セカイの狭間から友人たちを見守ろうと思う   作:日彗

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エイプリルフールなので何か書きたくて……。
現在投稿されている本編とは時系列が違いますので分けて考えていただきますようお願い致します。


エイプリルフール特別企画
俺たち入れ替わってる!?前編


 

 朝、目を覚ましたその瞬間からいつもと違う違和感を感じた。

 違和感というには大きすぎるナニカ。

 

 なんだろうと未だ寝ぼけた頭で考え……は?

 

「ナンカ、アル」

 

 ナニ、ガナイ

 そこで気づく。いやもっと早く気付くべきだった。体が軽い、小さい、柔らかい。声も明らかに自分のものではない。そもそもこの部屋……。

 

「まふゆの部屋じゃん……」

 

 一度冷静になって考えよう。俺はこういう事態には経験がある。そうだこの世界に転生したときもこんな感じだった…気がする! 17年ほど前の事だからよく憶えてない……。

 とりあえず俺の体を探しに行こう。推測が当たっていればまふゆもそこにいるはずだ。

 とは言っても隣の部屋なんだけど。

 

「服は……仕方ないこのままいくか」

 

 さすがにまふゆの体で勝手に着替えるわけにはいかない。いくら兄妹でも、ねえ?

 

 俺は扉を開けて廊下に出る。

 

「……春樹?」

 

「うおっ。びっくりした」

 

 扉を開けた先には『俺』がいた。こっわ、俺ってこんなに怖いの?

 

「ま、まふゆか? 体に違和感とか無いか?」

 

「春樹、意外と落ち着いてるね」

 

 落ち着いてねえよ。現在進行形でビビってるよ。自分より13cmも大きい男に見下ろされるのって滅茶苦茶怖い。だが推測通り俺の体にはまふゆが入って……怖い怖い怖い怖い、目が笑ってない。

 

「まふゆ笑おう。こういう時こそ笑顔だ」

 

「………。」

 

 ど、どうしたのだろうか。無言で見つめられると怖すぎる。

 

「私の体なのに私じゃないみたい」

 

「……まあ中身が俺だからな」

 

「……そうだね」

 

 と、それより大事なことがあるんだった。

 

「まふゆちょっと手伝ってくれ」

 

 

 

 

「手伝うって……着替え?」

 

「イエス着替え。よろしく頼む」

 

 俺一人じゃ着替えられないし、まふゆに頼むしかない。少々恥ずかしいが背に腹はかえられん。

 

「別に気にしないよ」

 

「ばか俺が気にするんだよ。それに言っとくが、俺は女性用下着の扱いなんて全く知らん」

 

 なんだブラジャーって。どうやって着けるんだ意味わからん。

 

「でも春樹の体で手伝うことになるよ」

 

「…………」

 

 背に腹はっ、かえられん!

 

 

 

 

 現在、俺はタオルを目隠し代わりに使いまふゆに着替えを手伝ってもらっている。

 

「なあ、まふゆ。俺たちの体がいつ戻るかわからない以上()()()()()()()()()()()()()を考えないといけない」

 

「……うん」

 

 どうするかといっても方針は既に決めている。だがまふゆの意志も確認しておきたい。

 

「俺たちの体が戻るまで俺は『朝比奈まふゆ』として、まふゆは『朝比奈春樹』として誰にもバレずに過ごしてほしい」

 

「…………」

 

「不安か? 安心していい。普段の行いのおかげで多少違和感があっても『春樹だから』って勝手に納得してくれるだろうし。なんなら素でいても多分大丈夫だともうぞ。普段の息抜きにたまには演技なしの生活もいいんじゃないか?」

 

 司あたりは指摘してくるかもしれないが、まあ大丈夫だろ。うん。

 

「問題は、俺の方だな」

 

 まふゆは普段から優等生の自分を演じているからなぁ。ハードル高ぇなボロ出しそう。

 

「……先に聞いておく。もしまふゆが『優等生の朝比奈まふゆ』を演じてほしいというなら俺は全力で演じよう。逆に演じないでほしいのなら言ってほしい。これはチャンスでもあるんだ」

 

