フィールドのモンスターをすべて破壊する! 今度こそ砕け散れ、悪の手先! 【グレイブ・オブ・アブソルートゼロ】!」

 

 今度こそ、ファニマのシモベ達が大氷壁に囚われる。その氷壁は”中身”ごと割れ、崩れ落ちていく。残るは……

 

「だけど私の『デストーイ・サーベル・タイガー』は3体以上を素材にした時効果・戦闘では破壊されない効果を得ている。そして『ホエール』の効果発動、デッキから『魔玩具厄瓶』を墓地に落としタイガーの攻撃力を1200アップする! 【マックスホエール】!」

 

 二体の仲間を失ってもなお吠えたてる『サーベルタイガー』である。攻撃力4000、ファニマを倒すためにはまだ壁はある。

 

「……何だと!? 俺のターンなのに、そこまで動いてくるか!」

「これだけじゃないわ。更に墓地に送った『魔玩具厄瓶』の効果、フィールドのモンスター1体の攻撃力を半減させる。呪いを受けなさい、『サンライザー』!」

 

 地面から生えてきたガチャガチャ、勝手にスロットが周り、一つのボールが放出された。それは狙い違わずサンライザーに当たり、闇が彼を覆う。HEROはがっくりと膝をついた。

 

「サンライザー。……くっ! だが、『サンライザー』の効果は発動する、デッキから『ミラクル・フュージョン』を手札に加える。そして発動! 墓地の『エアーマン』と『ソリッドマン』で除外融合、現れろ暴風の戦士、『E・HERO Great TORNADO』!」

 

 暴風纏うHEROが、マントをはためかせて現れる。そして、その轟風をサーベルタイガーに叩きつけた!

 

「『トルネード』の効果発動、敵モンスターの攻撃力を半減させる。【ウィンドプレッシャー】! 更に墓地の『置換融合』の効果を発動、自身を除外し『アブソルートゼロ』をEXデッキに戻すことでデッキからカードを1枚ドローする」

 

「そして来たぞ、最後の『ミラクル・フュージョン』だ! 墓地の『オーシャン』と『リキッドマン』を除外融合。さあ、三度現れよ我がHERO、『E・HERO アブソルートZero』!」

 

 たった1枚の融合モンスターを、3回も召喚してしまった。これこそが彼を第1王子として君臨させてきた超強力モンスター。

 これは、第3皇子の婚約者殿とは比較にならない強さと言えるだろう。同じような強さと思っていたが、実際には大間違いだ。

 

「更に手札から『オネスティ・ネオス』の効果発動、アブソルートの攻撃力を2500アップする。さあ、悪役令嬢を倒すため(はし)るのだ、我がHERO達よ!」

 

◆『E・HERO アブソルートZero』:ATK5800

 VS

◆『デストーイ・サーベル・タイガー』2000

 

ファニマライフ:8000ー3800=4200

 

◆『E・HERO Great TORNADO』ATK:3600

 VS

◆『デストーイ・サーベル・タイガー』2000

 

ファニマライフ:4200ー1600=2600

 

「ぐぅ……ッ! けれど、私のライフは尽きていない。サーベルタイガーはまだ立っているわ!」

 

 大きくライフを削られたファニマだが、しかし膝をつくことはない。『サーベルタイガー』もまた、傷だらけになりながらもファニマを守っている。共に、毅然と敵を睨みつける。

 

「だが、俺の場の攻撃力は圧倒的! 次のターンこそ貴様を葬ってくれるわ! ターンエンド!」

 

エレメ場

『E・HERO アブソルートZero』:ATK3300

『E・HERO ブレイズマン』ATK:2000

『E・HERO サンライザー』ATK:3300

『E・HERO Great TORNADO』ATK:3600

 

ファニマ場

『デストーイ・サーベル・タイガー』ATK:2000

 

「……ふふ、確かに弟よりはマシね。あなたのカード(相棒)、そしてデュエルタクティクスも相当のものと認めましょう。けれど私には届かない! 私がリスペクトするのは勝利のみ! 私のターン、ドロー!」

 

 気迫が空気を揺らした。

 

「お礼に見せてあげるわ、私の切り札。でも、まだ準備が必要ね。魔法『魔玩具補綴』を発動、『エッジインプ・チェーン』と『融合』を手札に加えるわ。……ふふ、これがあなたに終わりをもたらすカードよ、手札から『融合』を発動」

