月の姫君が異世界から来るそうですよ?   作:二色蝶

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お待たせしました。
VS白夜叉後編です。
いやはや…工場勤務だったから、熱中症とか、脱水とかで病院に運ばれたりして遅れましたわ。
今は元気でやっていますが、まだまだ暑い日々……
何が起きるか分からないのと、フラフラが続いているので、遅くなります。

皆さんも脱水やら熱中症とか気をつけてくださいね?



月VS太陽 後編

やってしまった……

自身の天敵である『天空で太陽を追う狼』に集中しすぎたせいで、私は赫映の存在を忘れてしまっていた。

本来そんな事など、ありえないことなのだが……久方ぶりの滾る戦いのせいか、無意識かに忘れてしまっていた。

そんな愚考の結果……私は、当たってはならない攻撃に当たってしまった……

 

「ふふふ。ついに有効打をもらっちゃったわね。 ねぇ、白夜叉」

「くっ……この銀の矢から感じる神気……疫病と死をもたらす純潔の女神(アルテミス)か!!」

「大正解よ。 死の効果は今回は無しにあるのに、即座に回答を導くあたり素晴らしいわね……けど、いくら答えが分かったところで、スコルの猛攻とアルテミスの矢から何時まで逃げ切れるかしら?」

 

そう言って赫映は、回避する場所を制限するように矢を撃つ。

これにより、白夜叉は魔狼に攻撃をする時間を完全に失ったばかりか、疫病が身体を蝕み始めてから動きが少しずつ悪くなり、完全に回避ができなくなっていた。

 

「(まずい…このままでは身体が完全に疫病に蝕まれ、魔狼の攻撃を避ける事ができなくなる…)」

 

相手は太陽殺しの魔狼と月の姫……状況としては最悪以外の何ものでもないのだが、幸運にも赫映は逃げ道を塞いでいるだけで、現在は当てる気がない。

この『当てる気がない』をうまく利用すれば、何とか脱出できる可能性がある。

だがもし、赫映の気が変わって当てに来た場合は、その可能性すら完全に消えうせてしまう。

彼女の気が変わらぬ内に策を練りたいが、魔狼の前では太陽は意味を為さず、更に疫病のせいで夜叉の身体能力も十全に発揮されない状態。

一体何をどうすれば、この状況を打破できる……半ば諦めている中、白夜叉の脳裏にある策がひらめく。

 

「(くくく……こんな策とも呼べぬ策を思いつくとは……私は、私が思っている以上に、負けたくないと思っているらしい……)」

 

まさかこれ程までに『負けたくない』と思っていたとは思いもよらず、絶望的なこの状況下で笑みをこぼす。

それを見た赫映は、白夜叉が何かしらの行動を起すと察知し、警戒をするのだが………

 

「なに!?」

「白夜叉様!?」

「おいおい、白夜叉の奴は何を考えてやがる」

 

上か赫映・黒ウサギ・十六夜が白夜叉の行動に驚き、声を出す。

白夜叉がとった行動……それは『スコルの口の中へ入る』と言う自殺行為だ。

もうどうしようも出来なくなり、自暴自棄になっての自殺?

馬鹿な……あれ程の強さを持った者が、そんな事をするはずはない。

では、あの行動は―――策?

もしそうなら……

 

「マズイ…スコル! 今すぐに白夜叉を吐き出せ!!!」

 

このままではマズイと感じて、赫映は声を荒げながら魔狼に命令をする。

だが、白夜叉を魔狼の体内に入れさせてしまった時点で、何をやっても手遅れ。

体内に潜り込んだ白夜叉は、カードから一本の剣を取り出すと、それを躊躇無く突き刺し…

 

『クォォォオオオオオオオンッ!!!!』

 

あまりの激痛に表情を歪ませ、血反吐を吐きながら、断末魔のような遠吠えを上げる。

このまま一気に倒されるか…そう、誰もが思う中、流石は天下の魔狼。簡単に殺られない為に地面を転げまわったり、神速で走り回ったり、空高くまでジャンプして落下したりと、様々な事をしながら妨害をする。

だが、暴れれば暴れるほど、抵抗すれば抵抗するほどに、数十キロの肉の塊と、2キロの鉄の塊が、自身の胃袋を苦しめていく。

そんな自身の首を絞めながらの行動は……

 

―――ズシャッ!

