女性人と百合百合させちゃうのか、ちゃんと異性とお付き合いをさせるのか…
実に悩ましい…
「見てください! こんなに大きな水樹の苗を貰ったんですよ! これだけあれば、もう水に不自由することはありません!」
蛇神から勝利の報酬として、大きな〝水樹〟という木の苗を貰った黒ウサギ。
今にも踊りだしそうな位に機嫌ををよくして戻ってきた。
自分が先ほど、酷いボロを出した事にも気づかずに…
「ねぇ黒ウサギ」
「はい、何でしょう♪」
水樹の苗を持ちながらその場でクルクルと嬉しそうに回っていた黒ウサギは、今出来る最大級の笑顔で、赫映の方へ振り向くのだが、
「アナタ、なにか私達に隠しているでしょ」
「――――え?」
赫映のこの言葉に、天から地へと落とされた様な気持になる黒ウサギ。
目は見開き、頬は引きつっている。
いくらなんでも、分かりやす過ぎるのではないのだろうか?
「推測の域を出ないけど…黒ウサギのコミュニティは最大日数3年の間に、何らかの理由で衰弱したコミュニティじゃないかしら? 今まではどうにかして来たけど、もう二進も三進も行かなくなり、コミュニティに残っていた財や苦労を重ねて手に入れたギフトを対価に私達を呼び出した」
「来たばかりの俺達は、箱庭のルールなんてもんは知らね……それを利用して、言葉巧みにコミュニティに入れさせようとした。 だから、俺がコミュニティに入らないと言った時に本気で怒った―――どうよ?100点満点だろ?」
赫映の大まかの推測に続き、十六夜がトドメをさす。
黒ウサギの内心はもう荒れに荒れている。赫映の言う通り、コミュニティの財とギフトを対価に呼び出した。
もし苦渋に苦渋を重ねて、やっとの想いで異世界から呼び出した者達が『コミュニティに入らない』なんて事になった場合、今度こそ黒ウサギ達は終わる。
「…………」
「沈黙は是也、だぜ黒ウサギ。 黙り込んでも状況は悪化するだけだぞ。 それとも俺も赫映も他のコミュニティに行ってもいいのか?」
「や、だ、駄目です! いえ、待ってください!!!」
「だからこうして待っているじゃない。ほら、さっさと全てを話しなさい…包み隠さずにね」
月の姫君である赫映にそう言われ、黒ウサギは2人に全てを語る。
赫映の予想通り、自分が所属しているのが3年前までは東区画最大手のコミュニティだった。
だが、ある日コミュニティに大切な『名』と『旗印』そして…仲間を奪われた。
何故そうなかったかと言うと、箱庭における最大の天災―――〝魔王〟とのギフトゲームに敗北して奪われたからだ。
「魔王は〝主催者権限〟という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、ギフトゲームを挑まれたが最後……誰も断る事はできません。 私たちは魔王のゲームに強制参加させられ……結果、コミュニティとして活動していくために必要な全てを奪われてしまいました」
これは比喩などではない。
黒ウサギ達のコミュニティは地位も名誉も仲間も、全てを奪われたのだ。残されたのは空き地だらけとなった廃墟と、ギフトゲームにも参加できない120人の子供達のみ。
これではコミュニティの再建など夢のまた夢どころか、妄想と言われても文句は言えない。
「お願いします。茨の道ではあります…けど、私達は仲間が帰る場所を守りつつコミュニティを再建し……何時の日か……コミュニティの名と旗印を取り戻して掲げたいのです! そのためには、強力な力を持つプレイヤーを頼るほかありません。 どうかその強力な力、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか……!?」
「なるほどねぇ……」
「魔王から、誇りと仲間を奪い返すか……」
深く頭を下げて懇願する黒ウサギの必死の告白に、赫映と十六夜は気のない声で返す。
コレに黒ウサギは肩を落として、泣きそうな顔になっていた。
「すっげえ面白そうじゃねえか。いいぜ、黒ウサギのコミュニティに入ってやる」
「私も入ってあげていいわよ」
「―――はっ?」
2人の雰囲気からして、絶対に断られると思っていた黒ウサギは呆然とする。
「HA? じゃねえよ黒ウサギ。協力するって言ったんだからもっと喜びな」
「え……あ、あれ? 今ってそういう流れでございました?」
「そんな流れだったわよ? なに…いらないの?」
「あ、いえ! いります。 絶対にいります!」
キャーキャー♪と喜ぶ黒ウサギ。
しかし、疑問に思ったことがあったのか、首を傾げて赫映に質問する。
「あの、十六夜さんは何と無く理由が分かるのですが……姫様はどうして、黒ウサギ達に協力してくれるのです?」
当然の疑問。
なにせ黒ウサギ達のコミュニティは底辺中の底辺だ。