 まふゆの体に俺が入っている現状は上手く利用できればまふゆの環境を変えることもできる。両親との関係も築いてきた優等生としての立場も。ストレスの原因になるものを排除できるかもしれない。

 

「……私、は」

 

 目を隠しているから見えないが声で大体の様子はわかる。

 

「でもまあ、まふゆには救いたいって言ってくれる子が現れたからな。まふゆがいいのなら、俺は何もしないよ」

 

 そうだ、まふゆはもう一人じゃない。いい仲間に恵まれた。焦る必要はもう、ないのだ。

 

「よし。ありがとうまふゆ助かったよ。ひとまず母さんたちにバレない様にしないとな」

 

「そうだね。……春樹」

 

「ん~?」

 

 まふゆの方に顔だけを向ける。

 

「……ありがとう」

 

「……兄妹だからな、ほとほと無能な兄で申し訳ないが大事な妹の為だ。大抵のことはやってやるさ」

 

 先に行ってるぞ、と声をかけて部屋を出ていく。

 そう言えばまふゆ、というか俺の体の方は既に着替えた後だったのだが……

 

「羞恥心はないのかなぁ……」

 

 躊躇なく着替えたのだろうか。なぜこんなにも恥ずかしい思いをしなくちゃいけない。

 

 

 

 

「どうまふゆ。おいしい?」

「うん。とってもおいしいよお母さん」

 

 今俺たちは家族そろって朝食を食べている。俺って意外と演技力あるなあと感心するぜ。

 ちらり、と本物のまふゆの方を見る。すると一言も喋らず料理を口に運んでいた。これが普段の俺の真似なのかそれとも素なのかわからないが。

 

「お母さんの作る料理はいつもおいしいね。ありがとうお母さん」

 

 俺スゲーー!!口からスラスラと言葉が出てくる!これも司との練習のおかげかな。

それにしても──

 もう一口母さんの料理を食べる。

 

「はぁ」

 

「あら、まふゆどうかしたの?」

 

「……ううん、何でもないよ」

 

 味がしない。まったく味を感じない。まふゆの味覚障害はストレスによる心因的なものだから中身が俺ならもしくは、と思っていたのだがそう上手くはいかないか。人体って不思議だなぁ。

 

 ならばまふゆはどうなんだろう。

 

 まふゆになった俺に味覚がないのなら、俺になったまふゆには味覚あるのか?

 もう一度まふゆの方を見てみる。

 やはり黙々と食事を続けていた。その表情から何を考えているのか読み取る事ができない。

 味わかるのかな…? でもわかるのならもっと反応するだろうし……まさかこれも演技なのか? そうなのか!?

 考えてもわからん。後でまふゆに聞いてみる事にして演技に集中しよう。こんな所でボロを出していてはこの先も無理だぞ、俺!

 

「ごちそうさま! 今日は部活の朝練があるからもう行くねお母さん」

 

「あら、そうなの?……部活もいいけど来年から受験生なんだし勉強もしっかりしなきゃダメよ?」

 

「ハハハ。まふゆに限ってその心配はいらないだろう。何せ将来の夢は医者なんだから」

 

 ……はぁ〜〜、くっだらねえ。一周回って笑えてきた。

 

「そうだよお母さん。勉強もちゃんとしてるから心配しないで。それに部活は今しかできない事だから、私は全力で取り組みたいの」

 

「そう? ……まあ、まふゆなら問題ないわよね」

 

 アッハッハッハッハ。……ヘッ。

 

 

 

 

「なんで、あんな事言ったの?」

 

「ん、なんの話?」

 

 現在、俺とまふゆはこれからの段取りについて話すため共に登校している。それにしてもなれないなこの体。

 

「今は部活に全力で取り組みたいって」

 

 ああ、そのこと。

 

「俺は思った事を言ってみただけだよ。ただ『いい子』を演じるのもつまらんし、これくらいの自由はあってもいいだろ」

 

 駄目って言われたら止めます。止めて差し上げますとも。

 

「だからって訳じゃないけどお前ももっと自由にしてていいぞ。多分バレないと思うし。あ、でも勘の鋭い奴もいるからそれだけ気を付けろよ」

 