 

『ガァッ!?』

「……忠道、大儀であった。しばしの間、ゆるりと休まれよ」

 

のた打ち回る魔狼をこれ以上見ることが出来なかった赫映は……その手で魔狼の心臓を貫いた。

この光景をみた問題児の3人は、赫映の行動にショックを受けるが、同時に理解できない部分があった。

それは『どうして疫病と死をもたらす純潔の女神(アルテミス)を使わなかった』かだ。

月と太陽の両方に有効な攻撃を与えられる魔狼相手に、近接攻撃など愚かな行動としか思えない。

その意見は全く持って正しい。普通は遠距離攻撃が可能な疫病と死をもたらす純潔の女神(アルテミス)を使用して、安全で確実に殺すのが普通だ。

だが、もしそんな行動をしてしまったら…忠義を示し、赫映の為に行動した魔狼の心情はどうなる?

家臣ならば、誰もが思う……死ぬ時は王の傍で…王の手により死にたいと。

月の姫であり、月の最高権力者…つまり〝月の王〟である赫映は、誰よりも月の民を愛しているから、民の願いを叶える為……心を殺して、王の責務を全うした。

故に問題児の3人は絶対に理解できないだろう…王のあり方を見てきたわけでもなく、王の傍に居たわけでもなく、王であったわけでもない……唯の〝一般人〟でしかなかったのだから。

赫映の手により、葬られた魔狼はその後、光の粒となって消え去り…血みどろの、ロングソードを持った白夜叉が現れると、赫映は呆れた様な表情で白夜叉を見る。

 

「全く…あの様な方法で、自身の天敵である魔狼を撃破するとはな……下手を打てば、あの時点で勝敗を決していたぞ?」

「ふふふ。確かに分の悪い賭けであったが……何の問題もなく、こうして立っている……それで十分であろう?赫映(・・)よ」

「――――…ほぅ。死人と重ねるのはやめて、ようやっと私を見たか」

「すまなかった、異世界の姫よ。随分と無礼をしてしまった」

「謝罪などいらぬ。代わりに、いい加減本気で攻撃してこい。いま貴様が出せる限界を……私にぶつけてみせろ!! しばらくの間、全力で(・・・)受け止めてやるから」

 

ニヤリと不適な笑みを見せながら答えると、白夜叉も釣られて笑みを見せ、自身の周りに14個の太陽を展開。

太陽を急速に大きく大きく…本来の太陽の大きさを超え、その大きさは、くじら座のミラやおうし座のアルデバラン、はくちょう座W星、うしかい座のアークトゥルス等が代表的な例として上げられる赤色巨星となっていた。

 

「月の姫、葉月赫映よ! 私の全力を受けてみろォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

勢い良く、赫映目掛けて投げつけられた14個の太陽。

対する赫映は、狂気染みた笑みを浮かべながら両手を広げ、一歩も動かず言葉通り、全力で受け止めた。

けたたましい爆発音。一発命中したら、すぐさま赤色太陽を作り、赫映目掛けて投げつける。

ある程度投げ続けていると、今度は赤色太陽を槍・剣・金剛杵・斧・鷹・ライオン・蛇・狼といったモノに変化させた。これは面から点の攻撃へと切り替えたのだ。

相手が動かないことをいいことに、白夜叉はそれらを何度も何度も作っては赫映へ向ける。

それこそ……赫映を殺すつもりでだ。

もはやこれは決闘ではない…一方的に行われる蹂躙。

この光景を見ている飛鳥と耀の2人と黒ウサギは、顔を青くする。

一方は、自身が挑もうとした存在と力の差に…もう一方は、月の民(自分達)がもっとも大切している存在の生死に。

それぞれが絶望している中、十六夜だけが…他の3人と違っていた。

 

「(あれだけの攻撃をしているのにも関わらず、白夜叉の奴…一体何に焦っていやがる)」

 

他の者達からすれば、白夜叉がしている行為は蹂躙以外の何ものでもないだろう。

だが十六夜には『もっと…もっと攻撃をしなければ…!』と不安に駆られ、攻撃をしている様に見えた。

実はこの十六夜の考えは当たっている。

白夜叉は酷く不安に駆られていた…これだけの圧倒的な攻撃を続けざまにしているのに、攻撃が通っている感じがしない。

なぜ、白夜叉はそんなに不安に駆られているのか……その理由はたった1つ。

未だにゲーム終了の知らせ(・・・・・・・・)がこないのだ。

これ程しているのに?と誰もが思うだろうが…そもそも現在の赫映の実力は、遊んでいるが故に正確な数字は出せないが…恐らくは推定1~2桁クラスの実力。

対して白夜叉は、足枷となっている『神格』を持っているが故に、4桁クラス程度しか出せない。

数字上は2桁差だが、この差はあまりにも絶望的な差だ。100%覆す事などできない差だと言ってもいい。

そんな希望など欠片ほどもない戦いをしている白夜叉は、ついに息を切らして攻撃をやめた。

先程まで爆音が鳴り響いていたせいか、非常に耳が痛い静まり返りようなのだが、そんな事など誰も気にも留めず、全員が赫映が立っていた場所を見る。

土煙が邪魔でどうなっているか分からない。息を呑み、ただじっとして見続けていると…土煙が晴れてきて、様子が見えてきた。

そこで全員が見たモノは―――

 