毎日お風呂に入るといった事は出来ず、食事すら抜く日がある程に困っている有様。
姫君である赫映にとって、黒ウサギの居るコミュニティなど普通なら絶対に協力してもらえないだろう。
「私は異世界の者だけど、月の民は私の家族の様なモノよ。 だから見捨てたりはしないわ」
「姫様……っ」
赫映の答えに、黒ウサギは涙を流す。
異世界から来る者達を騙し、良い様に使おうとしていたと知っても、見捨てたりはしないと言われた。
嗚呼…例え異世界の姫君であっても、我々が愛して止まない存在であった…と感じた黒ウサギは、自身は礼儀知らずの不届き者であったと恥じる。
☆☆☆☆☆
夕暮れの噴水広場。
先に箱庭の中に入っていた飛鳥と耀…そしてリーダーのジンと合流をした。
黒ウサギがルンルン気分でジンに、赫映と十六夜の2人がコミュニティに入ってくれる事を報告。
この話しにジンもとても大喜びをしてくれたのが、カフェテラスであった事を説明すると…
「なんでちょっと目を離した隙に他コミュニティに喧嘩売ってるんですか!? しかもゲームは明日!? 一体どういうつもりなんですか!!」
黒ウサギ激怒した。
飛鳥と耀の2人が勝手な行動を取り、勝手にギフトゲームをしたのなら、まだ分かる。
だが話しの詳細を聞くと、リーダーであるジンも一緒にギフトゲームを仕掛けていたのだ。
戦う為に必要な力など、何一つとして持っていないのに…だ。
「「「腹が立ったから後先考えずに喧嘩を売った。 反省も後悔もしていない」」」
「黙らっしゃい!!!」
堂々と『反省していない』宣言に、何処から取り出したのか…3人の頭にハリセンを食らわせる黒ウサギ。
それをニヤニヤしながら見ていた十六夜と赫映が止めに入った。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「それに…私達を騙して、自身の目的の為に奴隷の様に扱き使おうとしていたアナタが怒る資格すらないわ」
「うっ…」
赫映の言葉に、グサリと胸を抉られる。
自身の目的…『コミュニティの再建』をするため、異世界から来た者達を騙して働かせようと目論んでいたのは事実。
正論を言われた黒ウサギはウサ耳をへにょらせる。
「それを言われると、何もいえません……ですが、時間さえ掛ければ彼らの罪は必ず暴かれます。 だって肝心の子供達は……その……」
流石にフォレス=ガロがそこまで酷い状態であった事は思いもしなかったのであろう。最後の方で言い淀む。
「その通りよ。人質は既にこの世にいないわ…だけど、あの外道を裁くのに無駄な時間を掛けたくないの」
「僕も同じ気持ちだよ黒ウサギ。あんな悪党は、早急に退治しないといけないんだ」
「ジン坊ちゃんまで…もう、わかりましたよ!!」
自身が所属するコミュニティのリーダーであるジンがやる気でいる。
この事に、どんなに説得しても無駄だと判断したのか、黒ウサギが折れた。
「まあ腹立たしいのは黒ウサギも同じです。〝フォレス・ガロ〟程度なら、十六夜さんか姫様のどちらか一人いれば楽勝でしょう」
「何言ってんだ黒ウサギ。 俺は参加しねえぞ?」
「―――HA?」
「当たり前よ。これは私達のギフトゲームなんだから、参加させないわ」
黒ウサギが言いかけた時に参加をきっぱりと拒否する十六夜。その事に黒ウサギは唖然となり、慌てて食って掛かる。
「だ、駄目ですよ! 御二人様はコミュニティの仲間なのですからちゃんと協力しないと」
「そういう事じゃねぇよ黒ウサギ」
だがそこで十六夜が真剣な表情となり、黒ウサギを説き伏せる。
「いいか? この喧嘩はコイツらが売った。そしてヤツらが買った。そこに俺達が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ。まあ俺は兎も角…赫映は関与する気は更々無い見たいだし、説得しても無駄だぜ?」
「当たり前じゃない。どうして私が雑草抜きに出ないといけないのよ」
「雑草抜きって……もう好きにして下さい~」
言い返す気力すら無くなった黒ウサギは、全てを諦め肩を落とす。
そんな黒ウサギを見て、ジンは申し訳ない表情をしながら口を開く。
「黒ウサギ。もう夕暮れ時だし、今日はもうコミュニティに帰る?」
「……いいえ。黒ウサギは皆さんのギフトの鑑定をしに行きますので、ジン坊ちゃんは先に帰っていてください」
「わかった。じゃあ、先に帰ってるね」
どこに鑑定しに行くかは聞かず、ジンはそのまま自身のコミュニティに帰っていった。
それを見送った後、十六夜は気になった事を聞くため、口を開いた。
「なぁ黒ウサギ。 ギフトの鑑定をしに行くって言ったが…それをやってくれるコミュニティにでも行くのか?」