 主に司とか類とか……あと暁山後輩もだな。神高の人間で気をつけなければいけないのはこの三人だろう。

 

「特に類……神代類に気を付けろ。あいつにバレたら解剖されかねん……」

 

 俺はまだ死にたくない。以前命を預けるとか言っておいてなんだが、やっぱり死にたくない。……死ぬのなんて一回で十分だ。もしドラ〇ンボールがあったら永遠の命を願っちゃうぜ。

 

「よし、おさらいしよう。まず俺たちの第一優先は『入れ替わっていることに気付かれない事』だ。いつもと様子が違う、違和感がある、と思われても特に問題はない。そんなのはよくある事だからな」

 

 まあ普通の感性を持っていればまずそんな発想には至らないだろうが、セカイを知っている者たちはその枠組みから外れる。想いからセカイやバーチャル・シンガーが生まれるという非科学的、非現実的な事象を目の当たりにしている彼らならこの発想に至りかねないのだ。

 

「……入れ替わった原因について考えなくていいの?」

 

「必要ない。というより考えても仕方ないだろ。こんな怪奇現象、現実的に考えてありえないことが起きている以上原因もまた『ありえないこと』だと予測できる。そんなものわかるかコンチクショウ」

 

 最初はまたセカイ関係かとも思ったがこっちの世界で起きている以上その可能性は低い。それよりも類の発明品によるもの、と言われた方が納得できる。でもなぁ、類がこんな事するかなぁ。

 

「今日の朝、目が覚めた時には既に入れ替わっていた。なら『眠り』が条件なのかもしれない。……明日の朝には元に戻っていることを祈るしかないな」

 

「…………」

 

「俺の体が不満なのはわかるけど我慢してくれ。俺も我慢してるんだぞ、何食べても味しないし……噛み続けたガムを飲み込んだ気分だった」

 

 あれじゃ野菜ジュースが飲めない。辛いぜまったく。

 

「味、感じなかったんだ」

 

「感じなかった。感じなさ過ぎて泣きそうになった。グスン」

 

 あ、そういえば聞こうと思っていたことを思い出した。

 

「まふゆこそどうだったんだ? 味の方は」

 

「……いつも通り、何もわからなかった」

 

 マジか。……え、じゃあ体が戻ったとしても味覚は戻らない可能性があるの? うそん。

 

「うわあ~。もういいやこの件に関しては後で考えよう。話は変わるけど最悪、本当に最悪の場合暁山後輩にはバレても仕方がない。まふゆの事も知ってるしそれで少しでも楽になるなら、俺は許そう」

 

 そして俺は弱みを握られることになるのである。嫌だなあ。

 

「春樹が嫌なら、バレない様に演技するけど」

 

 俺の表情を読んだのか、まふゆが視線をこちらに向けながら言葉を零す。

 その気遣いは正直嬉しい。嬉しいのだが。

 

「お前俺の事何も知らないだろ。他人を演じるのと『理想』を演じるのとは結構違うぞ」

 

「………そうなんだ」

 

 あれ、なんか落ち込んでる? なんで……ああ。

 

「悪いまふゆ、俺の言い方が悪かった。まふゆは俺の交友関係をしらないだろって言いたかったんだ。ほら機嫌直せって、な?」

 

 ンンンンンン失敗した。一言足りなかった。

 とにかく大急ぎで交友関係その他etcを教える。これで機嫌直るかなぁ。

 

「ほ、ほらまふゆ、神高は向こうの道だぞ。いいか変な人に付いていったら駄目だぞ。トイレはちゃんと男子用を使ってくれよ! 頼むからな!」

 

 大丈夫かな、大丈夫かなあ。もし神がいたのならどうかあの子を守り給え! ……神とか信じてないけど今だけは信じてやる。感謝しろ神。

 まふゆの背中がどんどん離れていく。あ、違うアレ俺の背中……ええいややこしい。

 

「俺ももう行こう、宮女に。……宮女?」

 

 あれ宮女って『宮益坂女子学園』だよな……え、俺これから女子高に入るの? 捕まったりしない? 大丈夫?

 なんか急に不安になってきた……。

 

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