「素晴らしい攻撃だったぞ、白夜叉よ!! まさか…月読から貰った神石と天ノ羽衣を使って作った、私のお手製の着物をこうもボロボロにしてくれるとはな…誠、恐ろしき存在よ」

 

服はボロボロだが…傷や怪我などが1つもなく、不敵な笑みで相手に拍手を送る化物(赫映)が居た事に、全員が我が目を疑った。

誰がどう見ても、実力差は明白…だが、アレだけの猛攻を受けて傷の1つも負っていない。

この事に心当たりがある白夜叉は、強く拳を握り締め、悔しそうな表情をする。

 

「おんし…かぐやと同じ、異形の不老不死を……!」

「ほぅ…私のギフトの正体に心当たりがあるか。だが、異形と言うあたり、正確にはわかっていないと見る」

「……その通りだ。何故か知らぬが、かぐやは頑なに教えてはくれんかったからな」

「当然よ。このギフトは不老不死と言うカテゴリーの中でも極めて稀少で、所有者が〝女〟だった場合、口にも出したくないモノだから」

「所有者が女の場合だと? では、かぐやが喋らなかったのは…」

「もっと正確に言うならば、お前と言う愛する人(存在)に打ち明けるほどの勇気がなかったのでしょう…コレは女を欠陥品にするギフト。酷く苦しんでいたのでしょうね」

「…………」

「………口を滑らせすぎたわね。闘争の空気ではなくなってしまったか…仕方が無い。もう少し遊んでいたかったけれど、幕引きといきましょう」

 

そう言って、赫映はスッと瞳を力を集中させる。すると、黒曜石の様な美しい瞳の色が金赤(こんぜき)のオッドアイに変わった。

まるで、黄金と月と鮮血の月が…赫映の瞳に宿ったのではないのかと錯覚するほどに、美しかった。だがすぐに白夜叉は警戒心を高めた。

月の姫が魔眼を…しかも2つも所持して、2つ同時に使っているのだ。何が起きるか、誰も想像ができない。

白夜叉は何が起きても即座に対応できる様に、構えて待っていると……魔眼の効果なのか、赫映の背後に〝あるモノ〟が出現。それを見た白夜叉は、驚きのあまり構えを解いた。

 

「な…なぜ……なぜ、赫映の背後に…私が放った……太陽がある!?」

 

赫映の背後には、数分前に白夜叉は赫映に向かって放った、攻撃全てが展開されていた。

数・形・質量・大きさ…何をとっても全てが同じ。まるで〝鏡に映した〟かのような現象に、コピーの類だと即座に判明。

それならば一発大きい攻撃を放ち、連鎖爆破を引き起こそうと考え、実行しようとしたその時だった。

 

「【止まりなさい】」

「なっ!?」

 

赫映が『止まれ』と言葉を発すると、白夜叉の身体が強制的にその通りへとなった。

相手を言葉で強制的に、その通りにさせる力…これを見た飛鳥は、この中で誰よりも驚いた。

なぜならば…彼女が持つギフトがその類であるからだ。

どうして彼女が私と同じ力を持っているの?そんな答えなど出るわけが無い事を只管と考えながら観戦し続けていると、赫映の口から答えがでた。

 

「驚いたか、白夜叉。これが私のギフト…〝水面の瞳〟と〝未来眼〟の力よ」

「〝水面の瞳〟と〝未来眼〟じゃと…?」

「そうだ。〝水面の瞳〟は白夜叉が考えている通り、瞳に映ったモノを全て複写するコピーの類。もう片方の〝未来眼〟は、最大31日先の未来を見ることができるギフト………ココまで言えば、簡単にわかるわよね?」

「……まさか、未来で見たギフトを…複写したと言うのか……?」

「大正解だ。私の(水面)に映ったモノは、一切の例外なく…完全に写し取る。先程まで、太陽を使った攻撃も最初から全て…複写していたわ」

「くぅぅぅぅ…」

「楽しかったわよ、白夜叉。最後に【全力で私の攻撃を受けなさい】」

「っ………お、おのれぇぇぇえええええええええっ!!!」

 

沈まぬ太陽(白夜叉)に向かって、太陽を使い打ち倒す。

どうしようもない程の屈辱と悔しさに、このゲーム盤の隅々にまで聞えるほどの大きな声を上げながら…

太陽は…己の炎に身を焦がし、敗北した。




はよ夏終われ…
そうすれば、倒れることなんてないんだから…
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