「YES。今から行く場所の名前は〝サウザンドアイズ〟と呼ばれる特殊な〝瞳〟のギフトを持つ者達の群体コミュニティです。 箱庭の東西南北上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティなのですヨ!!」
「超巨大商業コミュニティねぇ……そんな誰もが知るコミュニティに、お金もないノーネームが行って大丈夫なのかしら?」
「そこは大丈夫なのですよ姫様。 鑑定に使う資金は、既に用意されています。 なので皆様は何も心配せず、今度こそ黒ウサギの後を付いてきてくださいね!!」
そう言って黒ウサギ達は〝サウザンドアイズ〟に向かった。
道中、赫映が桃色の花を咲かせた木を眺めて呟く。
「へぇ……久しく見ていなかったけど、随分と立派な桜ね」
「でもこれ、桜の木……ではないわよね? 花弁の形がまるで違うし、何より真夏になっても咲き続けている筈が無いもの」
「まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「……? 今は秋だったと思うけど」
其処で赫映以外の3人は話が噛み合わないと気付き、首を傾げる。赫映に関しては大地が海へと沈んでいる為、不明である。
その様子を黒ウサギはクスリ、と笑って説明した。
「皆さんは其々違う世界から召喚されているのデスよ。 元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系などにも所々異なる箇所が有る筈ですよ?」
「へぇ? それはパラレルワールドってヤツか?」
「違うわよ。パラレルワールドは横の軸。今回の場合、その横の軸……つまり時間軸が異なっているから正しくは立体交差並行世界論って言うのよ」
「流石は姫様、よくご存知ですね。 先程姫様が仰られた通り、立体交差並行世界論というものなのですけれど、これを説明すると一日二日では足りないので割愛という事で……」
そう言いつつ黒ウサギが足を止める。どうやら目的地である〝サウザンドアイズ〟に到着したようだ。
だが店をよく見ると、割烹着を着た女性店員が看板を下ろしているところであった。
黒ウサギは滑り込んでストップを、
「まっ」
「待ったなしですお客様。うちは営業時間を延長したりしませんので」
言い切る前に、強制終了をされてしまった。
流石は超大手の商業コミュニティ。問答無用である。
「なんて商売っ気の無い店なのかしら」
「全くです! 閉店五分前に客を締め出すなんて!!」
「文句があるならどうぞ他所へ。 あなた方は今後一切の出入りを禁じます。 出禁です」
「出禁!? これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
「なるほど、箱庭の貴族であるウサギの御客様を無碍にするのは失礼ですね。 入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を教えてくださいますか?」
「俺達はノーネームってコミュニティなんだが」
「では、どこのノーネーム様でしょう。 よろしければ旗印を確認させていただいてよろしいでしょうか?」
コミュニティの確認を迫る女性店員に十六夜が何の躊躇いも無く名乗る。だが、〝名〟と〝旗印〟が無いコミュニティでは何の示しようも無い。故に黙り込む他無かったのだが…
「下っ端の分際で、随分と礼儀を知らい対応ね…これは、サウザンドアイズも底が知れるわね」
「なんです―――!?」
赫映の言葉に怒りを覚えた割烹着は、愚か者に制裁を与えようとして、目を見開いた。
その表情は『恐怖』『絶望』そして『ありえない』と言ったモノが読み取れる。
「か……かぐや…姫……様…」
「そうよ。アナタが思っている人物ではないけど…正真正銘かぐや姫よ」
「あ……あぁ……」
「ねぇ…」
「は、はひぃ!」
恐怖でまともに会話が出来ない店員の髪を鷲掴みにし、彼女のみに聞こえるように―――
「両手足を切り落とし、焼けた鉄の棒を股に差し込んで…子が出来ぬ身体にした後…その綺麗な目玉を愉快に抉り取って…最後には『私は肉便器です』って書かれた看板を首に吊るして路地裏に捨てられたく無ければ――――――そこを素直に通せ雑種」
「――――――うっ」
あまりの内容に店員は言葉を失い、恐怖のあまりに吐き気まで襲ってきた。
このまま吐いて気を失ってしまいたい……だが、赫映の目の前そんな事をしてしまった日には、地獄よりも恐ろしい事が待っている。
店員は必死に耐えに耐えている時―――
「かぐや……なのか?」
目の前の現実が信じられないと言った表情で、店の中から着物風の服を着た真っ白い髪の少女が現れた。
あと1~2話で白夜叉との戦闘なんだけど、バトルシーンちゃんと書けるか不安だ…