 

 このデュエルで言えば5回目の『融合』である。

 

「手札の『チェーン』、加えて『ファーニマル・ペンギン』、『ファーニマル・ライオ』で融合召喚! そして『ペンギン』の効果でデッキから2枚ドローし『ファーニマル・オウル』を捨てる!」

 

「現れなさい、血を求めて彷徨う呪い人形。ゴミ屑(ジャンク)と捨てられた恨みを晴らさんがため現れよ、『デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー』!」

 

 3体もの融合素材を捧げる大型モンスター。幽鬼のように恐ろしげな気配、そして夢のように広がる黄金の髪がしかし纏わりつく触手を思わせる悼ましさでカビのように揺れる。

 それは純白のドレスを纏う呪い人形。生きとし生けるものを嘲笑う邪悪なるこの姿。

 

「これが貴様の本性か……! だが、攻撃力2000で何が出来ると言う!?」

「このカードは私の墓地の天使族、悪魔族モンスターの数だけ攻撃力を300アップする。墓地のモンスターは8体、よって攻撃力を2400アップする。【カース・フロム・トラッシュ】!」

 

 暗黒の瘴気はますますその版図を広げていく。

 

「『ブレイズマン』に攻撃!」

「だが、サンライザーは他のHEROの攻撃宣言前にフィールドのカード1枚を破壊する! その貴様の切り札を破壊してやる!」

 

「愚かね。『ナイトメアリー』の効果発動、【ナイトメア・ポゼッション】! EXデッキから『デストーイ・シザー・ベアー』を墓地に送ることで自身を対象にした効果を無効にする。そして墓地にモンスターが増えたことでナイトメアリーの攻撃力は更に300アップする!」

 

 呪い人形が更に大きさを増した。呪いが広がる。目の前に広がる恐ろしい光景を前に目をそらすことさえできやしない。

 

「さあ、その哀れなHEROを叩き潰してあげなさい! 行き場のない恨み、しゃしゃり出たからにはその身に受けるがいい! 【アリス・イン・ナイトメア】!」

 

◆『デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー』4700

 VS

◆『E・HERO ブレイズマン』ATK:2000

 

〇エレメライフ:550ー2700=0

 

 圧倒的な闇がブレイズマンを飲み込み、更にはエレメまでもを飲み込んだ。その闇が消えるころには……エレメが死んだように倒れ伏していた。

 

「さあ、契約を果たしましょう」

 

 ファニマの手の中に闇が凝る。握りしめ、引き抜くとその手にはハサミが握られていた。……鎖のついたそれを投げる。

 

「あなたの闇の力、私がもらう!」

 

 投げたハサミがエレメに当たり、ざっくりと胸のあたりを切り裂いた。だが、服や身体には傷一つなく……ただ切った個所からまた別種の闇が噴き出した。

 

「……ふ!」

 

 鎖を引き、ハサミを手に。噴き出した闇はハサミとともにファニマの手の中に収まり、何枚かのカードになる。それをデッキに納めた。

 一瞬の早業で始末を終えたファニマはくるりと振り向いてメイを手招きする。

 

「さあ、見苦しいものがあることだし家に帰りましょうか」

「え……いいんですか? まだ授業が終わっていない時間ですが」

 

「儀式で疲れてしまったのよ」

「……お嬢様、けっこう変わりましたね」

 

「こんな私は嫌いかしら?」

「いいえ。前のお嬢様はご自身も辛そうでしたから」

 

 そして、宣言通りにエレメを放置して家に帰った。

 

 

 





 4ターンだけの戦いですが、前後編に分かれるほどのボリュームになってしまいました。
 1kill受けた第3王子様もですが、攻略対象は強くなって再登場する予定があります。そもそもゲーム本編の本来の主役、ストーリーに関わるのは元々彼らなので。
 そのうちに1試合で3話になりそうですね。方針としては並べて1Killをやり合う展開で行きたいとは思っていますが……

 ちなみに設定を一つ公開。カードを手に入れるには魔力で生み出すかシングル買いするかだけです。
 貴族は魔力が高く、富を独占しているために平民とはデッキレベルから違います。

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